Windowsのボリュームシャドウコピーを外付けやネットワークへ保存する方法と注意点

企業や個人でシステムを運用するなかで、万が一に備えてバックアップを確保するのはとても大切なことです。Windowsには「ボリュームシャドウコピー」という標準機能が用意されていますが、ネットワークドライブや外付けUSBドライブなどローカル以外へ保存したい場合に、どう設定すればよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。本記事では、GUI操作とコマンド操作の双方から、ローカル以外にボリュームシャドウコピーを保存する方法やその際の注意点、さらに便利な代替策までをわかりやすく解説します。

ボリュームシャドウコピーとは

ボリュームシャドウコピー(Volume Shadow Copy、VSS)は、Microsoft Windowsに搭載されているスナップショット機能の一種で、ドライブ全体や特定のフォルダを時点ごとに保存し、復元ポイントのように過去の状態に戻せる仕組みです。ファイルサーバーやクライアントPCなど、さまざまな環境でデータ保護を実現する上で重要な役割を担っています。

ボリュームシャドウコピーが果たす役割と仕組み

ボリュームシャドウコピーでは、OSがディスクの書き込み処理を追跡し、変更前の情報をシャドウコピー領域に保存します。これにより、バックアップやシステムトラブル発生時に、指定した日時の状態でファイルを取り出せるようになります。Windowsはこの機能をバックアップやシステム保護の手段として提供しており、「以前のバージョンを復元する」といった操作ができるのも、ボリュームシャドウコピーの恩恵です。

ローカル以外への保存が求められる背景

通常、ボリュームシャドウコピーはコピー元と同じローカルドライブ上に保存されるよう設定されています。しかし以下のような理由から、ローカル以外の外付けUSBドライブやネットワークドライブに保存したいケースもあるでしょう。

  • ディスク容量の確保
    内部ストレージ容量が限られている場合、シャドウコピーで空き領域が圧迫されるのを避けたい。
  • 災害対策(DR対策)
    万一、物理的な障害が発生したとき、外付けやネットワーク上にコピーがあれば被害を最小限に抑えられる。
  • パフォーマンス要件
    ローカルディスクの負荷を下げ、シャドウコピーの書き込み先を別のドライブにオフロードしたい場合。
  • セキュリティ強化
    ファイルサーバー上の機密情報をより厳重に管理したいときに、限定されたネットワーク先にバックアップとして保存する。

とはいえ、OSのバージョンやエディションによっては、標準のコマンドやGUIに制限がある場合があります。次章では、GUI操作と「vssadmin」コマンドを使った方法を中心に確認していきましょう。

GUIでの設定方法

Windowsの一部バージョンやエディションでは、ボリュームシャドウコピーを構成するための画面操作が提供されています。以下は一般的な流れです。

  1. ディスクの管理画面またはエクスプローラーを開く
  • スタートメニューから「コンピューターの管理」を開き、「ディスクの管理」を選択します。
  • または、エクスプローラーの「PC」画面でドライブを右クリックし、「プロパティ」を選んで進めるやり方もあります。
  1. ボリュームシャドウコピーの構成画面へ
  • ディスクの管理画面で任意のドライブを右クリックし、「プロパティ」もしくは「ボリュームシャドウコピーの構成(Configure Shadow Copies)」などを選びます。
  • Windows Server系では「ボリュームシャドウコピー」タブが用意されている場合があります。
  • OSによって表記が多少異なるので、該当タブやメニューを探してください。
  1. 設定変更で保存先を指定
  • シャドウコピーのドライブを選択し「設定 (Settings)」ボタンをクリックすると、保存先を指定する画面が表示されることがあります。
  • ここで外付けドライブやネットワークドライブを選択することが可能です。
  • ただし、すべてのWindowsエディションでこのGUI設定が使用できるとは限りません。特にHomeエディションなどは機能が制限されている場合があるため、注意が必要です。

GUI操作の利点は、コマンドに慣れていない方でも視覚的に設定がしやすい点ですが、GUIが存在しないバージョンの場合や、実際に保存先をネットワークドライブに指定した際にエラーが出るケースもあります。次に、コマンドラインでの方法を確認していきましょう。

vssadminコマンドでの設定方法

Windowsの一部バージョンでは「vssadmin」というツールが用意されており、ボリュームシャドウコピーの保存領域を設定するための「add shadowstorage」サブコマンドを使うことができます。以下が基本的な手順です。

コマンドの基本構文

コマンドプロンプトまたはPowerShellを管理者権限で起動し、以下の構文で実行します。

vssadmin add shadowstorage /for=<コピー元ドライブ> /on=<コピー先ドライブ> /maxsize=<指定サイズ>
  • /for= <コピー元ドライブ>
    ボリュームシャドウコピーを作成する元のドライブ名(例:C:)
  • /on= <コピー先ドライブ>
    実際に保存するドライブ名(例:D: やネットワークドライブのパスなど)
  • /maxsize= <指定サイズ>
    保存するシャドウコピーの最大サイズ。例:10GBUNBOUNDEDなど。

たとえば以下のように指定できます。

vssadmin add shadowstorage /for=C: /on=D: /maxsize=10GB

このコマンドが成功すると、vssadmin list shadowstorage で設定状況が確認できます。

コマンド説明
vssadmin list providersVSSプロバイダーの一覧を表示
vssadmin list shadows作成されているシャドウコピーの一覧を表示
vssadmin list shadowstorage現在のshadowstorage設定(/for や /on、/maxsizeなど)の一覧を表示
vssadmin add shadowstorageシャドウコピーの保存先やサイズを新たに設定
vssadmin resize shadowstorage既存のshadowstorage設定のサイズ変更
vssadmin delete shadows指定したシャドウコピーの削除

