Microsoftが提供する新しいOutlookでは、従来のクラシックOutlookで利用できた「File(ファイル)」タブがなくなったことが大きな話題を集めています。メール形式変更やPSTインポートなど、ファイルタブで設定していた機能を探すユーザーも少なくありません。ここでは、その疑問や対処法をわかりやすく解説します。最新バージョンのOutlook on the webやプレビュー版Outlookを使い始めたら、まず知っておきたいポイントをしっかりまとめました。
新しいOutlookで「File」タブが見当たらない問題
新しいOutlook(Windows用プレビュー版やOutlook on the web)では、従来のクラシックOutlook(Officeに付属しているデスクトップ版Outlook)に存在した「File(ファイル)」タブが廃止されています。多くのユーザーが「Import/Exportの操作はどこ?」「メール形式を切り替えるのにFileタブを押したいのに見つからない!」と戸惑いがちです。ここでは、そうした疑問への回答や、具体的な対処法を詳しく解説していきます。
なぜ「File」タブが廃止されたのか
新しいOutlookでは、よりシンプルなUIとクラウド連携を前提とした設計に移行しています。たとえばOutlook on the webは、ブラウザベースで動作するサービスであり、ローカルのファイル操作や高度なオプション設定を大幅に簡略化しました。またWindows用の新プレビュー版Outlookも、クラシックなリボンメニューを廃止し、ブラウザ版Outlookに近い操作体系を採用しています。
そのため、「File」タブに集中していた多くの機能がほかのメニューに再配置されたり、まだ未実装の状態だったりします。特にPSTのインポート/エクスポートや詳細なエディターオプションなどは、デスクトップ版Outlook固有の機能という位置づけになっており、新Outlookでは一部サポートされていません。
「File」タブを使うためのクラシックOutlookへの切り替え方法
新しいOutlookを使っている環境でも、Microsoft 365(旧Office 365)のサブスクリプションやOffice製品をインストールしていれば、従来のクラシックOutlook(デスクトップ版)に切り替えられる場合があります。
- 新Outlookの画面右上、または「Help(ヘルプ)」「? アイコン」のメニューなどに「Go to classic Outlook(クラシックOutlookに戻る)」というオプションがあることが多いです。
- クリックすると、従来のリボンメニューが存在するクラシックOutlookに戻せます。
- ただし、環境によっては切り替えが無効になっている、またはインストールされていないために使えないケースもあります。
もし切り替えボタンが見当たらない場合は、そもそもクラシック版のOutlookが入っていない可能性があります。その際は、Officeのデスクトップ版Outlookを導入(あるいはトライアル版を利用)するか、サードパーティ製ツールで代替するしかありません。
「File」タブがないときの主な対応策
新しいOutlook(またはOutlook on the web)で「File」タブの操作をしたい場合、以下のような代替策が考えられます。
- 設定やオプション項目を探す
- 画面上部の「View(表示)」「Options(オプション)」などのメニューに移動している場合が多い
- メール作成ウィンドウを開いたときの「Editor Options(エディターオプション)」などをチェックする
- クラシックOutlook(デスクトップ版)で行う
- PSTファイルのインポート/エクスポート、詳細なメール形式設定、テンプレート(.oft)の作成など、多くの機能は旧Outlookの「File」タブから実行できる
- 必要なときだけクラシックOutlookに切り替えて作業する
- 代替ツールやブラウザ機能を利用する
- PSTファイルの閲覧・変換はサードパーティ製のビューアやコンバーターを使う
- ポップアップの許可などはブラウザの設定から変更
- 機能追加・改善が行われるのを待つ
- 新しいOutlookはアップデートが頻繁に行われているため、将来的に従来の機能が追加される可能性あり
- 公式ドキュメントやアップデート情報を追ってみる
下表に「クラシックOutlookでできること」と「新しいOutlookの対応状況」をまとめました。
┌─────────────────────────┬───────────────────────────────────────────┐
│ 機能 │ 新しいOutlookでの対応状況 │
├─────────────────────────┼───────────────────────────────────────────┤
│「File(ファイル)」タブ │ 廃止。代替は「View」「Options」などに分散 │
│PSTファイルのインポート/エクスポート │ 未実装。クラシックOutlookかサードパーティツールを利用 │
