OneDriveのフォルダをWindowsエクスプローラーで手軽に操作したい、そんなときにネットワークドライブとして割り当てる方法を探した経験はありませんか。従来のCIDを利用した方法が利用できず、お困りの方も多いはずです。ここでは、その背景や代替策、実践的な手順までじっくり解説します。
OneDriveをネットワークドライブとしてマッピングする背景
OneDrive(特にOneDrive for BusinessやSharePoint)をエクスプローラー上でネットワークドライブとして扱いたいと考えるシーンは少なくありません。ファイルをドラッグ&ドロップでまとめてコピーしたり、業務用のファイル検索を便利にしたりする目的で、ネットワークドライブとしてマッピングする発想は自然なものです。ところが、以前存在した「CIDを使ったマッピング」の方法が現在は使えなくなり、戸惑うユーザーも多くなってきました。
なぜマッピングを希望するのか
ネットワークドライブとして扱う利点は、従来のファイルサーバーと同様に操作できる点にあります。多くのユーザーがWindows環境でエクスプローラーに慣れており、ファイルサーバーの時代からドライブ文字に割り当てて共有フォルダを参照するのが常識だったからです。OneDriveに移行してクラウド化が進んでも、「エクスプローラーでドライブ文字を振りたい」というニーズは根強く存在します。
従来のCIDマッピングとは
かつて、個人向けのOneDrive(旧Skydrive)をWebDAV経由でマッピングする裏技的な方法が紹介されていました。それにはOneDriveのURLに含まれる「CID=○○○」の値を使い、Windowsの「ネットワークドライブの割り当て」機能でWeb上のフォルダを仮想ドライブとして扱うという手順がありました。しかし、OneDrive for BusinessやSharePoint OnlineではURL構成が異なり、CIDを簡単には確認できません。また、セキュリティやアーキテクチャの変化に伴い、現在は正式にサポートされておらず問題が多いのが現状です。
具体的な事例
以前、個人用OneDriveのURLが「https://onedrive.live.com/?cid=○○○…」のようになっていた時代に、このCIDを取り出して「https://d.docs.live.net/○○○」とすることでWebDAV接続を行い、Oドライブなどへ割り当てるという技が広まったことがありました。社内のIT担当者がこの方法に習ってOneDrive for Businessに挑戦すると、URLが「https://[組織名].sharepoint.com/」になっていてCIDらしきものが見当たらず、立ち往生するというパターンをよく見かけます。
OneDrive for Businessをマッピングできない理由
OneDrive for BusinessはSharePoint Online上に構築される仕組みです。そのため、個人向けOneDriveとはシステム基盤が異なり、WebDAVによるマッピングは公式にはサポートされていません。仮にWebDAV接続を試みたとしても動作が不安定だったり、Microsoftサポートが対象外としたりするケースが多いです。
セキュリティ面から見た制約
クラウドサービスはユーザー認証やアクセス制御が強化されており、シンプルなWebDAV接続だけではセキュリティ要件を満たせないことがあります。多要素認証を設定している場合などは、Windowsのネットワークドライブとして接続する際に認証がクリアできず、エラーを起こしやすいです。これは企業規模で利用するOneDrive for Businessならではの問題と言えます。
IT部門の管理上の懸念
企業のIT部門がOneDrive for Businessを運用する場合、ユーザーが各自で勝手にネットワークドライブに割り当てることを認めてしまうと、管理やトラブル対応が煩雑になります。バージョン管理や共有設定、リアルタイムのコラボレーションなど、OneDriveのクラウド機能が本来の能力を発揮しづらくなるリスクも見逃せません。
では代替策はあるのか
結論から言うと、公式にサポートされている方法は「OneDrive同期クライアント」を使うことです。これは多くのユーザーが「ネットワークドライブ」としてではなく「ローカルフォルダ」としてOneDriveを扱う形になります。
OneDrive同期クライアントを使うメリット
ローカルフォルダとしてアクセス
