WindowsのVolume Shadow Copy Serviceエラーを解消する徹底ガイド

Windows環境でバックアップやシステム保護を行う際に欠かせない「Volume Shadow Copy Service(VSS)」。便利な機能でありながら、まれに原因不明のエラーが発生してしまうことがあります。大切なデータを安心して守るためにも、VSSエラーの原因と具体的な対処策を知っておけば、いざというときにスムーズに対応できるはずです。

Volume Shadow Copy Service(VSS)エラーとは

Volume Shadow Copy Serviceは、Windowsに標準搭載されている機能の一つで、ドライブ全体のスナップショットを作成し、バックアップのスムーズな取得やシステム復元ポイントの生成を可能にするものです。通常はOSのバックグラウンドで動作しており、ユーザーが意識せずとも自動で機能します。しかし、何らかのトラブルや競合が生じた場合、イベントログにエラーを残すことがあり、そのまま放置しているとバックアップに失敗したり、システム復元機能が正常に動作しなくなったりするリスクがあります。

具体的に発生するエラーの例

Windowsのイベントビューアに以下のようなエラーが記録される場合があります。

Volume Shadow Copy Service information: The COM Server with CLSID {4e14fba2-2e22-11d1-9964-00c04fbbb345}
and name CEventSystem cannot be started.
[0x8007045b, A system shutdown is in progress.]

このエラーメッセージは、VSSがCOMサーバーを起動しようとした際に失敗したことを示しています。背後にはさまざまな原因が考えられますが、代表的なケースとしてはシステムのシャットダウン操作との競合や、Cryptographic Services(CryptSVC)とVSSサービスの相互依存性に関わる問題が挙げられます。

Windows 10 バージョン1903~1909での不具合

特にWindows 10 バージョン1903~1909付近の環境では、Cryptographic Servicesに関する既知の不具合が報告されています。CryptSVCはWindows Updateの認証や証明書の管理といった重要な機能を担うサービスでありながら、まれにサービスの停止や再起動に不具合が起こることでVSSの正常起動を阻害するケースがあるとされています。

VSSエラーの原因と特徴

VSSがエラーを吐く主な原因には複数のパターンが存在します。ここでは代表的なものをいくつか挙げ、特徴を整理します。

シャットダウン操作との競合

システムをシャットダウンしている最中、あるいは再起動をかけている途中にVSSが起動または処理を行おうとすると、必要なリソースが確保できずエラーが発生することがあります。エラーの内容には「A system shutdown is in progress.(システムのシャットダウンが進行中です)」と記録されるため、イベントログを確認することで判別できます。

Cryptographic Services(CryptSVC)の動作不良

Windowsのアップデート管理やライセンス認証に深く関わるCryptSVCは、VSSをはじめとした他のWindowsサービスとも連携しながら動作しています。このサービスに起因する不具合が発生すると、VSSが必要とする処理がうまく行えず、結果としてエラーを引き起こす可能性が高まります。

サービスの依存関係の問題

VSSだけでなく、Microsoft Software Shadow Copy Provider(SwPrv)などの連動サービスが適切に起動していない、あるいは設定が無効になっている場合にもVSSエラーが発生する場合があります。特に、VSSが自動スタートでない環境や、手動でサービスを停止させたままの状態になっている場合は注意が必要です。

エラー解決が遅れるとどうなるのか

  • システムイメージのバックアップに失敗する
  • 復元ポイントが適切に作成できない
  • 特定のソフトウェア(セキュリティ対策ソフト等)によるスナップショット取得が失敗する
  • Windows Update自体が不安定になる場合もある

このように、VSSエラーは放置するとバックアップ環境の信頼性を損ねるだけでなく、ほかのサービスにも悪影響を及ぼす可能性があります。万が一に備え、早めの対処を心がけましょう。

