忙しいビジネスシーンでもオンライン会議の重要性が急速に高まり、音声や映像を記録して資料化したり、後から必要な箇所を確認したりするニーズが増えています。しかし、公式の録画機能を使わずにTeamsミーティングを録音・文字起こしする際、参加者に対する「録画が行われている」という明確な通知が課題となるケースが少なくありません。ここでは、サードパーティツールでTeams会議を録音する場合の通知方法や、それを自動化するための考え方について詳しく解説していきます。
Teamsミーティング録画の現状と課題
Teamsミーティングには、Microsoftが公式に提供する録画機能があります。これを利用すれば、会議参加者全員に録画中であることが自動的に表示され、コンプライアンス面でも安心です。一方で、Fireflies.aiのような外部サービスを利用して録音・文字起こしを行う場合、Teamsの標準通知が動作しないため、参加者に録画(録音)を周知できないまま進行してしまうリスクがあります。
このような状況を放置すると、プライバシーの問題や社内規定違反につながる可能性があります。さらに、万が一録画に関してトラブルが発生した場合でも、公式の記録として残らない場合があるなど、ビジネス上のリスクを考慮する必要があります。
公式機能を利用するメリットとデメリット
- メリット
- Microsoft公式が提供するため、Teams画面上に「録画中」のバナーが表示される
- 会議参加者全員に対して録画状態を明示できる
- Microsoft 365内でシームレスに動画が保存・共有される
- コンプライアンス面で安心感がある
- デメリット
- オーディオトラックの自動文字起こし機能(英語以外)は精度や機能面で制約がある
- 外部ツール(例:Fireflies.ai)のような高度な解析機能は利用しづらい
- Microsoft公式機能に依存するため、拡張やカスタマイズがしにくい
サードパーティツールで録画(録音)するメリットとデメリット
- メリット
- Fireflies.aiなど、文字起こしの精度が高いツールを活用できる
- 会議内容をリアルタイムにテキスト化して、要約や重要キーワード抽出などを行える
- 解析結果を他のシステム(CRM、タスク管理ツールなど)と連携しやすい
- デメリット
- Teams標準の「録画中」通知が表示されず、参加者が気づきにくい
- サードパーティのツールが録音・解析するため、データの送信先やセキュリティポリシーの検証が必要
- 参加者の合意を得ていないと、プライバシーや法的リスクが生じる可能性がある
サードパーティ録画通知の必要性
サードパーティの録音や文字起こしツールを使う場合、公式のTeams録画と同じように「録画していることを相手に知らせる」仕組みが重要になります。特にプライバシー保護や法的リスクを考えると、録画(録音)の存在を明示しないまま会議を進めるのは好ましくありません。国や地域によっては、参加者全員の同意が得られていない録音・録画が違法となるケースもあり得ます。
個人情報保護とコンプライアンス
個人情報保護法やGDPRなどの規制が厳しくなる中、録音や録画を行う場合には以下の点を意識する必要があります。
- 適法性: 録音や録画を行う前に、参加者への告知と同意取得が望ましい
- 目的外利用の制限: 会議録画の目的を明示し、それ以外に利用しない
- 保存期間の設定: 不必要に長期間保存しないよう、期間を明確に決める
- 安全管理措置: 録画データの取り扱い方法やアクセス権限を適切に管理する
これらを踏まえ、Teamsの公式録画機能以外を使う際には、参加者に対する録画通知を徹底することが欠かせません。そのためにも、自動的に通知を行うワークフローやアプリを導入することが検討されます。
サードパーティ録画の通知を自動化する方法
現在、専用の「会議中のサードパーティ録音・録画を自動通知するアプリ」はほとんど流通していません。そのため、多くの企業ではZapierなどのワークフロー自動化ツールや、Microsoft Bot Frameworkを活用したカスタムBotを独自に作成して対応しています。ここでは、代表的な手法をいくつか紹介します。
Zapierなどのワークフロー自動化ツール