│メール形式変更(HTML/テキストなど) │ 「Message」「Options」タブ等で一部のみ可能 │
│予定表の既定時間変更(30分→60分など) │ 「View settings」の時間スケール調整のみ。完全設定不可 │
│テンプレート(.oft)の保存・読み込み │ 未実装(ドラフトやアドインなどで代替手段のみ) │
│Teams会議の作成(アドイン) │ ビジネスアカウント向けに限定的。個人用アカウントは非対応の場合あり │
└─────────────────────────┴───────────────────────────────────────────┘
新しいOutlookでよくある操作と回避策
ここからは、具体的な機能別に「新しいOutlookだとどこに行けばいいか」「そもそも新しいOutlookではできないのか」などを詳しく見ていきます。
メール形式をHTMLに戻したい
長年Outlookを使っている方から特に多いのが、メールの作成形式に関する質問です。「以前はFileタブのOptionsからHTML形式に変更していたが、新しいOutlookでは見当たらない」という声がよくあります。
クラシックOutlookの場合
従来のデスクトップ版Outlookでは、File(ファイル) > Options(オプション) > Mail(メール)
という階層の中で、「メッセージの作成形式」をHTML・テキスト・リッチテキストなどに切り替えられます。必要に応じていつでも変更が可能でした。
新しいOutlookの場合
- 新しいメール作成画面を開く
- 画面上部のリボン(またはツールバー)で「Message」もしくは「Options」タブを選択
- 「Switch to HTML」「Editor Options」などの項目を探して切り替える
- 一部の環境では、「View > Layout > Classic View」のようにビュー設定を変えるとエディターオプションが見つかるケースもある
環境によって表示項目の名前が少し異なるため、各メニューを根気よく探してみるのがコツです。また、完全なエディターの細かい設定(フォントや文字サイズなど)はブラウザ版Outlookだと限定的なことが多く、クラシックOutlookほど柔軟ではない点に注意が必要です。
既定の貼り付け(ペースト)設定を変更したい
WordやExcel同様、Outlookでもペースト時の書式をどうするか(テキストのみ、元の書式を保持など)を細かく設定できます。クラシックOutlookでは「File > Options > Mail > Editor Options」の中に豊富な貼り付け設定がありました。
しかし、新しいOutlookではこれらのオプションが統合・簡略化されており、詳細な貼り付け動作をカスタマイズする項目が見当たらない場合があります。どうしても必要な場合はクラシックOutlookを利用するか、以下の回避策を試してみましょう。
- Windowsのシステム全体でクリップボード動作を調整する
たとえば「Win + V」キーでクリップボードヒストリーを呼び出すなどの機能を活用し、一時的にテキストのみのペーストを行う - サードパーティ製のユーティリティツールを使う
クリップボード管理ソフトを導入すると、貼り付け時に書式を自動的に削除できる
ポップアップブロックを解除したい
新しいOutlook on the webを使っているとき、特定の操作でブラウザのポップアップがブロックされてしまい、添付ファイルのダウンロードや外部サイトへのアクセスがうまくいかないことがあります。
クラシックOutlookでは、アプリ内の設定で制御できた部分もありましたが、Outlook on the webではブラウザ側の「ポップアップブロック」設定に依存します。
- Microsoft Edgeの場合
- 右上の「…」(設定)メニューから「設定」をクリック
- 「Cookie とサイトのアクセス許可」や「プライバシーとセキュリティ」項目でポップアップを制御
- Google Chromeの場合
- 右上の「…」(カスタマイズとコントロール)から「設定」を開く
- 「プライバシーとセキュリティ」→「サイトの設定」→「ポップアップとリダイレクト」
- Outlookのドメインを許可リストに追加
このように、「File」タブの代わりにブラウザの設定をカスタマイズする必要がある点が、旧Outlookとの大きな違いと言えます。
受信トレイ上部の「件名+前後の矢印ボックス」を消したい
新しいOutlookでは、UI上部に簡易的なツールバーやメッセージの選択補助ツールが追加され、受信トレイのスペースがやや狭く感じる場合があります。特に「件名の右側に矢印が表示され、メールを前後に切り替えられるボックスが邪魔」という声があります。
クラシックOutlookなら「View > View settings」からかなり柔軟にリストの表示をカスタマイズできますが、新しいOutlookでは完全に非表示にできない要素が存在します。
現時点でできる回避策は、レイアウトや表示モードを変更して最小限の表示に抑える程度です。
