Swiftは、Appleのプログラミング言語として、非同期処理をより簡単に扱えるよう進化しています。従来のコールバックベースの非同期処理は、複雑なコード構造やネストが深くなりがちで、可読性やメンテナンス性に課題がありました。しかし、Swift 5.5以降で導入されたasync/await
を使用すれば、コードをシンプルに保ちながら非同期処理を記述できるようになりました。本記事では、特にwithCheckedContinuation
を使い、従来のコールバックベースの非同期処理をasync/await
に変換する具体的な手法を紹介します。
コールバックベースの非同期処理とは
コールバックベースの非同期処理は、関数が呼び出される際に、完了時に実行される処理(コールバック)を引数として渡す手法です。非同期処理が完了すると、その結果をコールバック関数に渡して、後続の処理を実行します。例えば、APIリクエストやファイルの読み書きといった時間のかかる操作が完了した後に、その結果を元に処理を続行するために使われます。
コールバックの問題点
コールバックベースの非同期処理は、次のような問題点があります。
ネストの増加
複数の非同期処理を連続して行う場合、コールバックが次々と入れ子になり、いわゆる「コールバック地獄」と呼ばれるコードが生まれます。これにより、コードの可読性が低下し、バグの原因にもなります。
エラーハンドリングの複雑化
コールバック関数内でエラーハンドリングを行う場合、各処理ごとにエラーチェックが必要となり、コードが煩雑になります。エラーの伝播も直感的ではなく、管理が難しくなります。
このような問題を解決するために、Swiftではasync/await
が導入され、コールバックベースの非同期処理をより簡潔に記述できるようになりました。
async/awaitの基本
Swift 5.5で導入されたasync/await
は、非同期処理をよりシンプルで直感的に扱うための構文です。これにより、従来のコールバックベースの非同期処理の複雑さを解消し、同期処理に近い形で非同期処理を記述できるようになります。
asyncの役割
async
は、非同期的に動作する関数やメソッドを定義するためのキーワードです。このキーワードが付いた関数は、呼び出された時点で即座に実行が終了せず、非同期的に後続の処理を進めます。また、この関数は、await
を使ってその結果を待つことができます。
func fetchData() async -> String {
// 非同期処理
return "データを取得しました"
}
上記の関数fetchData
は、非同期でデータを取得するための処理を行いますが、async
キーワードにより、呼び出し側はこの処理が完了するまで待機することが可能です。
awaitの役割
await
は、async
関数の結果を待つために使用するキーワードです。await
を使うことで、非同期処理が完了するまで一時的に処理を中断し、その後の処理を続行する形になります。
let result = await fetchData()
print(result) // "データを取得しました"
await
を使ってfetchData
関数を呼び出し、その結果を待つことで、まるで同期処理のように直感的なフローでコードを記述できます。
async/awaitの利点
async/await
の最大の利点は、非同期処理の記述を簡潔にし、可読性を大幅に向上させる点です。コールバック地獄のようなネストが避けられるため、コードが直線的で理解しやすくなります。また、エラーハンドリングもシンプルになり、try
/catch
構文を用いて例外を扱うことができます。これにより、開発者は非同期処理に関する複雑なロジックをシンプルに管理できるようになります。
withCheckedContinuationとは
withCheckedContinuation
は、Swiftでコールバックベースの非同期処理をasync/await
に変換するために使用される特別な機能です。この関数は、既存のコールバック関数をasync
関数として扱うことを可能にします。従来のコールバック方式を保持しながら、async/await
のシンプルな構文に統合できるため、非常に便利です。
Continuationの概念
Continuation
とは、非同期処理を一時停止し、特定のイベントが完了した際に処理を再開させる仕組みのことです。withCheckedContinuation
はこの概念を利用して、コールバックで得られる結果を待つ処理をawait
で行えるようにします。
withCheckedContinuation
は、その中で定義されたクロージャに「Continuationオブジェクト」を提供します。このオブジェクトを使って、処理が完了したことを示し、結果を返すことができます。
withCheckedContinuationの役割
具体的には、withCheckedContinuation
は以下のように機能します。
- 従来のコールバックを、Swiftの
async/await
スタイルに変換 - コールバック関数の終了を待ち、処理を再開する
- Continuationを明示的に完了させることで、非同期処理を制御
基本構文
以下は、withCheckedContinuation
の基本的な使用方法です。
func performAsyncTask() async -> String {
return await withCheckedContinuation { continuation in
// コールバック処理を行う
someAsyncFunction { result in
continuation.resume(returning: result)
}
}
}
この例では、someAsyncFunction
というコールバックベースの非同期処理をasync
