自然と複数のタイムゾーンを確認できる機能は、グローバルに連携する現代のビジネス環境では非常に便利です。しかし、意外にもMS Teamsカレンダーに複数のタイムゾーンを追加表示する方法は用意されていません。これからその背景や現状の回避策を詳しく見ていきましょう。
MS Teamsカレンダーにおけるタイムゾーン設定の現状
MS Teamsは、チャットやビデオ会議、ドキュメント共有など、チームワークを一元化できる優れたプラットフォームとして多くの企業や組織で活用されています。しかし現時点では、Outlookカレンダーのように「2つ目」や「3つ目」のタイムゾーンを同時表示する機能が実装されていません。これは、海外拠点やリモートワークメンバーと頻繁にやり取りするユーザーにとっては痛手といえるでしょう。
Outlookカレンダーとの比較
Outlookでは、カレンダー設定から複数のタイムゾーンを追加し、縦の時間軸に二つ以上の目盛りを表示できます。たとえば日本時間と米国西海岸時間(PST)を併記すれば、ミーティングを設定するときに時差を一目で把握でき、アポイントを入れるタイミングを間違えずに済みます。一方でMS Teamsカレンダーには、同様のインターフェースや設定項目が見当たりません。
Outlookとの同期の限界
Microsoft 365環境では、OutlookとMS Teamsが連携してスケジュール管理を行う仕組みがあります。しかし、Outlook上で複数タイムゾーンを設定しても、それがMS Teamsのカレンダーにそのまま引き継がれるわけではありません。ユーザーは「なぜ同期されないのか?」と疑問を抱きがちですが、根本的にはMS Teamsカレンダー側が複数タイムゾーンに対応していないために発生している制約です。
なぜTeamsに複数タイムゾーン機能がないのか?
Microsoft Teamsは日々アップデートされていますが、他の機能強化(画面共有の改善、メッセージング機能の充実、セキュリティ更新など)が優先されている可能性があります。また、実際にOffice Insiderなどのプレビュー機能を確認しても、カレンダーのタイムゾーン設定に関する言及はほとんど見られません。
Microsoft公式のスタンス
現在、多くのユーザーから「複数のタイムゾーン表示機能が欲しい」という要望がMicrosoftに寄せられていますが、公式フォーラムやMicrosoft 365 Roadmapをチェックしても、そのリリース時期に関する確かな情報は掲載されていません。
今後のアップデートで対応が検討されるかもしれませんが、「ロードマップに登場したらいずれ追加されるかも」という期待値に留まっているのが現実です。
現状での回避策:Outlookや他サービスの活用
MS Teamsカレンダー単独で複数タイムゾーンを表示できない以上、現状はOutlookや他のツールを併用してスケジュール管理を行うのが実用的な対処法といえます。ここでは具体的なステップや設定方法をいくつか紹介します。
1. Outlookカレンダーで複数タイムゾーンを表示
Outlookを使うことで、最大3つまでタイムゾーンをカレンダーに並べて表示できます。
例えば、Outlookデスクトップ版で複数タイムゾーンを設定する流れは以下のようになります。
- Outlookを起動し、「ファイル」→「オプション」を選択
- 「カレンダー」タブを開く
- 「タイムゾーン」セクションで、メインのタイムゾーンを選択
- 追加で表示したいセカンダリのタイムゾーンを入力
- 必要に応じて3つ目のタイムゾーンも設定
- 「OK」をクリックすると、カレンダー画面左端に複数の目盛りが表示される
下記のように、タイムゾーンが併記されることで、異なる国や地域のスケジュールを簡単に調整できます。
タイムゾーン | 例:日本標準時 (JST) | 例:米国太平洋標準時 (PST) |
---|---|---|
UTC Offset | UTC+9 | UTC-8 |
上記のような形式で目盛りが増えるため、視覚的に「JSTで9時ならPSTは16時(前日)」といったズレを即座に把握できるメリットがあります。
2. MS TeamsからOutlookカレンダーを参照する
スケジュールを作成する際、MS Teams内の「カレンダー」タブだけで完結しようとすると複数タイムゾーンが見えないため、誤った時間帯を設定してしまうリスクがあります。そこで、以下のような使い分けを検討してみるとよいでしょう。
- イベントや会議の詳細な設定(複数タイムゾーン考慮)はOutlookで行う
- MS Teams内のカレンダーは主に会議参加や簡易的な時間確認に利用する
会議を作成するときにOutlookから「Teams会議」にしておけば、会議招待URLは自動でTeamsのものが挿入されるため、ユーザーはTeamsからワンクリックで参加できます。
3. サードパーティ製のタイムゾーンツールを併用
社内やプロジェクトチーム内でどうしても複数タイムゾーンを同時に把握する必要がある場合は、サードパーティのガジェットやWebアプリを利用するのも一つの手です。Chrome拡張機能やWindowsのデスクトップガジェット、あるいはスマートフォンアプリで世界時計を表示させておけば、MS Teamsカレンダーの見た目だけでは不足しがちな情報を即時に補完できます。
Windowsやシステム設定側でのタイムゾーン活用
もしPC自体が1つのタイムゾーンに固定されていると、そもそもOSレベルでの時間管理も困難になります。ここではWindowsのシステム設定で補助的に行える設定例を紹介します。
Windowsの「日付と時刻」設定
Windows 10やWindows 11では、「日付と時刻」の設定画面で複数の時計を同時に表示することが可能です。具体的にはタスクバーの時計をクリックした際に、異なるタイムゾーンが小さく追加で表示されるように設定できます。
