多様化するビジネス環境で、円滑なコミュニケーションを実現するためには使い勝手の良い音声通話環境が不可欠です。そんな中、Microsoft Teamsはチャットや会議だけでなく、外部との通話機能を取り入れることで、より包括的なコミュニケーション基盤として注目されています。
Microsoft Teams通話プランの全体像
Microsoft Teamsは、従来のオフィス電話環境をデジタル化し、場所にとらわれないコミュニケーションを実現する強力なツールです。組織内チャットやビデオ会議だけでなく、外部の電話番号への発信や着信も一元的に管理できるのが特徴です。Teamsでの音声通話を利用するには、Microsoftが提供する「Calling Plan(通話プラン)」を追加するか、またはサードパーティのサービスを組み合わせることが一般的です。
数ある通話プランの中でも、代表的な4種類が下記です。
- Microsoft Teams Domestic and International Calling Plan
- Microsoft Teams Domestic Calling Plan
- Microsoft Teams Domestic Calling Plan Zone 1
- Teams Essentials and Teams Phone with Domestic Calling
それぞれのプランで通話可能な範囲や利用可能な国・地域、分数や機能が異なります。事前に比較検討することで、自社や自分の使い方に最適なプランを選ぶことが非常に重要です。
各通話プランの詳細比較
ここでは、代表的なプラン4種類の特徴について深掘りしていきます。それぞれの概要や長所・短所、導入の注意点なども含め、包括的に解説します。
1. Microsoft Teams Domestic and International Calling Plan
このプランは、国内に限らず海外への通話も行いたい企業や個人向けに提供されるプランです。世界196以上の国や地域へ発信できるため、国際ビジネスを展開している組織には欠かせない選択肢となります。
プラン概要
- 国内発信だけでなく海外への発信にも対応
- プラン内に国際通話用の分数が割り当てられる
- 着信に関しては無制限で利用可能
- MicrosoftがPSTNキャリアの役割を果たすため、外部電話番号の取得・管理が簡便
メリット
- 海外拠点や海外顧客との連絡がスムーズ
国際通話が必要なビジネスモデル(輸出入、グローバル企業など)の場合、追加費用なく利用できる分数が非常に便利です。 - 複雑な設定が不要
直接Microsoftから番号を取得し、一元的に管理することができます。サードパーティの回線提供サービスと連携するよりも簡単なケースが多く、管理工数を削減できます。 - 国際通話分数の共有が可能
複数ユーザーが契約している場合、国際通話分数をプールで共有できる仕組みもあるため、無駄なく利用しやすいです。
デメリット
- コストが比較的高い
国内専用プランと比べて費用は高めです。国際電話を全く使わない場合はオーバースペックになる可能性があります。 - 利用可能地域の制限
Calling Plan自体が利用できる国が限定される場合があります。海外発信ができても、ユーザーの所在地でそもそもこのプランが提供されていないこともあるため、事前に対応国を確認する必要があります。
2. Microsoft Teams Domestic Calling Plan
自国あるいは地域内だけで通話を完結させたい企業・個人向けのプランが「Domestic Calling Plan」です。国際通話が不要な場合、コストを抑えつつ外線通話を導入できる魅力があります。
プラン概要
- ライセンス割り当てられている国や地域内での通話に対応
- 国際通話は含まれないため、オプションとして別途国際分数が必要になる
- 受信通話は無制限
- 発信通話はプランによって割り当てられる分数が異なる
メリット
- コストを抑えられる
国際通話が不要ならば、無駄な機能に支払う必要がなく、経費削減につながります。 - 導入がシンプル
国内通話に限定される分、設定や管理が単純化しやすく、管理者の負担も軽減されます。 - プラン分数のプール
同じプランを複数ユーザーが利用する場合、発信分数をプールして使えるケースがあるので、利用状況次第では無駄なく運用できます。
デメリット
- 海外拠点や海外顧客対応には非対応
国際通話が必要になった場合、追加の国際通話プランやオプションを別途契約する必要があります。 - 国や地域による差異
Domestic Calling Planは国や地域の区分により細かくプランが分割されており、ユーザーの所在地によって呼び名や価格、分数の割当が異なることがあります。
3. Microsoft Teams Domestic Calling Plan Zone 1
「Zone 1」などの表記で提供される通話プランは、国や地域ごとに適用されるDomestic Calling Planの一種です。たとえば、Zone 1では主にアメリカ合衆国やプエルトリコなどが該当し、対象地域内での通話をカバーします。
プラン概要
- 米国やプエルトリコなど、特定の地域をカバーするDomestic Calling Plan
- 発信分数はプランによって変動し、受信は無制限
- Zone 1以外にもZone 2、Zone 3など地域区分が異なるプランが存在
メリット
- 特定地域でのコスト効率
アメリカ中心でビジネスを展開している企業など、ほぼ米国内のみの通話で事足りる場合に最適です。 - 明確な地域区分
どの地域が対象かが明確なので、国や地域単位でライセンス管理しやすいです。 - ほかのZoneとの組み合わせ可能
