多くの人にとって、日々のメール管理は仕事効率を左右する大切な要素です。しかしながら、Outlook on the web で検索が突然うまくいかなくなり、業務に支障をきたすケースが報告されています。エラーが表示され、原因を特定できずに困っている方は少なくありません。本記事では具体的な対処方法や、Microsoft 側で発生している可能性があるサービス障害について詳しく解説します。
Outlook on the web で「Your request can’t be completed right now」エラーが発生する背景
Outlook on the web は、Microsoft 365(旧 Office 365)環境を利用している組織内外のユーザーにとって、場所や端末を選ばずメールにアクセスできる便利なサービスです。しかしある時点から、一部のユーザーが検索を実行すると長い待機時間の末に「Your request can’t be completed right now」というエラーが表示され、検索結果が得られなくなるという問題が報告されています。
この現象は特定の条件下でのみ発生する場合があり、例えばクラシック版 Outlook やデスクトップアプリでは問題がないのに、Outlook on the web の特定のモードや特定フォルダーで検索を行うとエラーが起きるなど、環境によってバラツキが見られます。さらに、同じ組織やブラウザでも、発生するユーザーとしないユーザーが混在しているため、原因の特定が難航している状況です。
なぜ検索エラーが起こるのか
実際に起こりうる主な原因としては、以下が挙げられます。
- Microsoft 側のサービス障害(EX999898)やインフラの不具合
Microsoft 365 の一部サービス(特に Exchange Online)のアップデートが影響し、検索インデックスが正常に稼働していない可能性があります。今回の事象は多くのユーザーで報告されており、サーバー側の問題が疑われます。 - メールボックス容量の大幅な増加
容量が非常に大きいメールボックス(例:数十 GB 以上)は検索インデックス作成や検索処理に負荷がかかりやすいです。ただし、以前は検索できていたという場合には、容量だけが直接の原因ではない場合もあります。 - ブラウザやキャッシュの問題
ブラウザの動作環境によって、検索に関連する JavaScript のエラーやキャッシュの不整合が起きている可能性も否定できません。
こうしたエラーがもたらす影響
- 生産性の低下
必要なメールをすぐに検索できないと、業務効率が大幅に落ちてしまいます。特に過去のやり取りを日常的に参照するユーザーにとっては、大きなストレスとなるでしょう。 - トラブルシューティングの難しさ
同じ組織内でも症状が出るユーザーと出ないユーザーが混在しているため、設定や端末、ブラウザの違いだけでは原因を特定できないケースが多いです。そのため、管理者側でも迅速な解決が難しく、ユーザーからの問い合わせに対処しづらくなります。
Microsoft 側のサービス障害 (EX999898) の可能性
現在、Microsoft 側では EX999898 という障害番号で、Exchange Online 検索機能に関連するインシデントが報告されています。この障害は 2025年1月30日 18:55 (UTC) 頃から確認されており、徐々に復旧作業が進んでいるものの、一部のテナントにおいては依然として問題が継続中という情報があります。
下記のように、Microsoft 365 サービス正常性ダッシュボードでもアラートやステータス更新が行われていることがあるため、管理者は定期的に確認することが推奨されます。
日時 (UTC) | ステータス | 更新内容 |
---|---|---|
2025/01/30 18:55 | サービス障害発生 | 一部テナントでOutlook on the web検索に不具合が発生 |
2025/02/02 09:00 | 部分的復旧 | インフラ更新を実施し、負荷分散を調整 |
2025/02/11 06:30 | 次回アップデート予定 | 正式な恒久対策を順次適用するとアナウンス |
このように、Microsoft 側で既知の障害として管理されている場合、ユーザー側でできることは限られており、根本解決には Microsoft 側の修正やインフラの復旧を待つ必要があります。
サポートチケットを上げても解決できないケースがある理由
- サービス全体の問題である場合が多い
インフラやサービスアーキテクチャの不具合である場合、個別のユーザー設定やブラウザ変更などでは対処しきれず、サポートの回答としても「修正対応を待ってほしい」という流れになることがあります。 - 複合的な要因が絡む
障害の根本は Microsoft 365 サイドの問題だったとしても、ユーザー環境で別の要因(ブラウザの拡張機能など)が重なると、症状が複雑化して解決が先延ばしになる場合もあります。
今後の動向について
Microsoft 365 は世界中の企業が利用しているため、障害が発生すると多くの企業やユーザーに影響を及ぼします。その分、Microsoft も復旧には全力を注いでおり、比較的短期間での暫定対処や恒久対処を実施するケースが一般的です。ただし今回のようにインフラレベルの問題が絡む場合、完全復旧には多少時間がかかることが想定されます。
推奨される対処方法
現在、対処できる範囲としては以下が挙げられます。
1. Microsoft 365 管理者経由でサポートチケットを提出
問題の本質がサーバー側の不具合にある場合、エンドユーザーだけでの対処は難しくなります。そこで、組織の Microsoft 365 管理者(グローバル管理者やExchange管理者)から正式にサポートチケットを上げ、状況やログを共有することが望ましいです。
- サポートチケットで伝えるべき情報の例
- 具体的な発生日(タイムスタンプ)
- 発生しているユーザー数および影響範囲
- ユーザーが利用しているブラウザの種類とバージョン
- 該当メールボックスの容量や検索が効かないフォルダー構成
- 既に試した対処方法(キャッシュクリア、ブラウザ変更など)
こうした情報が充実していると、Microsoft 側でのトラブルシューティングもスムーズに進みます。