関数に変換しています。コールバック内でcontinuation.resume(returning:)
を使い、処理の結果をasync
関数の返り値として返しています。
checkedContinuationの利点
withCheckedContinuation
には、非同期処理の正確な制御に役立ついくつかの利点があります。
- エラーチェック:SwiftのランタイムがContinuationが正しく使用されているかチェックします。例えば、Continuationが2度呼ばれる、または呼ばれない場合に警告が発生します。これにより、非同期処理のミスを防ぐことができます。
- 保守性の向上:既存のコールバックベースの非同期処理を大幅に修正することなく、
async/await
に移行できるため、コードの保守性が向上します。
withCheckedContinuation
を使うことで、非同期処理の変換がシームレスになり、従来の複雑なコールバック構造から脱却することができます。
withCheckedContinuationの具体的な使い方
withCheckedContinuation
を実際に使用して、従来のコールバックベースの非同期処理をasync/await
スタイルに変換する方法を見ていきます。このセクションでは、コード例を通して、その使い方を理解しましょう。
基本的な例:コールバックをasync/awaitに変換
まず、簡単なコールバック関数をasync
関数に変換する例を示します。以下は、非同期的にデータを取得する関数を、withCheckedContinuation
を使ってasync/await
スタイルに変換する方法です。
// コールバックベースの関数
func fetchData(completion: @escaping (String) -> Void) {
// ここでは非同期処理を模擬
DispatchQueue.global().asyncAfter(deadline: .now() + 1) {
completion("データを取得しました")
}
}
// async/awaitに変換
func fetchDataAsync() async -> String {
return await withCheckedContinuation { continuation in
fetchData { result in
continuation.resume(returning: result)
}
}
}
// 非同期処理をasync/awaitで呼び出す
Task {
let data = await fetchDataAsync()
print(data) // "データを取得しました"
}
このコードでは、もともとコールバックベースで行われていたfetchData
関数を、async/await
を使ったfetchDataAsync
関数に変換しています。withCheckedContinuation
を使用することで、コールバック関数の完了を待って、その結果を返す処理を実現しています。
エラーハンドリングを含む非同期処理
次に、エラーが発生する可能性がある非同期処理に対応する方法を見ていきます。この場合、withCheckedThrowingContinuation
を使用することで、エラーが発生した場合には例外を投げることができます。
// コールバックベースのエラー処理付き関数
func fetchDataWithError(completion: @escaping (Result<String, Error>) -> Void) {
DispatchQueue.global().asyncAfter(deadline: .now() + 1) {
let success = Bool.random()
if success {
completion(.success("データ取得成功"))
} else {
completion(.failure(NSError(domain: "Error", code: -1, userInfo: nil)))
}
}
}
// async/awaitに変換(エラー処理対応)
func fetchDataAsyncWithError() async throws -> String {
return try await withCheckedThrowingContinuation { continuation in
fetchDataWithError { result in
switch result {
case .success(let data):
continuation.resume(returning: data)
case .failure(let error):
continuation.resume(throwing: error)
}
}
}
}
// 非同期処理をasync/awaitで呼び出す
Task {
do {
let data = try await fetchDataAsyncWithError()
print(data) // "データ取得成功" または エラー
} catch {
print("エラーが発生しました: \(error)")
}
}
この例では、データ取得に成功した場合はcontinuation.resume(returning:)
を呼び出し、エラーが発生した場合はcontinuation.resume(throwing:)
で例外をスローします。これにより、async/await
でエラーハンドリングも簡潔に実装可能です。
非同期処理のポイント
withCheckedContinuation
は、コールバック関数をasync/await
に変換するための便利な方法です。withCheckedThrowingContinuation
を使えば、非同期処理におけるエラーもスムーズに処理できます。- コールバックベースの非同期処理を変更せずに
