Surface Pro 9は、その携帯性とパフォーマンスの両立が魅力の2in1デバイスです。しかし、一部のユーザーからは、突然カーソル操作が重くなったり動作全体にラグが生じたりする報告が相次いでいます。本記事では原因と対処法を詳しく解説します。
Surface Pro 9で発生するラグ・パフォーマンス低下の症状
Surface Pro 9で報告されるラグやパフォーマンス低下の症状は、多くの場合以下のようにまとめられます。
- 操作の遅延
タッチやマウスカーソルの反応が数秒ほど遅れる、ドラッグがスムーズに行えないといったケース。 - アプリケーション起動後の重さ
WordやPowerPointなどのOfficeアプリを起動してから作業を始めると急にラグが大きくなる。特に画像やグラフが多いドキュメントを開いている最中に顕著。 - 再起動直後は改善、徐々に悪化
再起動してすぐは快適に動くが、時間が経つと再び重くなる。スリープからの復帰時にも同様の症状が起こる場合がある。
これらの症状が発生すると作業効率が大幅に低下し、ストレスを感じやすくなります。早めに原因を特定し、適切な対処を行うことが重要です。
問題の主な原因と背景
ラグやパフォーマンス低下を引き起こしている原因としては、多岐にわたる可能性があります。なかでも近年多く指摘されているのは、以下のようなものです。
1. グラフィックドライバーに関する問題
- Windows Updateやドライバの更新により、Intel GPUの設定が変化してしまう場合があります。
- 特に「Panel Self Refresh」機能が悪さをして、描画のタイミングにズレが生じることがあると報告されています。
2. 電源プランやパフォーマンス設定
- Surface Pro 9は省電力・高パフォーマンスを両立させる設計が特徴ですが、バッテリ駆動時にはCPUやGPUの動作クロックが抑えられます。
- 不適切な電源プランが選択されている場合、必要以上に処理速度が制限されることがあります。
3. ソフトウェアの一時的な不具合
- Officeアプリなど特定のソフトウェア側で不具合が起きると、CPUやメモリの使用率が急上昇し、全体的に動作が重くなることがあります。
- 再起動すると一時的に落ち着くのは、アプリやシステムがメモリを使い切ってしまった状態から回復するためと考えられます。
4. 最新アップデートとの競合やバグ
- 特に2月~3月頃のアップデートでラグが発生しやすくなったというユーザー報告が多く見受けられます。
- Microsoft側の配信する修正パッチが順次リリースされているため、最新状況を追いかけていくことが重要です。
解決策1: Windows Updateとデバイスドライバーの最新化
まずは定番ですが、システム全体を最新の状態に保つことが基本です。Surface向けのアップデートは、Windows標準のものに加えて「Surface用ドライバーパック」も用意されています。
1-1. Windows Updateの確認
- 「設定」→「Windows Update」を開き、保留中の更新プログラムがないか確認します。
- すべての更新が完了している場合は「更新プログラムのチェック」をクリックして、さらに新しいアップデートがないか探してみましょう。
- ドライバーやファームウェア更新が入っている場合は優先的にインストールします。
1-2. Surface Pro 9用ドライバーパックのインストール
- Microsoft公式サイトから「Surface Pro 9用ドライバーパック」を入手し、手動でインストールする方法です。
- 自動的に反映されない場合でも、この方法で必要なドライバを網羅的に更新できます。
- ダウンロード完了後、適切にインストールウィザードを進め、再起動を必ず行いましょう。
解決策2: Intel Graphics Command Center Betaで「Panel Self Refresh」を無効化
最も大きな効果があったと多くのユーザーが報告しているのが「Panel Self Refresh」の無効化です。この機能は、画面上の表示が静止している部分の更新を抑えて省電力を狙うものですが、環境によっては描画の遅延やカクつきを招きます。
2-1. 通常版Intel Graphics Command Centerのアンインストール
- 「設定」→「アプリ」→「インストールされているアプリ」で「Intel Graphics Command Center」を探します。
- 該当アプリを選択し「アンインストール」を実行します。
2-2. Beta版のインストール
- Microsoft Storeを開き、「Intel Graphics Command Center Beta」を検索します。
- 見つかったらダウンロードしてインストールします。
- インストールが終わったら起動し、詳細なグラフィック設定にアクセスしましょう。
2-3. Panel Self Refreshを無効にする
- 「ディスプレイ」や「省電力」に関する項目内に「Panel Self Refresh」もしくは類似の表示があるはずです。
- これを「オフ」に切り替えます。
- 変更を適用すると画面が一時的に暗転する場合がありますが、完了後にラグや表示の乱れが大幅に改善されることが期待できます。
設定比較表
下記はIntel Graphics Command Center Betaでよく触れられる主な設定項目と、その推奨設定例です。
設定項目 | 推奨状態 | 説明 |
---|---|---|
Panel Self Refresh | オフ | ラグの原因となる可能性があるため無効化推奨 |
Display Power Saving | オフまたは低 | ディスプレイの明るさ自動調整などが不要ならオフ |
Global Application Settings | アプリに合わせる | アプリによってカスタマイズできる場合は有効 |
省電力機能全般 | バランス~パフォーマンス | ラグの度合いに応じて調整 |
解決策3: グラフィックドライバーのリセット
一時的な対処ですが、ラグが急にひどくなったときはキーボードショートカット「Ctrl + Windows + Shift + B」でグラフィックドライバーをリセットできます。
- リセット時には画面が一瞬黒くなりますが、数秒で復帰します。
- この操作だけで根本解決にならないことも多いですが、応急処置としては有効です。
