近年、Surfaceシリーズは高いデザイン性と信頼性で人気を博しています。特にSurface Laptopは軽量でスタイリッシュな外観に加えて、タブレット形状ではなくクラムシェル形状を望むユーザーからの支持も厚いモデルです。しかし、Windows 10やWindows 11といったOSの累積更新プログラムが頻繁にリリースされる現代では、アップデート適用後に不具合が発生するケースもしばしば見受けられます。今回は、最新の累積更新プログラムを適用した後、Surface Laptop 7で顔認証(Windows Hello)が使用できなくなり、PINのリセットやサインインができなくなる問題の解決策を複数の観点からご紹介していきます。
Surface Laptopで顔認証が動作しなくなる原因とは
最新の累積更新プログラムを適用した直後にWindows Helloの顔認証が機能しなくなる背景には、Windowsの認証機能を管理するドライバや関連モジュールがアップデートで予期せぬ変更を受けた可能性が考えられます。通常、顔認証に問題が発生しても、PINコードやパスワードがあればサインインが可能です。しかし、今回のケースではPINまでもが複数回の誤入力を繰り返した結果、チャレンジフレーズという追加のステップが求められ、さらにPIN再設定のオプションが表示されないといった状況に陥ってしまう点がやっかいです。
Microsoftアカウントとローカルアカウントの違いに注意
Windows Helloの顔認証やPINはMicrosoftアカウントとひも付けられることが多く、Microsoftアカウントのパスワードを知っていれば、本来はPINや顔認証を再設定できるはずです。しかし、ときにはサインイン画面にパスワードを入力できるフォーム自体が表示されないなど、意図しない振る舞いが発生することがあります。今回のように、更新プログラムが原因でログインが制限されてしまう場合、まずは回復環境(Windows RE)を利用してアップデートをアンインストールする方法を検討してみましょう。
Windows Helloに関連する技術的背景
Windows Helloは、以下の仕組みでセキュリティを高めています。
- デバイス固有のTPM(Trusted Platform Module)チップ内にPINや生体情報(一方的なハッシュやトークン)を保存し、外部からアクセスされにくくしている。
- 同一のMicrosoftアカウントを使い回していても、各デバイス上でのPINや生体認証の仕組みは個別に管理されている。
- 更新プログラムを適用すると、ドライバレベルやファームウェアレベルでの変更が入り、顔認証センサーの認識が一時的に不安定になる可能性がある。
これらの点を考えると、OS自体か、デバイス上のセンサー周りを管理するファームウェアが最新の累積更新プログラムと適合していないか、あるいはアップデートの途中で設定ファイルが破損したといった不具合が考えられます。
回復環境から最新アップデートをアンインストールする手順
この問題を解決するにあたって、最初に試す価値があるのが「回復環境(Windows RE)から最近適用したWindowsの更新プログラムをアンインストールする」方法です。Windowsの回復環境には、Windowsが正常に起動しない場合やシステムに問題が生じた際にアクセスできます。Surface Laptop 7の場合、キーボード操作や電源ボタンの操作を用いて簡単に起動することが可能です。
回復環境への入り方
- Surface Laptop 7の電源が入っている場合は、一度シャットダウンします。
- 電源ボタンを押しながら、キーボードの[Shift]キーを押し続ける方法で回復環境に入ることができます。あるいは、複数回の起動失敗を繰り返すと自動で回復環境に入る場合もあります。
- 回復環境画面が表示されたら、「トラブルシューティング」→「詳細オプション」を選択します。
- 「更新プログラムのアンインストール」オプションを選択し、最新の累積更新プログラムを元に戻します。
アンインストール後の挙動
更新プログラムをアンインストールした後、Surfaceを再起動すると、従来であればサインイン画面に表示されなかったはずの「Microsoftアカウントのパスワード入力」オプションが選べる可能性が高まります。ここでMicrosoftアカウントのパスワードを正しく入力すれば、Windowsにログインできるようになり、その後でWindows Helloの顔認証やPINコードを再設定する余地が生まれます。
以下は、回復環境から更新プログラムをアンインストールする際のステップをテーブルにまとめたものです。
操作ステップ | 内容 |
---|---|
1. 回復環境起動 | Surfaceをシャットダウン後、 再び起動時に[Shift]を押し続けて回復環境へ入る |
2. トラブルシューティング選択 | [トラブルシューティング] → [詳細オプション] を選択 |
3. 更新プログラムアンインストール | [更新プログラムのアンインストール] から最近の累積更新プログラムを選択 |
