Microsoft TeamsのO365コネクタ廃止に備える!Workflowコネクタの活用と移行ポイント

Microsoft Teamsを活用してコミュニケーションを効率化したい方にとって、Webhook機能を利用するのはよくある選択肢です。しかし近年、Office 365コネクタの廃止予定が発表されたことにより、Power AutomateベースのWorkflowコネクタへ移行する動きが本格化しています。ここでは、O365コネクタとWorkflowコネクタの違いや、Webhook URLの形式、ペイロードへの影響など、移行に役立つ情報を詳しく解説していきます。

O365コネクタ廃止の背景

Office 365コネクタ(通称O365コネクタ)は、Teamsのチャネルに外部アプリやサービスからの通知を簡易的に連携できる仕組みとして、これまで多くのユーザーに利用されてきました。ところがMicrosoftは、2024年10月1日をもってこのO365コネクタを廃止すると正式に発表しています。廃止に至った背景としては、より高度で拡張性のあるPower Automate(Workflow)の活用を推奨する流れや、セキュリティ要件の変化などが挙げられます。

企業全体のクラウド移行とセキュリティ強化

O365コネクタの特徴は手軽にWebhookを利用できる点でしたが、構成の柔軟性やセキュリティ要件に対する細かいカスタマイズは限られていました。一方で、企業全体のクラウド活用が進む中、Teamsのチャットやチャンネル連携にも高い信頼性や拡張性が求められています。そこでMicrosoftは、より強力なワークフローや自動化機能を備えたPower Automateを軸に、通知連携も行える新しいWorkflowコネクタを推奨しています。

Power Automate(Workflow)の存在感

Power Automateは、Microsoft Power Platformの一部として、多彩なSaaS・オンプレミスサービスとの連携が可能な自動化ツールです。ポイントアンドクリックでワークフローを作成できるため、開発者だけでなく業務部門のユーザーでも扱いやすいメリットがあります。このツールのWorkflowコネクタに統合することで、一括管理やセキュリティ設定、ログの記録などを包括的に行いやすくなります。

Workflowコネクタとは

O365コネクタの代替としてMicrosoftが推奨しているのが、Power Automateを利用したWorkflowコネクタです。具体的には、Power Automate内でTeamsチャンネルへメッセージを送るためのトリガーまたはアクションを設定し、Webhook URLを発行します。O365コネクタでは標準で用意されていた簡易的なWebhook設定から一歩進んだ形で、より柔軟な自動化やカスタム処理に対応できる点が特徴的です。

Webhookの発行フロー

  1. Power Automateで新規フロー(ワークフロー)を作成
  2. Teamsコネクタを利用して「メッセージを送信する」アクションを選択
  3. フロー全体を保存・公開すると、Webhook URLが自動生成される

このように、O365コネクタが提供していたWebhook URLとは異なる形で、各ワークフローごとに固有のURLが払い出されます。

Power Automateポータルでの設定

  • Office 365の管理ポータル、もしくはPower Platformのポータルにアクセス
  • 新規フロー作成で「瞬時に実行」や「HTTP リクエストを受け取ったとき」などトリガーを選択
  • Teamsへの送信アクションを追加し、必要な情報(チャンネル、テキスト、アダプティブカードなど)を設定

このプロセスを完了してフローを保存すると、ユニークなWebhookエンドポイントが発行されます。

WorkflowコネクタのURL構造

O365コネクタのWebhook URLは「https://outlook.office.com/webhook/…」のようにグループIDやWebhook Suffixを含む形で、ある程度予想しやすい構造でした。一方、Workflowコネクタの場合は、Power Automateの内部で発行される固有の文字列(英数字やハイフン等)が含まれた、完全にユニークなURLとなります。

O365コネクタ(Webhook形式)Workflowコネクタ(Webhook形式)
https://outlook.office.com/webhook/{GroupID}/IncomingWebhook/{Suffix}/{TeamsChannelID}https://prod-xxx.westus.logic.azure.com:443/workflows/{GUID}/triggers/manual/paths/invoke?api-version=2016-10-01&sp={文字列}&sv=1.0&sig={署名}
グループID + サフィックス + チャンネルIDがURLの中で確認可能GUIDや署名などが含まれており、直接組み立てるのは困難

このように、WorkflowコネクタはベースURLがユーザーに公開されない設計で、すべての情報を含んだ「フルのURL」をそのまま利用する必要があります。

ベースURLを組み立てるのは難しい

O365コネクタ時代には、たとえば「https://outlook.office.com/webhook/」というベースURLにグループIDやSuffixをつないでWebhookを作成しやすかったのですが、Workflowコネクタではこの手法が通用しません。
ワークフローごとに発行されるURLは長い文字列となり、単純に一部を差し替えたり組み立てたりする仕組みは提供されていません。そのため、ユーザー側に入力を簡易化させるための設計は工夫が必要になります。