- 定期的にリセットが必要になるほど頻発する場合は、前述の「Panel Self Refresh」無効化やドライバ更新を強く検討しましょう。
解決策4: MSconfigでプロセッサ数を最大化する
MSconfig(システム構成ツール)を使うことで、起動時のプロセッサ数を最大に指定できます。Surface Pro 9は高性能なCPUコアを複数備えていますが、何らかの制限により正しく使われていない可能性があるときに試す手段です。
4-1. MSconfigの起動手順
- キーボードの「Windowsキー + R」を押下し、「ファイル名を指定して実行」を開きます。
- 「msconfig」と入力してOKをクリックします。
- 「ブート」タブを選択し、「詳細オプション」を開きます。
4-2. プロセッサ数を最大に設定
- 「Number of processors」にチェックを入れます。
- ドロップダウンから最大コア数(8や16など、CPUに応じた値)が選択可能か確認します。
- 最後にOKを押し、MSconfigを閉じると再起動が求められます。
- 再起動後、処理速度が改善したか確認しましょう。
解決策5: 電源プラン・スリープ設定の見直し
Surface Pro 9は省電力モードが非常に優秀ですが、パフォーマンスが必要な作業をする際にバッテリ駆動を続けると、CPUやGPUの動作周波数が大きく制限される場合があります。
5-1. 電源プランの変更
- 「設定」→「システム」→「電源とバッテリ」を開きます。
- 「電源モード」や「パフォーマンス優先度」を「ベストパフォーマンス」に設定します。
- ただし、バッテリ消耗が早くなる点には注意が必要です。
5-2. スリープからの復帰時の対処
- スリープ復帰後にラグが発生しやすい場合は、一度「Win + L」で画面ロックをかけて再度サインインすると改善する例があります。
- 上述のグラフィックリセットや、電源プランの再設定も組み合わせると効果的です。
解決策6: 直近の更新プログラムのロールバック
最新のドライバーやWindows Updateが原因の場合、ロールバックを検討する選択肢もあります。特に2月~3月頃に行われたアップデートを適用後に症状が出始めたユーザーは、以下の手順を試してみてください。
- 「設定」→「Windows Update」→「更新履歴の表示」を開きます。
- 「アンインストール可能な更新プログラム」があれば一覧から選択し、ロールバックを実行します。
- セキュリティ更新などの重要パッチも同時に巻き戻される可能性があるため、慎重な判断が必要です。
解決策7: その他の最終手段と追加のポイント
ここまでの手順で改善しない場合は、さらなる対処を検討する必要があります。
7-1. 強制終了・再起動
- 電源ボタンを約20秒長押しし、一度強制シャットダウンを行います。
- 再度電源を入れると、一時的にラグが解消されるケースがありますが、本質的な原因解消にはならないことが多いです。
7-2. Officeアプリケーションの修復
- WordやExcel、PowerPointなど、重さを感じるアプリの修復を試す方法です。
- 「設定」→「アプリ」→「インストールされているアプリ」→Officeを選択し「変更」から「クイック修復」や「オンライン修復」を実行します。
- アプリのバージョンによってはアップデートの不具合でメモリリークなどを起こしている可能性もあります。
7-3. 初期化(工場出荷状態へのリセット)
- 最終的にすべての方法で改善しない場合、初期化を検討する必要があります。
- 大事なデータは必ず別のストレージにバックアップを取り、手順をよく確認してから実行してください。
- 初期化後には最新のアップデートを当てたうえで、改めて問題が再発するか確認します。
初期化時の注意点
- OneDriveなどクラウド上にデータをバックアップしているか確認しておくと安心です。
- Windowsの標準機能「回復オプション」から初期化する際、全ファイルを保持するか完全に削除するか選ぶことができますが、不具合が深刻な場合は完全削除を推奨します。
表やコードを用いた具体的な設定例
実際に設定を変える際、初心者の方でも分かりやすいように、ここではMSconfigのブートオプションと電源プランの設定に関する例を示します。
MSconfigでのブートオプション例
1. Win + R → msconfig と入力してOK
2. [ブート] タブ → [詳細オプション]
3. [Number of processors]にチェックを入れる → 最大値を選択
4. [OK] → [適用] → 再起動
この操作によって、起動時に利用するCPUコア数が最大限活用されることが期待されます。
電源プラン設定例
1. スタートボタン → [設定]
2. [システム] → [電源とバッテリ]
3. [電源モード] (または [パフォーマンスモード])を「ベストパフォーマンス」に変更
4. バッテリ駆動時は消耗が早い点に注意
これらの設定を組み合わせて行うと、Surface Pro 9のラグ解消につながる可能性が高まります。
まとめ
Surface Pro 9で発生するラグや動作の重さは、ドライバーの不具合や電源設定など、複数の要因が絡み合って起こりやすい現象です。最も注目されているのが「Intel Graphics Command Center Betaを導入し、Panel Self Refreshを無効化する」という方法で、多くのユーザーが一時的もしくは恒久的な改善を体感しています。
そのほかMSconfigによるプロセッサ数の最大化や電源プランの変更など、設定の見直しだけで驚くほどスムーズになる場合もあります。もし最新のWindows Updateと相性が悪い場合は、ロールバックを含めた対処を検討し、それでも改善しないときは初期化や修理サポートの依頼も選択肢に入れましょう。
大切なのは、まずソフトウェア面の対処を網羅的に試し、それでも直らない場合にハードウェアの点検やサポートに連絡することです。Surface Pro 9は優れた性能を持つデバイスだけに、正しく対処すれば快適さが甦る可能性が十分にあります。自分の使い方や状況に合わせて最適な方法を選び、快適な作業環境を取り戻してください。
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