Outlookを起動した際に「msls70.dllが見つからない」というエラーが突然表示されると、業務に大きな支障が生じてしまいます。特に週ごとに再発するケースも報告されており、一時的に解消しても再び同じ問題が起こることが多々あります。本記事では原因と暫定対処法、そして今後の見通しを詳しく解説していきます。
Outlookの起動時に発生するmsls70.dllエラーとは
Outlookを立ち上げた際に「msls70.dllが見つからない」もしくは「msls70.dllが原因でクラッシュした」というメッセージが表示される現象は、一般的にOfficeアプリケーションのモジュール不具合やバージョン不一致によって起こりやすいトラブルの一つです。特定のタイミングで突然起こる場合もあれば、週ごと・月ごとなど定期的に再発するケースも見受けられます。原因究明や恒久的な解決策がまだはっきりしていない段階ではありますが、Microsoft側からは修正パッチが段階的に配信されているため、バージョンアップや修復対応を通じてトラブルを回避できる可能性が高いとされています。
エラー発生の背景
このエラーは、Outlookを含むOffice製品のバージョンや更新チャネルが一致していなかったり、一部のファイルが破損している際に顕在化しやすいと考えられています。Officeのライセンス認証や更新プログラムが複数回行われる中で、必要なDLLファイル(ここではmsls70.dll)が正常に更新されない、または置き換えられてしまうことで、ファイル自体が参照できなくなったり、正しいバージョンが反映されないことが主な要因です。
問題の規模と再発状況
このエラーは日本国内だけではなく、海外でも同様の事象が報告されています。一度解消された後も再発率が比較的高く、一部のユーザー環境ではOfficeを修復、あるいは再インストールしてもまた同じエラーに悩まされるケースがあります。Microsoft 365を活用する企業が増える中で、複数のチャンネル(Current Channel、Monthly Enterprise Channelなど)が存在していることも、ユーザー間でアップデート時期の差異を生み、結果として「周囲が解消されたのに自分の環境だけ同じエラーが残る」といった混乱を招きがちです。
原因の考察
msls70.dllに関連するエラーが発生する背景には、複数の要因が絡んでいる可能性があります。代表的なものとしては、以下の3つが挙げられます。
1. Officeアプリのモジュールのバージョン不一致
複数のOfficeアプリケーションが同一バージョンかつ正常に更新されている状態であれば、本来はDLLファイル関連の不具合は起きにくいはずです。しかしながら、Wordだけが最新バージョン、Outlookは前バージョン、といったようにアップデートのタイミングがずれている場合や、Office全体の更新に失敗して部分的にしか反映されていないケースでは、msls70.dllの呼び出しが期待される場所にファイルが存在せず、エラーを引き起こす可能性があります。
2. チャネル(更新プログラムの配信タイミング)の差
Microsoft 365には「Current Channel」「Monthly Enterprise Channel (MEC)」「Semi-Annual Channel」など、複数の更新チャネルが存在します。下表のように、それぞれのチャネルごとに配信される更新プログラムのタイミングや頻度が異なります。
チャネル名 | 更新頻度 | 主な特徴 |
---|---|---|
Current Channel | 毎月複数回 | 最新機能や修正が最速で配布される反面、不安定要素が残る場合がある |
Monthly Enterprise Channel | 毎月 | 企業向けに安定性が重視されるが、新機能はCurrent Channelより遅れて提供 |
Semi-Annual Channel | 半年ごと | 安定性重視で新機能のリリースを遅らせる方針。大規模環境向け |
Current Channelのユーザーには既に修正パッチが配信されている一方で、Monthly Enterprise Channelを利用している環境ではまだ修正が行き渡っていないという状況が発生し得ます。これによって、同じOfficeバージョンのはずなのにDLLファイルの更新タイミングに差が出てしまうことが、エラー再発の原因になりやすいと考えられます。
3. Officeプログラムの部分的な破損や別バージョンの混在
過去のOfficeバージョンをアップグレードした際に、古いアプリの情報やライセンスデータが中途半端に残っていると、新旧モジュールが混在してしまい、DLL関連のトラブルを生むことがあります。また、ディスク書き込みエラーやウイルス対策ソフトの干渉などによって一部のファイルが破損している場合にも同様のエラーが発生しやすくなります。
暫定的な対処法
現時点でMicrosoftから恒久的な対策が正式にはアナウンスされていませんが、ユーザー側で取り得る暫定的な解決策はいくつか存在します。以下では代表的な方法を詳しく紹介します。
1. Officeのバージョンアップ
最も効果的とされるのは、問題を修正したバージョンへのアップデートです。特に「Current Channel」では、バージョン16.0.17830.20166以降でエラーが改善されたという報告が多数上がっています。もしOfficeがMonthly Enterprise Channelになっている場合、以下のような手順でチャネルを切り替えたり、アップデートを手動で実行することが考えられます。
Officeアプリを利用して更新
OutlookやWordが起動しない場合でも、Excelなど他のOfficeアプリを起動して「アカウント」→「更新オプション」から手動更新が可能です。更新が開始され、修正パッチが適用されればmsls70.dllエラーが解消される場合があります。
コマンドラインから強制的に更新
万が一、すべてのOfficeアプリが正常に起動しない場合は、以下のコマンドを実行し、指定バージョンに強制的にアップデートを試みることができます。
cd %programfiles%\Common Files\Microsoft Shared\ClickToRun
officec2rclient.exe /update user updatetoversion=16.0.17830.20166
