急速に進むリモートワークの普及により、オンライン会議ツールの利用が一段と増えています。中でも新しい Teams は操作性やパフォーマンスの向上が注目されていますが、一部ユーザーの環境では外部モニターが突如黒画面になる現象が起きています。
新しい Teams 利用中に発生する外部モニター黒画面の概要
新しい Teams を利用している最中、外部モニター(特にノートパソコンに接続した第2モニターなど)が突然数秒間の黒画面を起こすという問題が各所で報告されています。以下のような環境で主に発生が確認されています。
- Windows 10/11 を搭載するノートパソコンやデスクトップ
- Lenovo ThinkPad シリーズを含む複数メーカーのPC
- 様々なドッキングステーション(USB-C ドックや Thunderbolt ドックなど)
- NVIDIA G-Sync が有効な高リフレッシュレート対応モニター
- Windows 11 環境で可変リフレッシュレート機能 (VRR) をオンにしている場合
また、グラフィックドライバの更新やケーブルの交換では改善しないケースもあるため、原因の切り分けや対処策の検討が必要になります。
問題発生の背景にある技術的要因
この黒画面の原因として最も疑われるのは、Teams の映像描画処理と G-Sync または可変リフレッシュレート (Variable Refresh Rate, VRR) の機能が噛み合わないことによるディスプレイのリセット動作です。ディスプレイが映像信号を一時的に失い、数秒間黒画面になった後に再描画される可能性があります。
G-Sync と可変リフレッシュレートの概略
G-Sync は NVIDIA が独自に開発した垂直同期技術で、フレームレートとモニターのリフレッシュレートを動的に同期させることで、表示のティアリング(画面の分断)やスタッター(カクつき)を抑える仕組みです。Windows 10/11 の可変リフレッシュレート機能 (VRR) も同様の目的を果たし、システムレベルでフレームをモニターのリフレッシュ周期に同期させます。
しかし、Teams の描画やビデオ会議特有の映像処理が、これらの可変同期技術と競合を起こすことで、一時的に映像信号がうまく出力されない状況が発生すると考えられています。
主な回避策と解決策の詳細
以下に挙げる対処策はいずれも有効な場合がありますが、環境や機器構成によって効果に差異があります。1つの方法で改善しなければ、複数の手法を組み合わせたり、段階的に試したりするとよいでしょう。
1. NVIDIA G-Sync を無効化する
G-Sync 対応モニターを利用している場合、NVIDIA コントロールパネルから G-Sync を無効にすると問題が解消、あるいは軽減したという報告があります。無効化の操作手順の一例を以下の表にまとめました。
項目 | 操作手順 |
---|---|
NVIDIA コントロールパネル | 1. デスクトップ上で右クリックし、「NVIDIA コントロールパネル」を選択 2. 左メニューの「ディスプレイ」から「G-SYNC の設定」を選択 3. 「G-SYNC を有効にする」のチェックを外し、設定を適用 |
G-Sync 機能がオフになると、ティアリング対策としての恩恵は減少する可能性がありますが、Teams での画面黒化を防ぐための暫定的な対策として有効です。
2. 可変リフレッシュレートを無効化する
Windows 11 の場合、システム設定から簡単に VRR をオフにできます。特に高リフレッシュレート設定のモニターと組み合わせている場合は、VRR を無効にすることで描画の同期不良が解消されるケースがあります。手順は以下のとおりです。
- [スタート] ボタンをクリックし、「設定」を選択
- 「システム」→「ディスプレイ」を開く
- 対象のモニターを選択し、「グラフィックス」または「詳細ディスプレイ設定」をクリック
- 「既定のグラフィック設定を変更」を選び、「可変リフレッシュレート」をオフに切り替える
環境によっては表現が異なる場合がありますが、概ねディスプレイ設定項目の中に「可変リフレッシュレート」や「VRR」に関連するスイッチがありますので、これをオフにして設定を保存してください。
3. モニターのリフレッシュレートを 60Hz に固定する
高リフレッシュレート (144Hz や 120Hz) を利用している方は、Teams 起動中だけでも 60Hz に固定しておくと、一時的に安定するという報告が多数あります。モニターのリフレッシュレートを変更するには、以下のような手順が一般的です。
- Windows の「設定」→「システム」→「ディスプレイ」
- 「ディスプレイの詳細設定」や「ディスプレイのプロパティ」を開く
- リフレッシュレート (Hz) のプルダウンから「60Hz」を選択
- 適用してモニター設定を再読み込み
この設定を行うことで、Teams 起動中のディスプレイリセットが少なくなる場合があります。
4. グラフィックドライバのアップデート
最新のグラフィックドライバを適用することで、問題が自然と解消される例も報告されています。特に Windows Update からインストールされるドライバではなく、GPU ベンダー(NVIDIA, Intel, AMD)の公式サイトから提供される最新バージョンを適用すると効果があるケースがあります。ドライバの更新前には、現在のバージョン番号をメモしておくと、問題が再発した際の比較に役立ちます。
# Windows PowerShell で現在インストールされている
# Display ドライバのバージョンを確認する例
Get-WmiObject Win32_PnPSignedDriver |
Where-Object { $_.DeviceName -like "*NVIDIA*" -or $_.DeviceName -like "*Intel*" -or $_.DeviceName -like "*AMD*" } |
Select-Object DeviceName, DriverVersion