- 「View」タブの「Layout(レイアウト)」を開き、できる範囲でカラム配置やプレビューウィンドウをカスタマイズ
- 画面幅を狭めたり拡大したりしてレイアウトが変わるか確認
PSTファイルのインポート/エクスポートをしたい
PSTファイルはOutlookのデータファイルとして、メールや予定表、連絡先などをまとめてやり取りするときに便利です。クラシックOutlookでは「File > Open & Export > Import/Export」から簡単に操作できました。
しかし、新しいOutlookにはこの機能が搭載されておらず、メニューからPSTを扱うことはできません。以下のいずれかの方法を検討してください。
- クラシックOutlookで実施する
- PSTファイルの読み込み・エクスポートが必要なときだけ旧Outlookを起動
- 企業環境の場合は管理者に依頼してデスクトップ版Outlookを準備してもらう
- サードパーティ製ツールの利用
- PSTビューアやPSTコンバーターを使うと、データの閲覧や抽出が可能
新しいOutlookやOutlook on the webは、よりクラウド主体の運用を想定しているため、ローカルのPSTファイルを直接操作する仕組みは基本的に提供されていません。
予定表の既定の予定時間を30分から60分に変更したい
クラシックOutlookなら「File > Options > Calendar(予定表)」から既定の予定時間(デフォルトのイベント時間)を自由にカスタマイズできます。
一方、新しいOutlookではカレンダー表示の「Time scale(時間スケール)」を変更して、1時間表示にできるだけで、予定作成時の既定時間を明示的に切り替える機能が見当たりません。
- カレンダー画面で「View settings」や「Layout」を探し、「Time scale」を30分単位から60分単位に調整
- それでも新しくイベントを作成すると30分枠で開始されることがあるため、開始・終了時刻を手動で修正する必要がある
現状ではクラシックOutlookに戻すか、こまめに予定の時刻を修正する以外の明確な解決策はありません。
Outlookテンプレート(.oftファイル)を作成したい
定型文を頻繁に使う場合、.oftファイルとしてOutlookテンプレートを作成すると非常に効率的です。しかし、新しいOutlookにはこの機能が未実装もしくは制限されており、ファイルとしてテンプレートを保存することができません。
- クラシックOutlookでの方法
- 新規メールを作成して文面や件名、宛先などを設定
- 「File > Save As(名前を付けて保存)」→「Outlook Template(.oft)」で保存
- 新しいOutlookの代替策
- My Templateアドインなどを使い、簡易的な定型文を登録して呼び出す
- 保存したドラフトを複製して利用する
本格的なHTMLメールテンプレートなどを扱いたい場合は、クラシックOutlookを使うことを強くおすすめします。
Teamsアドイン(Teams会議の作成)を利用したい
新しいOutlookで「Teams会議を作成する」オプションを利用できるかどうかは、アカウントの種類(個人用かビジネス用か)や管理者設定によって異なります。
- 個人用Microsoftアカウントでは、Teams会議の作成オプションが表示されない場合が多い
- 企業アカウント(Microsoft 365 Business/Enterprise)であれば、クラシックOutlookに切り替えればTeams会議の作成機能が使える
- 新Outlookでサポートされるかは継続的にアップデート情報を確認する必要がある
もしTeams会議の作成がどうしても必要で、オプションが見当たらない場合は、クラシックOutlookまたはMicrosoft Teamsアプリ側からスケジュールを作成する方法を検討してみてください。
まとめ
新しいOutlookは、クラシックOutlookに比べてUIがシンプルになり、クラウド環境との連携を前提とした設計が特徴的です。その一方で、「File」タブに集約されていた数多くの便利機能が未実装または別メニューに移行したことで、混乱が生じています。
特に「PSTファイルの取り扱い」「メールテンプレートの作成」「予定表の詳細な既定時間設定」などはクラシックOutlookと同じようには操作できません。どうしても必要な場合は、クラシックOutlookをインストールするか「Go to classic Outlook(クラシックOutlookに戻る)」機能で切り替えて利用するのが現実的な対処法です。
将来的に新しいOutlookへ機能が追加される可能性はありますが、現状ではクラシックOutlookを併用するケースが多いようです。もし新Outlookのみで完結したいという方は、定期的にMicrosoft公式ドキュメントをチェックして、最新情報を追うことをおすすめします。
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