async/await
に移行できるため、既存のコードベースにも簡単に適用可能です。
これにより、Swiftの非同期処理がより直感的で扱いやすくなり、コードの保守性も向上します。
コールバック処理をasync/awaitに変換するメリット
コールバックベースの非同期処理をasync/await
に変換することで得られるメリットは、開発者にとって非常に大きいです。従来のコールバック方式では、ネストが深くなりやすく、エラーハンドリングが複雑になる傾向がありましたが、async/await
を使用することで、これらの問題を解決し、よりシンプルで可読性の高いコードを実現できます。
1. 可読性の向上
コールバックベースの非同期処理では、処理が完了した後に実行されるコードが次々とネストされ、いわゆる「コールバック地獄」が発生します。このような構造は、コードの可読性を著しく低下させ、バグの原因にもなります。一方、async/await
を使うことで、非同期処理を同期処理のように順次記述できるため、フラットで見通しの良いコードになります。
例:コールバック地獄
fetchData { result in
processResult(result) { processedData in
saveData(processedData) { success in
if success {
print("データが正常に保存されました")
}
}
}
}
このように、コールバック関数が入れ子になってしまうことは珍しくありません。しかし、async/await
を使えば、このような複雑なネストは不要になります。
例:async/awaitを使用したシンプルなコード
let result = await fetchData()
let processedData = await processResult(result)
let success = await saveData(processedData)
if success {
print("データが正常に保存されました")
}
async/await
を使うと、同期処理のように順次記述でき、コードのフローが明確になります。
2. エラーハンドリングが簡単
コールバックベースの非同期処理では、エラーが発生するたびにその場でエラーハンドリングを行わなければならず、各処理に応じたエラーチェックが増えていきます。また、エラーの伝搬も難しく、コードが複雑化する原因になります。しかし、async/await
では、try
/catch
構文を使うことで、非同期処理全体で一貫したエラーハンドリングが可能です。
コールバックベースでのエラーハンドリング
fetchData { result, error in
if let error = error {
handleError(error)
return
}
processResult(result) { processedData, error in
if let error = error {
handleError(error)
return
}
saveData(processedData) { success, error in
if let error = error {
handleError(error)
return
}
if success {
print("データが保存されました")
}
}
}
}
このように、各処理ごとにエラーチェックが必要となり、コードが複雑化します。
async/awaitによるエラーハンドリング
do {
let result = try await fetchData()
let processedData = try await processResult(result)
let success = try await saveData(processedData)
if success {
print("データが正常に保存されました")
}
} catch {
handleError(error)
}
async/await
では、try
/catch
を使うことでエラーハンドリングを簡潔に行え、エラーが発生した場合には一箇所で適切に処理できます。
3. コードの保守性が向上
コールバック方式では、非同期処理のフローが分散しがちで、コードのメンテナンスが困難になります。特に、複数の非同期処理が絡み合うような複雑なアプリケーションでは、どの順序でどの処理が行われているかを追跡することが難しくなります。async/await
を導入することで、コードが順次的で一貫性があり、修正や拡張がしやすくなります。
4. デバッグが容易
async/await
の構造は、デバッグを行う際にも有効です。従来のコールバックを使ったコードでは、コールバックが非同期的に呼び出されるタイミングが難解で、バグを追跡するのが困難です。しかし、async/await
では処理が順次的に進むため、通常の同期コードと同じようにデバッグが可能です。
これらのメリットにより、async/await
はSwiftで非同期処理を記述する際の強力なツールとなります。特に、複雑な非同期処理を扱うプロジェクトにおいて、その効果は顕著です。
非同期関数内でのエラーハンドリング
async/await
とwithCheckedContinuation
を使った非同期処理では、エラーハンドリングを簡潔かつ強力に行うことができます。従来のコールバックベースの処理では、各段階で個別にエラー処理を行う必要がありましたが、async
関数では、エラーハンドリングが一貫した方法で記述でき、可読性も向上します。
エラーハンドリングの基本構文
async/await
を使うことで、非同期処理で発生するエラーをtry
/catch
構文で扱うことができます。非同期関数内でエラーが発生すると、通常のthrow