このようにしてドライババージョンを把握した上で、各ベンダーの公式サイトからドライバをダウンロード・インストールしてみましょう。
5. Teams のアップデートまたはブラウザ版の利用
新しい Teams クライアントは随時アップデートがリリースされています。最新ビルドの Teams に更新することで、不具合が解消されるケースもあります。また、デスクトップ アプリに依存せず、ブラウザ版(Microsoft Edge や Google Chrome など)で Teams を利用することで、黒画面の問題を回避できるとの声もあります。
- デスクトップ版 Teams
- Teams を開き、右上のプロフィールアイコンをクリック
- 「設定」や「アップデートの確認」を選択
- 新しいバージョンがあれば更新を実行
- ブラウザ版 Teams
- Microsoft 365 ポータル (https://office.com など) にサインイン
- Teams アイコンを選択し、Web 上で Teams を起動
- 黒画面の現象が再現しないか確認
6. OS 更新プログラムの適用
Windows Update によって配布される更新プログラムで、グラフィック関連の不具合や Teams 関連の問題が修正される可能性があります。こまめに OS を最新の状態に保つことで、思わぬ相性トラブルを避けられる場合があります。
考えられる追加対策と詳細な検証ポイント
上記以外にも、環境によっては次のような方法が有効かもしれません。複雑な環境では、いくつかの要素が絡み合って問題を引き起こすケースがあるため、慎重な切り分け作業を行うとよいでしょう。
GPU の電源管理モードの見直し
NVIDIA の「NVIDIA コントロールパネル」には「電源管理モード」という設定があり、これが「最高パフォーマンスを優先」に設定されている場合に安定するケースがあります。逆に「省エネルギー」もしくは「適応」にしてみると症状が改善する場合もあるため、自分の環境で試行錯誤してみるとよいでしょう。
ドッキングステーションやケーブルの種類を変更
USB-C または Thunderbolt ケーブルで外部モニターを接続している場合、別種のポート(HDMI や DisplayPort)を試すと問題が解消する場合があります。あるいはドッキングステーションを介さず、PC とモニターを直接繋ぐことで症状が改善したケースも報告されています。これはドッキングステーションのファームウェアや給電機構が影響している可能性もあるため、ファームウェア更新の確認もおすすめです。
マルチモニター設定を一時的に変更する
黒画面が外部モニターのみに発生する場合、一度「拡張」や「複製」の設定を変更してみる方法もあります。例えば拡張表示をやめ、メインモニターのみで Teams を使用して問題が再現しないかを確かめることで、設定やドライバのどの部分に問題があるのかを推測しやすくなります。
問題が解消されない場合の調査方法
どうしても問題が解決しない場合は、以下のような調査や情報収集を行うと、トラブルシューティングを進めやすくなります。
1. イベントビューアーや信頼性モニターの確認
黒画面発生のタイミングで、Windows のイベントログにディスプレイ関連やドライバ関連のエラーが記録されていないかを確認します。信頼性モニター(「コントロールパネル > セキュリティとメンテナンス > メンテナンス > 信頼性履歴の表示」) でも問題があった時間帯のエラー情報を簡単にチェックできます。
2. フィードバックの収集と報告
- Microsoft 公式のフィードバック: Teams アプリ内の「ヘルプ」や「問題を報告する」メニューから、黒画面現象の詳細と環境情報を報告
- 社内 IT 管理者: 同僚や他部署で同様の不具合が発生していないかを確認し、組織全体の環境設定やポリシーが影響しているかを切り分け
複数のユーザーが同じ問題を報告することで、Microsoft 側が修正に着手するケースも多いため、積極的に情報共有を行うことが重要です。
3. 仮想マシンや他のPC環境での再現テスト
もし可能であれば、他の PC や仮想マシン (Hyper-V, VMware など) で同じ Teams のバージョンをテストし、黒画面が再現するかを検証することも参考になります。再現しない場合は、物理 GPU やディスプレイ周辺が問題を起こしていると推測できます。
Teams の構造的アップデートと今後の見通し
新しい Teams は大幅なパフォーマンス向上や操作性の改善を目指し、裏側のレンダリングエンジンやメモリ管理も刷新されています。そのため、従来の Teams とは異なるグラフィックス周りの挙動や相性問題が起こる可能性があります。今後のアップデートで恒久的な解決策が提供されることに期待されますが、状況によってはアップデートを待つだけでなく、自らの環境で最適な回避策を講じる必要があります。
まとめ
外部モニターが黒画面になる問題は、G-Sync や可変リフレッシュレート機能と新しい Teams の動作が干渉している可能性が高いと考えられます。下記のような手順で一歩ずつ対策を試していくことが有効です。
- G-Sync をオフにする
- Windows の可変リフレッシュレートを無効化する
- リフレッシュレートを 60Hz に固定する
- GPU ドライバや OS を最新に更新する
- Teams のデスクトップアプリを最新ビルドにアップデート、またはブラウザ版の利用を検討する
- ドッキングステーションや接続ケーブルを見直す
複数の設定変更を組み合わせてようやく症状が収まるケースもあれば、知らぬ間に最新ドライバ更新や Teams アップデートによって自然解消される例もあります。最終的にはユーザーコミュニティでの情報交換や公式フィードバックを通じて、Microsoft が恒久的な修正を行うのを待つことが肝要です。自分の環境に合わせて最適な対処策を見つけ、快適に Teams を利用できるように調整してみてください。
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