エクスプローラーでPCやドキュメントのフォルダーを開こうとした際、「This operation has been cancelled due to restrictions in effect on this computer. Please contact your system administrator.」というメッセージが表示され、アクセスできなくなることがあります。対処法を把握し、速やかに正常な状態に戻すためのポイントを解説します。
「This operation has been cancelled」エラーの概要
エクスプローラーを開こうとした際に表示される「This operation has been cancelled~」エラーは、Windowsのグループポリシー(GPO)やレジストリ設定、あるいは組織内ネットワークのセキュリティルールなどにより、ユーザーの操作が制限されているときに発生します。企業などのドメイン環境であれば、管理者が意図して制限している場合もありますが、誤った設定変更やレジストリ編集によって意図せずローカルPCのポリシーが上書きされるケースも少なくありません。
また、ウイルス対策ソフトやサードパーティ製セキュリティツールによる制限機能、あるいはシステムファイルの破損が原因となることもあります。こうした多岐にわたる可能性を踏まえ、問題の切り分けを行うことが重要です。
グループポリシー(GPO)の基本を知る
グループポリシー(GPO)は、Windowsの動作やユーザーが行える操作内容を制御する強力な仕組みです。ドメイン環境だけでなく、ローカル環境でも「ローカルグループポリシーエディター(gpedit.msc)」を通じて設定を確認できます。
グループポリシーエディターの起動方法
Windowsキー+Rを押し、「ファイル名を指定して実行」を開きます。
そこにgpedit.msc
と入力し、OKをクリックすると、ローカルグループポリシーエディターが起動します。エディターでは「コンピューターの構成」と「ユーザーの構成」に分かれており、主にユーザー操作に関する設定は「ユーザーの構成」配下に集約されています。
エクスプローラー関連のポリシーを確認
以下に、エクスプローラー(File Explorer)に関係する代表的なポリシーをまとめました。これらが「有効(Enabled)」になっていると、エクスプローラーの特定操作が制限される可能性が高まります。
ポリシー名 | 用途 | 通常の設定値 |
---|---|---|
ドライブへのアクセスを防止する | 指定したドライブにアクセスできないようにする | 未構成または無効 |
マイ コンピューターを非表示にする | エクスプローラー上の「This PC(マイ コンピューター)」を非表示にする | 未構成または無効 |
マイ コンピューターに指定したドライブのみ表示しない | 指定したドライブをエクスプローラーに表示しない | 未構成または無効 |
既知のフォルダーを無効にする | ドキュメント、デスクトップなど特定フォルダーの表示を制限 | 未構成または無効 |
上記のいずれかが「有効」に設定されている場合、エクスプローラー上から該当ドライブやフォルダーを開けなくなる可能性があります。これが今回のエラーを引き起こす主要因であるケースも多々ありますので、「未構成」または「無効」に設定し直し、PCを再起動して挙動を確認しましょう。
レジストリ設定の重要性
Windowsの動作を細かく制御するレジストリは、誤った編集によりシステムが不安定になったり、今回のような制限エラーを起こす原因にもなります。特にエクスプローラー操作に関わるキーとして、NoViewOnDrive
やNoFolderOptions
があります。これらが誤って有効値に設定されている場合、エクスプローラー表示が制限されます。
レジストリエディタの起動とバックアップ
- Windowsキー+Rを押し、「ファイル名を指定して実行」を開く。
regedit
と入力してOKをクリックする。- レジストリエディタが起動したら、編集前に必ず「ファイル」メニュー→「エクスポート」などでバックアップを取りましょう。
レジストリはWindowsの根幹に深く関わっているため、慎重に操作する必要があります。少なくとも対象キーのみを編集・削除するようにし、わからない値はむやみに変更しないことが大切です。
NoViewOnDriveやNoFolderOptionsの確認方法
レジストリエディタでは、以下のパスがエクスプローラーの表示制限に影響を与える可能性があります。該当するエントリーがある場合は削除や値のリセットを検討します。
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Policies\Explorer
- NoViewOnDrive