- 「設定」を開く
- 「時刻と言語」→「日付と時刻」を選択
- 右ペインの「その他の日付、時刻、地域の設定」をクリック
- コントロールパネルの「日付と時刻」を開く
- 「追加の時計」タブでタイムゾーンを2つまで追加設定できる
- 「OK」を押して確定
そうすると、タスクバーの時計をクリックしたときにメインのタイムゾーンと追加のタイムゾーンが並んで表示されるため、日常的な時間差の把握にはある程度役立ちます。
PowerShellで時刻情報を取得する例
組織内の多数のユーザーやサーバーがそれぞれ別のタイムゾーンに設定されていないか確認したい場合、PowerShellを使うという方法もあります。たとえば、ドメイン参加している複数コンピューターのタイムゾーンを一覧で確認したいときは、下記のようなコードを使うことで情報を集めることができます。
# 例示用スクリプト(動作検証が必要です)
$computers = Get-ADComputer -Filter * | Select-Object -ExpandProperty Name
foreach ($comp in $computers) {
Write-Host "Computer: $comp"
try {
$timezone = Invoke-Command -ComputerName $comp -ScriptBlock {
tzutil /g
}
Write-Host " Time Zone: $timezone"
}
catch {
Write-Host " Could not retrieve time zone information."
}
Write-Host "---------------------------------"
}
このように、IT管理者が組織全体のタイムゾーンを調べ、ユーザーがTeamsカレンダーとの相違で混乱しないようにする手段も考えられます。
MS Teamsでのスケジュール管理を快適にする工夫
複数タイムゾーンの直接表示は叶わないものの、MS Teamsカレンダーでミーティングをスムーズにこなすために取り得る対策があります。
1. 会議招待時の注意点
会議招待を行う際、必ず「ローカル時刻を添えてリマインドメッセージを送る」などの一手間をかけると、参加者同士の認識を合わせやすくなります。たとえば「JST 10:00 (PST 17:00 前日) に実施します」という具合です。特に海外メンバーが多いチームでは、こうした明示的な記載が大きなトラブル回避につながります。
2. Teamsチャットやチャンネルでのリマインド
MS Teams内のチャット機能やチャンネル投稿を活用し、イベント開始前に簡単なリマインドを送ることも効果的です。チャットで「明日のミーティングは日本時間10時、ロンドン時間2時です。ご注意ください」と書けば、参加者は各々の現地時間を再確認できます。こうした地道なコミュニケーションが大切です。
3. シェアポイントカレンダーや共同編集機能
Microsoft 365のもう一つの便利な機能に「SharePointカレンダー」があります。これはSharePointサイト上に作成できるカレンダーで、ユーザーが予定を一覧管理できるツールです。タイムゾーンの複数表示には対応していませんが、サイトメンバー全員が同じ場所で予定を閲覧できるため、少なくとも「どの時間帯にイベントがあるか」という全体把握は簡単になります。
必要に応じて、「SharePointカレンダーをOutlookに接続」すれば、Outlookの複数タイムゾーン表示と合わせて運用できる可能性もあります。
今後のTeamsアップデートと期待
Microsoftは常にTeamsの機能アップデートを重ねており、ユーザーインターフェイスや利便性は大きく向上しています。実際、要望の多い機能はMicrosoft 365 Roadmapに掲載され、開発が進められているケースが少なくありません。
ユーザーの声とフィードバック
ユーザーがMicrosoftに要望を伝える場としては、「Microsoft Feedback Portal」や「Teams User Voice」などがあります。ここに「複数タイムゾーンをTeamsカレンダーに導入してほしい」というリクエストが相次いで投稿されており、投票数も一定数集まっています。ユーザー数が増えて開発の優先度が上がれば、将来のアップデートで実装される可能性も十分にあるでしょう。
今後を見据えた運用のポイント
- ロードマップの定期確認:Microsoft 365 Roadmapや公式ブログを定期的にチェックする
- 社内での情報共有:新機能リリースのニュースがあれば速やかに展開し、対応を検討する
- Outlook活用の継続:Teamsが複数タイムゾーンに対応するまでは、Outlookや他ツールとの併用を前提に業務フローを構築する
まとめ:現実的な対応策と将来への備え
現段階では、MS Teamsカレンダーに複数のタイムゾーンを追加表示する機能はありません。Outlookでは実現できるのに、なぜTeamsではできないのか、もどかしさを感じている方も多いでしょう。しかし、現実としてはMicrosoftが正式に明言していない以上、近い将来に確実に実装されるという保証もありません。
そのため、多拠点の時差を意識する環境では、Outlookカレンダーに頼ったり、Windowsの「追加の時計」機能やサードパーティツールを駆使しながらTeamsと併用するのが最適解となります。新機能を待ちつつも、現状のツールや設定を上手に活用して、チームのコミュニケーションとスケジュール管理を円滑に進めていきましょう。
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