組織が複数の地域に展開している場合、ユーザーごとに該当するZoneのCalling Planを割り当てることでコストを管理しやすくなります。
デメリット
- 対象地域外での通話ができない
基本的にはZone 1として設定されている地域以外への通話は不可です。海外拠点への連絡が必要な場合は別途対応が必要となります。 - 名前がやや分かりにくい
Domestic Calling Planと一口に言ってもZoneが分かれているため、自社の所在地や事業展開地域に合ったプランを見極める必要があります。
4. Teams Essentials and Teams Phone with Domestic Calling
中小企業や簡易的に通話機能を導入したい場合に注目されているのが、Teams Essentialsに音声通話機能を付け加えたプランです。会議やチャットといった基本のコミュニケーション機能に加えて、国内向けの通話機能を付与することで、シンプルながらも包括的なコミュニケーション環境を構築できます。
プラン概要
- Teams Essentialsで提供される基本的な会議・チャット機能
- Teams Phone with Domestic Callingを追加し、国内通話に対応
- 国際通話は含まれない
- 受信は無制限、発信分数はプランに応じて変動
メリット
- 小規模から導入しやすい
フル機能のMicrosoft 365などを導入せずに、まずは基本的なコミュニケーション環境を構築したい中小企業やプロジェクトチームに適しています。 - 分かりやすい料金体系
大規模企業向けプランに比べると、必要な機能だけに絞ったシンプルなプラン構成であることが多いです。 - Teamsの拡張性を保持
Essentialsからのアップグレードや、他のMicrosoft 365アプリとの連携も可能なため、必要に応じて機能を拡張しやすい点が魅力です。
デメリット
- 国際通話が含まれない
海外への通話が必要な場合は、追加のオプションが不可欠です。 - 大規模向け機能が限定的
基本機能に特化したプランなので、大企業や高度な管理機能が必要な場合には物足りないケースもあります。
比較表で見る4つのプラン
以下の表は、各プランの特徴をまとめたものです。自社の利用状況や必要な通話範囲を照らし合わせながら参考にしてください。
プラン名 | 通話対象 | 国際通話 | 特徴 | 想定利用シーン |
---|---|---|---|---|
Domestic and International Calling Plan | 国内 + 海外 | 〇(分数付与) | 196以上の国・地域に対応。MicrosoftがPSTNキャリア | 海外と頻繁にやり取りがあるグローバル企業 |
Domestic Calling Plan | 国内のみ | ×(別途オプション) | 国内発信分数が付与され、受信は無制限 | 国内拠点で完結する企業 |
Domestic Calling Plan Zone 1 | 米国/プエルトリコなど | ×(別途オプション) | アメリカのエリアに特化した国内プラン | 米国を中心に事業を展開する企業 |
Teams Essentials + Teams Phone with Domestic Calling | 国内のみ | ×(追加プランが必要) | 手軽に通話機能を追加。Essentialsで会議・チャット可能 | 小規模で手軽に導入したいチーム |
プラン選択時のポイント
プランを選ぶ際には、以下のポイントを考慮しておくと最適な選択がしやすくなります。
国際通話の必要性を見極める
海外顧客や海外拠点とのやり取りがある場合は、国際通話に対応したプランが必須です。逆に国内のみでビジネスを展開している場合は、わざわざ国際通話付きのプランを契約する必要はありません。国際通話が全く発生しない場合、「Domestic and International Calling Plan」はコストが高くなりがちなため、不要な機能に対してお金をかけないようにするのが賢明です。
ユーザー所在地と対応プランを確認
Calling Planは世界中どこでも利用できるわけではなく、提供される国と提供されない国があります。また、同じ「Domestic Calling Plan」でも、ユーザーが所属する国や地域によって分数や価格が異なるケースも多いです。たとえば米国向けのZone 1と、ヨーロッパなど別エリアを対象としたZone 2などが存在します。自社が拠点を置く地域がどのZoneに該当するか、プランが正式に提供されているかを必ず事前に確認しましょう。
ライセンスのプール機能を活用する
複数ユーザーが同じCalling Planを契約している場合、発信通話の分数がプールされ、全員で共有できる仕組みがあります。たとえば、ユーザーAがあまり通話を使わなかった分をユーザーBが多く利用するといったことも可能です。企業全体でまんべんなく利用するのであれば、無駄が少なく運用できます。
Teams Essentialsと既存ライセンスの組み合わせ
すでにMicrosoft 365 E3/E5やBusiness Premiumなどのライセンスを保有している場合は、そのライセンスに音声通話のアドオンとしてCalling Planを追加する方法があります。しかし、まだTeamsを利用したことがない組織や、必要最低限の機能だけを導入したいケースでは「Teams Essentials + Teams Phone with Domestic Calling」のセットを選ぶと手軽でわかりやすいです。どの機能を重視したいか、そして将来的にどれだけ拡張するかを考慮して選択しましょう。
導入を成功させるためのヒント
呼び出しルーティングや電話番号管理