4. システム再起動 | アンインストール完了後、Surfaceが再起動し、 正常にパスワード画面が表示されることを確認 |
5. Windowsへのサインイン | Microsoftアカウントパスワードを入力してサインイン |
6. Windows Helloの再設定 | 顔認証やPINの再登録を実施 ([設定] → [アカウント] → [サインイン オプション]) |
USBリカバリドライブを利用してSurfaceを初期化
回復環境から更新プログラムをアンインストールする方法で解決できれば問題ありませんが、どうしても「アンインストールを試してもトラブルシューティングがうまく進まない」「PINの再設定画面にたどり着けない」などのケースも考えられます。そうした際は、USBリカバリドライブを利用してシステムを初期化する強硬手段があります。初期化を行うと、工場出荷時状態のWindowsが再セットアップされる形となり、確実にOSの設定をリフレッシュできます。
USBリカバリドライブの作成手順
- 別の正常に動作するWindows PCを用意します。
- Windowsの「回復ドライブの作成」機能を使ってUSBメモリにリカバリメディアを作成します。
- 公式のSurfaceリカバリイメージをダウンロードし、上記のUSBメモリに適用します。
- Surface専用のリカバリイメージは、Microsoft公式サイトにアクセスし、Surfaceのシリアル番号を入力することでダウンロードできます。
- 作成したUSBリカバリメディアをSurface Laptop 7に挿入し、電源ボタンと音量のボタン操作によってUSBから起動します。
初期化作業の流れ
USBリカバリメディアで起動すると、Windowsインストール時のセットアップ画面やトラブルシューティングメニューにアクセスできます。ここで「PCを初期状態に戻す」または「Windowsを再インストール」といった項目を選択し、工場出荷時状態にリカバリを行います。初期化に要する時間は環境やUSBメモリの速度にもよりますが、少なくとも30分以上を目安に考えておきましょう。
初期化が完了したら、Windowsの初期セットアップ画面が表示されます。この時点で新しいMicrosoftアカウントかローカルアカウントを作成し、パスワードやPINを設定します。初期状態に戻すことで、更新プログラムの適用前の状態へ戻れるため、ログイン障害やWindows Helloの不具合も解消できる可能性が高いです。
ローカル管理者アカウントを新規作成するメリット
実際にサインインできるようになった後、ぜひ行っていただきたいのが「ローカル管理者アカウントの作成」です。Microsoftアカウントだけを使っている環境だと、今回のようにPINや顔認証が壊滅的な状態になったとき、復旧経路が極端に限定されてしまうことがあります。一方で、ローカルアカウントを追加で作成しておけば、何らかの理由でMicrosoftアカウントとの同期が不調になっても、ローカルアカウントから管理者権限でシステムにアクセスすることが可能です。
ローカルアカウント作成の手順
- メインアカウントでWindowsにサインインします。
- [設定] → [アカウント] → 家族とその他ユーザーを選択します。
- 「その他のユーザーを追加する」から新しいユーザーを作成する画面に進み、「このユーザーのサインイン情報がありません」を選択します。
- 「Microsoftアカウントを持たないユーザーを追加する」を選択し、任意のユーザー名とパスワードを設定します。
- 作成されたユーザーを選択して、アカウントの種類を「管理者」に変更します。
これで、新たに作成したローカルアカウントが管理者権限を持ち、どのようなトラブルが起きても最低限のサインイン経路が確保できます。
ローカルアカウントとMicrosoftアカウントの両立
ローカルアカウントを追加しても、日常的にMicrosoftアカウントを利用することを妨げるわけではありません。ゲームやMicrosoft Storeのアプリなど、Microsoftアカウントが必要な場合はメインのアカウントを使うほうが便利です。ただし、いざというときの“セーフティーネット”としてローカルアカウントがあると非常に安心感があります。
PINや顔認証をリセットした後の注意点
今回の問題が解決してWindowsに無事サインインできるようになったら、顔認証やPINを再度有効化する際にいくつか注意しておくべきポイントがあります。
Windows Helloがうまく動作しない場合の再確認
- カメラドライバの状態を確認する: Windows Helloの顔認証は内蔵カメラを利用します。デバイスマネージャーでカメラドライバが正しくインストールされているかを確認しましょう。
- 周辺光の影響を考慮する: 顔認証がうまく機能しないとき、周囲の明るさやユーザーの姿勢などが原因となることもあります。最適な照明環境を整え、ディスプレイの角度を調整してから再登録を行うと成功率が向上します。
