Wordを使って論文やレポートを作成する際、図や表のキャプションは非常に重要な役割を果たします。特にサポーティング情報として添付する場合、通常の図番号ではなく「Figure S1」「Figure S2」のような形式を使いたい場面もあるはずです。この記事では、Microsoft Wordでキャプションを「Figure S1」「Figure S2」のようなカスタム形式に設定する具体的な方法と、作業効率を上げるちょっとした工夫について詳しく解説していきます。手順に沿って操作していただくことで、研究論文や技術資料のレイアウトをより洗練し、効率的に制作できるようになるでしょう。
図のキャプションを「Figure S1」に変更する基本手順
まずは、Wordの標準的な機能を使って図のキャプションを「Figure S1」「Figure S2」のように表示させる方法を整理しましょう。Wordにはキャプションのラベルを追加・変更する仕組みが備わっていますが、少し操作にクセがあるため、ポイントを押さえながら進めることが大切です。
1. 図を挿入する
文章中に図として扱いたい画像やイラストを挿入します。Wordの[挿入]タブで[画像]や[図]といった項目を選択し、ファイルから挿入したり、クリップボードから貼り付けたりする形で配置しましょう。配置場所をしっかり決め、文章の流れが途切れないように工夫しておくと後の編集が楽になります。
2. キャプションの挿入画面を開く
続いて、対象の図をクリックして選択した状態で、[参考資料]タブにある[キャプションの挿入]をクリックします。すると「キャプション」というダイアログボックスが表示され、ラベルやキャプション番号などを設定できる画面が立ち上がります。
3. 新しいラベルを作成する
「キャプション」ダイアログボックスには既定で「図」「表」「Equation」などのラベルが存在することがあります。英語版や一部のカスタマイズ環境では「Figure」などが用意されていることもあります。しかし、その既存ラベルを「Figure S」に変更しようとしても、上書きで編集はできません。そこで以下の手順を取ります。
- 「キャプション」ダイアログボックス内で[新しいラベル]ボタンをクリック
- 表示された小さなダイアログに「Figure S」のような文字列を入力し、[OK]をクリック
これで、新しいラベル「Figure S」が追加され、キャプション欄には「Figure S 1」のような形式で数字が続く形が表示されます。もし「Figure S」と数字の間のスペースが気になる場合は、後からキャプションを挿入した後に手動で削除すれば問題ありません。
4. キャプションを微調整する
キャプションのプレビューでは「Figure S 1」となる可能性がありますが、実際に文書に挿入された後、必要に応じてスペースを消去し、「Figure S1」と繋げて表記しましょう。修正後、改めて[キャプション]ダイアログや図目録(Table of Figures)を更新するときも、この変更は維持されます。
5. 繰り返し利用を簡略化する(オプション)
論文や書籍などで多数の図を扱う場合、同じラベル形式を繰り返し使うのは面倒になりがちです。そこで、作成したキャプションを選択し、
- [挿入]→[クイックパーツ]→[自動テンプレート(AutoText)]
- または[部品ギャラリーの保存]を利用する
といった機能を使ってテンプレート化しておくのがおすすめです。そうすると次回以降はワンクリックで同じラベル形式のキャプションを呼び出せるようになり、作業の効率が大幅に向上します。
「Figure S1」キャプションを扱う上でのポイント
カスタム形式のキャプションを追加しても、Wordの連番機能や参照機能はほぼ同じように使えます。ただし、いくつか留意しておきたい細かいポイントが存在します。
連番の更新と順序の管理
Wordは通常、キャプションを新しく挿入すると自動的に連番が割り当てられます。キャプション番号を更新したいときは、以下のいずれかの方法で対応できます。
- キャプション上にカーソルを合わせ、右クリックから「フィールドの更新」を選択
- [参考資料]タブ→[図表番号の更新]をまとめて実行
この機能によって、図の追加や削除、順番の変更があっても番号の整合性を簡単に保てます。特に論文などで図を大幅に入れ替える際は非常に便利です。
図目録(Table of Figures)の作成
キャプションを挿入した図を一覧化し、目録(Table of Figures)として挿入するときも「Figure S1」「Figure S2」などのラベルがそのまま表示されます。設定手順は以下の通りです。
