職場の情報共有やコラボレーションを円滑に進めるためには、TeamsとSharePoint、そしてOneDriveの正しい活用方法を知っておくことが大切です。ここでは、既存のSharePointフォルダとTeams内のファイルを結びつけるショートカットの作成手順を中心に、権限や運用上の注意点を詳しく解説します。
TeamsとSharePointを連携する重要性
TeamsとSharePointはいずれもMicrosoft 365の中心を担うコラボレーションツールです。Teamsでコミュニケーションを取りながらファイル管理を行い、SharePointでフォルダ構造や権限管理を柔軟に運用できます。ところが、部署やプロジェクトで既に利用しているSharePointのフォルダと、Teams内で新規に作成したファイルをどのようにつなぐかは、意外と盲点になりがちです。そこで「ショートカット」という形で、既存フォルダとTeamsのファイルをシームレスにつなぐのが有効です。
以下では、TeamsチャンネルにアップロードしたファイルへのショートカットをSharePoint上のフォルダに追加する具体的な方法と、そのメリット・デメリット、運用上のポイントを詳しく見ていきます。
ショートカット連携のメリット
1. 一元的なアクセス管理
既存のSharePointライブラリを利用している組織は、すでにフォルダごとにアクセス権や共有ルールを設定しているケースが多いです。そこにTeamsのファイルへのショートカットを加えることで、従来のアクセス方法を維持しつつ、重要なドキュメントを一元管理できます。
2. アクセス先の混乱を防止
新たにTeamsを導入すると、「どちらの場所に最新ファイルがあるのか分からない」という声が出がちです。ショートカットによってSharePointとTeamsをつなぐことで、利用者は慣れ親しんだSharePointのフォルダから、シンプルにTeams上のファイルへアクセスできます。
3. コミュニケーションとファイル共有の融合
Teamsはチャットや会議機能などコミュニケーションに強みがあります。一方で、SharePointはファイルのバージョン管理やセキュリティ設定など情報基盤として優秀です。ショートカットを使うことで、両方の長所を活かした業務運用が可能になります。
TeamsファイルへのショートカットをSharePointに追加する手順
本題の手順をステップバイステップで紹介します。ここではWHS委員会用のTeamsチャンネルを例として、該当チャネルのファイルを既存のSharePointライブラリ上のフォルダからアクセスできるようにする流れを解説します。
ステップ1:TeamsチャンネルのファイルをSharePointで開く
まず、Teamsの該当チャネルに移動し、「ファイル」タブを選択します。ファイルが一覧表示される画面で、「SharePointで開く」(Open in SharePoint)というボタンをクリックしてください。すると、ブラウザで当該チャネルに対応するSharePointサイトのドキュメントライブラリが表示されます。
ポイント:
- このドキュメントライブラリはTeamsと連携しているため、Teamsのチャネルごとにフォルダが作成されています。
- もし「SharePointで開く」ボタンが表示されない場合、権限やUIの変更が原因かもしれません。メニューの「…(その他)」などを探してみてください。
ステップ2:TeamsのフォルダやファイルをOneDriveにショートカット登録する
次に、SharePoint上に表示されたTeamsのフォルダまたは個別ファイルを選択し、「OneDriveにショートカットを追加」(Add shortcut to OneDrive)をクリックします。これで個人のOneDrive上に、該当フォルダ(またはファイル)へのショートカットが作成されます。
よくある疑問:
- 「組織のSharePointに直接ショートカットを作成できないの?」 残念ながら現状、フォルダやファイルへのショートカットを直接SharePointに置く機能は限定的です。多くの場合、まずOneDriveを経由してショートカットを作成する方法が一般的です。
- 「OneDrive上に作成されたショートカットはどこに見えるの?」 自分のOneDriveを開くと、フォルダと同等の場所にショートカットが表示されます。アイコンなどで区別される場合もあります。
ステップ3:OneDrive上のショートカットをSharePointにリンクとして追加
