Windows 11 を使っていると、Teams のログイン画面が頻繁に立ち上がり、「またパスワードを入力しないといけないのか……」と煩わしさを感じる方は多いかもしれません。特にビジネスライセンスの Teams を運用している場合、業務に直結するやり取りが多いだけにストレスも大きくなりがちです。ここでは、Teams が繰り返しパスワードを求めてくる問題の原因と対策を詳しく解説していきます。頻繁なパスワード要求をなくし、スムーズにコミュニケーションが取れる環境を目指しましょう。
Teams が頻繁にパスワードを要求する問題の概要
Teams(有料ビジネスライセンス版)を Windows 11 で利用しているとき、以下のような現象が報告されています。
- PC を起動した直後、立て続けに 10 回ほどパスワードを求められる
- その後も 30 分おきに複数回パスワード入力を要求される
- 従来の Teams(いわゆるクラシック版)はまだ使えるものの、新しい Teams(プレビュー版)だとログイン情報を入力しても先に進めない
- Web 版の Teams であれば頻繁なパスワード要求は起きないが、クライアント版特有の機能が使えないため困る
これらの症状は、Office 全般や Windows の認証設定、あるいはアカウント情報のキャッシュに何らかの不具合が起きている可能性があります。Microsoft 365 系列のアプリは認証システムを共有することもあるので、Word や Excel、Outlook など他のアプリでも似たような不具合が発生している場合には、一括で対処する必要があるかもしれません。
本記事では、実際によく行われている具体的な対処法をいくつか紹介します。単純にアンインストールや再インストールをするだけでは解消しない問題も、手順を踏んで一つずつチェックしながら作業することで改善の糸口が見えてくることがあります。
問題の主な原因を理解しよう
Teams の頻繁なパスワード要求を引き起こす要因はいくつか考えられます。まずは原因を整理することで、どうしてこのような症状が起こるのかを理解しましょう。
1. キャッシュや資格情報の衝突
Windows では「資格情報マネージャー」という仕組みを通じて、各種アプリのサインイン情報を保持しています。複数アカウントを使い分けていたり、過去に設定していたアカウント情報が消しきれていなかったりすると、Teams のログイン情報がうまく同期されず、繰り返しパスワードを求められる場合があります。
2. アカウントのリンク設定や登録の不備
Windows の「職場または学校アカウント」への接続設定が不完全であったり、複数の職場アカウントを登録したままになっていると、Teams が正しいアカウント情報を参照できず、頻繁にパスワードを再入力するよう促すケースがあります。特に会社や学校、組織で管理されているデバイスの場合、IT 管理者側で設定を変更しているタイミングなどに重なると不具合が生じやすくなることがあります。
3. レジストリ上の認証設定の問題
Office 365 や Microsoft 365 が利用する認証方式である「現代的認証(Modern Authentication)」と、それ以前の仕組みである「ADAL(Active Directory Authentication Library)」の設定が原因でパスワードループが生じるケースも見受けられます。レジストリの値が誤っている、または必要なエントリが存在しないと、Teams が認証情報を取得できずにループしてしまうことがあるのです。
対処方法 1:資格情報マネージャーからの削除
頻繁にパスワードを要求される状況を打破するうえで、まず試していただきたいのが資格情報マネージャーのクリアです。
資格情報マネージャーとは
Windows 上では、各種サービスやアプリのログイン情報が「資格情報マネージャー」に保存されます。Teams だけでなく、Outlook、SharePoint、OneDrive など Microsoft 365 系列のクライアントアプリの認証情報もこの中に含まれます。
資格情報マネージャーの場所は、以下の手順でアクセス可能です。
- Windows のスタートメニューなどから「コントロール パネル」を開く
- 「ユーザーアカウント」を選択
- 「資格情報マネージャー」をクリック
- 「Windows 資格情報」タブを選択
Teams 関連資格情報を削除する
資格情報マネージャーを開くと、一覧の中に「MicrosoftOffice16_Data:xxxxxx」や「msteams_adalsso/adal_context_segments」など、さまざまな項目が表示されているかもしれません。Teams に関連する名称を見つけたら、それを削除してみてください。