TeamsのCalling Planを導入する際には、電話番号の取得や管理、呼び出しルーティング(自動応答、コールキューなど)をどのように設定するかも重要です。Microsoftの管理センターで細かい設定が可能なので、部署やチームごとに最適な電話応答フローを設計すると顧客満足度が向上します。特に大企業やコールセンターを運用する組織では、適切なルーティング設定が欠かせません。
音声品質とネットワークの準備
インターネットを利用した通話環境では、ネットワーク帯域や回線品質が音声品質に直結します。事前にネットワーク環境を整備し、QoS(Quality of Service)設定などを検討しておくことで、通話の遅延や音声の乱れを最小限に抑えられます。特に在宅勤務や支店が多拠点にわたる場合は、各拠点の通信回線の安定性をチェックしておきましょう。
導入トライアルとユーザートレーニング
通話機能が加わることで、チャットやビデオ会議とは別の運用ルールやユーザー教育が必要になる場合があります。実際に少数のユーザーでテスト導入し、通話の品質、電話番号の管理、ユーザーインターフェイスなどを検証しながら問題点を洗い出すと安心です。また、社内向けにわかりやすいマニュアルを作成し、通話の基本的な使い方からトラブルシューティングまで整理することで、スムーズな社内浸透を図れます。
コスト面の考え方
プラン単価とオプション
Calling Planの料金はユーザー数や国際通話の有無、割り当て分数などによって大きく変わります。多国籍企業や海外進出を検討している企業であれば、あらかじめ「Domestic and International Calling Plan」を契約しておくと、追加手続きなしに国際通話ができるメリットがあります。一方、国内だけでビジネスを展開する場合は「Domestic Calling Plan」や「Teams Essentials + Teams Phone with Domestic Calling」を選ぶ方が、コストパフォーマンスに優れていることが多いです。
通話分数超過時の料金
付与された通話分数を超過した場合、従量課金で追加料金が発生します。超過料金は通話先の国や地域によって変動し、国際通話の場合は特に高額になりやすい傾向があります。月々の通話量を予測しながら、過度に超過しないようプラン分数を余裕をもって設定すると安心です。また、月単位や四半期単位で通話状況を分析し、必要に応じてプランを見直す運用が理想的です。
事例から学ぶ活用ポイント
国内中小企業A社の場合
A社では日本国内の取引先と主にやり取りを行っており、海外と連携することはほぼありません。そこで、コストを最小限にするために「Microsoft Teams Domestic Calling Plan」を利用しました。結果として、オフィスに固定電話機を設置する必要がなくなり、リモートワーク中でも社用番号を使った発着信が可能になりました。出社しなくても会社代表番号での通話を受けたり、発信もできることで柔軟な働き方が実現しました。
グローバル展開の大企業B社の場合
B社は海外支店を多数抱えており、頻繁に国際電話を必要とします。そこで「Microsoft Teams Domestic and International Calling Plan」を導入。海外支店と本社、さらには海外顧客ともシームレスにやり取りが行えるようになりました。通話だけでなく、ビデオ会議やチャットを含む統合コミュニケーションを1つのプラットフォームで完結させることで、全体の運用コストが削減できただけでなく、IT運用の一元管理も大幅に効率化されました。
まとめ:最適なプランを選ぶために
Microsoft Teamsの通話プランは、国内限定で十分なケースや国際通話が必須のケース、小規模で手軽に始めたいケースなど、ビジネス形態によって求められる機能が大きく変わります。そのため、通話ニーズを正しく把握し、予算や管理面、将来の拡張性など複合的に検討することが非常に重要です。特に以下の点を振り返ると、選択のヒントになります。
- 海外への発信がどの程度必要なのか
- ユーザーの所在地はどの地域・Zoneに該当するか
- 通話分数のプール機能を使うとメリットがあるか
- 既存のMicrosoft 365ライセンスとどう組み合わせるか
- 大規模コールセンターなど複雑な機能が必要かどうか
これらを踏まえてプランを選択することで、過不足のない通話環境を構築し、社内外とのコミュニケーションを効率化できます。Microsoft Teamsは、チャット・会議・通話を一元的に管理できるプラットフォームとして進化を続けており、リモートワークやハイブリッドワークの加速によって、その重要性はますます高まっていくでしょう。
最後に再度、それぞれのプランをおさらいしておくと以下のようになります。
- Microsoft Teams Domestic and International Calling Plan:国際通話が必要な企業に最適
- Microsoft Teams Domestic Calling Plan:国内向け通話限定でコストを抑えたい企業に最適
- Microsoft Teams Domestic Calling Plan Zone 1:アメリカ合衆国やプエルトリコなど特定地域向けの国内プラン
- Teams Essentials and Teams Phone with Domestic Calling:小規模で手軽に通話機能を追加したい場合に最適
これから導入を検討する際は、自社のビジネス規模や通話要件をしっかりと分析して、最適なプランで運用をスタートしてみてください。
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