Windows Updateを実行する際に思わぬエラーが起きると、作業が中断されてストレスを感じるものです。特に「0x80073712」のようなエラーは原因が分かりにくく、対処に時間がかかりがちです。本記事では、このエラーの原因から具体的な解決策までを丁寧に解説していきます。
Windows Updateエラー「0x80073712」とは
Windows Updateを実行していると、まれに「0x80073712」というエラーコードが表示される場合があります。このエラーは、システムファイルが破損していたり欠落していたりすることで発生しやすいものです。Windows Updateの仕組みとして、更新プログラムをインストールする際に必要なファイルを正しく取得・展開できない場合に、エラーとして通知が出ることがあります。
ファイルの破損原因はさまざまで、突然の電源断や強制終了、ディスク不良、アップデートの失敗などさまざまな要因による可能性があり得ます。いずれにしても、システムファイルの欠損を放置すると、さらなる不具合の原因にもなりかねません。そのため、早めの修復対応が大切です。
「0x80073712」エラーが表す意味
「0x80073712」はWindowsが内部的に管理するエラーコードで、「Windowsのコンポーネント ストアが壊れている」あるいは「一部のファイルが見つからない」という意味を含んでいます。具体的には、Windows OSのコンポーネント ストアに必要なファイルや情報がそろっておらず、更新プログラムのインストールが進めない状態です。このエラーを無視していると、次のアップデートでも同様の問題を引き起こす可能性が高いため、迅速な修復対応が望まれます。
よくある対策の第一歩:DISMコマンドとSFCコマンド
Windows Update周りの不具合が生じたとき、まず試されるのが以下の2つのコマンドです。
- DISM.exe /Online /Cleanup-image /RestoreHealth
- sfc /scannow
これらのコマンドを使うと、システムファイルの整合性をチェックし、破損しているファイルがあれば自動的に修復する手順を実行してくれます。しかしながら、時にはこれらのコマンド自体がエラーで終了してしまうことがあります。エラーコードとして「0x800f081f」が表示されたり、「ソースファイルが見つからない」といったメッセージが出るケースです。
エラー「0x800f081f」が示すこと
「0x800f081f」とは、主にDISMコマンドが修復に必要なソースを見つけられない場合に発生するエラーです。Windowsシステムが自身で破損したファイルを修復しようとしても、ローカルにそのファイルの正常なコピーが無い場合にはインストールメディアなど外部ソースからファイルを取得する必要があります。しかし、そのソースパスを指定していない、または指定が誤っていると、このエラーが出てしまうのです。
解決策:インストールメディアやISOからソースを指定する
最も効果的なアプローチは、ISOイメージをマウントまたはインストールメディアを用意して、そこからシステム修復に必要なファイルを取得する方法です。DISMコマンドの「/Source」パラメータを活用することで、破損したファイルを正しく置き換えられる可能性が高まります。
具体的な手順
以下に代表的な手順を紹介します。
- Windowsインストールメディアの用意
- Microsoft公式サイトからWindowsのISOファイルをダウンロードするか、既にお持ちの場合はそれを使用します。
- USBメモリなどにメディア作成ツールを使ってインストールメディアを作成しても構いません。
- ISOファイルをマウントする(またはUSBドライブを挿入する)
- ISOファイルの場合、Windows 10以降は標準機能としてISOを右クリックから「マウント」できます。
- マウントすると、新しい仮想ドライブが割り当てられます。例として、D:ドライブにマウントされたとします。
- 実際のドライブ文字は環境によって変化するため、エクスプローラーで確認してください。
- DISMコマンドでソースを指定して実行
下記のようにコマンドプロンプト(管理者権限)またはPowerShell(管理者権限)でコマンドを入力します。
DISM.exe /Online /Cleanup-image /Restorehealth /Source:D:\sources\sxs /LimitAccess
D:\sources\sxs
は、マウントしたISO内の該当フォルダを指しています。フォルダ構成はWindowsのバージョンによって変わる場合があるため、あらかじめISO内をチェックしましょう。- 「/LimitAccess」を付与することで、Windows Updateなどネットワークからのソース取得を行わず、指定したパスのみを参照します。
- コマンドが完了したら再起動し、再度Windows Updateを試す
- 無事にDISMコマンドが成功すれば、システム内部の破損ファイルが修復されている可能性が高いです。
- 続いて「sfc /scannow」を実行し、さらにシステムファイルの整合性をチェックするのも有効です。
フォルダ構成が異なる場合の注意点