恒久的な解決策・対処方法

ここからは、実際にエラーを解決するための具体的な方法をいくつかご紹介します。環境に合わせて取り組むことで、VSSエラーの頻度やリスクを大幅に低減できます。

1. Cryptographic Servicesを手動で停止してからシャットダウンする

問題が頻繁に起こる場合、シャットダウン前にあらかじめ「Cryptographic Services」を停止しておく方法が有効です。管理者権限のコマンドプロンプトやPowerShellで以下のコマンドを実行します。

net stop cryptsvc

このコマンドを実行し、サービスが正常に停止してからシャットダウンを行うことで、VSSとシャットダウン操作の競合が緩和される場合があります。

バッチファイルの活用

「シャットダウン時に毎回コマンドを入力するのは面倒だ」という方は、以下のようなバッチファイルを作成しておくと便利です。

@echo off
net stop cryptsvc
shutdown /s /t 0

これを「stop_and_shutdown.bat」などの名前で保存し、ショートカットを作成しておくことで、ワンクリックでCryptSVCを停止しつつシャットダウンを実行できます。

2. Volume Shadow Copy Serviceを自動(遅延開始)に設定する

VSSが手動設定や無効設定になっている場合、バックグラウンドで適切に起動しないことがあります。サービスを「自動(遅延開始)」に設定することで、Windows起動直後の負荷が落ち着いてからサービスが開始されるため、競合リスクを減らすことができます。

  1. Windowsの「サービス」画面(services.msc)を開く
  2. 「Volume Shadow Copy(ボリューム シャドウ コピー)」を探す
  3. スタートアップの種類を「自動(遅延開始)」に変更する
  4. 「適用」→「OK」を押して設定を保存する

3. Volume Shadow Copy Serviceが実行中かの確認

サービス画面での確認

services.mscを開き、「Volume Shadow Copy」の状態が「開始」になっているかを確認します。もし「停止」になっている場合は右クリックから「開始」を選び、手動でサービスを起動させてください。

コマンドプロンプトでの確認

コマンドプロンプトやPowerShellで以下のコマンドを実行しても、サービスの状態を確認できます。

sc query "VSS"

表示結果に「RUNNING」と出ていれば問題ありませんが、「STOPPED」となっている場合は手動で起動が必要です。

4. Windowsの更新を適用する

VSSエラーがWindowsの既知の不具合である可能性を疑う場合は、Windows Updateを最新の状態に保つことが何より大切です。特にWindows 10 バージョン1903~1909の環境を利用している場合、Microsoftから提供される修正パッチがすでにリリースされているケースがありますので、定期的に更新プログラムを適用して不具合を解消しましょう。

更新状況の確認手順

  1. 「設定」→「更新とセキュリティ」を開く
  2. 「Windows Update」を選択
  3. 「更新プログラムのチェック」をクリック
  4. 表示された更新プログラムがあれば適用する

5. ドライバやハードウェアとの競合を確認する

セキュリティソフトや特定のハードウェアドライバがVSSの動作を阻害するケースも報告されています。以下の点も確認してみましょう。

  • ウイルス対策ソフトのバージョンアップ
  • ストレージ関連ドライバ(RAIDコントローラなど)の最新版適用
  • BIOSやファームウェアの更新

また、バックアップ専用ツールを導入している環境では、そのツールが独自のスナップショット機能を持つ場合があり、VSSと競合を起こしている可能性も否定できません。ツールの設定やアップデート情報を一度チェックしておくと安心です。

トラブルシューティングに役立つ追加のポイント

ここでは、さらに深く掘り下げた対処法やトラブルシューティングのヒントをまとめます。

イベントビューアのログを詳細に確認する

Windows には「イベントビューア」が搭載されており、VSSまわりのエラー情報を詳細に確認できます。

  1. 「Windowsログ」→「アプリケーション」→「ソース」欄で「VSS」や「VolSnap」をチェック
  2. エラーや警告が頻発しているタイミングを時系列で追う
  3. ほかのサービス(例えば「CryptSvc」や「Service Control Manager」)が同時刻にエラーを出していないか確認する

ログに現れる他のサービス名やモジュール名が、VSSエラーの原因特定につながるヒントになる場合が多々あります。

システムファイルチェッカー(SFC)とDISMの活用

Cryptographic ServicesやVSSの関連ファイルが破損している可能性もあるため、以下のコマンドでWindowsのシステムファイルをチェックしてみるのも一つの手段です。

sfc /scannow

システムファイルに問題が見つかった場合、自動的に修復が試みられます。さらにDISMコマンドを併用し、Windowsイメージ自体を修復することも可能です。

dism /online /cleanup-image /restorehealth

こちらを実行することで、破損したイメージファイルがオンラインソースから修正され、VSSまわりの不具合が解消されることがあります。

ソフトウェアやスクリプトによるVSSの競合調査

ハードディスククローンやバックアップソフトなど、VSSを利用してスナップショットを取得するソフトウェアが複数同時に動くと競合を引き起こしやすくなります。定期的にバックアップを取得するためのスケジュールタスクやスクリプトが設定されていないか、あるいはそのタイミングが重なっていないかを確認することも重要です。

