Microsoft Teamsでオーストラリアの電話番号を活用する方法~Telstra Calling Planの導入から番号ポートの手順まで徹底解説

オーストラリアでビジネスの効率化を目指すなら、Microsoft Teamsの音声通話機能の活用は欠かせません。チーム同士のコミュニケーションをシームレスにすることで、生産性の向上だけでなく、遠隔地とのやり取りもスムーズになります。今回は特にオーストラリアにおけるTeamsのCalling Plan利用に焦点を当て、その導入方法や既存番号の移行(ポート)、サポート体制などについて詳しく解説します。

オーストラリアでMicrosoft TeamsのCalling Planを導入する際の基本知識

オーストラリアでTeamsの通話機能を利用したい場合、多くの方が最初に「Microsoftが直接提供するCalling Planを使えるのか?」と疑問を持ちます。実は、日本やアメリカ、イギリスなど一部の地域ではMicrosoftがダイレクトにCalling Planを提供していますが、オーストラリアではそれができず、Telstraなどのローカル通信事業者を通じてプランを導入する必要があります。

なぜMicrosoftはオーストラリアで直接提供していないのか

国や地域によって通信規制やインフラ状況、パートナー契約などが異なるため、Microsoft自身がCalling Planを提供できるエリアには制限があります。オーストラリアの場合はTelstraなどの現地キャリアがMicrosoftと提携し、「Telstra Calling for Microsoft 365」のような形で通話サービスを提供しているのです。こうした経緯により、オーストラリアでTeamsを使って外線通話を行う場合は、ローカルパートナーのサービスを利用するのが一般的となっています。

Telstra経由でのCalling Planの仕組み

Telstraなどの事業者が提供するCalling Planは、次のような特徴があります。

  • 電話番号の払い出し: Telstraが発行しているオーストラリア国内用の番号を利用可能
  • Teamsへの統合: TelstraのサービスがMicrosoft Teamsと連携し、Teamsクライアントから外線通話を行える
  • 課金体系: 通常は通話プランや通話時間に応じた料金体系となり、Telstra側での請求とMicrosoft 365のライセンス費用は分離される場合が多い

Telstra Callingを選択すれば、オーストラリア国内のビジネス電話番号をTeams内でそのまま利用できるため、現地顧客とのコミュニケーションをスムーズに進められます。ただし、料金やサポート体制など細かな点はキャリア側のプランに依存するため、導入前にしっかり確認しておくと安心です。

オーストラリアで使える通話ソリューション比較

Calling Plan以外にも、Microsoft Teamsで通話機能を利用する方法はいくつか存在します。代表的な3つの方法を表にまとめました。

ソリューション概要メリットデメリット
Calling Plan(Telstra等)ローカル通信事業者が提供する通話プランをTeamsに直接組み込む形・セットアップが比較的簡単
・Microsoft Teamsとネイティブに連携
・電話番号の新規取得もスムーズ
・地域によって提供可否が異なる
・料金体系が事業者ごとに違う
Direct RoutingSBC(Session Border Controller)をオンプレミスやクラウドに設置し、既存の電話回線をTeamsに接続・既存のPBXやSIPトランクを活用できる
・キャリア選択の自由度が高い
・SBC構築や運用に知識が必要
・保守コストがやや高くなる可能性
Operator ConnectMicrosoftと提携した通信事業者がクラウド側でSBCを管理し、ユーザーはTeams管理センターから設定・自社でSBCを持たなくて済む
・Teams管理センターで簡単に回線を設定
・対応しているキャリアが限定的
・提供地域が限られる

上記の比較からわかるように、Calling Planは導入の簡単さやネイティブなTeams連携を重視する場合に最適で、Direct Routingは既存のPBX資産を活用したい企業に向いています。Operator Connectは、キャリア側がSBCを管理してくれるため手間が少なく、かつキャリアの選択肢が増えている点が魅力です。ただし、オーストラリアにおける実際の対応状況はキャリアによって異なるため、最終的にはTelstraなどの提供サービスの中身を検討することが重要になります。

既存電話番号をTeamsにポートする手順

オーストラリアですでに利用中の電話番号をそのままTeamsに移行するには、「番号ポート」(番号移行)という手続きが必要です。この手順は、主にMicrosoft Teams管理センターで行うことになります。以下は大まかな流れです。

1. 事前準備

  • ライセンス確認: Microsoft Teams Phone(旧名:Microsoft 365 Phone System)のライセンスを所持しているか確認します。E5ライセンスを持っている場合は標準で通話機能が含まれていますが、E1やE3の場合はPhone Systemのアドオンライセンスが必要となります。
  • キャリア契約の確認: Telstraなどのローカル通信事業者と呼通プラン(Calling Plan)契約を締結し、番号ポートが可能な状態になっているか確認します。事前に必要書類や手続きの手順をキャリアから取得しておくとスムーズです。