Windowsのバージョンやエディションによっては、「\sources\sxs」のフォルダが存在しない場合もあります。その場合は、「\sources\install.wim」や「\sources\install.esd」をマウントするなど、追加の作業が必要になることがあります。具体的には、install.wimから必要なファイルを抽出してDISMのソースに指定するといった方法です。
install.wimからソースを指定する例
install.wimをマウントしてソース指定を行いたい場合、以下の手順になります。
- 作業用のフォルダを作成(例:C:\mount)
- 以下のコマンドを実行して、install.wimをマウント
Dism /Mount-Image /ImageFile:D:\sources\install.wim /Index:1 /MountDir:C:\mount
- マウントが成功したら、DISMの修復コマンドでソースを指定する
DISM.exe /Online /Cleanup-image /Restorehealth /Source:C:\mount\Windows /LimitAccess
- 修復完了後、マウント解除
Dism /Unmount-Image /MountDir:C:\mount /Discard
上記の例ではIndex:1を指定していますが、エディションによってはIndex番号が異なる場合があります。「Dism /Get-WIMInfo /WimFile:D:\sources\install.wim」などで、どのIndexが目的のエディションに相当するか確認するとよいでしょう。
その他のトラブルシューティング方法
Windows Updateエラー「0x80073712」を解消するための手段はソース指定以外にも複数存在します。下記のような追加の手段も併せて検討してみてください。
1. システムの復元ポイントを試す
もしエラーが出る以前に作成していた復元ポイントがあれば、そこに戻して状態を巻き戻す方法もあります。ただし、復元ポイントの作成時期やシステムの変更状況によっては、最新データが失われる場合もあるため注意しましょう。
2. Windows Updateトラブルシューティングツールの活用
Windows標準のトラブルシューティングツールを使うと、基本的な設定不備や必要なサービスが停止しているなどの問題を自動で検知・修正してくれることがあります。次の手順でツールを実行できます。
- [設定] → [更新とセキュリティ] → [トラブルシューティング] を選択。
- 「Windows Update」の項目を選んで実行。
3. 一時ファイルやSoftwareDistributionフォルダのクリア
Windows Updateの仕組み上、古い更新プログラムのキャッシュや一時ファイルが壊れているとエラーが出るケースもあります。以下の手順でSoftwareDistributionフォルダをリセットすることで、改善が見られる場合があります。
- 管理者権限のコマンドプロンプトを起動。
- Windows Update関連サービスを停止。
net stop wuauserv
net stop bits
- 以下のフォルダ名を変更(実質的なリセット)
rename C:\Windows\SoftwareDistribution SoftwareDistribution.old
rename C:\Windows\system32\catroot2 catroot2.old
- サービスを再度起動。
net start wuauserv
net start bits
- Windows Updateを再度試す。
Microsoft公式ドキュメントの活用
Windows Update周りの不具合は多種多様であり、原因の特定や解決に時間がかかる場合があります。そんな時にはMicrosoftの公式ドキュメントをこまめに参照するのがおすすめです。
- Configure a Windows Repair Source (Microsoft Learn)
https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-hardware/manufacture/desktop/configure-a-windows-repair-source
このドキュメントには、DISMコマンドを使った修復方法や、repair sourceの指定方法などが詳しく解説されています。万が一、この記事で紹介した手順で解決しない場合でも、公式ドキュメントに記載されている他のパターンやコマンドオプションを試すことで改善につながる可能性があります。
エラー再発時のチェックポイント
修復を試みても再び「0x80073712」や「0x800f081f」が出てしまう場合、下記のポイントを再度確認しましょう。
1. Windowsのバージョンやエディションの整合性
修復ソースとして利用するISOイメージが、実際にインストールされているWindowsと一致していないと修復に失敗する場合があります。Windows 10 Homeを使っているのにWindows 10 ProのISOを使用している、といったミスマッチがないかどうかを確認してください。