と同様にエラーがスローされ、呼び出し元でそのエラーをcatch
して処理します。
do {
let result = try await fetchDataAsync()
print("データ: \(result)")
} catch {
print("エラーが発生しました: \(error)")
}
上記の例では、fetchDataAsync
関数が非同期でデータを取得し、エラーが発生した場合はcatch
ブロックでエラーが処理されます。この構文により、複数の非同期処理が連続している場合でも、エラーハンドリングを一箇所でまとめて行うことができ、コードが簡潔になります。
withCheckedThrowingContinuationを使ったエラーハンドリング
withCheckedContinuation
には、エラー処理を伴う非同期処理に対応するためのwithCheckedThrowingContinuation
というバリエーションがあります。この関数は、非同期処理がエラーをスローする場合に使用され、非同期関数の中でエラーが発生する可能性がある場合に特に便利です。
以下は、エラーハンドリングを含む非同期処理の具体例です。
// コールバックベースの関数でエラー処理を伴う例
func fetchDataWithError(completion: @escaping (Result<String, Error>) -> Void) {
DispatchQueue.global().asyncAfter(deadline: .now() + 1) {
let success = Bool.random()
if success {
completion(.success("データ取得成功"))
} else {
completion(.failure(NSError(domain: "NetworkError", code: -1, userInfo: nil)))
}
}
}
// async/awaitに変換(エラー処理対応)
func fetchDataAsyncWithError() async throws -> String {
return try await withCheckedThrowingContinuation { continuation in
fetchDataWithError { result in
switch result {
case .success(let data):
continuation.resume(returning: data)
case .failure(let error):
continuation.resume(throwing: error)
}
}
}
}
// 非同期処理をasync/awaitで呼び出す
Task {
do {
let data = try await fetchDataAsyncWithError()
print("データ: \(data)")
} catch {
print("エラーが発生しました: \(error)")
}
}
この例では、fetchDataWithError
関数が非同期でデータを取得し、その結果をResult
型で返します。成功時にはデータが返され、失敗時にはエラーがスローされます。withCheckedThrowingContinuation
を使うことで、コールバックでのエラーをasync/await
の世界にスムーズに変換でき、try
/catch
を使った一貫したエラーハンドリングが可能になります。
非同期処理におけるエラーの伝播
async/await
を使うと、エラーを発生源から呼び出し元まで簡単に伝播させることができます。エラーが発生した箇所ではthrow
でエラーをスローし、呼び出し元のtry
を伴った呼び出しでそのエラーを捕捉します。この方法により、複雑な非同期処理でもエラー処理がシンプルになります。
func processData() async throws -> String {
let data = try await fetchDataAsyncWithError()
return "Processed \(data)"
}
Task {
do {
let result = try await processData()
print(result)
} catch {
print("処理中にエラーが発生しました: \(error)")
}
}
この例では、fetchDataAsyncWithError
からスローされたエラーがprocessData
関数を通してそのまま伝播され、最終的に呼び出し元で捕捉されます。これにより、エラーの伝播を簡潔に実現でき、処理全体を通じて統一されたエラーハンドリングが可能です。
エラー処理のまとめ
async/await
によって、非同期処理におけるエラーハンドリングが簡潔に行える。withCheckedThrowingContinuation
を使うことで、エラーをスローするコールバックベースの非同期処理をasync/await
に変換可能。try
/catch
を使えば、非同期処理全体を通じて一貫したエラーハンドリングが実現できる。
これにより、複雑な非同期処理であっても、Swiftのエラーハンドリングは非常にシンプルで効果的なものとなります。
非同期処理のベストプラクティス
Swiftにおける非同期処理を効果的に管理するためには、async/await
やwithCheckedContinuation
を適切に使うだけでなく、パフォーマンスや可読性、保守性に配慮した設計が求められます。このセクションでは、非同期処理のベストプラクティスをいくつか紹介します。
1. 並列処理を有効活用する
async/await
を使うと、非同期タスクを直列的に処理するのが容易ですが、並列処理が可能な場合には、Task
やTaskGroup