2. Microsoft Teams管理センターでのポート申請

  • Teams管理センターにアクセス: グローバル管理者または通信管理者の権限を持つアカウントでログインします。
  • [音声] > [電話番号] > [番号ポート]: サイドメニューから「音声」や「電話番号」などの項目を選択し、「番号ポート」にアクセスします。
  • ポート依頼の新規作成: 既存の電話番号を入力し、ポート先の詳細情報を入力します。Telstraの場合は、Telstraから提供されたローカルルーティング情報やアカウント情報などを入力することが必要です。
  • 書類アップロード: 番号移行にはLetter of Authorization (LOA)などの書類が求められる場合があります。書類はTeams管理センター上でアップロードし、ポート依頼を送信します。

3. ポート完了までの流れ

  • 審査・承認: 提出した情報に誤りがないかや、キャリアがポートを許可するかどうかを審査します。この期間は数日から数週間かかることがあります。
  • ポート日時の確定: キャリア側がポートを承認すると、ポート実施日が決定します。その時間帯に通話が一時的に停止する場合があるので、事前に社内周知を行いましょう。
  • ポート実施: ポート当日・指定時間になると、既存の番号がTeamsに切り替わります。切り替え前後で試験通話を行い、正しく着信・発信できるか確認してください。

ポート後のサポート体制

番号ポートが完了した直後から、何かトラブルが発生した場合には問い合わせ先を明確に把握しておくことが重要です。MicrosoftのドキュメントやTelstraのサポートページでは、問い合わせ先が以下のように案内されていることが多いです。

1. ポート完了後24~48時間以内に問題が発生した場合

  • TNS Service Desk: TNS(Telecom Network Services)と呼ばれるサポートデスクに連絡します。ポート直後のトラブルはTNSが優先的に対応するケースが多いです。

2. 48時間以降に問題が発生した場合

  • Microsoftサポートチーム: ポート後数日が経過してからの問題はMicrosoftが直接受け付ける場合があります。Office 365管理センターやMicrosoft 365管理センターからサポートチケットを起票して問い合わせることが一般的です。

3. Telstraへの問い合わせ

Telstraが通信キャリアとしてCalling Planを提供している場合は、音声通話の品質や料金、回線障害などに関してTelstraに問い合わせる必要があります。特に以下の点はTelstraが担当することが多いので、契約内容を確認しておきましょう。

  • 通話料金プランの変更や追加
  • 電話番号の追加取得
  • 回線障害や音声品質に関するトラブルシューティング

運用面での注意点とおすすめの対策

1. 緊急通報と法規制への対応

オーストラリアの通信規制上、緊急通報(000/112など)の取り扱いには注意が必要です。Telstraや通信キャリアを通じてCalling Planを利用している場合、緊急通報に対応できるよう設定されているかを必ず確認しましょう。誤った住所情報や位置情報が登録されていると、緊急時に対応が遅れてしまうリスクがあります。

2. ユーザー教育とサポート窓口の周知

Teamsを導入するだけではなく、ユーザーが正しく利用できるよう研修やガイドを準備することも重要です。特に、

  • ユーザーがTeams内で電話をかける方法
  • 転送や保留、代表電話の設定方法
  • 緊急通報や障害時の連絡先
    これらを明確にしておくことで、運用トラブルが発生した際にもスムーズに対処できます。

3. 回線障害時のバックアッププラン

一時的にTeamsのサービスが停止した場合やインターネット回線障害が発生した場合にも、ビジネスコミュニケーションが止まらないように、バックアップとしてモバイル回線や別の通信手段を確保しておくと安心です。社内で重要な会議や外部との連絡を常にスムーズに行うためには、リスク管理の観点から複数の手段を確保することがおすすめです。

Telstra Calling導入時の具体的なステップ

Telstra Callingを利用してMicrosoft Teamsで外線通話を可能にする場合、どのような手順が必要となるか、もう少し具体的に触れておきましょう。

  1. Telstraとの契約締結: まずはTelstraとの商談を行い、導入規模(番号数や通話ボリューム)、料金プラン、サポート範囲を確認しておきます。Telstraの営業担当やアカウントマネージャーから提案を受ける形が一般的です。
  2. ライセンスの準備: 企業が利用しているMicrosoft 365ライセンスを確認し、Phone Systemのライセンスが付与されているか、または追加が必要かを確定します。必要に応じてMicrosoft 365管理センターでライセンスを追加購入します。
  3. Teams管理センター設定: Telstraから提供される接続情報をTeams管理センターの設定画面に入力します。具体的には、ドメインやユーザーへの番号割り当てなどを行い、通話可能な状態を作り上げます。
  4. 通話テスト: 設定完了後、試験的に内線通話や外線通話を行い、音声品質や着信ルートなどが正しく動作するかチェックします。トラブルが発生した場合はTelstraかMicrosoftサポートへ問い合わせましょう。
  5. ユーートレーニング・切り替え: 最終的に全社で利用開始する前に、ユーザー向けのトレーニング資料を配布し、既存の電話システムからの切り替え時期を周知します。