2. クラシック版 Outlook やデスクトップアプリを使用する暫定策
完全な解決に至るまでは、検索が安定している代替手段を活用するのが得策です。
- クラシック版 Outlook on the web への切り替え
新しい Outlook on the web よりも検索機能が安定する傾向があり、一時的に使い分けることで業務への影響を最小限に抑えられます。 - デスクトップ版 Outlook のオフラインモード
デスクトップ版の Outlook では、オフラインモード中でもローカルに保持したデータを検索できます。同期に時間がかかる場合もありますが、急ぎで過去メールを探したい場面では有効です。
3. ブラウザのキャッシュクリアや拡張機能の無効化
サービス障害と直接関係ない可能性もありますが、下記の対策を行うと問題が解決するケースが稀にあります。
- キャッシュクリア
使っているブラウザのキャッシュやCookieを一度削除し、再ログインして検索を試す。 - 拡張機能の無効化
ウェブブラウザの拡張機能(アドブロッカーやスクリプト最適化系)が検索の動作を阻害している可能性を除外するため、一時的に拡張機能を無効化するかシークレットウィンドウで試す。
それでも解決しない場合の追加検証方法
本格的に原因究明を進めるには、以下のような追加ステップも検討します。
ログの取得と分析
- F12 開発者ツールでの監視
ブラウザの開発者ツール(F12)を起動してネットワークタブやコンソールタブをチェックすることで、検索リクエスト時にエラーが発生しているかを確認します。エラーコードやレスポンスコードなどが確認できれば、Microsoft サポートに具体的なエラー情報を伝えられます。 - Office 365 監査ログの活用
管理者は Microsoft 365 管理センターで監査ログを有効化していれば、ユーザーの検索操作やアクセス状況を確認できます。問題が発生しているタイミングのログを確認して、何らかのイベントが記録されていないかをチェックします。
メールボックスの分割やアーカイブ活用
- 大容量メールボックスのアーカイブ化
容量が 50GB や 100GB に近い大きなメールボックスを持つユーザーは、オンラインアーカイブを活用して古いメールを移動することで、メインのメールボックスサイズを減らすことができます。これにより、検索負荷が下がる場合があります。 - 複数フォルダーに分割する
大量メールを単一フォルダーにまとめる代わりに、フォルダーを細かく分割し検索範囲を絞ることで、エラーを回避できることがあります。
復旧見込みと今後のポイント
Microsoft が公表している情報によると、2025年2月11日 6:30 (UTC) に正式なアップデートが予定されています。これはインフラ全体に適用される更新のため、今回の検索エラーの根本解決につながる可能性が高いとされています。しかしながら、世界規模のサービスであるため、ロールアウトには数日から数週間かかる場合もあります。
運用管理者が常にチェックすべき情報
- Microsoft 365 サービス正常性ダッシュボード
サインイン後、[サービス正常性] や [メッセージセンター] を定期的に確認し、該当する障害情報が更新されていないか把握します。 - サポートからの連絡
チケットを上げている場合は、Microsoft サポートからのメッセージを見逃さないようにします。進捗状況や必要な追加情報などが提示されるかもしれません。 - ユーザーからのフィードバック
障害の影響が収束してきているかどうかを現場のユーザーに確認し、改善の兆しがあれば報告を受けるようにしましょう。
具体的な確認手順・コード例
ここでは一例として、ブラウザの開発者ツールを使ってエラーログを確認する手順を簡易コードで紹介します。Chrome ベースのブラウザを想定しています。
# Windows コマンドプロンプトから Chrome をデベロッパモードで起動する例
cd "C:\Program Files\Google\Chrome\Application"
chrome.exe --auto-open-devtools-for-tabs https://outlook.office.com/
- Outlook on the web にサインイン後、F12 キーを押してデベロッパツールを表示
- ネットワークタブで検索リクエストのステータスコード(例:200, 400, 403, 500など)をチェック
- エラー発生時に返されるコードやメッセージを記録し、サポートに連携
このように、ブラウザから直接エラーログを取得することで、ユーザー側の問題なのかサーバーサイドの問題なのかを切り分けやすくなります。
まとめ
Outlook on the web の検索機能が「Your request can’t be completed right now」というエラーを出し、正常に動作しない問題は、Microsoft 365 側で認知されている障害(EX999898)の可能性が高いと言われています。特に 2025年1月30日頃から多くのユーザーが同様の不具合を報告していることから、個々の環境依存というよりは、サーバー側のインフラアップデートや検索インデックスの不具合が原因になっていると推察されます。
根本的な解決には Microsoft 側の修正対応が必須となるため、管理者アカウントから正式にチケットを上げ、サービス正常性ダッシュボードの情報を適宜チェックしながら復旧を待つのがベストです。一方で、当面はクラシック版 Outlook やデスクトップ版のオフラインモードなどを活用し、必要なメール検索が行えるようなワークアラウンドを取ることで、業務への影響を最小限に留められます。さらに、ブラウザのキャッシュクリアや拡張機能無効化、ログ取得などのトラブルシューティング手法を併用すれば、原因の切り分けや追加情報の収集がしやすくなるでしょう。
Microsoft の正式アナウンスでは、次回アップデート予定が 2025年2月11日に控えているとのことで、早期の恒久対策が期待されます。それまでは管理者・ユーザーともに適切な暫定策を取りつつ、Microsoft からの情報更新を待つことが重要です。
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