を使って複数の非同期タスクを並列で実行することができます。これにより、処理時間を大幅に短縮することが可能です。
Taskを使った並列処理の例
func fetchMultipleData() async -> (String, String) {
async let data1 = fetchDataAsync()
async let data2 = fetchDataAsync()
return await (data1, data2)
}
この例では、2つのfetchDataAsync
関数を並列に実行し、どちらの処理も完了した時点で結果をまとめて取得しています。これにより、非同期処理を効率的に行い、パフォーマンスが向上します。
2. 適切なタスクキャンセルを実装する
長時間かかる非同期処理では、キャンセル処理を実装することが重要です。ユーザーがタスクを途中で中止したい場合や、条件が変わってタスクを継続する必要がなくなった場合、適切にタスクをキャンセルすることで、リソースの無駄を防ぎます。
SwiftのTask
は、キャンセルが可能です。Task.isCancelled
プロパティを使って、タスクがキャンセルされたかどうかを確認し、必要に応じて処理を中断できます。
タスクキャンセルの例
func fetchDataWithCancel() async throws -> String {
for i in 1...10 {
if Task.isCancelled {
throw CancellationError()
}
await Task.sleep(1 * 1_000_000_000) // 1秒待機
}
return "データ取得完了"
}
Task {
do {
let result = try await fetchDataWithCancel()
print(result)
} catch is CancellationError {
print("タスクがキャンセルされました")
}
}
この例では、ループ中にTask.isCancelled
を確認して、キャンセルされた場合に処理を中断しています。
3. 適切なスレッドで非同期処理を行う
async/await
を使うと、非同期処理が簡潔に記述できるため、メインスレッド上で重たい処理を行わないよう注意が必要です。特に、UI操作やデータベースアクセスなど、スレッドセーフな実行が求められる部分では、適切なスレッドで非同期処理を実行することが重要です。
例えば、メインスレッドで実行されるUI関連の処理は、DispatchQueue.main.async
などを使ってメインスレッドに戻して行う必要があります。
メインスレッドでの処理例
func updateUI() {
DispatchQueue.main.async {
// UI更新処理
}
}
非同期タスクの処理が完了した後、メインスレッドでUIを更新する場合は、このように明示的にメインスレッドに戻す必要があります。
4. 非同期処理のタイムアウトを設定する
外部APIへのリクエストやネットワーク接続を伴う非同期処理では、一定時間応答がない場合にタイムアウトを設定して、無限に待機するのを防ぐことが重要です。Task
にはタイムアウトを指定するためのAPIが用意されています。
タイムアウトを使った非同期処理の例
func fetchDataWithTimeout() async throws -> String {
return try await withTaskGroup(of: String?.self) { group in
group.addTask {
try await Task.sleep(3 * 1_000_000_000) // 3秒待機
return "データ取得成功"
}
return try await group.next() ?? throw TimeoutError()
}
}
この例では、3秒間のタイムアウトを設定しており、タイムアウトが発生した場合にはTimeoutError
をスローします。これにより、非同期処理が完了しないまま無限に待機する状況を回避できます。
5. デッドロックを避ける
非同期処理の設計において、複数のタスクが相互に依存していると、デッドロックが発生する可能性があります。これは、タスクが互いに完了を待ってしまい、永久に処理が進まない状態です。これを避けるためには、タスクの依存関係を慎重に設計し、循環参照を避けることが重要です。
6. 適切なエラーハンドリングを行う
非同期処理では、エラーハンドリングが重要です。try
/catch
を使用して一貫したエラーハンドリングを行い、必要に応じてリトライ処理やユーザーへの通知を適切に行うことが、安定したアプリケーションの開発に不可欠です。
これらのベストプラクティスを守ることで、Swiftでの非同期処理は効率的かつ安全に実装でき、パフォーマンスや保守性が向上します。
応用例:APIリクエスト処理のasync/await化
APIリクエストは、非同期処理の典型的な応用例です。これまでコールバックを用いて実装されていたAPIリクエスト処理も、async/await
を活用することでシンプルかつ可読性の高いコードに変換できます。このセクションでは、具体的なAPIリクエストの処理を例に、async/await
でどのように実装するかを紹介します。
従来のコールバックベースのAPIリクエスト処理
まず、従来のコールバックベースでのAPIリクエストの処理を見てみましょう。例えば、URLSession
を使ってデータを取得する際、コールバックを使用してレスポンスを処理するのが一般的でした。
func fetchDataFromAPI(completion: @escaping (Data?, Error?) -> Void) {
let url = URL(string: "https://api.example.com/data")!
