SQLのINNER JOINとLEFT JOIN:違いと使用場面を詳解

SQLのINNER JOINとLEFT JOINは、データベースクエリで頻繁に使用される結合操作です。データの統合や検索結果のカスタマイズに欠かせないこれらの操作は、それぞれ異なる特性を持ち、使用場面も異なります。この記事では、INNER JOINとLEFT JOINの違いを詳細に説明し、実際の使用例や適切な使用場面について解説します。

INNER JOINとは

INNER JOINは、2つ以上のテーブルを結合する際に使用されるSQLの操作です。この操作では、結合条件に一致するレコードのみを結果セットに含めます。例えば、2つのテーブルがある場合、INNER JOINは両方のテーブルに存在する共通のキーを基にして一致する行だけを返します。これにより、関係性のあるデータのみを抽出することができます。INNER JOINは、テーブル間の正確な関係を明確にし、不要なデータを除外するために非常に有用です。

INNER JOINの使用例

具体的なSQL文を用いて、INNER JOINの使用方法を紹介します。ここでは、顧客情報を管理する customers テーブルと注文情報を管理する orders テーブルを例にとります。

例: 顧客と注文の結合

次のSQL文は、顧客とその注文情報を結合します。共通のキーとして顧客ID (customer_id) を使用します。

SELECT 
    customers.customer_id,
    customers.customer_name,
    orders.order_id,
    orders.order_date
FROM 
    customers
INNER JOIN 
    orders
ON 
    customers.customer_id = orders.customer_id;

このクエリは、customers テーブルと orders テーブルの customer_id 列が一致するレコードを結合し、顧客ID、顧客名、注文ID、および注文日を含む結果セットを返します。INNER JOINにより、注文が存在しない顧客や顧客が存在しない注文は結果セットに含まれません。

LEFT JOINとは

LEFT JOINは、2つ以上のテーブルを結合する際に使用されるSQLの操作で、左側のテーブルの全てのレコードを結果セットに含め、右側のテーブルの結合条件に一致するレコードを追加します。一致するレコードが右側のテーブルに存在しない場合、その部分にはNULL値が返されます。LEFT JOINは、主に左側のテーブルの全データを保持しながら、右側のテーブルから追加情報を取り込む場合に使用されます。

LEFT JOINの使用例

具体的なSQL文を用いて、LEFT JOINの使用方法を紹介します。ここでは、顧客情報を管理する customers テーブルと注文情報を管理する orders テーブルを例にとります。

例: 顧客と注文の結合

次のSQL文は、全ての顧客とその注文情報を結合します。共通のキーとして顧客ID (customer_id) を使用します。

SELECT 
    customers.customer_id,
    customers.customer_name,
    orders.order_id,
    orders.order_date
FROM 
    customers
LEFT JOIN 
    orders
ON 
    customers.customer_id = orders.customer_id;

このクエリは、customers テーブルの全てのレコードと、orders テーブルの customer_id 列が一致するレコードを結合し、顧客ID、顧客名、注文ID、および注文日を含む結果セットを返します。LEFT JOINにより、注文が存在しない顧客も結果セットに含まれ、その場合、注文に関する情報はNULL値が返されます。

INNER JOINとLEFT JOINの違い

INNER JOINとLEFT JOINの違いを理解するために、それぞれの動作を図解で説明します。

INNER JOINの動作

INNER JOINは、両方のテーブルに共通するレコードのみを返します。例えば、customers テーブルと orders テーブルを結合する場合、両方のテーブルに共通する customer_id があるレコードだけが結果セットに含まれます。

customers テーブル:
+-------------+----------------+
| customer_id | customer_name  |
+-------------+----------------+
| 1           | Alice          |
| 2           | Bob            |
| 3           | Charlie        |
+-------------+----------------+

orders テーブル:
+-------------+----------+------------+
| order_id    | customer_id | order_date |
+-------------+----------+------------+
| 101         | 1        | 2023-01-10 |
| 102         | 3        | 2023-01-15 |
+-------------+----------+------------+

INNER JOINの結果:
+-------------+----------------+----------+------------+
| customer_id | customer_name  | order_id | order_date |
+-------------+----------------+----------+------------+
| 1           | Alice          | 101      | 2023-01-10 |
| 3           | Charlie        | 102      | 2023-01-15 |
+-------------+----------------+----------+------------+

LEFT JOINの動作

LEFT JOINは、左側のテーブルの全てのレコードを返し、右側のテーブルに一致するレコードがあればそれを追加します。一致するレコードが右側のテーブルに存在しない場合、右側のテーブルの値はNULLになります。

LEFT JOINの結果:
+-------------+----------------+----------+------------+
| customer_id | customer_name  | order_id | order_date |
+-------------+----------------+----------+------------+
| 1           | Alice          | 101      | 2023-01-10 |
| 2           | Bob            | NULL     | NULL       |
| 3           | Charlie        | 102      | 2023-01-15 |
+-------------+----------------+----------+------------+

このように、INNER JOINは両方のテーブルに共通するレコードのみを返すのに対し、LEFT JOINは左側のテーブルの全てのレコードを返し、一致しない場合にはNULLを返します。

INNER JOINとLEFT JOINの適切な使用場面

INNER JOINとLEFT JOINの使い分けは、求めるデータと目的によって決まります。それぞれの使用場面について詳しく見ていきましょう。

INNER JOINの使用場面

INNER JOINは、両方のテーブルに共通するデータのみが必要な場合に適しています。以下のような場面で使用します：

顧客と注文の一致するデータを取得

顧客が注文をした場合、その注文情報を取得したい時にINNER JOINを使用します。例えば、特定の製品を購入した顧客の情報を取得する場合です。

SELECT 
    customers.customer_name,
    orders.order_id
FROM 
    customers
INNER JOIN 
    orders
ON 
    customers.customer_id = orders.customer_id
WHERE 
    orders.product_id = 123;

LEFT JOINの使用場面

LEFT JOINは、左側のテーブルの全データを保持しつつ、右側のテーブルから追加情報を取得したい場合に適しています。以下のような場面で使用します：

全顧客とその注文状況を確認

全ての顧客の情報を表示し、注文がある場合はその情報も併せて表示したい時にLEFT JOINを使用します。例えば、全顧客のリストを表示し、注文があるかどうかを確認する場合です。

SELECT 
    customers.customer_name,
    orders.order_id
FROM 
    customers
LEFT JOIN 
    orders
ON 
    customers.customer_id = orders.customer_id;

注文がない顧客を見つける

注文がない顧客を特定するためにもLEFT JOINを使用できます。NULLチェックを用いることで、注文がない顧客を抽出します。

SELECT 
    customers.customer_name
FROM 
    customers
LEFT JOIN 
    orders
ON 
    customers.customer_id = orders.customer_id
WHERE 
    orders.order_id IS NULL;

このように、INNER JOINは共通データの抽出に、LEFT JOINは左側テーブルの完全性を保ちながら追加情報を取得するのに適しています。

まとめ

INNER JOINとLEFT JOINは、それぞれ異なる目的で使用される重要なSQL操作です。INNER JOINは両方のテーブルに共通するデータのみを抽出し、関係のあるデータを厳密にフィルタリングします。一方、LEFT JOINは左側のテーブルの全データを保持し、右側のテーブルから一致するデータがあればそれを追加します。これにより、データの欠損を防ぎつつ必要な情報を取得できます。各JOIN操作の特性を理解し、適切な場面で使い分けることで、効率的なデータベースクエリを作成できるようになります。