いつもTeams会議で大切なミーティングを録画していると、後から内容を振り返るだけでなく社内共有にも役立ちます。しかし、録画を開始したはずの自分ではなく、まったく別のユーザーのOneDriveに録画ファイルが保存されてしまうという予想外の状況が発生すると混乱してしまいます。ここでは、原因や対策を丁寧に探りながら、より効率的に問題を解決する方法を詳しく紹介します。
Teams会議録画の保存先にまつわる基本知識
会議を録画する際、Microsoft Teamsの仕様として録画は主催者や録画開始者のOneDrive、またはSharePointに保存されます。これを理解しておくと、意図しない保存先のトラブルを回避しやすくなります。ここではまず、Teams録画の保存がどのような仕組みで行われるのか、その基本を整理してみましょう。
Microsoft Stream (Classic) からOneDrive・SharePointへの移行
以前のTeams録画はMicrosoft Stream (Classic) と呼ばれるサービスに保存されていました。しかしMicrosoft 365全体のアップデートに伴い、現在では録画ファイルは以下のいずれかに保存されるケースが一般的です。
- 録画を開始したユーザーのOneDrive
- 会議のチャットやチャンネルを紐づけるSharePointサイト
OneDrive保存のイメージ
- 個人が主催または録画開始した場合:主催者や録画者のOneDriveに「録画」フォルダが作成され、そこにファイルが格納される。
- 共有範囲も自動的に設定され、会議参加者が視聴できるよう権限が付与される。
SharePoint保存のイメージ
- チームチャネルで会議を行った場合:関連するSharePointの「記録」や「録画」フォルダに保存されることが多い。
- チームのメンバーはそのSharePointライブラリを通じて録画を確認できる。
実際に起こりうる問題とその原因
本来であれば録画を開始したユーザーのOneDriveまたはチャンネルのSharePointに保存されるはずが、まったく関係のない別ユーザーのOneDriveに保存されてしまうという事象が報告されています。なぜこのような問題が起こるのでしょうか。いくつかの可能性を見てみましょう。
1. 実際に誰が「最初に」録画を開始したか
Teams上では、「最初に」録画ボタンを押した人物の所有物として録画が作成される という仕様が存在します。会議の主催者がいても、もし別の参加者が先に録画を開始していた場合、録画ファイルはその参加者のOneDriveに保存されます。
- 例:会議主催者A、参加者B、参加者Cがいるとします。Aが録画を始めたと思っていても、実際にはBが先に録画を開始していた場合、録画はBのOneDriveに保存される。
- このように、主催者の意図とは異なる保存先になりやすいため、まずは会議チャットのシステムメッセージや「会議の詳細」で「録画を開始した人物」が誰になっているかを必ず確認しましょう。
2. ポリシーや権限の特殊設定
企業内では、Teams管理ポータルやMicrosoft 365管理センターを用いて運用ポリシーを細かく設定している場合があります。
- 録画ファイルの格納先を自動で特定のSharePointへ保存する企業独自のルール
- 組織内のライセンス形態の違いにより、特定のユーザーが録画機能を利用できない設定になっている
- これらのポリシーによって、意図せず録画ファイルの所有権が移動してしまうケースも考えられます。
3. Microsoft 365アカウントの設定ミスやライセンス不一致
TeamsはMicrosoft 365アカウントと連携して動作しますが、アカウント管理側に設定ミスがあると想定外の挙動を見せることがあります。
- 同じユーザーに複数のメールアドレスやUPN (User Principal Name) が紐づいている
- ライセンスプランの誤設定により、録画権限が一時的に移譲されている
- 管理者が意図せずユーザー権限をスクリプトで変更していたため、その影響が録画機能に及んでいる
4. 過去のTeams設定やバージョンの影響
Teamsはアップデートが頻繁に行われています。古いバージョンや不完全なアップデートによって設定が中途半端に反映されていると、権限周りの不具合が生じるリスクがあります。
- 過去にはMicrosoft Stream (Classic) を利用していたが、OneDrive・SharePointへの移行時に設定が重複