OneDrive上で作成されたショートカットを右クリックまたはチェックして「共有」(Share)メニューを開き、共有用のリンクをコピーします。このリンクこそが、Teams内ファイルへのアクセスURLとして利用できるものです。次に、会社のSharePointサイトへ移動して、以下のような方法でリンクを設置します。
- Quick Links(クイックリンク)ウェブパーツを使う方法 SharePointサイトのホームページや特定のページを編集し、Quick Linksウェブパーツを追加します。そして「リンクを追加」→「リンクを貼り付け」で、先ほど取得した共有リンクを設定します。これにより、ページ上のクイックリンクから直接Teamsのフォルダやファイルにアクセスできるようになります。
- ドキュメントライブラリにリンクを追加する方法 既存のSharePointドキュメントライブラリに移動し、「新規」→「リンク」を選択します。リンク先にコピーしたURLを貼り付け、表示名をわかりやすい名前にして保存します。これにより、ドキュメントライブラリのアイテム一覧にショートカットが追加されます。
メリット・デメリットの整理
メリット | デメリット |
---|---|
・既存のフォルダ構造にリンクを置ける ・複数の従業員に簡単に共有可能 ・TeamsとSharePointの両方に慣れる必要がない | ・ショートカットのリンク先は作成者個人のOneDriveに依存 ・個人のアカウントが無効化されるとリンク切れのリスク ・作業フローが複数段階となり、多少煩雑 |
ショートカット管理における権限とリスク
個人OneDrive経由が抱える問題点
この方法で作成したショートカットはあくまでも「作成者の個人OneDrive」に置かれています。もし作成者が退職したりアカウントが削除されたりすると、その個人OneDriveもアクセス不能になり、リンク自体が使えなくなる恐れがあります。
組織アカウントの活用
継続して管理が必要なショートカットの場合、組織用の共有アカウント(例えば部署共通アカウントや部門リーダーが管理するアカウント)を利用するのも一案です。チーム全体で使用するアイテムは、特定の個人ではなく組織アカウントが所有者となると、退職や異動の影響を軽減できます。
権限の明確化とバージョン管理
TeamsとSharePointを連携する際は、アクセス権限の重複や意図しない公開範囲の拡大に注意が必要です。特に、Teamsでは「メンバー全員が編集可能」な設定になっているファイルが多い一方、SharePoint上では「閲覧のみ」としているなど、異なるポリシーが混在する可能性があります。
ショートカットを追加すると、同一のドキュメントに対してTeams経由とSharePoint経由の両方でアクセスが可能になります。したがって、バージョン管理や共同編集のルールをきちんと決めておかないと、いつの間にか内容が書き換えられていたり、以前のバージョンに戻せなくなったりするリスクもあるでしょう。
具体的な運用イメージ
ここまででショートカットの作り方やリスク管理について触れました。さらに効果的な運用イメージをいくつか紹介します。
ケース1:WHS委員会用Teamsチャンネルと既存の安全管理フォルダ
WHS(Work Health and Safety)関連ドキュメントを集中管理したい場合、まずは委員会メンバーがTeamsでコミュニケーションしながら新しいファイルをアップロードします。そのうえで、既存の安全管理フォルダ(SharePoint)にショートカットを設置しておけば、他部署やアルバイトスタッフが慣れたSharePoint経由で必要資料にアクセスできます。委員会活動が効率化されるだけでなく、安全管理ファイルの閲覧権限も一括で統制しやすくなります。
ケース2:外部パートナーとの共同作業
外部企業と共同でプロジェクトを進めるときに、Teamsを使ってチャットやビデオ会議を行う一方で、SharePointを用いて必要なドキュメントを整理することがあるでしょう。外部パートナーには一部のフォルダだけアクセスを許可し、それ以外は社内のみで管理する、といった場合でもショートカットをうまく利用することで、外部公開ファイルと社内限定ファイルをきちんと分けながら運用できます。
ケース3:社内ポータルサイトへのリンク設置
社内でポータルサイトを使っている組織では、トップページに「WHS資料」「安全管理ドキュメント」などのリンクをまとめておくことが多いです。その際、Teamsに格納したファイルへのショートカットを配置しておけば、ポータルからワンクリックでTeamsのファイルへアクセスでき、社内の混乱を避けられます。
OneDriveショートカットを長期利用するためのヒント
1. アカウント管理のルール化
