Surface Laptop Go 1のWi-Fiカード交換は可能?AX210・AX211との互換性と最適解

近年、多彩な作業スタイルに対応するためにモバイルPCの通信環境はますます重要度を増しており、特にSurfaceシリーズのようなコンパクトで持ち運びやすいデバイスでは安定したWi-Fi接続が欠かせません。とはいえ、突然ネットワークが不安定になると作業効率が落ちてしまい、ストレスがたまることもしばしばあるでしょう。

Surface Laptop Go 1で発生するWi-Fiカード交換の課題

Surface Laptop Go 1は、気軽に持ち運べる軽量ボディとタッチ対応ディスプレイが魅力のモデルです。しかし、一部ユーザーからはWi-Fi接続が不安定であったり、突然Wi-Fiが認識されなくなったりするケースが報告されています。そこで「AX201からAX210やAX211に交換して改善できないか」と検討する方もいるかもしれません。

実は、Surface Laptop Go 1に搭載されているWi-Fiカード(AX201)は、マザーボードに直接はんだ付けされているため、従来のM.2スロット方式のようにユーザーが簡単に交換できるパーツではありません。交換自体が難しい構造であることから、根本的に別の対策が必要となります。

AX201・AX210・AX211とは何が違うのか

Intel製Wi-Fiモジュールの型番としてAX201・AX210・AX211などがあり、それぞれWi-Fi 6(802.11ax)やWi-Fi 6Eに対応したモデルとして認知されています。下表に主な特徴をまとめてみました。

製品名対応規格CPU/チップセット互換性備考
AX201Wi-Fi 6第10世代以降Intel CPU向けSurface Laptop Go 1ではこれが標準搭載
AX210Wi-Fi 6E (2.4/5/6GHz帯)第10世代以降Intel CPU向け6GHz帯にも対応しており理論上速度向上
AX211Wi-Fi 6E (2.4/5/6GHz帯)Intel vProプラットフォーム向け一部CPUとの互換性問題があるとされる

AX210とAX211はいずれもWi-Fi 6Eに対応しており、6GHz帯を使用できる環境下であればより高速で安定した通信が期待できます。ただし、AX211はvProプラットフォーム対応が基本であり、Surface Laptop Go 1に搭載されている第10世代のCore i5-1035G1は必ずしもvPro対応とは限りません。そのため互換性が懸念される場合があります。

そもそもWi-Fiカードの交換は難しい?

Surface Laptop Go 1の本体分解手順を見ると、SSDのような一部のパーツは交換・アップグレードが可能とされていますが、Wi-Fiモジュールについてはマザーボードに直接はんだ付けされており、ユーザーが分解して交換することは想定されていません。マイクロソフトの純正設計・修理ガイドにも「Wi-Fiモジュールは交換対象パーツではない」と明示されているケースが多く、メーカー保証の観点からもユーザー自身での交換は推奨されていません。

交換ではなく外付けWi-Fiアダプターを検討するメリット

内蔵モジュールを物理的に置き換えるより、USBなどの外付けWi-Fiアダプターを使うことには以下のような利点があります。

  • 簡単に取り付け・取り外しが可能で、トラブル時の切り分けもしやすい
  • 6GHz帯を含む最新規格対応の製品を選べば、将来的な拡張性も高い
  • 無線部分が外部にある分、放熱や感度の面で改善が見込める場合もある

一方で、USBポートを占有してしまったり、持ち運び時の取り回しが若干不便になる可能性もあるため、利用シーンに応じた選択が必要です。

おすすめの外付けWi-Fiアダプター選択のポイント

  1. 対応するWi-Fi規格を確認
    Wi-Fi 6E対応アダプターが欲しいなら、製品仕様で6GHz帯対応が明記されているか必ずチェックしましょう。
  2. USBの形状・規格をチェック
    Surface Laptop Go 1にはUSB-AとUSB-Cポートがあるため、どちらに挿すか考えて選ぶと良いでしょう。高速通信を目指す場合はUSB 3.0以上の対応が望ましいです。
  3. アンテナ形状やサイズ
    出張やカフェなど持ち歩きが多い場合はスリムタイプの方が便利です。一方、デスク環境中心であればアンテナが大きい製品の方が受信感度が向上しやすいとされています。

Wi-Fi接続の不調時に試す基本的な対策

実際に接続が不安定になった場合、物理的な交換以外にも解決策があります。以下に代表的な対処法を挙げます。

ドライバーの更新

Wi-Fiドライバーが古いままだと、最新のWindowsアップデートとの相性が悪くなるケースがあります。まずはIntel公式サイトやWindows Update経由で最新のドライバーが入っているか確認してみましょう。

ドライバーのバージョンを確認するPowerShellコマンド例

以下はPowerShellを使ってネットワークアダプタのドライバーバージョンを確認するサンプルコードです。

# ネットワークアダプタ一覧を取得
Get-NetAdapter | ForEach-Object {
    $adapterName = $_.Name
    $driverInfo = Get-WmiObject Win32_PnPSignedDriver | Where-Object { $_.DeviceName -eq $adapterName }
    if ($driverInfo) {
        Write-Host "アダプタ名: $adapterName"
        Write-Host "ドライバー バージョン: " $driverInfo.DriverVersion
        Write-Host "ドライバー プロバイダ: " $driverInfo.DriverProviderName
        Write-Host "----------------------------------------"
    }
}