- 目録を挿入したい位置にカーソルを置く
- [参考資料]タブ→[図表番号]→[図表目録の挿入]をクリック
- 「キャプションラベル」で先ほど設定した「Figure S」を選択
こうすると、文書内の「Figure S1」「Figure S2」などが一括で一覧表示され、ページ番号も自動で反映されます。論文の最終チェック時や追跡時に役立ちます。
英語論文の場合の注意点
英語ベースの論文で「Figure S1」「Figure S2」を使う場合、文献管理ソフトなどと連携することが多いかもしれません。その場合でも、Wordのキャプション機能とは独立して文献管理ツール側が参照を埋め込む形式であれば問題ありませんが、ツールによっては「Figure」部分が上書きされる可能性があります。キャプションを変更している間にツール側が再スキャンを実行すると、ラベルが「Figure」として初期化されるケースもあるため、事前にツールの仕様を確認しておくと安心です。
上級テクニック:フィールドコードとVBAマクロ
より複雑な文書を扱う場合や、一括で大量のキャプションを「Figure S形式」に変換したい場合などには、フィールドコードやVBAマクロを活用する方法があります。手作業よりも効率よく、なおかつ正確にキャプションを管理できるようになるでしょう。
フィールドコードを活用する
Wordのキャプションはフィールドコードで管理されています。例えば図のキャプションには「SEQ Figure * ARABIC」などのコードが含まれており、これによって自動的に連番が付きます。「Figure」を「Figure S」などに切り替えると、このラベル部分が「SEQ Figure S * ARABIC」のように変わっているイメージです。
フィールドコードを表示・編集するには、キャプション部分を右クリックして「フィールドコードの切り替え」を行います。ここでラベル名やオプションを必要に応じて書き換えられますが、ラベルを統一して切り替えたい場合は、後述のVBAマクロを利用すると一括操作ができて便利です。
VBAマクロで一括変更する
Wordの文書が大規模になり、「Figure 1」から「Figure S1」への一括変更を手動で行うのが大変な場合に役立つのがVBAマクロです。以下は簡易的な例ですが、文書内のキャプションを一括で探して、ラベル部分を「Figure S」に変換するマクロのイメージです。
Sub ReplaceFigureLabelWithS()
Dim f As Field
For Each f In ActiveDocument.Fields
If f.Type = wdFieldSequence Then
' フィールドコードの文字列を取得
Dim fieldCode As String
fieldCode = f.Code.Text
' "SEQ Figure"が含まれている場合、Figureを置換
If InStr(fieldCode, "SEQ Figure") > 0 Then
' 新しいコード文字列を作成
fieldCode = Replace(fieldCode, "SEQ Figure", "SEQ Figure S")
f.Code.Text = fieldCode
End If
End If
Next f
' フィールドをすべて更新
ActiveDocument.Fields.Update
End Sub
上記のサンプルマクロの主な手順は以下の通りです。
- 文書に含まれるすべてのフィールド(Fieldsコレクション)を順番にチェック
wdFieldSequence
(Word独自の連番フィールド)であるかを判断- フィールドコードの文字列を取得し、「SEQ Figure」という部分を「SEQ Figure S」に差し替える
- すべての更新を終えてからフィールドを更新
このようにすれば、大量の図を一度に「Figure S1」「Figure S2」形式に移行できます。ただし、文書内に「Figure」という文字列が多用されている場合は、条件をより厳密にして誤変換を避ける工夫が必要です。また、このマクロを実行する前には、念のため文書のバックアップを取っておくことを強く推奨します。
トラブルシューティング:キャプションがうまく表示されないとき
Wordのキャプションは便利な反面、文書が複雑になると想定外の動きをすることもあります。ここでは、よくあるトラブルとその対処法をまとめます。
キャプションの連番が飛んでしまう
