テレワークやオンライン会議の普及により、Microsoft Teamsを活用する場面が増えるなか、新しいTeamsデスクトップアプリを使って画面共有すると音量が下がってしまうトラブルに困っている方も少なくありません。本記事では、問題の原因や解決策をさまざまな角度から掘り下げ、設定変更の具体的な手順や対策法を分かりやすく解説していきます。
新しいTeamsで発生する音量低下の概要
新しいTeamsデスクトップアプリ(クラシックTeamsと比べてUIや機能が刷新されたバージョン)を使って会議中に画面共有を行い、「コンピューターの音声を含める」オプションをオンにすると、共有者自身のスピーカーやヘッドセットの音量が著しく低下してしまう現象が報告されています。しかも、この問題はClassic TeamsやTeams Webアプリを使った場合には発生せず、新しいTeamsだけで起こる点が特徴です。
この不具合は、共有者側の音量が下がるだけでなく、会議参加者への音声共有に影響が出る場合もあり、プレゼンテーションや動画を使った説明など、音声を伴う共有が必要な場面で大きな支障となります。組織内で複数ユーザーが同様の問題に直面しているケースもあり、単なるデバイスやドライバーの不具合だけではない可能性が示唆されています。
従来のTeams(Classic Teams)では問題なし
興味深い点として、クラシックTeamsで同じ操作(画面共有+コンピューターの音声を含める)を行っても音量が下がる問題は発生しません。新しいTeamsに移行して初めて起こるようになったため、アプリ側の設定や動作仕様が原因と考えられます。
Webアプリなら問題ないが機能不足がネック
新しいTeams Webアプリを利用すると音量低下の問題は起こらないことも確認されています。しかし、Webアプリ版Teamsにはブレイクアウトルームの作成・管理やカスタム背景設定など、まだ利用できない機能があるため、完全な代替としては活用しづらいのが現状です。
原因の考察とWindowsの通信設定
今回の音量低下問題の主要な原因のひとつとして、Windowsの「通信時に音量を下げる」機能が影響している可能性が高いと見られています。これは、Windowsが「音声通話」などの通信を検出すると、ほかのアプリケーションやシステムサウンドを自動で抑制する仕組みです。
Windowsの音量調整機能
Windowsには、コミュニケーションアプリ(SkypeやTeamsなど)で音声通話をするときに、音楽再生やシステム通知音などの音量を自動調整する仕組みがあります。デフォルトでは、通信を検出した際に音量を下げるように設定されている場合が多く、これが新しいTeamsの画面共有時(音声込み)で働いてしまう可能性があります。
原因とTeams特有の挙動
新しいTeamsは、内部的に音声の入出力をクラシックTeamsと異なる仕組みで制御していると推測されます。その結果、Windows側から「通話中」と誤認識されるタイミングが増え、画面共有時に音声が含まれると、システムが強制的に音量を下げる動作を促してしまうことが考えられます。
解決策①:Windowsの通信設定を「何もしない」に変更
最も有効とされる対策が、Windowsの「通信」設定をオフにする方法です。具体的な手順は以下のとおりです。
- コントロールパネルの開き方
- Windowsキーを押して「コントロールパネル」と入力、またはWindowsの検索バーで「コントロールパネル」を検索して起動します。
- 「ハードウェアとサウンド」を選択
- コントロールパネルがカテゴリ表示になっている場合は、「ハードウェアとサウンド」をクリックします。
- 「サウンド」をクリック
- 「ハードウェアとサウンド」の中にある「サウンド」を選択すると、音声デバイスに関する設定画面が表示されます。
- 「通信」タブに移動
- サウンド設定画面上部のタブから「通信」をクリックします。すると「Windowsが通信活動を検出したときの動作」というセクションが出てきます。
- 「何もしない(Do Nothing)」を選択
- デフォルトでは「音量を80%下げる」などのオプションが選ばれていることが多いですが、ここで「何もしない」を選んで「適用」をクリックします。
- 設定を確認・再起動(必要に応じて)
- 設定変更後、念のためPCを再起動すると確実です。再度Teamsで画面共有+コンピューターの音声共有をテストしてください。
以下の表に、設定変更手順をまとめました。
手順 | 操作内容 | 補足 |
