仕事で外出先でも常に快適なネット環境を確保したい、あるいは自宅以外の場所でもスピーディーに作業を進めたいなど、LTE対応のパソコンはさまざまな場面で重宝します。とりわけSurface Pro 9のようなLTEモデルは、モバイル回線を使用できるため場所を問わずインターネット接続が可能です。ただし、スマートフォンのように通話やSMS(ショートメッセージ)機能をそのまま使えるのかといえば、現状のWindows環境では少し事情が異なります。この記事では、PC上で通話やSMSをフル活用できるのかどうか、そして代替策や応用的な使い方まで詳しく解説していきます。
LTE対応PCの基本的な仕組み
LTE対応PCは、スマートフォンと同様にモバイル回線を使ってインターネットに接続できるのが大きな特徴です。Wi-Fiを探さずともいつでも接続できる利点は大きく、外出先のカフェや移動中でも作業を円滑に進められます。では、スマホと同様に「SIMカードを挿せば通話やSMSができるのか?」というと、現状のWindows搭載PCでは多くの場合、音声通話や標準のSMS機能はサポートされていません。以下では、その理由と仕組みについて掘り下げていきましょう。
モバイルデータ通信と音声通信の違い
スマートフォンは、同じSIMカードを使って「音声通話」「SMS」「データ通信」といった多岐にわたる機能を実現しています。一方、Windows OSが動作するLTE対応PCの場合、多くは「データ通信専用」または「データ通信に特化した設計」となっています。LTE接続によるインターネット通信は問題なくできる一方で、キャリアの音声ネットワークを利用した通話やSMSはほとんど搭載されていません。
これは、PCのモデム部分が音声通話やSMSに必要な通信プロトコルをサポートしていない、もしくはWindowsの標準機能として実装されていないことに起因します。メーカーやキャリアによっては独自のアプリやユーティリティソフトを提供していることもありますが、Surface Pro 9などのMicrosoft純正ハードウェアを含め、標準機能としてはまず期待できないのが現状です。
「データ通信のみ」で利用されている理由
PCで最も重視されるのは、Wi-Fi代わりになるモバイルデータ接続機能です。ビジネス利用でもWeb会議やメール、クラウド上のファイル編集など、データ通信が主体となる作業を行うケースが主流です。そのため、モバイル通信モジュールはデータ接続に最適化した形で搭載されており、音声通話やSMSはオプションとして省かれたり、サポートされないまま出荷されるケースが多いのです。
それに加え、キャリアのプラン設計上も「データ通信専用SIM」をPCに差し込むことを想定している場合が少なくありません。スマホ向けのSIMカードでも物理的には挿せますが、契約プランによってはデータ通信しか利用できないこともあります。このような背景から、Windows PCであってもスマートフォンと同等の通話機能・SMS機能が使えるわけではない点が、まず理解しておきたいポイントです。
Windows環境で通話やSMSを実現する代替策
それでは、Windows PC上で音声通話やSMSと同様の機能を使いたい場合、どういった方法があるのでしょうか。完全にスマホと同じ体験ができるわけではありませんが、近しい体験を得るための代替策はいくつか存在します。ここでは代表的なものをご紹介します。
VoIPサービス(インターネット電話)の活用
SkypeやMicrosoft Teams、LINE、ZoomなどのVoIP(Voice over IP)サービスを利用すれば、インターネット回線だけで音声通話やビデオ通話が可能です。スマートフォンに限らず、PC上でもアプリをインストールすれば通話・メッセージ機能を利用できます。
例えば、以下のようなサービスがあります。
サービス名 | 特徴 | 利用形態 |
---|---|---|
Skype | Microsoft公式。固定電話や携帯電話への発信も可能(有料) | Windows/Mac/スマホで使用可能 |
Teams | ビジネス向け機能が充実。チャット、ビデオ会議、ファイル共有など | Microsoft 365アカウントで利用 |
LINE | 国内ユーザーが多く、普及度高い。無料通話&チャットが強み | PC版LINEアプリをインストール |
こうしたアプリはすべてデータ通信を通じてやり取りが行われるため、LTE対応PCであればWi-Fiがなくても利用できます。特にSkypeやTeamsでは有料プランを契約すれば固定電話や携帯電話への発信もできるため、一般の電話機とやり取りする際にも便利です。
スマホの通知をPCで受け取る仕組み
Windows 10およびWindows 11では、「スマホ同期(Phone Link)」というMicrosoft公式のアプリが用意されています。スマホ同期を利用すると、Androidスマホの通知をWindows PC上でも確認できたり、SMSの送受信や写真へのアクセスが簡単にできたりします。
ただし、この機能はあくまで「スマホと連携してPCで通知を表示する」仕組みであり、PC単体で電話を受けたりSMSを送受信したりするわけではありません。バックグラウンドでは常にスマホが関与しているという点は注意が必要です。
クラウド型SMSサービスの利用
日本国内でも一部のキャリアやサービスが、スマホに届いたSMSをクラウド上に同期し、それをPCやWebブラウザで閲覧・送信可能にする仕組みを提供しています。例えば、キャリア独自の「SMSのクラウド転送サービス」が用意されていたり、サードパーティ製アプリでAndroidスマホのSMSをPCにミラーリングできるものがあります。
ただし、これらは公式サポートが不十分だったり、アプリやサービスの信頼性次第で動作が不安定なこともあります。また、利用には別途月額料金が発生する場合もあるため、サービス内容をよく確認してから導入するようにしましょう。