- ポリシーの移行不備により、ユーザー毎の録画設定が混在
対策を考える前の初期確認ポイント
問題解決に向けては「録画開始者の特定」と「アカウント・ポリシーの状態」を徹底的に洗い出すことが肝要です。下記に初動で確認すべき項目を整理してみました。
チェック項目 | 確認内容 | 具体例 |
---|---|---|
録画開始者 | 会議チャットや通話履歴で誰が「開始」を押したか | 会議チャットに「〇〇さんが録画を開始しました」というシステム通知がある |
会議の種類 | チャネル会議かプライベート会議か | チャネル会議ならSharePoint、プライベート会議ならOneDriveが基本 |
ユーザーのライセンス | Enterprise E3/E5かBusiness系かなどの差異 | E3/E5では録画機能の利用や各種ポリシーが異なる可能性 |
管理ポータルのポリシー | 録画とストレージ先を制御していないか | Teams管理センターでカスタムポリシーが適用されていないか |
アカウント設定の重複 | 同一ユーザーで別メールやサインインの不整合 | 名前の似たアカウント(A)と(B)を混同していないか |
具体的な対処手順とトラブルシューティング
ここからは実際に問題が起こった際に踏むべき手順や、管理者レベルで行えるトラブルシューティングを詳しく解説します。上記の確認を終えた上で、次のステップを実施すると原因究明や対策がスムーズになります。
ステップ1:録画開始者の検証
- Teamsの会議チャットや会議履歴のシステムメッセージをチェック
- 「〇〇さんが録画を開始しました」と通知が残っていないか。
- 思い込みではなく、確実に該当ユーザーがボタンを押しているかを事実ベースで確認する。
- 会議主催者の操作ログを取得
- Microsoft 365監査ログを有効化している場合、Teams関連の操作ログが取得できる。
- 誰がいつ録画開始コマンドを実行したかが記録されていれば、保存先のズレを特定しやすい。
ステップ2:Teams管理ポータル・Microsoft 365管理センターの設定確認
- Teamsレコーディングポリシーの確認
- 管理センターで「録画ポリシー」や「クラウド録画」が有効になっているか確認。
- 特定のユーザーやグループに対して、録画先を固定する設定がなされていないか調べる。
- OneDrive・SharePointの自動保存設定の確認
- 組織レベルで決められた自動ルールや移動ルールがないか。
- DLP(データ損失防止)ポリシーとの連携で自動的に移動・コピーされる設定がないか。
- ユーザーライセンスと権限の確認
- 該当ユーザーのライセンスプラン(E3, E5, Business Premiumなど)を再チェック。
- ライセンス設定に誤りがないか、特定ユーザーにだけ録画機能が無効になっていないか。
ステップ3:対象ユーザーアカウントの詳細チェック
- アカウントのプロパティ確認
Microsoft 365管理センターやAzure Active Directoryで、対象ユーザーのUPN、メールアドレス、サインイン名を確認。 - アカウントの別名やエイリアスが競合していないか
似たようなアカウントが存在すると、OneDriveのURLも区別が難しくなる場合がある。 - グループポリシーやセキュリティグループの設定
過去にチーム内で「録画用アカウント」という特殊アカウントを用意しているケースがあるため、それが影響していないか要チェック。
ステップ4:Teamsクライアントアプリやデバイス環境の問題除外
Teamsのデスクトップアプリやブラウザ版でサインインアカウントが混在していると、意図せず別のアカウントとして操作している場合があります。
- クライアント更新:Teamsアプリのキャッシュやバージョンを更新し、サインアウト・サインインを再実施
- 他のデバイスからのログイン状況:モバイルアプリやタブレットなど、複数の端末で同時にログインしている場合、どの端末で録画を開始したか不明になりやすい
ステップ5:原因が特定できない場合はMicrosoftサポートへ問い合わせ
- 監査ログやポリシーの詳細調査
管理者権限で取得するログや設定情報でも原因がわからない場合は、Microsoftサポートにチケットを発行する。 - 詳細な操作ログの解析
MicrosoftサポートはTeamsやOneDriveのバックエンドログをさらに深く解析できるため、問題解決の糸口になる。