OneDrive同期クライアントをインストールしてサインインすると、ローカルPCのユーザーフォルダに「OneDrive – 組織名」といった形のフォルダが作成されます。エクスプローラー上では通常のフォルダと同じように扱えて、ドラッグ&ドロップも可能です。ネットワーク上のフォルダという意識をあまり持たずに使えるため、多くのユーザーにとってはこちらの方が扱いやすいと言えます。
自動同期によるバックアップ的な安心感
OneDrive同期クライアントはクラウドとローカルを自動で同期してくれるため、クラウド上にデータが保存される安心感があります。ローカルPCが万が一故障しても、OneDrive上にデータが残っていれば復元が簡単です。逆にクラウド上に誤って削除してしまった場合でも、バージョン履歴を利用してある程度の復元が可能です。
同期クライアントを利用する際の注意点
ローカルストレージの容量に注意
OneDriveの容量が大きい場合や多数のフォルダを同期する場合、ローカルPCの容量を圧迫してしまうことがあります。必要に応じて「ファイルオンデマンド」機能を活用し、本当に必要なファイルだけをオフラインで保持する設定にしておくとよいでしょう。
同期トラブルが起きる可能性
大きなファイルや大量のファイルを同期する場合、途中でインターネット回線の状態が不安定だとエラーが発生するケースがあります。エラー時に回復を待つか、対象ファイルを一度同期対象から除外するといった対応が必要になるかもしれません。とはいえ、普段使いでは安定しており、Microsoftも公式に推奨している方法なので安心感は高いです。
実際に同期クライアントでOneDriveを使ってみる
ここからは具体的な設定手順を簡単にご紹介します。企業向けのMicrosoft 365を利用している場合は、IT部門の指示に従うこともあると思いますが、基本的な流れは個人利用でも同じです。
STEP 1: OneDriveアプリのインストール
Windows 10以降であれば、標準でOneDriveアプリが組み込まれていることが多いです。もし見当たらない場合は、Microsoft公式サイトからOneDriveをダウンロードしてインストールします。インストールが完了したら、スタートメニューに「OneDrive」というアプリが登録されているはずです。
インストール時のポイント
もし既にOffice製品がインストールされているPCであれば、OneDriveが含まれている場合があります。重複インストールにならないように、まずはバージョンを確認しましょう。新しいバージョンを入れることで機能が更新されるケースもありますので、古いOneDriveクライアントを使っている方はアップデートを検討してみてください。
STEP 2: OneDriveへのサインイン
インストールが完了したら、OneDriveアプリを起動し、組織のMicrosoft 365アカウント(もしくは個人向けMicrosoftアカウント)でサインインします。組織によっては多要素認証(MFA)が求められるかもしれませんが、その場合は指示に従って認証作業を行います。

以前、私の勤務先でも多要素認証が導入されましたが、スマホアプリで認証コードを受け取るだけなので慣れてしまうと手間には感じませんでした。セキュリティ意識が高い会社だと当たり前になりつつありますね。
STEP 3: 同期するフォルダの選択
OneDriveを初めてセットアップするときは、同期するフォルダやライブラリを選択できます。全部同期するか、一部のフォルダだけを同期するかは自由に決められます。PCの容量が限られているならば重要なフォルダだけに絞るのがおすすめです。
ファイルオンデマンドの活用
ファイルオンデマンドは、クラウド上のファイルを必要に応じてダウンロードし、PCに保存されていないファイルもエクスプローラー上で見えるようにする機能です。オンデマンド設定が有効になっていると、アイコンでステータス(オンラインのみ、ローカルにある、常に保持)を判別できます。
代替策としてマッピングを試す場合の注意
公式には推奨されないものの、どうしてもネットワークドライブのようにマッピングしたい場合、WebDAVの仕組みを利用して一時的に接続を試すことは可能です。ただし、各種エラーが多発したり、大量のファイルを扱うと動作が不安定になるなど、運用面でのリスクがあります。サポート対象外となるケースが多いことも理解しておきましょう。
WebDAVでの仮設定例
下記は一般的に知られるWebDAV接続のコマンド例です。OneDrive for Businessの環境にそのまま適用できるとは限りませんが、参考用としてご覧ください。
net use O: "https://[組織名].sharepoint.com/サイトURL/ドキュメント名" /user:[ユーザー名] [パスワード]