- 複数の顔認証を登録する: Windows Helloの設定画面では、追加の外観(メガネの有無など)を登録できます。顔認証の成功率を高めたい場合は、顔の異なる状態を複数パターン登録しておくと便利です。
PINリセット手順
顔認証が使えずPINコードも分からないという状況では、どうしても回復環境からの措置や初期化が必要になる場合があります。一方でWindowsにサインインができている状況なら、以下の手順で簡単にPINをリセット可能です。
- [設定] → [アカウント] → [サインイン オプション]
- Windows Hello PINを選択
- [忘れた場合は?] や [PINをリセットする] をクリック
- Microsoftアカウントのパスワードを入力し、新しいPINを設定
この時点でMicrosoftアカウントがロック状態でないことも確認しましょう。誤入力を短時間に繰り返しすぎると、アカウントが一時的にロックされる可能性もあります。
セキュリティと利便性のバランス
Windows HelloやPINを用いた認証は、パスワードより手軽でありながら、セキュリティレベルを高く保てる利点があります。ただし、何かの拍子でログイン手段がすべて使えなくなってしまうと、今回のようにデバイスへアクセスできない大きなトラブルにも発展しかねません。Windowsは「強固なセキュリティを維持しつつ、万が一にも第三者に簡単に突破されない仕組み」を実現するため、リセットや初期化といった最終手段以外の回避策を安易に提供していません。そこにはユーザーの利便性と安全性を両立させる難しさがあります。
アップデートの重要性と定期的なバックアップの奨励
今回のケースではアップデートが問題を引き起こしましたが、通常はOSやファームウェアを最新の状態に保つことが安全性を高めるうえで望ましいアプローチです。アップデートを避けるのではなく、万一の不具合に備えて以下のような対策を行うことが推奨されます。
- システム復元ポイントやバックアップを定期的に作成する: 更新プログラム適用前にイメージバックアップを作成しておけば、いざという時に簡単にロールバック可能です。
- 不要なUSB機器や周辺デバイスの取り外し: アップデート時に余計なデバイスドライバと干渉しないよう、最小構成でアップデートを行うとトラブルを回避しやすくなります。
- Windows Insider Programの利用は慎重に: 新機能やプレビュー版を試したい場合、テスト機などでまず検証し、本番環境のSurfaceでは安定版を優先するといった運用が望ましいです。
トラブルシューティングを効率化するためのコマンド活用
顔認証やPINの問題に限らず、Windowsがうまく起動しなかったり認証まわりが混乱したときには、コマンドプロンプトやPowerShellを活用して状況を把握する方法もあります。回復環境で[コマンドプロンプトを開く]を選択して以下のようなコマンドを試してみるのも一手です。
# システムファイルの整合性をチェック
sfc /scannow
# Windowsイメージの状態をチェック
dism /online /cleanup-image /scanhealth
# 不良が見つかった場合に修復を試みる
dism /online /cleanup-image /restorehealth
これらのコマンドで修復できる問題は限られますが、システムファイルやストアドライバに破損がある場合には有効です。いずれもWindowsが起動可能な状態でも、回復環境からでも実行できるため、事前にトラブルの原因を切り分ける際に試してみる価値があります。
まとめ
Surface Laptop 7におけるWindows Hello顔認証の不具合は、最新の累積更新プログラム適用後に起きる可能性があります。その際、PINの誤入力により「チャレンジフレーズ」が表示され、さらにPINリセットも不可となり、サインインできなくなるといった深刻な状況に陥るケースも珍しくありません。そんなときには、まず回復環境を利用して問題のあるアップデートをアンインストールし、Microsoftアカウントのパスワードでサインインできるかを試みましょう。もしそれでも解決しない場合には、USBリカバリドライブを使ってSurfaceを初期化し、工場出荷時状態に戻す方法があります。
サインイン後は、Windows Hello顔認証やPINコードを再設定するだけでなく、ローカルアカウントの管理者ユーザーを新たに作成しておくと、今回のような認証トラブルの際にもバックアップ的に活用できます。Windowsのセキュリティポリシー上、抜け道を用意することは難しくなっていますが、その分だけ強固な保護が期待できます。手間を感じることもあるかもしれませんが、日頃からシステムのバックアップを取ったり、ローカルアカウントを併用したりするなどの対策を施しておくと、いざというときに迅速に対処できるでしょう。
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