具体的な解決策の例
実際に起こった事例をもとに、考えられる原因と対処策をまとめてみました。
想定される原因 | 代表的な対処策 | 実施効果 |
---|---|---|
他の参加者が最初に録画を開始していた | 主催者の方針として「会議開始時は録画を開始しないように」周知 主催者が必ず録画を開始する運用ルールを定める | 意図しないユーザーのOneDriveに録画が保存されるリスクを下げる |
組織のカスタムポリシーによる強制保存 | 管理者がTeams管理センターを確認し、録画先の設定を修正 SharePoint保存に統一するなどのポリシー更新 | 誤設定が解除され、期待通り主催者のOneDriveまたはSharePointに保存される |
ライセンスプランや権限の不整合 | 該当ユーザーのライセンス割り当てを見直す 管理者がユーザーの録画機能を「有効」に設定し直す | 録画機能が正常に割り当てられ、録画先の問題が解消される |
アカウントが複数存在し混在していた | Azure ADで重複アカウントや別名を整理 利用しないアカウントは削除または無効化 | 録画の所有者が明確になり、別ユーザーのOneDriveへ誤保存されるトラブルを回避 |
運用上の注意点とベストプラクティス
録画にまつわるトラブルを減らすためには、日頃の運用ルールと環境設定が重要です。以下のベストプラクティスを参考にしましょう。
1. 会議開始前に録画ポリシーを共有
- もし録画が必要であれば、主催者が明確に録画を開始する役割を担うと決めておく
- 会議開始直後に録画ボタンを押し、ほかの参加者が押さないよう声掛けする
2. IT管理者との連携強化
- TeamsやOneDrive、SharePointのポリシー管理はIT管理部門が行う場合が多い
- 事前に「録画先の指定」や「ライセンス紐づけ」など運用ルールを明記したドキュメントを整備
3. ユーザー教育の徹底
- ユーザー同士で「録画はどこに保存されるか」を理解しておくことが大切
- OneDriveとSharePointの違いを周知しておけば、万が一どこに保存されているか分からなくなった場合でもトラブルシューティングが早い
4. 定期的なポリシー監査
- Microsoft 365管理センターでのポリシーやライセンス設定が意図した状態になっているか、四半期などのタイミングでチェック
- 不要になったアカウントの削除やライセンスの調整を迅速に行い、権限の混在を防止
5. 監査ログの活用
- Microsoft 365の監査ログを有効化しておけば、録画の開始・停止を含む操作履歴が残る
- いざ問題が発生したときに原因を突き止めやすい
さらに深刻な場合の対応とサポート依頼
どうしても原因が特定できず、録画ファイルが毎回別のユーザーに紐づいてしまうなど深刻な問題が続く場合は、Microsoftのサポート窓口に問い合わせることを検討しましょう。特に以下のような状況では専門的なサポートが必要になります。
- すべての設定・ポリシーを確認しても問題の再現性が続く
- 一部のユーザーに限定して録画先が誤って保存される
- 多数のユーザーが利用する大規模テナントで原因が複合的になっている
サポートを依頼する際は、下記の情報を用意するとスムーズです。
- 問題が発生しているユーザーのメールアドレスまたはUPN
- 問題が起こった会議の日時やURL、会議ID
- 監査ログが取得できている場合、そのログ情報
- 録画を行うデバイスやクライアントのバージョン情報
まとめ:トラブルを未然に防ぐ運用を心がけよう
Teamsで録画したファイルが別のユーザーのOneDriveに保存されてしまう問題は、意外に身近な設定ミスや運用上のすれ違いで起こることが多いです。まずは「誰がいつ録画を開始したか」を最優先で確認し、管理ポータルでのポリシー設定やライセンス割り当てを見直すことで大半の問題は解決可能です。
さらに、運用ルールやユーザー教育を徹底しておけば、同様のトラブルを未然に防ぎやすくなります。必要に応じてMicrosoftサポートを頼ることで、より深い原因や環境依存の問題にも対応できるでしょう。会議録画は企業にとって重要な資産となる場合も多いため、今後も録画の保存先と権限設定を適切に管理し、安心してTeamsを活用できるようにしておくことをおすすめします。
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