uBlock Origin 2025年、最新互換性情報と高度な広告ブロック活用ガイド

近年、広告ブロッカーとして名高い「uBlock Origin」はブラウザの制約や拡張機能仕様の変更を踏まえ、精力的なアップデートを重ねています。Chrome系でのManifest V2廃止問題やFirefoxでの高度な機能活用など、多彩な動きがある現状を分かりやすくまとめました。

uBlock Origin最新バージョン(v1.62.0)の概要

uBlock Originの最新安定版は「v1.62.0」で、2025年1月1日にリリースされました。今回のアップデートではフィルタ処理の正確性を高める細かな改良やバグ修正が多数含まれ、以下のような機能拡充が話題になっています。

  • スクリプトレット(フィルタ用スクリプト)の機能強化・最適化
  • 新しいフィルタリスト記法への追加対応({ remove: true }で要素除去指定など)
  • URLスキップ用フィルタオプション(urlskip=)のパラメータ拡張

またUIの大きな変更はありませんが、内部的にはより効率的かつ強力な広告・トラッキングブロックを実現するための微調整が積み重ねられています。特にEasyListなどの主要フィルタリストとの連携が進んだこともあり、日常的なウェブ利用でさらに快適な動作が期待できるでしょう。

個人的には、要素除去構文の柔軟性が増した点に注目しています。設定次第で広告だけでなく、気になるサイト要素をよりスッキリさせられるのは嬉しいですよね。

最近の主な機能追加・変更点

フィルタ更新の効率化

2023年リリースのv1.54から「差分アップデート(デルタアップデート)」が採用され、フィルタリスト更新時に変更分のみの取得が行われるようになりました。これにより通信量が大幅に削減され、より頻繁にフィルタリストを更新して最新のブロックルールを取り込めます。

差分アップデートのおかげで無駄なデータをダウンロードしなくて済み、通信環境が限られている場所でも頻繁にリストを更新できる点が魅力的です。

CNAMEトラッカー対策

2020年2月公開のv1.25で導入された「CNAMEアンチクローキング」機能により、サブドメインを用いたトラッキングを見破ってブロックできるようになりました。FirefoxのDNS APIを活用することで、偽装されたファーストパーティの実際のホスト名を解決し、遮断します。

ただしChromium系ブラウザでは同等のDNS機能が使えず、CNAME対策が行えない点は大きな弱点です。

IPアドレスによるフィルタリング

2024年9月のv1.60.0よりipaddress=オプションが加わり、ホスト名のDNS解決結果(IPアドレス)をもとにブロックできるようになりました。これにより特定のサーバー群をまとめて遮断するなど、より柔軟な運用が可能です。しかし、Firefox版と違いChromium系では拡張機能側からDNS情報を完全に取得できないため、URLに直接IPが記載されている場合を除いて利用が限定的です。

HTML/レスポンスの直接フィルタ

uBlock Originはネットワークレベルを越え、ページのHTML内容そのものを解析・書き換える機能も持っています。たとえばreplace=ルールを用いてレスポンス本文を書き換えるなど、より高度なコンテンツ制御を実現するものです。しかしChromiumブラウザのAPI制限によって、こうした機能はFirefox版のみフル活用できます。

不要機能の整理

ブラウザの進化に合わせて、uBlock Originは冗長なコードの定期的な廃止を実施しています。その一例が、かつて搭載されていた「WebRTCによるIPアドレス漏洩防止」機能。主要ブラウザで同様の対策が進んだため、PC版ではv1.38で削除されました。これによってプログラムが軽量化され、保守性も向上しています。

パフォーマンスと効率の向上

uBlock Originは初期から「軽量で高速」という評価を得てきました。動的に必要なスタイルシートだけを生成し、フィルタリング情報をキャッシュに保存してブラウザ起動時の負荷を軽減するなど、多数の工夫が施されています。ある研究では、uBO使用によりページ読み込み時間が平均28.5%短縮されたという報告もあります。

広告をブロックするだけでなく、ページの描画速度が上がるおかげでバッテリー消費を抑えられるのも嬉しいポイントですね。ノートPCやモバイル端末での利用者には特に恩恵が大きそうです。

ブラウザ互換性の最新状況

uBlock OriginはFirefoxやChromeなど主要ブラウザ向けに提供されている一方、各ブラウザの拡張仕様の違いによって機能面で大きな差が生じています。特にGoogle ChromeなどのChromium系ブラウザではManifest V2の廃止が進み、uBO本体のサポートに深刻な影響を及ぼしています。

Chrome / Edge(Chromium系ブラウザ)

GoogleはManifest V2の廃止を決定し、2024年以降段階的にMV2拡張を無効化しています。Chromeバージョン127では拡張機能管理ページに「まもなくサポート終了予定」の警告が表示され始め、ユーザーが気づかないうちにuBlock Originが無効化されるケースも増えてきました。さらに2025年にはChromeウェブストアからuBlock Origin自体が削除され、多くのユーザーが強制的に「サポートされていない拡張機能」として使えない状態に置かれています。