ペイロードの変更点

O365コネクタでは、簡易的なJSONペイロードを使ってカード形式のメッセージを送信することが一般的でした。Workflowコネクタでも、Teamsのアダプティブカード形式やChatボット向けのJSONメッセージ形式を流用することが可能です。

アダプティブカードやメッセージカード

  • アダプティブカード: 最新のTeamsメッセージ形式として推奨。UI要素が豊富で、応答アクションやボタンなども配置可能。
  • レガシーなOffice 365 Connector Card(メッセージカード形式): 移行の初期段階で使用可能なことが多いが、将来的には廃止または非推奨となる可能性あり。

Workflowコネクタで送信する場合も、基本の構造はTeamsが解釈できるJSONを準備してPOSTする流れは同様です。ただし、O365コネクタ用のペイロードをそのまま流用する場合、カードの表示やボタンの動作が期待通りにならない場合があるため、事前のテストを入念に行うことが大切です。

認証やセキュリティレイヤー

Workflowコネクタでは、トリガー部分で「HTTP リクエストを受け取ったとき」という項目を設定する形となり、そこにはShared Access Signature(SAS)の仕組みが使われることが多いです。URL内に署名が含まれ、正しい署名を持ったリクエストのみ受け取る仕組みとなっています。ユーザーが意図的にURLを公開しない限り、第三者が送信することは困難ですが、管理者は運用上のセキュリティポリシーを整備し、URLの取り扱いに注意する必要があります。

単一エンドポイント運用の課題と解決策

O365コネクタでは、Webアプリなどの設定画面で「グループID+Webhook Suffix」を入力させることで、比較的シンプルに複数のエンドポイントを使い回せていました。WorkflowコネクタではベースURLが見えないため、同様の仕組みを作ろうとすると大きく設計を変えなければなりません。

WorkflowコネクタはフルURLをそのまま保管する方法が主流

単一のWebhookエンドポイントを運用したい場合でも、実際には「それぞれのワークフローで生成されるURL」をすべてどこかに保管して、適宜切り替えるといった方法が必要となります。
よくある手法としては、以下のような構成管理の仕組みを利用するケースです。

  • プラグインやアプリケーション側で複数のURLを紐づけ管理し、ユーザーには「どのURLを使いたいか」を選ばせる。
  • SharePointやAzure Key Vaultなど安全なストレージにWebhook URLを格納し、必要に応じて取得する。
  • 組織内でConfigファイルやデータベースを用意し、URLリストを定義しておく。

こうした工夫により、O365コネクタのようにURLを簡単に組み立てるのではなく、フルURLを取りまわす手間を最小限に抑えます。

公式APIの有無

現時点(2025年時点)でMicrosoftが提供しているドキュメントやAPI一覧を見ても、Power AutomateのワークフローからWebhook URLのベース部分を取得する公式APIは確認されていません。
そのため、Workflowコネクタを利用する場合は、以下のような運用フローを取る必要があります。

  1. 管理者もしくはフロー作成者がPower AutomateでWorkflowを作成
  2. 発行されたフルURLを控え、組織のアプリやプラグインへ設定
  3. 設定を更新する場合は再度フローを公開し、新たなURLを取得

O365コネクタのように「ユーザーが一部文字列を入力してURLを生成する」という手間を省く機能は無く、手動管理が原則です。

Workflowコネクタ移行のメリットとデメリット

移行にはいくつかのメリットとデメリットが存在します。下記の表で整理してみましょう。

項目メリットデメリット
カスタマイズ性Power Automateの豊富なアクションやトリガーが利用可能必要に応じた設定が増え、初期構築がやや複雑
セキュリティSASトークンを含むURLによるアクセス制御URL漏洩時のリスク管理が必要
運用管理フロー単位での監視・ログ取得が容易フルURLの管理が増え、まとめ方に工夫が必要
将来性Power Platform全体と連携できる拡張性O365コネクタのようなシンプルさは失われる

移行のためのステップガイド

実際にO365コネクタからWorkflowコネクタへ移行する際の、大まかなステップを示します。

1. 現在の通知フローの整理

まずは既存のO365コネクタを使用しているアプリやサービスを洗い出し、どこで、どのようにWebhookが設定されているかを明確にします。

  • どのTeamsチャネルを対象にしているか
  • 送信内容(カード形式やテキストのみなど)
  • 管理しているWebhook URLのリスト

2. Power AutomateでのWorkflow準備

Power Automateの管理画面にアクセスし、新規フローを作成します。トリガーは「When a HTTP request is received(HTTP要求が来たとき)」などを選択し、Teamsへの送信アクションを追加します。