組織内で退職者や異動者が出たときのアカウント管理ルールを見直しましょう。特にOneDrive上のファイル所有権の移行手順を事前に決めておくと、ショートカットが切れる事態を回避できます。Microsoft 365の管理者がユーザー退職時にアカウント引き継ぎを行うプロセスを整備しておくと安心です。
2. チームまたは共有ライブラリの活用
できる限り個人OneDriveに依存せず、チームや共有ライブラリを活用すると、長期的なファイル運用を考えたときに管理しやすくなります。例えば「部門名で作成したTeams」に対応するSharePointサイト上のライブラリを公式の格納先とし、そこにショートカットを集約する運用などが挙げられます。
3. 適切な共有リンク設定
ショートカットのリンクを作成するときに、アクセス権や有効期限をどう設定しているかにも注意します。「組織内のユーザーのみ」や「特定ユーザーのみ」など共有リンクのオプションを誤って設定すると、リンクをクリックしてもアクセスできない、または社外に不要に公開されてしまう恐れもあります。
運用上のベストプラクティス
ベストプラクティス1:ファイル構造の見直し
Teamsチャンネルのドキュメントは、SharePoint上では「Document Library」の中のフォルダとして管理されています。ショートカットを追加する前に、どの階層で管理するか、どのように権限を分けるかを再点検しましょう。組織のポリシーに合わせて「読み取り専用」「編集権限あり」などを適切に振り分けると、不要なトラブルを避けられます。
ベストプラクティス2:情報発信の徹底
TeamsだけでなくSharePointも並行して利用している場合、ユーザーに対して「どこを見れば最新情報が得られるのか」をしっかり周知する必要があります。トップページや定期的な社内メールで、リンクの場所や使い方、問い合わせ先を案内すると利用がスムーズになります。
ベストプラクティス3:ライフサイクルポリシーとRetention
Microsoft 365にはRetentionポリシー(保持期間ポリシー)やライフサイクル管理の機能があります。一定期間が経過したドキュメントを自動でアーカイブする、あるいは完全に削除する、といった設定が可能です。TeamsのファイルとSharePointのファイルがショートカットでつながっている場合でも、このポリシーの適用範囲を考慮し、リンク切れを起こさないように設計することが重要です。
よくある質問と回答
Q1: 個人のOneDriveに依存せずに、直接SharePointでショートカットを作れないの?
A: 現在のMicrosoft 365の標準機能では、フォルダやファイルへのショートカットを直接SharePoint内に作る機能は限定的です。多くの場合、「OneDriveにショートカットを追加」→「SharePointにリンクを配置」の手順が推奨されています。
Q2: ショートカットを作成した個人が退職したらリンクはどうなる?
A: 退職後にその個人のOneDriveが削除されれば、リンクが切れる可能性が高いです。長期的に運用する場合は、組織アカウントを活用したり、退職時のアカウント移行手順を整えるなどの対策を講じましょう。
Q3: ショートカットではなく、TeamsファイルをSharePointフォルダにコピーする方法は?
A: 物理的にファイルをコピーする方法もありますが、バージョン管理や共同編集の面で混乱を招くリスクがあります。ショートカットに比べて重複が生まれやすくなるため、運用ルールを明確にしてから実施すべきです。
まとめ:運用ルールを明確にして活用を
TeamsのファイルをSharePoint上のフォルダからアクセス可能にするショートカットは、社内の情報共有をスムーズにし、利用者の混乱を抑える有効な方法です。しかし、個人OneDrive経由という性質上、作成者のアカウントの状況や権限設定によってリンクが消失してしまうリスクがあります。運用期間や利用範囲、組織内のアカウント管理ポリシーなどを踏まえた上で、最適な管理方法を検討してください。
最終的には、TeamsとSharePointで整理されたファイル構造を作り上げ、ユーザーが自然に必要な情報へアクセスできる環境を用意することが大切です。職場の業務効率を大幅に向上させるだけでなく、情報セキュリティやバージョン管理の観点でも、適切な連携が運用されることで組織全体のデジタル基盤がより強固になります。
ぜひ今回紹介した方法や注意点を参考に、あなたの組織でもTeamsとSharePointをフルに活用し、スムーズな情報共有体制を構築してみてください。
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