Direct RoutingやOperator Connectの検討ポイント

オーストラリアでCalling Planが利用できない、またはTelstra以外のキャリアにこだわりたい場合、Direct RoutingやOperator Connectを検討するのも選択肢です。

Direct Routing

オンプレミスにSBC(Session Border Controller)を設置したり、クラウドでSBCをホスティングしたりすることで、すでに契約しているキャリアのSIPトランクをTeamsに接続する方法です。

  • メリット: キャリアや契約プランを細かく選択可能。既存のPBXを段階的に移行できる。
  • デメリット: SBCの運用管理が必要で、設定や保守に専門知識が求められる。

Operator Connect

通信事業者がMicrosoftと連携し、クラウド側でSBCを管理してくれる仕組みです。ユーザーはTeams管理センターからキャリアとプランを選択し、設定を行うだけで通話を使い始められます。

  • メリット: Self-service感覚で簡単に導入可能。SBCの保守コストを削減できる。
  • デメリット: 対応キャリアや地域が限定的で、オーストラリアの場合も対応キャリアが限られる。

Telstra以外の通信事業者でOperator Connectを提供しているケースもあるため、自社の要件に合ったキャリアがあれば比較検討するとよいでしょう。コストやサポート体制、対応エリアなどを総合的に見て判断することが大切です。

よくある質問とトラブルシューティング

Q1. ポート申請後、通話ができなくなることはある?

A1. ポート作業のタイミングで一時的に不通状態が生じる場合があります。通常、ポート当日の数時間程度ですが、業務に影響を与えないよう可能な限り営業時間外や業務量の少ない時間帯を指定しましょう。

Q2. E5ライセンスを持っていなくてもTeamsで外線通話はできる?

A2. できます。ただし、Phone Systemライセンスが必要です。E1やE3プランを利用中の場合は、追加でPhone Systemアドオンを購入し、さらに通話プラン(Calling Plan)またはDirect Routingなどを設定することで外線通話が可能になります。

Q3. 電話の同時通話数(チャネル制限)はどのように決まる?

A3. Calling Planを利用する場合は、プラン契約時の同時通話数の制限や帯域幅が決定要素となります。Direct RoutingではSBC側の設定やキャリア契約によって制限が変わります。導入前に見積もりやトラフィック分析を行い、十分なチャネルを確保しておきましょう。

Q4. ポート後に番号の一部だけ機能しないことはある?

A4. 稀にあります。複数の番号を一括でポートしている場合、設定漏れや書類不備により、一部の番号が有効化されないケースがあります。ポート完了後には必ず全ての番号で発着信テストを行い、不備があれば速やかにTNS Service DeskまたはMicrosoftサポートへ問い合わせましょう。

導入効果を最大化するためのポイント

オーストラリアでMicrosoft TeamsのCalling Plan(または代替手段)を導入する意義は大きいですが、効果を最大化するためには以下のポイントに注意してください。

  • ネットワーク品質: Teamsはクラウドサービスであるため、インターネット接続品質に大きく依存します。優先度の高い音声トラフィックを確保するため、QoS(Quality of Service)の設定や高速かつ安定した回線を用意しておきましょう。
  • セキュリティ対策: Teams通話は暗号化されていますが、デバイスの盗難やアカウント乗っ取りなどに備え、MFA(多要素認証)やポリシー設定を徹底してください。
  • ユーザーエクスペリエンスの向上: ヘッドセットやWebカメラ、会議室機器の最適化により、音声トラブルや操作ミスを減らせます。特にコールセンター業務ではヘッドセットの品質が顧客満足度に直結します。
  • 運用監視とレポート: Teams管理センターにはコール品質ダッシュボードなどがあり、通話トラブルや品質をモニタリングできます。定期的にレポートを確認し、問題があれば早めに対処しましょう。

まとめ

オーストラリアではMicrosoftが直接提供するCalling Planを使用できないという制約がありますが、Telstraなどのローカルキャリア経由のCalling Plan、あるいはDirect RoutingやOperator Connectを活用することで、Microsoft Teamsを包括的なビジネスコミュニケーションツールとして利用できます。

既存の番号をポートする手順についても、Teams管理センターを通じた申請フローを理解し、Telstra側の書類や手続きをきちんと把握しておけば、移行に伴うダウンタイムを最小限に抑えながら安全に切り替えられるでしょう。

導入後は、ポート直後から48時間以内のトラブルはTNS Service Deskへ、48時間以降のトラブルはMicrosoftサポートへ問い合わせるといった対応先を明確にしておくことが非常に重要です。また、緊急通報対応や運用監視といったポイントを押さえることで、通話サービスを安定的に提供できる環境を整えられます。

最適な形でTeamsの通話機能を活用すれば、コスト削減とコミュニケーション効率化の両面でメリットを得られるはずです。ぜひ自社の状況や要件に合わせたソリューションを選択し、Microsoft Teamsを最大限に活用してください。

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