たとえば以下のようなリストがあった場合を想定してみましょう。
資格情報の名前 | 種類 |
---|---|
MicrosoftOffice16_Data: | Windows 資格情報 |
msteams_adalsso/adal_context_segments | Windows 資格情報 |
msteams_adalsso/ | Windows 資格情報 |
上記のうち、Teams や Office 365 に関連しそうな名称の資格情報をすべて削除します。削除しても、再度必要になったときには自動的に再生成されます。
資格情報を削除する際の注意点
- 他の Microsoft 365 アプリ(OneDrive や Outlook など)の認証もクリアされる可能性があるため、必要な場合はサインイン情報を再入力する覚悟をしておきましょう。
- 繁忙期や業務時間内ではなく、時間に余裕があるタイミングで行うのがおすすめです。
対処方法 2:アカウントのリンク解除
次に試していただきたいのは、Windows の「職場または学校アカウント」から必要のないアカウントを解除する方法です。
職場または学校アカウント設定を確認する
Windows 11 で以下の手順を実行してください。
- 「設定」を開く(スタートボタンを右クリックして「設定」でも可)
- 「アカウント」を選択
- 「職場または学校アカウント」をクリック
ここには、現在 Windows に接続されている Azure AD アカウントや Microsoft アカウントが表示されます。複数のアカウントが登録されている場合は、Teams で使用しているアカウントがどれであるかを確認します。不要なアカウントや、不明なアカウントが表示されている場合は、それを選択して「切断」や「リンク解除」を行いましょう。
リンク解除前の注意点
- 組織管理者がポリシーで強制的にアカウントを接続している可能性があるため、会社の PC や学校の PC であれば、IT 管理者に相談してから操作することが望ましいです。
- 個人のアカウントと組織アカウントが混在していると、誤って個人アカウントを切断するようなミスも発生しがちです。アカウント名やメールアドレスをよく確認したうえで作業を行ってください。
対処方法 3:レジストリ設定の変更
Teams の認証がうまくいかない背景には、Office 全体の認証方式に関わるレジストリの設定が影響していることがあります。具体的には「EnableADAL」という値を変更することで問題が解決するケースがあります。
レジストリ編集の手順
- 「Windows キー + R」を押して「ファイル名を指定して実行」ダイアログを表示
- 「regedit」と入力して「OK」をクリックし、レジストリエディタを起動
- 以下のパスに移動
HKEY_CURRENT_USER
└─ Software
└─ Microsoft
└─ Office
└─ 16.0
└─ Common
└─ Identity
- 右ペインで右クリックし、「新規」→「DWORD(32 ビット)値」を選択し、「EnableADAL」という名前を設定
- 「EnableADAL」をダブルクリックし、値を
0
に設定(※10 進数) - レジストリエディタを閉じて PC を再起動
この操作により、Office アプリがモダン認証よりも従来の認証方式を優先するようになります。結果として、Teams が短時間でパスワードを求め続ける状況が解消される場合があります。
レジストリ編集のリスクと対処
- レジストリを誤って編集すると、Windows システム全体に影響を与えるリスクがあるため、作業前にシステムの復元ポイントを作成する、またはレジストリのバックアップを取っておくことを推奨します。
- 組織で管理されている PC の場合は、グループポリシーやセキュリティポリシーとの兼ね合いがあるので、管理者に連絡を取りながら進めるほうが安全です。
対処方法 4:再ログインと動作確認
上記の操作を行ったら、最後に Teams からサインアウトし、改めてサインインし直すことで状況が改善されることが多いです。Office アプリや OneDrive、Outlook などもすべてサインアウトし、一度 PC を再起動してから一括でサインインし直すのがおすすめです。
手順のまとめ
- 資格情報マネージャーから Teams 関連資格情報を削除
- Windows の「職場または学校アカウント」から不要なアカウントを切断
- レジストリの「EnableADAL」を 0 に設定
- PC を再起動して、Teams と Microsoft 365 アプリで再サインイン
以上を一通り試すことで、多くの場合はパスワードを頻繁に要求される現象が解消します。ただし、社内ポリシーや管理者が構成しているグループポリシーなどの影響を受けている場合は、設定が元に戻される可能性もあります。その場合は IT 管理者と連携しながら、ポリシーがどのように設定されているかを確認しましょう。
