Outlookを使って複数のメールアカウントを管理していると、共有メールボックスから送信したメールを自動的に自分宛てへCC/BCCしたいという場面はよくあります。送信履歴を確実に追跡するためにも、こうした自動ルールを活用して快適な運用を目指しましょう。
共有メールボックスから送信するときの悩み
共有メールボックスはチームや部署で一つのアカウントを共有し、外部とのやり取りを一元的に管理できる便利な機能です。しかし、以下のような課題が生じることがあります。
- 送信履歴の管理が煩雑になる
共有メールボックスから送信したメールが、うまく「送信済みアイテム」に保存されない、あるいは送信メールを一括で管理したいのにできないといった問題が起こりがちです。 - 誰がどのメールを送ったか把握できない
チーム全員で共有メールボックスを利用していると、送信者が多岐にわたるため追跡しにくくなります。送信メールを見直すときに、誰がいつ送ったのかが分からず混乱することも。 - 個人アカウントと共有メールボックスの混在
Outlook上で個人アカウントと共有メールボックスを並行して使っていると、ルール設定が意図したとおりに動作しないケースがみられます。特に、「個人アカウントではCC不要」「共有メールボックスでのみCCしたい」などの複雑な要望に対応する際には注意が必要です。
こうしたトラブルを回避し、確実に送信メールを共有メールボックスに蓄積したいなら、Outlookのルールやマクロ、場合によってはサードパーティアドインなどを組み合わせる方法がおすすめです。
Outlookルールで自動的にCC/BCCを設定する方法
基本手順
最も簡単に取りかかれる方法が「Outlookのルール機能」を利用するやり方です。以下の手順はあくまで一例ですが、多くのケースで有効でしょう。
- Outlookを起動し、[ホーム]タブ → [ルール] → [ルールと通知の管理]をクリックする
- 個人用アカウントと共有メールボックスが一緒に表示される環境でも問題ありません。
- [新しいルール]をクリックし、[送信メッセージに適用するルール]を選択
- ここで送信メールに対する処理を設定することができます。
- [次へ]をクリックし、特に条件を指定しないか、必要に応じて「特定のアカウントから送信する場合」などを選択する
- 「共有メールボックスから送信する場合」をうまく選べる条件があれば活用しましょう。
- アクションとして「メッセージを指定の宛先にCCまたはBCCする」にチェックを入れる
- 「指定の宛先」をクリックして、共有メールボックスのアドレスや自分のアドレスを入力します。
- [次へ]をクリックした後、除外条件で「送信アカウントが個人用アカウントの場合は除外」を設定する
- 個人用アカウントから送信する場合にCC/BCCされないようにするための条件を入力します。
- ルール名をつけて[完了]をクリックする
こうして作成したルールで、共有メールボックスから送信する際のみ自動的にCCやBCCを挿入できるはずです。
ステップ | 操作 | 補足 |
---|---|---|
1 | Outlookを起動し、[ホーム]→[ルール]→[ルールと通知の管理] | ルール画面を開く |
2 | 新しいルールを作成し、送信メッセージに適用する | 送信時の処理を行うため |
3 | 条件を設定し、アクションで「CC/BCC」を選ぶ | 共有メールボックスへCC/BCC |
4 | 除外条件で「個人アカウントを除外」 | 「個人のアドレスから送信時には適用しない」 |
5 | ルール名を付けて完了 | 動作確認を行う |
うまく除外設定が働かない場合の対処策
OutlookのバージョンやExchangeサーバーの設定、あるいはプロファイルの作り方によっては、設定したルールが想定通り動かないことがあります。具体的には、以下のようなポイントを確認すると解決しやすくなります。
- ルールの順序
- 同じメッセージを対象とする複数のルールがあると、先に処理されたルールが適用され、後続のルールが実行されない場合があります。適宜ルールの優先順位を入れ替えてみましょう。
- ルールがクライアント側かサーバー側か
- 送信ルールの多くはクライアント側でのみ動作します。そのため、Outlookを閉じている状態で送信が行われる(たとえばモバイルデバイスから送信する)とルールが働かないケースがあります。
- 個人アカウントのアドレス指定に誤りがないか
- 除外の設定で「差出人アカウント=自分の個人用アドレス」と指定したつもりが、別名やエイリアスアドレスとの紐付けが誤っている可能性があります。正しいSMTPアドレスを指定しているか確認しましょう。
- アカウント設定の不具合
- 共有メールボックスが完全にユーザー固有のアカウントとして扱われていない場合、正しく判定されないことがあります。場合によっては管理者に相談し、Exchange管理センターなどで共有メールボックスの権限を再確認しましょう。
場合によってはルールが動かない?その原因と対策
長くOutlookを使っている方は、「送信ルールが突然動作しなくなった」「クライアントPCを変えたらルールが効かなくなった」といった経験をお持ちかもしれません。そうした場合の原因と対策を見ていきましょう。
クライアント側ルールとサーバー側ルールの違い
- サーバー側ルール
Exchange OnlineやオンプレミスのExchangeサーバー上で管理されるルールです。基本的に、Outlookを起動していなくても条件が成立すれば適用される利点があります。しかし「送信時のルール」に関してはサーバー側がサポートしていない場合が多いです。 - クライアント側ルール