実際の運用上の注意点とベストプラクティス

VSSを安定して稼働させるには、日頃の運用にも注意する必要があります。以下では、いくつかのベストプラクティスを紹介します。

バックアップのスケジュール設定を見直す

業務用PCやサーバーでは、夜間に自動バックアップが動くよう設定しているケースが多いでしょう。しかし、そのタイミングでWindows Updateが同時に走ったり、管理者が手動でシャットダウンを行ったりするとVSSが競合を起こすことがあります。スケジュールを分散させるか、タスクスケジューラの条件を変更して競合を避けるのが得策です。

サードパーティ製バックアップソフトを定期的に更新する

サードパーティ製ツールがVSSと連携してスナップショットを管理しているケースでは、該当ソフトが古いバージョンのままになっているとWindowsの更新に追随できず、不具合が起こる可能性があります。定期的にソフトウェア側もアップデートし、サポート情報をチェックしましょう。

不要なレジストリエントリやサービス設定を削除・見直し

過去にインストールしたソフトウェアのアンインストール痕跡や、レジストリに残っている古いサービスエントリが原因となる場合もあります。定期的にシステムのクリーンアップを行い、不要なサービスやレジストリエントリが残っていないかを確認することで、予期せぬエラーを予防できます。

バックアップの信頼性確保

VSSが正常に動作しているかどうかを確認するには、実際にバックアップを取得し、復元ポイントから戻せるかどうかをテストするのが最も確実です。定期的にテストを実施し、バックアップデータが復元可能であることを確認しておきましょう。

よくある質問と疑問点

VSSエラーに関して、運用者やユーザーからよく寄せられる質問をまとめました。

Q1. 「Volume Shadow Copy」以外に設定を見直すサービスはある?

A1. 「Microsoft Software Shadow Copy Provider(SwPrv)」もあわせて確認してみてください。VSSに依存するサービスとして存在しており、こちらが停止している場合にもVSSの動作が阻害される可能性があります。

Q2. こまめに再起動をしていれば問題は起こりにくい?

A2. 再起動を行うことは一時的な不具合解消には役立つ場合がありますが、恒久的な解決策にはなりにくいです。前述の通りサービス設定やアップデート、競合の解消が重要です。

Q3. スナップショットを増やしすぎるとエラーが増える?

A3. 可能性はあります。スナップショットが多すぎるとディスク容量や管理領域が逼迫し、VSSの処理に悪影響を与える場合があります。必要に応じて古いスナップショットを削除し、容量を確保することも検討しましょう。

Q4. VSSとHyper-Vスナップショットの違いは?

A4. 似たような仕組みに見えますが、Hyper-Vのスナップショットは主に仮想マシン単位での状態保存を目的とした機能です。VSSはファイルシステムやボリュームレベルでのバックアップに強みがあります。相互連携する部分もありますが、設定や運用方法は別々に考える必要があります。

まとめ

Volume Shadow Copy Service(VSS)はWindows環境でのバックアップ運用やシステム保護に欠かせない重要なサービスであるがゆえ、一度エラーが発生すると複数の機能に影響が波及してしまう可能性があります。シャットダウン前のCryptographic Servicesの停止や、VSSのスタートアップ設定、Windows Updateによるパッチ適用など、基本的な対策を実施するだけでも多くのトラブルを回避できるでしょう。

また、サービス間の依存関係を理解し、イベントビューアで関連ログを追うことで、潜在的な原因を突き止めやすくなります。万が一エラーが発生した場合でも、落ち着いて原因を特定し、適切に対処していけばシステムの安定を保つことは十分可能です。頻繁にVSSエラーが生じる場合は、今回ご紹介した対処方法やベストプラクティスを参考に、根本的な問題解決を目指してみてください。

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