追加のポイント:新しい Teams(プレビュー版)を利用する際の注意
最近登場した新しい Teams(プレビュー版)はクラシック版と比べて高速化や機能強化が図られていますが、まだ一部機能や認証周りの仕様が変更されている可能性があります。
プレビュー版特有の不具合
- クラシック版とプレビュー版を併用していると、キャッシュが競合を起こし、特定の環境ではログインループに陥りやすい傾向があるようです。
- 組織がプレビュー版のテストを公式に許可していない場合、認証サーバーとの整合性に問題が生じるケースも報告されています。
対策方法
- プレビュー版をテストする際は、クラシック版を一度アンインストールまたはサインアウトしておくと競合が減ります。
- プレビュー版の導入前に、IT 部門が動作検証を行い、ユーザーに周知するルールを整備している組織も多いです。正式リリースまでは、明確なサポートが受けられない可能性があるため、自己責任で行う部分もある点を忘れずに。
頻繁なパスワード要求問題を防ぐためのヒント
上記で紹介した方法以外にも、環境によっては次のような対策が有効です。
1. 常に最新の Windows および Teams を保つ
Windows Update や Teams の更新プログラムを適用していないと、既知の不具合が修正されていないまま放置されてしまう可能性があります。更新プログラムにより、頻繁にパスワードが求められる問題がすでに解決されているケースもあるため、まずは最新状態にしてみましょう。
2. Office や Microsoft 365 アプリ全体のサインイン状況を確認
Word、Excel、PowerPoint、Outlook、OneDrive など、Microsoft 365 の他のサービスにもサインインしておくと、シングルサインオン(SSO)の恩恵が得られ、Teams だけが繰り返しログインを求める状態を防ぎやすくなります。ときどき一部のアプリだけが旧アカウントに紐づいているケースがあるので、設定を揃えることも重要です。
3. クリーンブートでの検証
サードパーティ製のセキュリティソフトや常駐アプリが、Teams の認証プロセスを妨げている可能性もゼロではありません。以下のようなクリーンブートを試してみる方法もあります。
- 「Windows キー + R」で msconfig を開き、「サービス」タブで Microsoft 以外のサービスをすべて無効にする
- スタートアップのアプリを最小限にして PC を再起動し、Teams を起動して問題が再現するか確認
クリーンブートで問題が再現しなくなった場合は、原因となる常駐ソフトを特定し、対策をとることができます。
組織管理者が設定しているポリシーを確認する
職場や学校で使用しているデバイスの場合、IT 管理者がグループポリシー(GPO)や Intune などのモバイルデバイス管理 (MDM) システムで特定のセキュリティポリシーを設定しているケースがあります。
よくあるポリシーの例
- パスワードの再認証を一定時間ごとに強制する
- シングルサインオンを制限している
- Azure AD による条件付きアクセスポリシーで、場所やデバイスが変わると再認証を要求する
こうしたポリシーはセキュリティ上の観点で運用されているため、ユーザーが勝手に変更することはできません。頻繁な認証要求がポリシーによるものなのかを判別するには、IT 管理者やシステム担当者に問い合わせるのが一番確実です。
まとめ:手順を踏んで原因を切り分けよう
Teams が頻繁にパスワードを要求する問題は、主に以下のステップを追うことで解消することが多いです。
- 資格情報マネージャーで Teams 関連のキャッシュを削除
- Windows の「職場または学校アカウント」から不要なアカウントを切断
- レジストリの「EnableADAL」設定を 0 に変更(必要に応じて)
- 再起動後に Office アプリや Teams に再サインイン
これらを試してもうまくいかない場合は、組織のセキュリティポリシーを確認したり、クリーンブートなどで他のソフトウェア干渉を排除してみたりと、さらに原因を細かく切り分けていく作業が必要になります。
問題が解決したあとは、同様の状況が再び起きないよう、Teams や Windows のアップデート管理を徹底し、不要になったアカウントや資格情報を定期的に見直すのがおすすめです。今後も新しい認証方式やアップデートがリリースされる可能性もあるため、常に最新情報を追いかけながら運用していきましょう。
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