Microsoft Teams はリモートワークやオンライン会議を円滑に進めるための主要ツールとして、多くの組織で活用されています。新しい Teams(プレビュー版)では利便性が高まった一方、共有チャネルのファイルがデスクトップ アプリで開けないといった課題が見受けられます。今回の記事では、その背景と具体的な対処策をわかりやすく解説します。
新しい Teams(プレビュー版)で生じるファイルの問題とは
新しい Teams(プレビュー版)では、インターフェイスや動作速度などが大幅に改善され、ユーザーからは「軽快に動作する」「シンプルで使いやすい」といった好評がある一方で、一部の機能においてクラシック Teams(従来のバージョン)とは異なる挙動が確認されています。特に話題になっているのが、共有チャネルにアップロードされたファイルをデスクトップ アプリで開こうとしても、実際にはブラウザで開いてしまう問題です。
共有チャネルは、組織内のメンバーだけでなく、外部テナントのユーザーとも選択的にコンテンツを共有できる仕組みが特徴です。複数の組織やテナントを横断して利用されるケースが多いため、権限管理や安全性の確保がより厳密に行われます。そのため、デスクトップ アプリへのリンクよりもブラウザでのアクセスがデフォルトになっていると考えられています。実際、Microsoft サポートの見解によると「仕様(意図された動作)」であるとのことです。
ただし、クラシック Teams であれば標準チャネルやプライベートチャネルと同様に、共有チャネルのファイルもデスクトップ アプリで開くことができていたため、多くのユーザーは新しい Teams に移行した際のギャップに戸惑っています。ここでは、その原因と具体的な対処策を探っていきましょう。
「既定でデスクトップ アプリで開く」に設定しているのに開けない
クラシック Teams では、チャネルのファイル タブやSharePointサイトのライブラリ設定などで「既定の動作」を「デスクトップ アプリで開く」に設定しておくと、該当のOfficeドキュメント(Word, Excel, PowerPointなど)をクリックした際に自動的にデスクトップ アプリが起動していました。
ところが、新しい Teams(プレビュー版)の共有チャネルでは、この設定が効かずブラウザで開いてしまいます。この挙動は下記のような特徴があります。
- 標準チャネルやプライベートチャネルでは、デスクトップ アプリで開く設定が機能する
- 共有チャネルのみがブラウザ強制になる
- Microsoft 365 から直接ファイルを開く場合は、従来通り設定どおりに動作する
- 新しい Teams(プレビュー版)で共有チャネルを利用中にファイルをクリックすると、ブラウザ版のOfficeが起動する
こうした差異はユーザーの混乱を招き、「設定が壊れたのではないか」「自分だけの問題かもしれない」と疑心暗鬼になりがちです。実際には設定やシステム側の不具合ではなく、共有チャネルに関する仕様上の制限によって引き起こされている挙動と考えられます。
原因として考えられる要素
共有チャネルのコンセプトや新しい Teams(プレビュー版)の開発状況を踏まえると、いくつかの要因が重なっていると推察できます。
1. マルチテナント環境を重視した設計
共有チャネルは、異なる組織や外部テナントのユーザーともファイルやチャットをシームレスに共有することを目的としています。そのため、ブラウザ経由のアクセスを基本動作に設定し、安全性や互換性を確保していると考えられます。ブラウザであれば、どの環境でも同一のユーザー体験を提供しやすく、企業が抱えるセキュリティ要件にも柔軟に対応可能です。
2. 新しい Teams(プレビュー版)の開発途上
新しい Teams(プレビュー版)は、開発途上の製品であり、正式リリース版と比べると機能が限定されていたり、一部の設定が優先度の都合で実装されていない場合があります。Microsoft からも「今後のアップデートで機能が追加される可能性がある」と示唆される一方、現時点で明確なロードマップは公表されていません。
3. 組織の管理ポリシーやセキュリティ設定
企業や組織では、Microsoft 365 管理センターやAzure ADなどを通じて、外部共有に関するポリシーを厳重に設定しているケースがあります。共有チャネルは外部ユーザーとのコラボレーションを前提としているため、デスクトップ アプリの使用が許可されていない、またはアクセス方法が制限されている可能性があります。管理者が定めたポリシーにより、共有チャネルではブラウザ強制の挙動が強まることも考えられます。
ポリシー例: SharePoint外部共有設定
以下のようなポリシーが適用されている場合、共有チャネルでデスクトップ アプリを開く動作が制限されるケースがあります。
# SharePoint 管理シェルの例 (PowerShell)
Connect-SPOService -Url https://<テナント名>-admin.sharepoint.com
# 外部共有ポリシーを制限的に設定
Set-SPOTenant -SharingCapability ExternalUserSharingOnly
このように、外部共有機能を絞っていると、共有チャネルでの動作がブラウザ優先になりやすいと想定されます。