上記のような各コマンドを組み合わせることで、ボリュームシャドウコピーを管理できます。ただし、OSのエディションやバージョンによっては「add shadowstorage」サブコマンドが使えない場合や、実行してもエラーが返ってくるケースがあります。

エラーや制約への対処

  • 権限エラー
    管理者権限でコマンドを実行していない場合、「アクセスが拒否されました」などのエラーが表示されることがあります。必ず「管理者として実行」してください。
  • Homeエディションでの制限
    WindowsのHomeエディションなどでは、vssadminの一部機能が制限されていたり、GUIそのものが利用できない場合があります。
  • ネットワークドライブへの指定で失敗する場合
    マッピングされたネットワークドライブではエラーが発生することがあります。その場合、UNCパス(例:\ServerName\ShareName)で指定するか、適切な資格情報でネットワークドライブを再マッピングするなどの工夫が必要です。

どうしてもvssadminコマンドが使えない、またはGUIが表示されない環境では、次章で紹介する代替策の検討も有効でしょう。

GUIを使えない・コマンドが使えない環境の代替策

ボリュームシャドウコピーをローカル以外に保存したいのに、そもそもGUIやvssadminコマンドが使えないケースは少なくありません。特にHomeエディションでは該当機能が削除・制限されている場合があるため、以下のような方法を検討するのがおすすめです。

サードパーティ製ツールの活用

VSSを活用するかどうかは別として、ファイルシステムのスナップショットや定期的なバックアップを簡単に外付けドライブやネットワークドライブに保存できるツールが多数存在します。

  • Acronis True Image
    システム全体のイメージバックアップから、個別ファイルのバックアップまで柔軟に選択可能。VSSとの連携を行いながら、外部ストレージやクラウドへの転送もサポート。
  • EaseUS Todo Backup
    無償版でも基本的なバックアップ機能が使えるため、小規模環境や個人利用であれば検討しやすいツール。定期バックアップやスケジューリングも簡単に行える。
  • Macrium Reflect
    信頼性が高いイメージバックアップソフト。VSS技術を利用し、システムファイルが使用中でもスナップショットを取得。外付けディスクやNASへの保存もスムーズ。

代表的なバックアップソフトウェア例

ソフトウェア名特徴備考
Acronis True Imageシステム全体、クローン機能、クラウド連携あり商用製品だが体験版あり
EaseUS Todo Backup無償版でもファイルバックアップ機能やスケジュール機能に対応有償版でさらに高機能
Macrium Reflectシンプルで操作しやすいUI、イメージベースのバックアップに強いフリー版と有償版あり
ShadowProtect (StorageCraft)ビジネス向けとして人気、高速なスナップショット取得機能企業向け、災害復旧ソリューションと連携しやすい

こうしたツールを使うことで、Windows自体のGUIやコマンドが提供していない柔軟な設定も実現できます。外部ドライブやネットワークドライブへの保存先を選択できたり、差分・増分バックアップ、クラウドへのバックアップなど、より高度な運用が可能になります。

設定時のポイントと注意事項

ボリュームシャドウコピーをローカルドライブ以外に設定する際には、以下のポイントを押さえておくとスムーズに運用できます。

  1. ネットワーク帯域と安定性
    ネットワークドライブを保存先にする場合、バックアップ時に大容量のデータ転送が発生するため、ネットワークの帯域幅や速度に注意が必要です。途中で接続が切れたり、VPN越しで帯域が限られている環境ではタイムアウトエラーが起きる可能性があります。
  2. 外付けドライブの取り外しリスク
    USB接続の外付けドライブを使う場合、バックアップ中に取り外してしまうとデータが破損したり、シャドウコピーのタスクが失敗することがあります。取り外すタイミングや取り扱いには細心の注意が必要です。
  3. セキュリティ対策
    ネットワークドライブや外部ストレージにコピーを保存する場合、暗号化やアクセス権限の設定を適切に行うことで、機密情報の漏えいリスクを減らせます。パスワード付きの共有フォルダやBitLockerなどの暗号化手段を活用するのも有効です。
  4. 保管サイクルとディスク容量管理
    シャドウコピーを溜め続けると、保存先の容量が不足するリスクがあります。定期的に古いスナップショットを削除するか、上限サイズを適切に設定しておきましょう。また、サードパーティ製ソフトウェアを利用する場合には、差分・増分バックアップ設定を活用するなど、ディスク容量の最適化を検討してください。
  5. OSのバージョンとエディションの制限
    先述のとおり、Windows Homeエディションなどでは機能が一部制限されている場合があるため、必要に応じてProやEnterpriseなどの上位エディションへのアップグレードを検討するのも一手です。また、Windows Serverであればサーバーマネージャーなどを介してより高度な設定が行えます。

まとめ

ボリュームシャドウコピーは、Windowsが標準で備える大変便利なスナップショット機能です。デフォルトではローカルドライブに保存する設計ですが、環境によってはネットワークドライブや外付けUSBドライブに保存したいケースも多々あるでしょう。OSのエディションやバージョンによってはGUIを使って簡単に設定できる場合もあれば、vssadminコマンドでの設定が必要になる場合もあります。

しかし、これらの機能が制限されているケースでは、サードパーティ製バックアップソフトウェアを活用して、より柔軟かつ信頼性の高いバックアップ環境を構築するのも一つの選択肢です。バックアップ先としてネットワークドライブや外付けドライブを使う際には、ネットワークやストレージの容量、安定性、セキュリティなどを考慮し、計画的に運用してください。目的や環境に合った手段を選び、安心・安全なデータ保護を実現していきましょう。

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