Zapierは、さまざまなオンラインサービス同士を連携させてワークフローを自動化するプラットフォームです。TeamsやOutlook、Gmail、Slackなど多数のサービスに対応しており、Fireflies.aiのようなサードパーティツールと連携してトリガーを設定することも可能です。
- できることの例
- Fireflies.aiで録音が開始したら、Teamsのチャットに「録音が始まりました」というメッセージを自動投稿する
- ミーティング開始時刻の数分前をトリガーに、会議参加者へ「本日の会議は録音予定です」と通知する
- 録音終了時にメールで「本日の会議は録音済み。文字起こしはこちらから確認できます」等のリンクを送る
- 制約
- Zapier自体がミーティング画面にリアルタイムのポップアップを出すわけではない
- 主にチャットへのテキスト投稿やメール送信といった外部通知がメイン
- 別途Fireflies.aiやTeamsの情報を取得するためのAPI連携が必要
Microsoft Bot FrameworkやPower Automateを使ったカスタムBot
Teamsには、独自のアプリやBotを組み込む機能があります。Botを利用すると、特定のイベント(録音開始、会議参加者が入退室したタイミングなど)をトリガーにしてメッセージや通知を発信できます。
- 機能例
- Fireflies.ai APIで録音状態を取得し、それが開始されたらTeamsの会議チャットに自動投稿する
- 会議参加者が再参加(再入室)したタイミングで、Botがチャットへ「録画中である」旨のメッセージを送る
- Botを介して音声によるアナウンスを流す(ただし高度な開発が必要)
- メリット
- カスタマイズ性が高く、企業独自のワークフローに合わせた通知を実装できる
- 会議中のリアルタイムチャットへの投稿など、Teams内で完結する連携が可能
- Microsoft 365環境との親和性が高い
- デメリット
- 初期開発コストがかかる
- 運用やメンテナンスにBot開発の知識が必要
ワークフローとBotを組み合わせるアプローチ
ZapierやPower Automateのようなノーコード・ローコードツールを使いながら、Botを導入する組み合わせも考えられます。例えば、録音開始のフラグをFireflies.aiのWebhookで受け取り、ZapierまたはPower AutomateでBotへ連絡、そのBotが会議チャットにメッセージを投稿する、といった流れが実装可能です。
表にまとめると、下記のような比較になります。
手法 | 通知方法 | 開発難易度 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
Zapierなどのワークフロー自動化 | 主にテキストチャットやメールで通知 | 低〜中 | ノーコード・ローコードで比較的簡単に導入できる | Teams画面上のポップアップや音声通知は難しい |
カスタムBot (Bot Framework) | Teamsチャット、必要に応じて音声アナウンス | 中〜高 | Teamsアプリと連携しやすく、リアルタイム性が高い | Bot開発のスキルが必要。運用・メンテナンスも考慮要 |
公式録画機能 | Teams画面に「録画中」表示 | なし(標準機能) | 全参加者が録画中であることを瞬時に認識できる | Fireflies.aiなどと比較して文字起こし機能が限定的 |
Fireflies.aiと連携する例
Fireflies.aiは、会議の録音や文字起こし、さらには要約や検索など、幅広い機能を提供する人気の高いサードパーティツールです。Teamsとのネイティブ連携も可能ですが、「録画(録音)していることを周知する機能」は標準では含まれていないため、以下のような拡張を検討すると良いでしょう。
Zapierを活用した通知フロー
- Fireflies.aiの録音開始をトリガーに設定
- Fireflies.ai側で、録音開始や終了時にWebhookを送れる機能があるか確認し、Zapierで受け取る。
- ZapierのアクションでTeamsチャットに投稿
- 受け取ったWebhookをもとに「録音が開始されました。ご承知おきください」などのメッセージを特定のチャンネル、または会議のチャットに自動投稿する。
- 参加者再入室時の対応
- 再入室イベントを拾うのはZapier単体では難しいので、もし厳密に対応するならMicrosoft Graph APIなどで参加者のステータス変化を取得し、Zapierのアクションへ渡す。