  • オプションで認証や条件分岐を組み込み、より高度な自動化が可能
  • 開発者でなくてもUI操作で設定可能

3. 新規Webhook URLの取得と共有

フローを保存すると、ユニークなWebhook URLが発行されます。このURLを安全な手段でチーム内に共有し、テスト環境などで動作確認を行います。

  • URLを失念すると再取得が必要になるため注意
  • 利用者に誤ってURLが漏洩しないよう、権限管理を徹底

4. ペイロードのテストと調整

既存のO365コネクタ用に組んでいたJSONメッセージを送信して、正しく表示されるか確認します。必要に応じてアダプティブカードなど最新の形式にアップデートし、機能拡張を行います。

  • レンダリングの崩れやボタンの不具合などに注意
  • Teamsのバージョン違いやモバイルアプリ表示にも留意

5. 本番適用と運用開始

テストが完了したら、本番環境のアプリケーションやサービス設定をO365コネクタからWorkflowコネクタのURLに切り替えます。移行が完了した後、不要になったO365コネクタは削除や無効化を行い、混乱を防止します。

活用事例

Workflowコネクタを利用することで、単なるメッセージ通知以上の連携が期待できます。たとえば以下のような応用シーンがあります。

承認フローと連携

Teamsへのメッセージ投稿後、即座に承認リクエストを発動させ、承認・却下の結果をTeams上に戻す仕組みを組むことができます。以前は専用の承認アプリを導入する必要があったところ、Power Automateの標準機能で賄えるようになります。

外部サービスからのデータ集計

ERPシステムやCRM、インシデント管理ツールなどからAPI連携で情報を取得し、自動集計・分析した結果だけをTeamsに投稿するといった高度な業務効率化が可能です。
Webhookで受け取るデータをPower Automateで一旦加工し、整形されたメッセージをTeamsに流すと、現場スタッフは確認しやすい形式でリアルタイムの情報共有ができるようになります。

セキュリティ面への考慮

Webhook URLさえ知っていれば誰でもメッセージを送れてしまうのではないか、という懸念は常に存在します。WorkflowコネクタではSASトークンという署名がURL内に含まれており、この署名が一致しないとリクエストが拒否される仕組みになっています。ただし、URLを不特定多数に公開してしまえばリスクが発生するため、以下の運用が推奨されます。

  • URLの秘匿管理: WikiやSharePointでも権限設定したページにのみ掲載する
  • 利用者のアクセス制限: Configファイルに含める場合は読取権限を限定
  • 定期的なリフレッシュ: 万が一漏洩した疑いがあるときはURLを再発行して更新する

Q&A

Q1: 単一エンドポイントを使い回したい場合はどうすればいい?

A: 物理的にはワークフローのURLを複数のシステムで使いまわすことは可能です。ただし、URLが流出した場合の影響範囲が大きくなる点には注意が必要です。使い回しをする場合でも、パラメータによって処理を分岐する工夫などを取り入れると、より安全かつ柔軟に運用できます。

Q2: 古いメッセージカード形式はそのまま利用できる?

A: 多くの場合、部分的には動作しますが、レイアウト崩れや非推奨属性の警告などが出る可能性があります。アダプティブカードへの移行を前提に、早めにテストと修正を行うのがおすすめです。

Q3: API経由でベースURLを取得できる可能性は?

A: 2025年現在、公式には提供されていません。Microsoftが将来的に提供する可能性はあるものの、期待はせず、手動またはConfig管理によるURL管理で対応するのが現実的です。

今後の展望

MicrosoftはPower Platformを中核とするローコード/ノーコード戦略を強化しており、Power Automateの機能拡張ペースは非常に速いです。今後はWorkflowコネクタを通じてTeams連携をさらに便利にする新機能が投入される可能性があります。たとえば、以下のような発展が期待できます。

  • より高度な認証方式の導入: IP制限や特定クライアント証明書による制御など
  • AIと連動したメッセージ送信: Power Virtual AgentsやCopilotとの連携強化
  • 高度な承認機能: Teams内で複数段階承認が完結する仕組みの強化

こうした新機能をいち早く取り込み、運用設計をアップデートしていくことが、Teams活用において競争力を高めるカギとなるでしょう。

まとめ

O365コネクタが廃止され、Workflowコネクタへの移行は今後必須の流れになっていきます。ベースURLが非公開となり、フルのWebhook URLを取得・管理する必要がある点は大きな変化ですが、その分Power Automateの強力な機能を活用できるメリットも見逃せません。
移行時には、既存のO365コネクタで利用していたペイロードや通知形式が正しく動作するかを必ずテストしましょう。また、Workflowコネクタでは単に通知を送るだけでなく、承認フローや外部サービスとの連携など、より高度な自動化を実現できる可能性があります。
今後のアップデートを見据えて最新情報を追いかけながら、Workflowコネクタへのスムーズな移行を目指してみてください。

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