- NoFolderOptions
HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Policies\Explorer
- NoViewOnDrive
- NoFolderOptions
これらが存在し、かつ数値データが有効値(例: 1, 3 など)になっている場合、エクスプローラーの機能が制限される可能性があります。不要なものや原因と考えられるものを削除した後、PCを再起動して問題が解消するかをチェックしてください。
システムファイルチェッカー(SFC)の実行と破損ファイルの修復
システムファイルに異常がある場合、レジストリが正しくてもWindowsの動作が想定どおりにならないことがあります。そのため、次の手順でシステムファイルチェッカー(SFC)を実行し、破損ファイルの有無をチェックするとよいでしょう。
システムファイルチェッカーの基本手順
- Windowsキーを押し、コマンドプロンプトまたはWindows PowerShellを管理者として起動する。
- 以下のコマンドを入力し、Enterキーを押す。
sfc /scannow
- 自動的にシステムファイルの整合性をチェックし、破損がある場合は修復が試みられる。
- 処理が終了したら再起動し、エクスプローラーが正常に開けるか確認する。
SFC実行時にエラーが出る場合
もしSFCの実行自体が失敗する、あるいは修復できないファイルが存在する場合は、以下のような追加ステップを検討してください。
DISM /Online /Cleanup-image /RestoreHealth
を実行してイメージを修復してからSFCを再度実行。- セーフモードで起動してSFCを実行。
- システムの復元ポイントを使用して、問題が発生する前の状態に戻す。
ネットワーク環境や権限設定の影響
企業や組織のドメイン下では、上位のグループポリシーがローカルポリシーを上書きするケースが少なくありません。ローカルで設定を戻しても、ドメインコントローラーにより再度制限が適用される場合があります。
ドメイン環境でのトラブルシュート
- まずはドメイン管理者やIT管理担当者に、エクスプローラーに関わるグループポリシーが配布されていないか確認する。
- 共有フォルダーやリダイレクトフォルダー(例: ドキュメント、デスクトップ)に対するアクセス許可が誤設定になっていないかチェックする。
- 同一アカウントを複数PCで同時使用している場合、ポリシーの競合が発生していないか調べる。
ローカルユーザー権限とセキュリティツール
- 標準ユーザーアカウントでログインしている場合、管理者権限が必要な操作が制限されている可能性がある。
- ウイルス対策ソフトやセキュリティツールの「アクセス制御」設定が原因となっていないか確認する。
- ファイアウォールやパーミッションの設定で、ローカルフォルダーへのアクセスが意図せずブロックされていないか見直す。
より深いレベルでの対処方法とチェックポイント
上記の基本的な対策を試しても問題が解消しない場合、より深いレベルの確認が必要です。たとえば、Windowsのイベントビューアー(Event Viewer)でエラーログを確認すれば、どのポリシーやファイルアクセスが失敗しているのかを把握しやすくなります。
イベントビューアーの活用
- Windowsキー+Rを押し、「eventvwr」と入力してOKをクリック。
- 「Windowsログ」→「システム」や「アプリケーション」の項目を中心にエラーログをチェック。
- ログに表示されるエラーIDやソース(例: GroupPolicy, Explorerなど)を参照し、原因となるサービスやプロセスを特定する。
イベントビューアーでGPO関連のイベントが記録されていれば、具体的にどのポリシーがエラーの原因となっているかを詳しく知る手がかりになります。エラーIDに基づいてMicrosoft公式ドキュメントや技術情報を検索すると、原因と解決策がヒットすることも多いです。
よくある原因別の対応策
ここでは特に問い合わせが多い原因をピックアップして具体的な手順とともに説明します。
原因1: ドライブの非表示ポリシーが有効になっている
職場などで特定ドライブへのアクセスを禁止するためにポリシー設定を適用しているケースです。ローカルで「未構成」「無効」に設定してもドメインのポリシーで再適用される場合があります。管理者との連携が欠かせません。
原因2: エクスプローラー関連のレジストリ値が残存している
以前に導入したツールや古い制限設定がアンインストール時に正常に削除されず、レジストリの残骸を残している可能性があります。NoViewOnDrive
などのキーを特定して削除した後、SFCやDISMでシステムの整合性を確認することが推奨されます。
原因3: ウイルス対策ソフト・サードパーティ製セキュリティツールの干渉