2. ディスクの状態確認
ディスク自体に不良セクタがあると、ファイル破損が頻発する可能性があります。エクスプローラーのドライブ プロパティから「ツール」タブにある「エラーチェック」機能を使ったり、コマンドプロンプトで「chkdsk /f」コマンドを実行してディスクの健康状態をチェックしてみてください。
3. 他のセキュリティソフトや常駐アプリケーションの影響
ウイルス対策ソフトやファイアウォール設定、常駐アプリケーションがDISMやSFCの動作を妨げるケースも稀にあります。修復実行中だけ一時的にセキュリティソフトの機能をオフにするなどして、改善しないかどうかをテストするのも一案です。もちろん、オフにする際は外部からの脅威に注意しながら作業してください。
コマンドの実行例:表で整理
以下に、代表的なコマンドを表形式でまとめました。状況に応じて使い分けてください。
コマンド例 | 用途 |
---|---|
sfc /scannow | システムファイルの整合性チェック&自動修復 |
DISM.exe /Online /Cleanup-image /CheckHealth | コンポーネントストアに問題がないか簡易チェック |
DISM.exe /Online /Cleanup-image /ScanHealth | コンポーネントストアの詳細スキャン |
DISM.exe /Online /Cleanup-image /RestoreHealth | コンポーネントストアの修復 |
DISM.exe /Online /Cleanup-image /RestoreHealth /Source:D:\sources\sxs | 外部ソース(ISOなど)を指定してコンポーネントストアを修復する場合 |
net stop wuauserv & net stop bits | Windows Update関連サービスを停止 |
rename C:\Windows\SoftwareDistribution SoftwareDistribution.old | Windows Updateのキャッシュフォルダをリネーム(実質的にリセット) |
rename C:\Windows\system32\catroot2 catroot2.old | 署名関連のキャッシュフォルダをリネーム(実質的にリセット) |
net start wuauserv & net start bits | Windows Update関連サービスを再開 |
Dism /Mount-Image /ImageFile:D:\sources\install.wim /Index:1 /MountDir:C:\mount | install.wimをマウントして必要なファイルを参照できる状態にする |
Dism /Unmount-Image /MountDir:C:\mount /Discard | マウントしたイメージを破棄 |
クリーンインストールや上書きインストールの最終手段
どうしても修復がうまくいかない、もしくはWindows全体の動作が不安定な状態が続く場合は、クリーンインストールや上書きインストールを検討することも選択肢の一つです。もちろん、初期化には大きな手間がかかりますが、システム全体がリフレッシュされるため、多くの問題を一気に解決できるメリットがあります。
- クリーンインストール
システムのドライブを初期化してからOSを再インストールする方法。バックアップと復元の作業が必須です。 - 上書きインストール(インプレースアップグレード)
ユーザーのファイルや設定を保持したまま、Windowsを再インストールする方法。クリーンインストールよりは手間が少ないですが、完全にまっさらな状態にはなりません。
これらを実行する場合は、確実に重要データのバックアップを取ってから行いましょう。システムドライブに保存されているデータはもちろん、アプリケーションのライセンスや設定情報など、事前に整理しておくことでトラブルを回避できます。
まとめ:エラー「0x80073712」を解決して安定したWindows環境へ
Windows Updateエラー「0x80073712」は、システムファイルやコンポーネント ストアの破損が原因であることが多く、通常のDISMコマンドやSFCコマンドでは修復できない場合があります。しかし、適切なインストールメディアやISOをソースとして指定することで、問題を解決できる可能性が高まります。
さらに、ソース指定以外にも、以下のポイントを押さえると解決率がよりアップします。
- システムの復元ポイントやトラブルシューティングツールの活用
- SoftwareDistributionフォルダのリセット
- ディスクの健康状態やセキュリティソフトの影響の確認
どうしても解決しない場合には、クリーンインストールや上書きインストール(インプレースアップグレード)といったリフレッシュ方法も検討してみましょう。これらの手順でWindows Updateのエラーが解消され、安定したWindows環境で快適に作業できるようになることを願っています。
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