Microsoft サポートの見解と「仕様」である理由
Microsoft サポートに問い合わせた多くのユーザーによると、共有チャネルにおけるデスクトップ アプリではなくブラウザでファイルを開く挙動は「バグではなく仕様(意図された動作)」とされています。特に、外部ユーザーとのコラボレーションを前提とした共有チャネルでは、次のような観点からブラウザでの作業が推奨されているようです。
- 権限管理の複雑さ: 外部ユーザーやゲストが混在する場合、デスクトップ アプリ側の認証やライセンス管理が煩雑になる
- セキュリティ保護: ブラウザからのアクセスであれば、MFA(多要素認証)や条件付きアクセスなどのセキュリティ機能を一貫して適用しやすい
- トラブルシューティングの容易さ: ブラウザベースのOfficeはログやエラー追跡が容易であり、サポートがシンプルになる
Microsoft としては、まず共有チャネルの安定性と安全性を優先し、外部ユーザーとのスムーズなコラボレーションを実現するための暫定措置として、この仕様を採用している可能性があります。
実際の対処策と運用上の工夫
現時点では、根本的に「共有チャネルでもデスクトップ アプリで自動的に開くようにする」設定は提供されていません。しかし、いくつかの手段を組み合わせることで、ある程度の利便性向上を図ることができます。
1. クラシック Teams への切り替え
最もシンプルかつ確実な解決策は、必要に応じてクラシック Teams を利用することです。新しい Teams(プレビュー版)のアイコンをタスクバーやスタートメニューにピン留めしている場合でも、クラシック Teams を同時にインストールしておけば切り替えが可能です。どうしてもデスクトップ アプリで編集したいファイルがある場合は、クラシック Teams に切り替えて作業することで、従来どおりの動作が期待できます。
2. OneDrive や SharePoint サイトから開く
共有チャネルにアップロードされたファイルは、実態としてはSharePointのドキュメント ライブラリ上に保存されています。そのため、該当のSharePointサイトやOneDrive for Businessの「共有されたファイル」から直接ファイルを探し、そこから「デスクトップ アプリで開く」を選択する方法が取れます。
特にExcelファイルなどで複雑なマクロや機能を使う場合、ブラウザ版では限界があります。そうしたケースでは、SharePointやOneDrive経由で開くのが一つの回避策となります。
SharePoint上で「デスクトップ アプリで開く」を選択する手順
- Teamsの共有チャネルに対応するSharePointのドキュメント ライブラリを開く
- 該当ファイルを選択
- 「開く」メニューから「デスクトップ アプリで開く」を選択
この手順であれば、通常どおりのデスクトップ アプリを用いた編集が可能です。
3. 共有チャネルを使わない運用を検討する
そもそも、標準チャネルやプライベートチャネルだけで社内運用が回るようであれば、共有チャネルの利用を控える選択肢もあります。共有チャネルは外部テナントとのコラボレーションが主な目的であり、社内メンバーのみで運用する場合は、標準チャネルでも十分に対応可能です。
ただし、外部ユーザーが含まれているプロジェクトでは、共有チャネルの利便性が高いため、そのメリットとデスクトップ アプリでの制限を天秤にかけて選択する必要があります。
4. 将来的なアップデートに期待し、フィードバックを送る
Microsoft Teamsの新機能や改善は、ユーザーからのフィードバックによって優先順位が変わります。今回のような挙動に対して、「デスクトップ アプリで開きたい」「共有チャネルでもクラシックと同等の操作性を確保してほしい」といった要望をMicrosoftが把握すれば、将来的に仕様変更される可能性があります。
TeamsやMicrosoft 365の公式フィードバックサイトやUserVoiceを通じて積極的に要望を送り、改善を待つのも一つの方法です。
共有チャネルと標準チャネルの比較表
下表は、新しい Teams(プレビュー版)における標準チャネルと共有チャネルの主な違いをまとめたものです。どちらを採用すべきか判断する際の参考にしてください。
項目 | 標準チャネル | 共有チャネル |
---|---|---|
利用シーン | 同一組織内のやり取り中心 | 外部テナントや別組織とのコラボ向け |
ファイルの既定の開き方 | 設定に応じて デスクトップ/ブラウザ | ブラウザ優先(仕様) |
アクセス管理 | チーム全員が基本的にアクセス可能 | 共有先のユーザー、テナント限定 |
プレビュー版との相性 | 比較的安定して動作 | 不具合や制限が発生しやすい |
メリット | シンプル・既存運用に馴染みやすい | 外部とのやり取りを 同じUIで完結できる |
デメリット | 外部ユーザーとの直接共有は困難 | デスクトップ アプリで開けないなど 制限が多い |
実際の利用例と運用上のポイント
ここでは、実際に新しい Teams(プレビュー版)で共有チャネルを利用する際に押さえておきたいポイントをいくつか挙げます。
1. 権限の割り当てを慎重に行う