一部のセキュリティツールは、ユーザーが意図しない設定をブロックするために、レジストリやGPOを上書きするモジュールを持っている場合があります。セキュリティツールの設定画面で「システム設定の保護」や「フォルダーアクセス制御」などの項目を確認し、必要に応じて除外設定を追加します。
表を使った簡易チェックリスト
問題解決のため、主な対策をチェックリスト形式でまとめてみました。段階的に確認していくと効率よく原因を特定できます。
チェック項目 | 手順 | コメント |
---|---|---|
1. GPO確認 | gpedit.msc → 「ユーザーの構成」→「エクスプローラー」関連ポリシー | 「未構成」または「無効」が望ましい |
2. レジストリ確認 | regedit → Policies\Explorer → NoViewOnDrive, NoFolderOptionsなど | 存在すればバックアップ後に削除 |
3. SFC実行 | コマンドプロンプト(管理者) → sfc /scannow | 破損ファイルを自動修復 |
4. ネットワーク/権限確認 | ドメイン環境かローカルか、セキュリティツール設定など | 管理者と連携必須 |
5. イベントログ確認 | eventvwr → ログのエラーメッセージを参照 | IDで詳細を検索 |
6. システム復元/再インストール | 最終手段として検討 | 慎重に実施 |
トラブルの再発防止策
一度問題が解消しても、再び同じエラーが発生しないようにするためには、いくつかの予防的な対策が必要です。
レジストリ・ポリシー編集の履歴管理
- 会社や組織の方針として、レジストリ編集を行う際は事前承認を取得し、変更内容と日付を記録する。
- 変更前に必ずレジストリ全体、または対象レジストリキーのバックアップを取得する。
- 復元ポイントの作成も可能であれば行い、何か問題が起こった際に速やかに戻せるようにする。
ドメイン管理者やシステム担当者との連携
- ポリシーに関わる変更はIT部門へ事前に相談し、ドメインポリシーとの整合性を確保する。
- 新しいグループポリシーが組織全体で適用されるタイミングを把握しておき、その後に問題が生じないか確認する。
- 共同で監査ログをチェックし、想定外の変更やアクセス制限が発生していないか定期的にモニタリングする。
セキュリティソフトやアップデートの定期的な見直し
- ウイルス対策ソフトがクラウド経由で自動アップデートされると、一時的にポリシーが厳格になりエクスプローラーへのアクセスが制限されるケースがある。
- Windows Updateによる大規模アップデート(機能更新プログラム)後は、一部のレジストリ設定が初期化または変更されることがあるため、設定に不整合が生じていないか確認する。
万が一解決が難しい場合
さまざまな対処を行っても症状が改善しない場合は、以下のような追加調査を行うことも検討してください。
専門業者やMicrosoftのサポートに依頼
業務で使用しているPCであれば、ダウンタイムが長引くほど生産性が落ちてしまいます。外部のITサポートやMicrosoft公式の技術サポートに問い合わせを行い、早期解決を目指すのも有力な選択肢です。
クリーンインストールやリセット
最終手段として、WindowsのクリーンインストールやOSのリセット機能を利用し、初期状態に戻す方法があります。ただしデータバックアップが必須であることや、アプリの再インストール手間が発生することを考慮したうえで実施の可否を検討する必要があります。
まとめ
「This operation has been cancelled due to restrictions in effect on this computer. Please contact your system administrator.」というエラーでエクスプローラーが開けなくなる原因は多岐にわたります。代表的な対処法として、グループポリシー(GPO)の確認やレジストリの不要キー削除、システムファイルチェッカー(SFC)の実行などが挙げられます。ドメイン環境では、ドメインコントローラーが適用するポリシーが再度上書きしているケースもあるため、IT管理者と連携して問題箇所を切り分けるのが大切です。
また、セキュリティツールの設定や企業内でのフォルダーリダイレクト、ネットワークポリシーなど、外部要因が重なっている場合もあるため、一つの対策だけで解決できないことがあります。問題が深刻化する前に、イベントビューアーのログや管理者権限での操作確認などを行い、適切な手順で対処しましょう。最終的には、専門家のサポートやリカバリ手段を検討することも視野に入れ、PC環境をより安全かつ安定した状態に保つよう心がけましょう。
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