このコマンドによって指定したバージョンのOfficeをダウンロード・インストールし、最新の修正を適用することが可能です。
2. Officeの修復・再インストール
Officeプログラムの部分的な破損が疑われる場合、修復や再インストールを行うことで問題が解消することがあります。具体的には以下の手順を実施します。
クイック修復とオンライン修復
- Windowsの「コントロールパネル」から「プログラムと機能」を開きます。
- インストールされているMicrosoft 365(またはOffice)の項目を選択し、「変更」をクリックします。
- 表示されたダイアログで「クイック修復」を実行します。
- それでも改善しない場合、「オンライン修復」を試します。
アンインストールと再インストール
- クイック修復、オンライン修復でも改善しない場合は、一旦Officeをアンインストールします。
- Microsoft Support and Recovery Assistantなどの公式ツールを使うと、クリーンにアンインストールされる可能性が高まります。
- アンインストール完了後、Microsoft 365の最新インストールメディアまたはWebインストーラを利用して再インストールを実行します。
ファイル破損が原因の場合は、これらの操作によってDLLファイルなどの必要なコンポーネントが再構成され、エラーが解消されることが期待されます。
3. プロセスやアドインの確認
Officeプログラム同士のバージョン差異に限らず、特定のアドインがmsls70.dllへのアクセスを阻害しているケースもあり得ます。以下の手順でアドインの影響を確認できます。
- タスク マネージャーを開き、OutlookやWordのプロセスが残っていないか確認。もし残っている場合は「タスクの終了」を実行する。
- Outlookを「セーフモード」で起動する。セーフモードではアドインが読み込まれないため、エラーが発生しない場合はアドインが原因の可能性が高い。
- 通常モードで起動し、アドインを一つずつ無効化してエラー再発の有無を確かめる。
もし特定のアドインが原因と分かった場合は、それを削除するか、開発元の更新版がないか確認すると良いでしょう。
4. Windowsイベントビューアのログ確認
エラーの詳細を把握するには、Windowsイベントビューアで「Windowsログ → アプリケーション」を参照し、イベントID「1000」や「1001」に関連するOutlookのクラッシュログを確認する方法が有効です。ログ中にmsls70.dllが原因と記載されている場合は、まさにDLLファイルの不具合が問題の主因である可能性が高いと言えます。
5. ログ収集とサポートへの問い合わせ
上記の対処を試しても状況が改善しない、あるいは再発を繰り返す場合はMicrosoftのサポートに直接相談することが推奨されます。具体的には次のようなログを収集・提供するとスムーズな対応が期待できます。
- %temp%/diagnosticsフォルダに出力されるOfficeログ
- イベントビューア(アプリケーション)のクラッシュログ
- エラー発生時のスクリーンショット
問い合わせる際は、チケット番号の共有や発生環境の詳細(Officeバージョン、更新チャネル、Windowsのバージョンなど)を併せて提出すると、問題特定と恒久対策の検討が早まるでしょう。
今後の見通しと再発防止策
Microsoftが現在調査を進めており、一部のチャネルやバージョンではすでに修正パッチをリリースしているとの情報があります。しかしながら、修正プログラムが全チャネルや全ユーザーに行き渡るまでには時間を要する可能性があります。再発を防止するためには、以下の点を意識することが大切です。
バージョン固定やチャネル切り替えの検討
問題が深刻で業務に支障をきたす場合、安定していると確認できたバージョンに固定する方法も一案です。例えば、Current Channelで16.0.17830.20166が安定しているのであれば、そのバージョンに固定し、しばらくは自動更新を止めることでリスクを下げられます。またMonthly Enterprise Channelを利用中でも、必要に応じてCurrent Channelへの切り替えを一時的に行い、修正パッチを先に適用してしまう方法も考えられます。
定期的なモニタリングとイベントログの確認
OfficeやWindowsを定期的に更新した後は、イベントビューアのログをチェックし、怪しいエラーが出ていないかを早期に把握することが重要です。大きなアップデート後に意図せずmsls70.dll関連のエラーが再発していることもありますので、トラブルが起こる前に備える意味でも、ログ監視は有効な手段となります。
サードパーティ製ソフトウェアとの競合回避
アンチウイルスソフトやデスクトップ管理ツールなど、企業環境では多数のサードパーティ製ソフトウェアが同時に動作しています。これらのソフトのアップデート時にOfficeのファイルが一部ロックされてしまうことなどが原因で、DLLファイルが正常に置き換わらずエラーを引き起こす場合もあります。導入しているセキュリティ製品やシステム管理製品との相性を見極め、アップデートのタイミングをずらすなどの対策を講じることも再発防止につながります。
まとめ
Outlookを起動するとmsls70.dllが見つからないというエラーが発生し、作業効率が落ちてしまうケースは依然として報告されています。現状では、特定のバージョンへのアップデートやOfficeの再インストールによって解決する例が多い一方で、バージョンや更新チャネルによっては完全には修正されていない可能性があります。もし上記の対処策を試しても改善しない場合は、Microsoftのサポートへログとともに問い合わせることが最善の方法と言えます。
いずれにしても、Office製品を安定して利用するためには、定期的な更新とログ管理、そして問題発生時の迅速な修復やアドイン確認が不可欠です。msls70.dllに関しては今後さらに修正パッチが充実してくると思われますが、こまめにバージョンをチェックしながらエラーが再発しないかどうかを注視する姿勢が大切です。
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