共有チャネルは外部ユーザーを含めた複数テナントでのコラボレーションを可能にします。しかし誤って重要データを扱うチャネルに外部ユーザーを招待してしまうと、情報漏えいリスクが高まる危険性があります。Teams 管理者やオーナーは、共有チャネル作成時にきちんと権限を確認し、不要な外部ユーザーが含まれていないかチェックしましょう。
2. ブラウザ版Officeの編集限界を知る
ExcelのマクロやVBA、PowerPointの高度なアニメーションやWordの複雑なレイアウトなど、ブラウザ版Officeでは対応できない機能があります。共有チャネルで保管しているファイルをそうした高度な編集が必要な状況で扱う場合は、事前に標準チャネルへファイルを移動してから作業する、または前述のとおりSharePoint経由でデスクトップ アプリを開くといった工夫が必要です。
3. 組織内でのマニュアル整備
「新しい Teams(プレビュー版)では、共有チャネルのファイルはブラウザで開く」という点は、ITリテラシーの高くないメンバーにとっては混乱の元になります。運用管理者はマニュアルやFAQを整備し、「通常のチャネルと共有チャネルでは動作が違う」ことをわかりやすく説明しておきましょう。また、共有チャネル利用時のメリット・デメリットを明示することで、適切なチャネル選択を促すことができます。
4. トラブルシューティングのためのログ取得
新しい Teams(プレビュー版)は正式リリース前のため、想定外の不具合が発生する可能性があります。突然ファイルが開けなくなった場合やチャネルが消えてしまった場合など、予期せぬトラブルへの備えとして、ログ取得方法を把握しておくと便利です。
Teamsの設定画面からログを有効化したり、Microsoft 365監査ログの活用方法を事前に学習しておけば、問題が起きても迅速にサポートへ報告できるでしょう。
実践的な対処策の例:FlowやPower Automateによる回避
どうしても共有チャネル内のファイルをデスクトップ アプリで開くワークフローを作りたい場合、Power Automate(旧称 Microsoft Flow)などを使ったカスタムソリューションを検討してみるのも手です。
例えば、共有チャネルにファイルがアップロードされたタイミングでSharePoint側に自動でファイルをコピーし、標準チャネルや別のライブラリへ連携させることで、デスクトップ アプリでの編集フローを確保する仕組みを構築できます。運用コストは高まるものの、大規模なプロジェクトや管理が厳密な環境では有効な方法となり得ます。
Power Automateの簡単なサンプル
1. トリガー:「アイテムが作成または変更されたとき」(共有チャネル対応のSharePointライブラリ)
2. アクション:「ファイルをコピーする」(コピー先を標準チャネル対応のライブラリなどに設定)
3. 必要に応じて「ファイルの更新」「メタデータの付与」などのステップを追加
こうしたフローを自動化することで、ユーザーは結果的に標準チャネル側のSharePointライブラリからファイルを開くことができ、デスクトップ アプリでの編集もスムーズに行えるようになります。ただし、この方法はシステム管理者や高度なユーザーが設計・管理しないと混乱を招く可能性があります。
今後の見通しと情報収集の重要性
Microsoftは常にTeamsの新機能や改善点を検討・実装しています。共有チャネルに関しては、新しい Teams(プレビュー版)の正式リリースに向けて機能追加や仕様変更が行われる可能性が高いでしょう。そのため、最新情報を常にチェックし、環境で検証を行いながら運用方針を柔軟に調整することが大切です。
- Microsoft 365 ロードマップ: 新機能のリリース予定やアップデート情報が掲載される
- Microsoft Teams Blog: 製品チームからの公式アナウンスやテクニカルガイドが公開される
- Microsoft Tech Community: ユーザー同士の情報交換の場で、トラブル事例や解決策を共有
現状では「共有チャネルのファイルをブラウザで開くのは仕様」として認識し、必要に応じてクラシック Teams へ切り替える、あるいはSharePointサイトからデスクトップ アプリを開くなど、暫定的な運用で乗り切ることをおすすめします。
まとめ
新しい Teams(プレビュー版)は、多くの改善点をもたらしつつ、まだ開発途上の機能や仕様が含まれています。共有チャネルでファイルを開く際のブラウザ強制は「バグ」ではなく「仕様」とされており、特に外部ユーザーとのコラボレーションで安全性や利便性を確保するための設計と考えられます。
しかし、従来のクラシック Teams で当然のようにできていた動作が行えないことは、多くのユーザーにとっては不便です。今回紹介したように、クラシック Teams に切り替えたり、SharePoint経由でファイルを開いたり、Power Automateを活用したりといった手段を講じて、現場レベルでの運用の混乱を最小限に抑えることができます。
今後も公式フィードバックサイトなどを活用して要望を出し続けることで、将来的に「共有チャネルでもデスクトップ アプリが既定で開ける」ようになる可能性も否定できません。状況に応じて最適なチャネルの使い分けを検討しながら、チーム全体の生産性を高めていきましょう。
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