このコマンドを実行すると、接続アダプタのドライバーバージョンが出力されます。バージョン情報と照らし合わせながら、メーカーサイトで最新ドライバーを確認しましょう。

ネットワーク設定のリセット

Windowsの設定画面からネットワークのリセットを行うと、ネットワークアダプタに関する設定が初期化されるため、一時的に不調が解消される場合があります。Surface Laptop Go 1の報告事例でもこの操作で回復するケースが多く見られます。ただし、定期的に再発する場合は根本的な原因を究明する必要があります。

Windowsコマンドプロンプトでのネットワークリセット例

# IP設定のリセット
ipconfig /release
ipconfig /renew

# DNSキャッシュのフラッシュ
ipconfig /flushdns

# Winsockカタログのリセット
netsh winsock reset

これらのコマンドを順番に実行し、PCを再起動するとネットワークがリフレッシュされます。

OSアップデートの適用

Windows Updateを適宜適用していない場合、OS側の不具合修正が行われていないことも原因になり得ます。特にSurfaceシリーズの場合、Microsoftが提供するファームウェアやドライバーの更新がWindows Update経由で配布されることが多いため、小まめにチェックすることが重要です。

実際にWi-Fiカードを交換するリスク

物理的に交換可能なPCではWi-Fiカードを入れ替えることで性能アップや不具合解消が期待できますが、Surface Laptop Go 1の場合は以下のリスクが顕在化します。

  • **はんだ付けの専門知識・道具が必須** 通常の拡張カードのようにネジ一本で取り外し可能な構造ではなく、メインボードからはんだを溶かして部品を取り外す作業が必要です。
  • **高温による基板ダメージ** 一般的なリフローステーションやヒートガンなどを使ってはんだを溶かす作業は、少しでも温度管理を誤ると基板全体にダメージを与える恐れがあります。
  • **メーカー保証の喪失** 分解・改造による故障はメーカー保証対象外となるため、問題が発生しても自己責任で対処する必要があります。
  • **交換後の安定動作は不明** たとえAX210やAX211を装着できたとしても、ファームウェア側の制限やBIOSの互換性などにより正常に動作しない可能性が大いにあります。

こうしたリスクを考慮すると、Wi-Fiカードの交換は現実的な選択肢とは言い難いです。

Surface Laptop Go 1のWi-Fiを安定化させるためのヒント

単に外付けアダプターを使うだけではなく、普段からの運用でWi-Fiの安定化を図るコツをいくつか紹介します。

ルーターの位置やチャネル設定を見直す

自宅やオフィスでルーターを使っている場合、電子レンジやBluetoothデバイス、他のWi-Fiネットワークとの干渉によって通信障害が起こる可能性があります。

  • ルーターをできるだけ高い位置や障害物の少ない場所に置く
  • チャネルを自動選択ではなく、混雑の少ないチャネルに固定する
  • 5GHz帯が利用できる環境であれば2.4GHz帯よりも5GHz帯を優先的に使用する

こうした対策だけでも通信環境が大きく改善するケースが少なくありません。

バッテリー設定の見直し

モバイルノートPCでは省電力モード時にWi-Fiの出力が制限されることがあります。Surface Laptop Go 1も例外ではなく、バッテリー駆動時はWi-Fi接続が不安定になることがあります。以下の項目を確認してみましょう。

  1. Windowsの電源オプション
    「高パフォーマンス」や「バランス」などのモードを見直し、Wi-Fiカードの省電力設定が過度に働いていないかチェックする。
  2. デバイスマネージャーの電源管理
    Wi-Fiアダプタのプロパティから「電力の節約のためにオフにできるようにする」のチェックを外すと安定度が増すことがあります。

デバイスマネージャー設定確認手順

  1. スタートボタンを右クリックし、デバイスマネージャーを開く
  2. 「ネットワークアダプタ」を展開してWi-Fiアダプタを右クリックし、プロパティを選択
  3. 「電源の管理」タブで「電力の節約のためにこのデバイスの電源をオフにできるようにする」のチェックを外す

これだけでも通信断が減る可能性が高いので、一度試してみる価値があります。

まとめ:内蔵Wi-Fiカードの交換は推奨されない

Surface Laptop Go 1のWi-Fiカード(AX201)はマザーボードに直接はんだ付けされているため、一般的なM.2カードのようにAX210やAX211へ手軽に交換することは実質的に不可能です。仮に技術的に交換できたとしても、互換性や保証の面でリスクが大きく、安定動作を保証できません。

一方、外付けWi-Fiアダプターを利用すれば、Wi-Fi 6Eなどの新規格にも容易に対応できます。さらに、基本的なドライバー更新やネットワーク設定の最適化、ルーター設定の見直しによって、既存のAX201でも十分なパフォーマンスを引き出せるケースは多々あります。まずはこれらの対策を行ったうえで、どうしてもWi-Fi 6Eの高速通信環境を整えたい場合に外付けアダプターを検討するのが最善策と言えるでしょう。

今後の対処方針

  • はんだ付けパーツの交換リスクを理解し、作業コスト・故障リスクを見極める
  • USB外付けWi-Fiアダプターを活用して、Wi-Fi 6Eなど最新規格へのアップグレードを検討
  • ネットワークドライバー・OSアップデート・ルーター設定を常に最新・最適な状態に保つ

これらのポイントを踏まえて、自分の利用スタイルや環境に合った選択をすることで、Surface Laptop Go 1でも快適で安定した無線環境を維持できます。


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