Surface Pro 9などLTE対応PCで押さえておきたいポイント
ここからはSurface Pro 9などのLTE対応モデルを中心に、実際の運用で気をつけたい点や、より便利に使うための応用的な方法について解説します。
SIMカードの種類と契約内容を確認する
大前提として、挿入するSIMカードが「データ通信のみ」なのか「音声通話対応」なのかを把握しておくことは非常に重要です。もし音声通話対応のSIMカードであっても、PC側のハードウェアやOS設定で音声通話が制限されているケースが大半です。
以下のようにSIMと契約内容を表でまとめておくと混乱を防ぎやすいでしょう。
項目 | データ通信専用SIM | 音声通話対応SIM |
---|---|---|
通話 | ×(利用不可) | ○(スマホなら利用可) |
SMS | 契約プランによる(△) | ○(利用可) |
データ通信 | ○(利用可) | ○(利用可) |
PCで音声通話/SMS | Windowsの標準環境では不可 |
音声対応のSIMカードを入れていても、PC側の機能が対応していなければ通話やSMSは利用できません。データ通信が前提であることを理解し、もし通話やSMSが必要ならスマートフォンやVoIPサービスを使うという切り分けが現実的です。
スマートフォンとの連携を強化する方法
Surface Pro 9のような2in1デバイスでも、通話が必要なときはスマホ、ドキュメント編集やプレゼン作成などはPC、といった役割分担をしっかり行うのがおすすめです。その上で、スマホとの連携を強化するための方法としては以下が挙げられます。
- 「スマホ同期(Phone Link)」による通知・SMS連携(主にAndroid)
- iPhoneユーザーならiCloud連携を活用し、メッセージアプリや写真を共有
- LINEやFacebook Messengerなど、マルチデバイス対応のチャットアプリを併用
こうした連携を駆使すれば、Surface Pro 9単体で通話やSMSを完結できない部分を補いつつ、シームレスなコミュニケーション環境を作ることができます。
クラウド型PBXの導入
ビジネス利用が多い場合には、クラウド型PBX(電話交換機)サービスを利用するという手もあります。クラウド型PBXを使えば、パソコンから専用ソフトウェアを通じて外線発信・着信が可能になり、実質的に「PCで電話をかける」体験が実現します。
たとえば、各社のクラウドPBXサービスではスマホアプリと連携しながら内線通話、外線通話、さらには通話録音なども行える機能があり、チーム全体での電話窓口としても利用できます。ただしコストがかかる場合が多いため、個人ユースというよりは企業向けのソリューションといえるでしょう。
クラウドPBXのメリット
- 社用電話番号をPCやスマホなど複数デバイスで共有可能
- 通話の録音や自動応答などビジネス向け機能が豊富
- ソフトウェア更新により新機能が追加されやすい
クラウドPBXのデメリット
- 月額料金や通話料金がかかる
- 初期設定がやや複雑な場合がある
- スマートフォンとの連携を前提としている場合が多い
Windows PCで通話・SMSを使うときに知っておきたい応用的ヒント
ここでは、よりテクニカルな視点から、Windows PCとスマホの連携を高める方法や、知られざるテクニックをご紹介します。
Androidの「メッセージ(Messages)」Web版との連携
Androidスマホでは、Googleが提供する公式SMSアプリ「メッセージ(Messages)」のWeb版が利用できます。スマホ側でWeb版と連携を有効にすると、PCのブラウザからSMSを送受信できるようになります。
具体的には以下の手順で設定します。
- Androidスマホで「メッセージ(Messages)」アプリを開く
- 右上のメニューから「デバイスとのペアリング」を選択
- PCブラウザで「Messages for web」にアクセス
- 表示されたQRコードをスマホで読み取る
これだけで、スマホに届いたSMSをPCのブラウザ上で確認でき、返信や新規送信も可能になります。もちろん、この仕組みでも実際にはスマホが通信を行っているため、PCだけでSMSを完結させることはできません。しかしビジネスやプライベートでSMSを多用する方にとっては、PCのキーボードでメッセージを打てるだけでも大きな利便性が得られるでしょう。
Wi-Fiテザリングとクラウド型電話アプリの併用
スマホのWi-Fiテザリング機能を使えば、Surface Pro 9などのLTEモデルであっても、あえてスマホの回線を利用してインターネットに接続する方法もあります。SIMカードを挿し替えたり、別途データ通信プランを契約することなく、スマホの通信量内で済むのがメリットです。
さらに、通話にはGoogle Voiceや050番号のIP電話サービスなどを活用すれば、データ通信だけで外部に電話をかけられます。ここでもやはり「Windows PC単体で音声通話をする」わけではありませんが、アプリやクラウドサービスを使うことで実質的に同じことが可能になるというわけです。
物理的な受話器を接続する方法はあるのか
昔はPCカード型やUSB型のモデムを使ってアナログ電話回線に接続し、PCから直接電話をかける仕組みが存在しましたが、現代ではLTE/5GとIPネットワークが主流です。物理的に受話器やヘッドセットを接続したところで、通話サービス自体を提供していないと意味がありません。
そのため、受話器らしきデバイスをPCにUSB接続しても、モバイルキャリアの音声ネットワークを使用した通話はできません。現実的にはUSBヘッドセットやBluetoothイヤホンでVoIPアプリを利用して通話を行うほうが、安定して高品質な音声を得られます。
まとめ:Surface ProなどのLTE対応PCで通話やSMSは可能か?