---|---|---|
1 | コントロールパネルを開く | Windowsキー + 検索バー入力が便利 |
2 | 「ハードウェアとサウンド」を選択 | カテゴリ表示の場合のみ該当 |
3 | 「サウンド」をクリック | アイコン表示の場合は「サウンド」で検索 |
4 | 「通信」タブを選択 | 上部タブの一番右側付近に位置 |
5 | 「何もしない」を選択し「適用」をクリック | デフォルトは「音量を80%下げる」など |
6 | 必要に応じてPCを再起動 | 設定が反映されない場合は再起動が有効 |
7 | Teamsで画面共有+音声共有をテスト | 音量低下が改善されているか確認 |
この設定変更の効果
この操作を行うことで、Windowsが音声通話を検出しても他アプリやシステムサウンドの音量を下げなくなり、新しいTeamsでコンピューター音声を共有しても自分のスピーカーやヘッドセットの音が極端に下がることがなくなります。
メリットと注意点
- メリット
- 即効性が高く、設定変更後すぐに音量低下が解消されたとの報告が多い。
- Windows標準機能の簡単な切り替えなので、特別なソフト導入や高度な操作は不要。
- 注意点
- 他の通話アプリケーション(ZoomやSkypeなど)でも、通話時に音量が自動調整されなくなる。ほとんどのユーザーには問題ないが、人によっては環境が変わる可能性がある。
- 組織のITポリシーによってはユーザー自身が設定を変更できない場合がある。管理者に相談が必要かもしれない。
解決策②:Microsoftサポートへの問い合わせ
「通信時に音量を下げる」設定を「何もしない」に変更しても改善しない場合や、組織内で広範囲にわたってトラブルが報告されている場合には、管理者がMicrosoft 365管理センターからサービスリクエストを提出することを検討しましょう。Microsoftサポートの担当者とやり取りすることで、より詳細なトラブルシューティングを行い、Teamsのメディアログやデバッグ情報を解析してもらえます。
問い合わせ時に準備しておきたい情報
- 問題が発生するユーザーの数と傾向
- 特定の部門や役職のユーザーだけなのか、全社的に発生しているのかを明確にします。
- 具体的な再現手順
- 画面共有を開始してから何秒後に音量が下がるのか、どの操作を行った際に問題が発生するのかなど詳細に伝えるとスムーズです。
- 利用デバイスとOSの種類
- Windows 11またはWindows 10のビルド番号、利用しているサウンドデバイス(内蔵スピーカー、USBヘッドセットなど)も含めましょう。
- Teamsのバージョン情報
- 新しいTeams(Preview版、正式リリース版など)のバージョンを確認しておくと不具合切り分けに役立ちます。
解決策③:一時的な回避策としてのClassic Teams・Webアプリ利用
すぐに問題が解決しない場合の暫定策として、以下の方法も考えられます。
Classic Teamsへの切り替え
新しいTeamsではなく、クラシックTeamsに戻すことで、画面共有時の音量低下が解消する場合があります。大規模組織では管理ポリシーによって利用できるアプリのバージョンが制限されるケースもあるため、IT管理者やシステム管理者と連携してアプリバージョンを調整しましょう。
クラシックTeamsを使うデメリット
- 新しいTeams限定の機能(UIの改善や一部コラボ機能など)が使えない。
- 将来的に完全移行が進められているため、長期的には推奨されない可能性がある。
Teams Webアプリの利用
WebブラウザからアクセスできるTeams Webアプリでは、ブレイクアウトルームの管理やカスタム背景設定など、一部機能が制限されるものの、音量低下の問題は起きないことが報告されています。今すぐビデオ会議で共有が必要だが音量低下が致命的に困る、といった緊急時にはWebアプリの利用を検討できます。
Webアプリ利用時のポイント
- 対応ブラウザ
- Microsoft EdgeやGoogle Chromeなど、最新バージョンのブラウザを利用することで安定性が高まります。
- 機能制限に注意
- Webアプリでできない操作が必要な場合、別の手段(共同ホストをつける、Classic Teamsを使うなど)で補完しましょう。
その他のトラブルシューティングとヒント
ここでは、Teamsの音声トラブルを解消する際に役立つ追加の情報やヒントをまとめました。
オーディオドライバーとデバイス管理