ChromeがuBlock Originを完全に排除する流れは継続中で、再インストールや更新なども不可能になるケースが出始めているのが現状です。

このような状況を受け、uBlock Originの開発者はManifest V3向けの「uBlock Origin Lite(uBOL)」をリリースしています。これはMV3の制限下で広告ブロックを可能にした“軽量版”ですが、下記の表にあるように機能差が大きいのも事実です。

機能uBlock Origin (MV2版)uBlock Origin Lite (MV3版)
動的フィルタ、カスタムルール自由に追加・編集可能制限あり(手動での細かい設定不可)
フィルタリスト更新拡張機能内から自動チェック・更新拡張機能のアップデート時のみ反映
HTMLレスポンスの書き換えFirefoxでのみフル対応(Chromium系は制限)Manifest V3の制約により実質不可
CNAMEアンチクローキングFirefox版でのみ有効MV3では不可

たとえばではフィルタリスト自動更新が行えず、ユーザーが常時最新のブロックリストを使えるとは限りません。開発者も「uBlock Origin Liteはあくまで最低限の広告ブロックを確保するためのもので、完全な代替にはなり得ない」としています。なお企業向けには一時的にMV2拡張を維持できるポリシーが用意されていますが、一般ユーザーには適用されず、今後はChromium系ブラウザで従来のuBlock Originを使い続けるのは難しいと考えられます。

BraveやVivaldiなど一部Chromium派生ブラウザは独自パッチでManifest V2拡張を残そうとしていますが、いつまで互換性を完全維持できるかは不透明な点が多いですね。

Firefox

Firefoxでは大きな制限や互換性問題は生じていません。MozillaはManifest V2を廃止せず、uBlock Originのような拡張機能の制作者に対し、自由度の高い開発が可能な環境を維持しています。実際、CNAMEクエリやHTML書き換えなど、他のブラウザで難しい機能もFirefox版ならフル活用できるのが強みです。

Firefox版uBlock Originは依然として多機能で動作も軽く、最も完成度が高いブロック性能を発揮すると言われています。

開発者Raymond Hill氏も「uBlock Originを使うならFirefoxが最適」と明言しており、Chromium系でのMV2廃止の影響を受けたユーザーがFirefoxへ移行する動きも活発化しています。

Safariその他

一方、AppleのSafariでは2019年以降の拡張仕様変更に伴い、uBlock Originが正式に対応を打ち切っています。過去のバージョン向けに作られた非公式フォークもありますが、最新版Safariでは制約が大きく、実質的にuBlock Origin同等の機能は期待できません。iOS版ブラウザ(内部はSafariエンジン)でも同様で、uBlock Originは利用できないため、AdGuard for Safariなどの別製品を使うのが現実的とされています。

Safari側は独自の「内容ブロッカー」API以外を許可していないため、uBlock Originのような高度なカスタム機能は実装が困難です。

開発者のコメントと今後の展望

uBlock Originの開発者Raymond Hill氏は、GoogleがManifest V3に移行することについて「uBlock OriginをMV3に最適化して作り変えるつもりはない」と明言しています。すでにLite版(uBOL)が存在するものの、あくまで機能限定版で、元のuBOと同等の体験を提供することは不可能とのことです。ユーザーには次のような選択肢が提案されています。

  • Firefoxに切り替え、従来のuBlock Originを引き続き活用する
  • Manifest V2サポートを延長するChromium派生ブラウザ(Brave等)を使う
  • それが難しい場合は、uBlock Origin Liteや他の内容ブロッカーを検討する

私としては、Chromeの便利さを捨てきれない人が多いことも理解できます。しかし広告をブロックしてプライバシーを保護したいなら、早めにFirefoxへ移行するのは大いにありだと思います。

uBlock Origin自体は今後もアクティブに開発が続けられます。特にFirefox版やManifest V2の柔軟性を残すブラウザで、新機能の追加や軽量化が行われる見通しです。ユーザーとしては、各ブラウザの方向性や拡張機能の方針を理解したうえで、最適な環境を選ぶことが重要になってくるでしょう。

まとめ

uBlock Originは依然として最強クラスの広告ブロック・トラッキング対策拡張ですが、Google Chromeを中心とするManifest V2廃止の影響で、Chromium系ブラウザでは近い将来満足に使えなくなる可能性が高まっています。一方、Firefox版は引き続き高度なフィルタリング機能を保ち、今後も安定してアップデートが提供される見込みです。

もし「快適なウェブブラウジング」と「高度なトラッキングブロック」を両立したいなら、ブラウザの乗り換えも検討するのが賢明です。あるいはMV3対応の“Lite版”を割り切って使う選択肢もありますが、uBOの持つ豊富なカスタマイズ性は失われる点を認識しておきましょう。ぜひ本記事を参考に、ご自身の使い方に合ったブラウザと拡張機能を選んでみてください。

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