ここまで解説してきたように、Surface Pro 9をはじめとするLTE対応のWindows PCにSIMカードを挿し込んだからといって、スマートフォンのように通話やSMSを直接扱うことは難しいのが現状です。Windows OSが本質的に音声通話やSMS機能を標準サポートしていないこと、そしてキャリア契約自体もデータ通信が主目的であることが大きな理由です。
ただし、VoIPアプリの導入やスマホとの連携機能、クラウド型PBXサービスを利用することで「実質的にPCで通話やSMSを扱う」方法はいくつも存在します。特にビジネスシーンでは、インターネット電話の導入やPBX連携はコスト削減や柔軟な働き方を実現する上で有効な選択肢といえます。
最終的には「PCはPC、スマホはスマホ」という役割分担を踏まえた上で、必要に応じてクラウドや連携機能を活用するのが得策です。目的や利用シーンに合わせて最適な方法を選択し、快適なモバイルワーク環境を構築していきましょう。
追加のヒント:トラブルシューティングとセキュリティ
最後に、LTE対応PCを使っているときにありがちなトラブルシュートやセキュリティ面での注意点を補足します。
通信速度が出ない場合の対処
PCのLTE通信で速度が遅い、またはつながりにくい場合は下記をチェックしてみてください。
- SIMカードの装着状態や設定を再確認する
- 接続先のAPN情報が正しいかキャリアに確認する
- 電波環境が悪い場所ではないか(トンネルや建物奥など)
- Windowsのアップデートやドライバ更新が最新か
時にはWi-Fi接続に切り替えるなど、臨機応変に対応し、常に最適な回線を選ぶ習慣を身につけるとよいでしょう。
個人情報保護の観点
VoIPサービスやクラウド型SMS、PBXサービスなどを利用する場合、個人情報や会社の機密情報をどのように扱うかにも注意が必要です。クラウド上にSMSデータを同期する場合やVoIPサーバーを経由する場合、通信が暗号化されているのか、どの地域のデータセンターに保管されるのかといったセキュリティポリシーを確認し、必要に応じて社内規定やセキュリティ規範との整合性をとりましょう。
複数デバイス利用時の利便性とリスク
スマホ、タブレット、PCと複数デバイスを使ってコミュニケーションを行うと、利便性が大きく向上しますが、その分セキュリティリスクも高まります。デバイス間でパスワードやアカウント情報を同期する場合には、二要素認証を導入したり、信頼できるクラウドのみを利用するなどの対策が必須です。
また、公衆Wi-Fiや不特定多数が利用するネットワークを使う際には、VPNを利用して通信を暗号化するなどの配慮を行うことで、情報漏えいリスクを最小限に抑えられます。
おわりに
Surface Pro 9などのLTE対応PCは、持ち運びの多いビジネスパーソンやフリーランスにとって非常に便利な端末です。ノートPCの機動力とスマホのようなインターネット接続の手軽さを両立できる点は大きな魅力といえます。ただし、スマホの音声通話機能やSMS機能をそのまま代替できるわけではありません。
一方で、VoIPサービスを中心に組み合わせていけば、Windows PC上だけでも様々な形で通話やチャットを実現できます。スマホとの連携やクラウド型の電話システムを活用し、柔軟かつ効率的なコミュニケーション環境を構築していきましょう。これらを上手に使いこなすことで、あなたのワークスタイルはさらに広がり、いつでもどこでもビジネスチャンスを逃さない強い味方になるはずです。
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