PCのオーディオドライバーが古い場合、Teams以外でも音声の不具合が起こることがあります。最新ドライバーへの更新や、ヘッドセットやマイクの接続方式(USB、Bluetoothなど)を確認しておくとトラブルの切り分けがしやすくなります。
デバイスマネージャーでの確認方法
- 「スタートボタン」を右クリック → 「デバイスマネージャー」から「サウンド、ビデオ、およびゲームコントローラー」を展開
- 表示されるデバイスに警告マークがないか確認し、不明なデバイスがあれば適切にドライバーをインストール
ネットワーク環境の安定性
ネットワーク帯域が極端に不足している場合、音声や映像が途切れ途切れになったり、配信側と受信側で遅延や品質低下が発生します。音量そのものが下がる問題とは別ですが、映像や音声トラブルを総合的に解決するにはネットワーク環境の見直しも重要です。
メリット・デメリットの整理
今回紹介した解決策を導入するときのメリットとデメリットを、再度整理します。
「通信時に音量を下げる」無効化のメリット
- シンプルな操作で即時解決
コントロールパネルの簡単な変更だけで済むため、多くの場合すぐに効果が見られます。 - Teamsの新機能をそのまま利用可能
わざわざクラシックTeamsに戻さずに、新しいUIや機能を維持できます。
「通信時に音量を下げる」無効化のデメリット
- 他の通話アプリへの影響
Windowsの音量調整機能を完全にオフにするため、SkypeやZoomなどで通話中に音量が自動で下がらなくなります。 - 環境依存のリスク
ユーザーによっては環境が複雑で、単純にこの設定だけでは解決しない場合もあります。
具体例:ユーザーが遭遇したケーススタディ
ここでは、ある企業でのケーススタディを紹介します。
ケース1:ヘッドセット使用時にのみ音量が下がる
- 状況
一部のユーザーのみ、新しいTeamsでUSB接続のヘッドセットを使うときだけ音量が下がってしまう現象が発生。Bluetooth接続や内蔵スピーカーでは問題なし。 - 解決策
Windowsの「通信時に音量を下げる」を無効化し、ヘッドセットのドライバーを最新にアップデート。問題が改善した後、再発なし。
ケース2:業務でブレイクアウトルームが必要なためWebアプリへの完全移行が不可
- 状況
大規模オンライン研修でブレイクアウトルームを駆使していたが、新しいTeamsデスクトップアプリで音量が下がる問題が続発。Webアプリでは機能不足のため切り替え不能。 - 解決策
Windowsの設定変更に加え、必要な場合のみClassic Teamsを使うようにガイドラインを整備。段階的に新しいTeamsと併用しつつ検証を継続。
表やコードを活用した解説の一例
実際の環境によっては、Windowsの設定をレジストリから直接変更する手法もあります。ただし、レジストリ操作はシステムへのリスクが伴うため、推奨度は低いです。参考までに記載します。
Windows Registry Editor Version 5.00
[HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Multimedia\Audio]
"DoNotLowerAudio"=dword:00000001
このように「DoNotLowerAudio」キーを追加することで、コミュニケーションツールによる音量低下を抑制する方法も考えられます。ただし、レジストリを直接編集する場合は事前にバックアップを取り、自己責任で行ってください。
まとめと今後の展望
新しいTeamsで画面共有時に音量が下がる問題は、多くのユーザーが直面している不具合の一つですが、Windowsの「通信時に音量を下げる」設定を「何もしない」にすることで解決するケースが多々報告されています。また、一時的にクラシックTeamsやTeams Webアプリを活用することで現場の混乱を最小限に抑えつつ、Microsoftサポートを通じた詳細なトラブルシューティングやアップデートのリリースを待つのも有効な手段です。
今後、Microsoftから新しいTeamsのアップデートが提供される際に、この問題が公式に修正される可能性もあります。最新情報を定期的にチェックし、必要に応じて管理者が音声関連のポリシー設定やアップデートの導入を行うことで、より快適なオンライン会議環境を整備していきましょう。
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