Outlookクライアントごとに設定されるルールであり、Outlookが起動していることが前提になります。送信ルールは多くの場合クライアント側となり、メールの送信操作を行ったタイミングで処理されます。
サーバールールを使うメリット
- アウトルックを閉じていても有効
- 管理者が統一ポリシーを設定できる
- ユーザー環境を問わず動作が安定している
ただし、送信ルールについてはサーバー側で一律に設定するのが難しく、細かい制御を入れたい場合はクライアント側ルールやマクロを考慮する必要があります。
クライアントルールの動作タイミング
- Outlookを起動している状態
送信ボタンを押したときに適用される。 - Outlookを終了している状態
ルールは発動しない。仮にスマホなどから送信してもOutlookクライアントは関与しないため、CCやBCCが自動で入らない。
共有メールボックスにすべての送信メールを残したいという場合、PCでの送信だけでなくスマホなど他デバイスでの送信もカバーしたければ、管理者に相談のうえExchange上で「送信メールのコピーを常に共有メールボックスに蓄積する」ような設定を行う方法も検討するとよいでしょう。
さらに柔軟にコントロールする方法
Outlookの標準ルールでは思うように条件を細分化できない場合、VBAマクロやサードパーティのアドインを利用する選択肢があります。
VBAマクロによるカスタマイズ
OutlookではVBAマクロを用いて、送信イベントをフックし、送信時に任意の処理を追加できます。たとえば、「送信するアカウントが共有メールボックスだった場合だけ、自動的にBCCを付与する」といったロジックを入れられます。
以下はVBAのサンプルコードの一例です。Outlook VBAの「ThisOutlookSession」に記載します。
Private Sub Application_ItemSend(ByVal Item As Object, Cancel As Boolean)
On Error Resume Next
Dim mailItem As Outlook.MailItem
Set mailItem = Item
' 送信アカウントのアドレスを判定
If mailItem.SendUsingAccount <> Nothing Then
If mailItem.SendUsingAccount.SmtpAddress = "shared@example.com" Then
' BCCを設定
mailItem.BCC = mailItem.BCC & "; shared@example.com"
End If
End If
End Sub
- SendUsingAccount.SmtpAddress
ここを実際の共有メールボックスのSMTPアドレスに合わせて変更します。 - BCCやCCの指定
上記例ではBCCに共有メールボックスアドレスを追記していますが、CCでも同様の構文で設定可能です。
VBAマクロのメリットは、複雑な条件分岐や処理を盛り込める点です。一方で、社内セキュリティポリシーやIT管理ポリシーによってはマクロの実行が制限されている場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
サードパーティアドインの活用
「Outlook BCC/CC 自動化」などのキーワードで検索すると、サードパーティ製のアドインがいくつか見つかります。こうしたアドインは、送信アカウントごとに細かい設定が行えたり、GUIでわかりやすく除外条件を管理できたりする利点があります。
- 導入のハードル
社内のセキュリティ要件や管理ポリシーで外部アドインのインストールが制限されているケースもあるため、導入前に許可が必要です。 - 安定性やサポート
アドインによっては頻繁なバージョンアップが行われない場合や、Outlookの更新による不具合のリスクがあります。信頼できるベンダー製品かを見極めることが大切です。
別プロファイル・別アプリの活用も視野に
どうしてもうまく除外設定が効かない、またはアカウント判定が機能しないという場合は、Outlookのプロファイルを分けるか、そもそも別のアプリケーションで共有メールボックスの運用を行うのも選択肢の一つです。
- プロファイルを分ける
共有メールボックス専用のOutlookプロファイルを作成し、そこにルールを設定することで「個人アカウントの影響を受けない」環境を作れます。ただし、プロファイルの切り替えは若干手間になるため運用設計がポイントです。 - メールクライアントを切り替える
別のメールクライアント(Thunderbirdなど)を使用する方法もあります。クライアント機能によってはより細かい送信ルールを設定できる場合もありますが、組織のポリシーでOutlook利用が義務付けられていれば難しいかもしれません。
まとめ
共有メールボックスから送信したメールを確実に自動CC/BCCしたい場合、まずはOutlookのルール機能を試すのが手軽な方法です。除外条件がうまく動かないときは、ルールの優先順位やアカウントの設定、クライアント側・サーバー側ルールの違いなどを確認しましょう。より柔軟な制御を求めるならば、VBAマクロやサードパーティ製アドインの利用を検討する価値があります。また最終手段として、プロファイルを分割したり、そもそも別のメールクライアントを利用したりする方法も視野に入れるとよいでしょう。運用形態に合わせて、最適な方法を選びながら、共有メールボックスでのメール送信管理を快適にしていきましょう。
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