- あるいはBot開発を組み合わせて、入室トリガーのタイミングでメッセージを発信させる。
Botでの通知例
- Botが会議チャットを監視: Fireflies.aiが録音開始したフラグを検知した時点で、Botが「録音中です。ご協力ありがとうございます」とチャットへ投稿。
- 音声アナウンス: より高度な機能として、Botが音声を合成してミーティング内で流すシステムを構築することも可能(Azure Cognitive Servicesなどを利用)。
- ログの保存: 録音通知の履歴自体も、後から監査できるようにテキストログやSharePointなどへ保存しておくと便利。
サードパーティ録画通知アプリの現状
現在のところ、市販されている「サードパーティ録画を会議参加者に自動通知する」ことに特化したアプリは、ほとんど存在していません。理由としては、Teams公式の録画機能を使う場合は標準で通知されるため、ニーズが限定的であることが挙げられます。一方で、Fireflies.aiなどのように高機能な文字起こしツールを使いたい企業にとっては、録画通知の仕組みがどうしても必要となるため、以下のような対策が考えられます。
専用アプリの少なさ
- カスタム開発が必要
多くの企業や開発者コミュニティが、Botを使った独自のアプリ開発やZapierなどのワークフロー自動化ツールで対応している。 - プラグイン型の需要
Zoomなど他のWeb会議システム向けには、外部録画を検知して自動通知するプラグインが一部存在するが、Teams向けは現時点で広く普及しているプラグインはあまり見られない。
カスタムソリューション開発のメリットと注意点
メリット
- 自社要件に合わせた柔軟な機能拡張
コンプライアンスやワークフロー要件が企業によって異なるため、カスタムソリューションなら社内規程や業務フローに合わせた調整が可能です。 - 利用者へのUX向上
Botや独自のUIを用意し、わかりやすいメッセージやアラートを表示すれば、ミーティング参加者が安心して会議に参加できます。 - API連携による高度な自動化
Microsoft Graph APIやFireflies.aiのAPIを使って、録画・文字起こしデータを社内システムに連携し、業務効率を大幅に向上できます。
注意点
- 開発コストとメンテナンス
Botやワークフローは一度構築して終わりではなく、Teamsの仕様変更やAPI変更、社内のルール変更などに応じてメンテナンスが必要となります。 - セキュリティとプライバシー
録音データをどのように扱うかは、社内だけでなく法的にも重要。API連携時にトークン管理やアクセス権限設定を適切に行う必要があります。 - ユーザー教育
録画通知が行われること、録音データはどこに保管されるのかなどを徹底的に周知することが、トラブル回避に直結します。
まとめ
Microsoft Teamsの公式録画機能を使えば、参加者へ自動的に録画中であることを周知できます。しかし、より高度な文字起こしや会議データの解析を行うためにサードパーティツールを使う場合、「録画していることを知らずに参加していた」といったトラブルのリスクが高まることに注意が必要です。現状、市販の専用アプリは少なく、多くの場合はZapierなどのワークフロー自動化ツールやカスタムBotの開発で対応します。
特にFireflies.aiを活用したい場合、Webhook連携とZapierなどを組み合わせ、Teamsチャットやメールに録画通知を送る仕組みを整えることがおすすめです。加えて、参加者が再度会議に入室した際にも通知するには、Botを利用してTeamsの入退室イベントを監視するなど、より高度な実装が求められます。
サードパーティ録画を導入する際は、コンプライアンスや個人情報保護の観点から、録画目的や利用範囲を明確にし、参加者に対して適切な説明と同意を得ることが不可欠です。企業の規模やシステム要件によっては、カスタムソリューションの開発が最適な選択肢となる場合もあるでしょう。自社のニーズを踏まえて、トータルのコストとリスクを慎重に検討しつつ、最適な録画通知方法を選んでいただければと思います。
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