ただし、実際は認証方式やURLの構成が組織ごとに異なるため、上記の形式でうまく行かないことが大半です。特に多要素認証を導入している場合は、IDとパスワードだけではログインできない仕組みになっています。さらにSharePoint側のポリシーによって、WebDAV経由のアクセスが制限されている可能性もある点に注意が必要です。
表で見る「マッピング」と「同期」の比較
ここでは、ネットワークドライブマッピングとOneDrive同期クライアントの特徴を比較するために簡易的な表を用意しました。あくまで一般的な傾向ですが、検討時の参考にしてください。
項目 | ネットワークドライブマッピング | OneDrive同期クライアント |
---|---|---|
設定の難易度 | 非推奨でトラブルが多発しやすい | 公式サポートあり、手順がシンプル |
オフライン利用 | 接続が必要で基本的に不可 | ローカルにファイルを保存しオフラインでも可 |
セキュリティ | 組織ポリシーによっては制限大 | Microsoft推奨のセキュリティが機能 |
操作性 | 従来の共有フォルダ感覚だが不安定 | ローカルフォルダとして扱え、安定性が高い |
ファイルオンデマンド | 利用できない | 利用できる |
要望やフィードバックを積極的に送ろう
OneDriveをネットワークドライブとして利用できるようにしてほしいというユーザーの声は少なからず存在します。今後、Microsoftが要望を汲み上げて機能を刷新する可能性も否定できません。もしこの機能が復活してほしい、あるいはより便利な仕組みが欲しいという方は、OneDriveアプリのフィードバック機能やMicrosoftのユーザーフォーラムなどに積極的に意見を投稿しましょう。
IT担当者としての提案
企業や組織のIT担当者であれば、ネットワークドライブのマッピングにこだわるよりも、OneDrive同期クライアントを使った運用をユーザーに案内するほうがトラブルは圧倒的に少なくなります。加えて、ファイルオンデマンド機能をうまく活用すればオフラインとオンラインを意識せずに業務が可能になり、利便性が向上するはずです。
グループポリシーでの管理例
組織内でWindows端末を管理している場合、グループポリシー(GPO)などを使ってOneDriveの設定を一括で行うことができます。自動的にOneDriveへサインインする、フォルダごとに同期の対象を指定するなどの制御が可能なので、社内規程に合った運用ルールを作りやすくなるメリットがあります。
オフラインでの利用をもっと活用するには
実は、ネットワークドライブでなくともオフラインでファイルを参照できる点こそ、OneDriveの強みです。インターネットに接続できない環境でもすぐにドキュメントを確認したり、編集を行ったりできるので、外出先や出張中に作業をしたいときに非常に重宝します。
スマホやタブレットとの連携
OneDriveの魅力はPCだけにとどまりません。スマートフォンやタブレット向けにも公式アプリが用意されており、同じアカウントでサインインするだけで、ほぼリアルタイムにファイルを共有できます。出先で受け取ったファイルを編集し、そのまま自宅のPCで続きを作業するといったことが容易に行えます。
執筆者からのひとこと



私自身、以前はどうにかしてOneDriveをネットワークドライブとしてマッピングできないかと、あれこれ模索した経験があります。最終的には同期クライアントを使う運用に落ち着きましたが、慣れるとこちらの方が断然便利でした。とはいえ、確かにドライブ文字を振っておきたい気持ちは分かるので、Microsoftが将来的にアップデートしてくれるといいですね。
まとめ
OneDrive(特にOneDrive for Business)をネットワークドライブとしてマッピングする方法は、現在では非推奨かつサポートもされていないのが実情です。従来のCIDを使ったやり方も利用できなくなっており、無理にWebDAV接続を試みるとセキュリティや運用の面で大きなリスクを伴います。一方で、OneDrive同期クライアントを使ってローカルフォルダとして扱う方法は公式にサポートされており、オフライン利用やファイルオンデマンドなどのメリットが得られます。企業規模であればグループポリシーで一元管理する方法もあり、個人利用であってもセットアップは意外と簡単です。
もし本格的にネットワークドライブとして使えるようになることを望むのであれば、Microsoftへのフィードバックを通じて要望を発信し続けるのが近道かもしれません。現時点では、同期クライアントの導入がトラブルなく利用するための最適解と考えられるでしょう。
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