- 原因:ページレイアウトの変更やセクション区切り、段組みなどが原因でキャプションが正しく認識されていない場合がある
- 対処策:文書全体を選択して[F9キー](フィールドの更新)を実行し、改めて番号が再割り当てされるかを確認する。必要に応じて[参考資料]→[図表番号の更新]も試す。
図表目録に「Figure S」が反映されない
- 原因:図表目録の作成時に「ラベル」選択が「Figure S」になっていないか、既存の「Figure」目録を参照している可能性
- 対処策:図表目録を挿入し直すか、[図表目録の挿入]画面の「オプション」から使用するスタイルやラベルを改めて指定する
Word以外のツールとの連携でラベルが上書きされる
- 原因:文献管理ソフトや論文投稿用テンプレートが自動でキャプションを管理しているケース
- 対処策:各種ソフトの設定でキャプションラベルの自動管理をオフにするか、Word側のラベルを尊重するように設定を見直す
実際の作業フロー例:表形式でおさらい
ここまで説明してきた内容を簡単なフロー表にまとめると、下記のようになります。特に論文作成時など、何度もキャプションを編集する方は一度流れを覚えておくと作業がスムーズです。
ステップ | 操作内容 | 補足 |
---|---|---|
図の挿入 | Word文書に図や画像を挿入して配置 | レイアウトに応じて適切な位置に配置する |
キャプション挿入 | [参考資料]タブ→[キャプションの挿入] をクリック | キャプションダイアログからラベルを選択・作成 |
新しいラベル追加 | [新しいラベル]ボタンをクリックし、「Figure S」などの文字列を登録 | そのままだと「Figure S 1」のようにスペースが入る場合もあり |
手動微調整 | キャプションに余計なスペースがあれば削除し、「Figure S1」「Figure S2」形式に仕上げる | 書式を一度整えると後からの更新でも維持できる |
図表目録の作成 | [参考資料]タブ→[図表目録の挿入] で「Figure S」ラベルを選択して目録を生成 | 文書の後ろに目録をまとめると確認しやすい |
連番・目録更新 | 新たに図を追加・削除したら[図表番号の更新]やF9キーで一括更新 | 手動で番号を修正せずに済む |
VBAマクロ(任意) | 大規模文書や大量のキャプション変更が必要な場合、一括置換マクロを作成して実行 | フィールドコードを直接変更し、作業効率を向上できる |
複数のサポーティング情報を管理するときの工夫
研究論文などでは、本編のほかにサポーティング情報として別文書を用意するケースが珍しくありません。それぞれの文書でキャプションが「Figure S1」「Figure S2」など別々の連番で管理される場合、以下のような点に気を付けると混乱が減ります。
- 文書を分割するタイミング
サポーティング情報を作成する段階で、最初から分割しておくとスムーズです。本編とサポーティング情報を行き来しながら設定すると、ラベルの混在を招きがちです。 - ファイル名やセクション名で区別
Wordファイル自体の名称に「_SI」や「_Supplemental」などを付与しておけば、どちらの文書がサポート用かが一目で分かります。キャプション以外の部分でも混同を避けられます。 - 図表目録や目次の一括管理
複数の文書を最終的に一つにまとめる場合、ラベルの重複や番号飛びが起きないよう、本編側のキャプション番号とは異なるプリフィックス(S1, S2など)を使うと混乱が少なくなります。
まとめ:キャプション管理を極めて作業効率をアップ
Wordのキャプション機能を使いこなすと、論文やレポートなどの専門文書を作成する際に「Figure S1」「Figure S2」といった特別なラベルをスムーズに管理できます。特に、文書が長くなるほどキャプションの自動番号付け・再割り当て機能は重宝します。最初にラベル設定をきちんと行っておけば、後から追加や削除をしてもミスが減り、レイアウト調整の手間も大幅に削減できるでしょう。
- カスタムラベル(Figure S)を作る
- スペースやハイフンなどの微調整は後からでも可能
- 図表目録での一括管理や参照機能もフル活用
- VBAマクロを使えばさらに効率化
ちょっとしたコツを押さえるだけで、サポーティング情報の見やすさや信頼感もぐっと向上します。ぜひこの記事を参考に、カスタムキャプションを活用してみてください。
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