let task = URLSession.shared.dataTask(with: url) { data, response, error in
completion(data, error)
}
task.resume()
}
fetchDataFromAPI { data, error in
if let error = error {
print("エラーが発生しました: \(error)")
} else if let data = data {
print("データを取得しました: \(data)")
}
}
このコードでは、非同期処理がcompletion
クロージャ内で実行され、エラー処理とデータの取得が行われています。ここで問題になるのは、非同期処理を連続して行う場合、コードがネストされやすくなる点です。
async/awaitを使ったAPIリクエスト処理
次に、同じAPIリクエストをasync/await
を用いて書き換えた例を見てみましょう。Swift 5.5以降では、URLSession
に非同期メソッドが追加されているため、よりシンプルに非同期処理を行うことができます。
func fetchDataFromAPI() async throws -> Data {
let url = URL(string: "https://api.example.com/data")!
let (data, _) = try await URLSession.shared.data(from: url)
return data
}
Task {
do {
let data = try await fetchDataFromAPI()
print("データを取得しました: \(data)")
} catch {
print("エラーが発生しました: \(error)")
}
}
このコードでは、URLSession.shared.data(from:)
メソッドをasync
で呼び出し、非同期処理を同期処理のように扱える形で記述しています。これにより、コールバックが不要となり、処理がフラットで見やすくなっています。
JSONデータのパース処理
実際のAPIリクエストでは、取得したデータをJSON形式にパースして使用することが一般的です。次に、APIから取得したJSONデータをasync/await
を使って処理する例を見てみましょう。
struct APIResponse: Decodable {
let id: Int
let name: String
}
func fetchAndParseDataFromAPI() async throws -> APIResponse {
let url = URL(string: "https://api.example.com/data")!
let (data, _) = try await URLSession.shared.data(from: url)
let decodedData = try JSONDecoder().decode(APIResponse.self, from: data)
return decodedData
}
Task {
do {
let response = try await fetchAndParseDataFromAPI()
print("取得したデータ: \(response.name)")
} catch {
print("エラーが発生しました: \(error)")
}
}
このコードでは、APIから取得したデータをJSONDecoder
を使ってAPIResponse
という構造体にパースしています。async/await
の非同期処理を使うことで、JSONデータの取得からパースまでをシンプルに書くことができ、エラーハンドリングもtry
/catch
を使って一貫して行えます。
非同期APIリクエストのベストプラクティス
async/await
を使ったAPIリクエスト処理をより効率的にするために、いくつかのベストプラクティスを取り入れることが重要です。
1. タイムアウトの設定
APIリクエストはネットワーク状況に依存するため、タイムアウトを設定して無限に待機することを避ける必要があります。タイムアウトの制御はURLSessionConfiguration
で行うことができます。
let configuration = URLSessionConfiguration.default
configuration.timeoutIntervalForRequest = 10 // 10秒のタイムアウト
let session = URLSession(configuration: configuration)
2. キャッシングの活用
頻繁にアクセスするデータについては、キャッシングを活用してAPIリクエストの回数を減らすことができます。URLCache
を設定することで、リクエストに対してキャッシュされたデータを使用することができます。
3. エラーハンドリングの一貫性
async/await
では、エラーハンドリングが一貫してtry
/catch
で行えるため、ネットワークエラーやデータフォーマットエラーを適切に処理することが可能です。エラーメッセージや再試行処理をユーザーに提供することで、ユーザー体験を向上させることができます。
まとめ
async/await
を使うことで、従来のコールバックベースのAPIリクエスト処理が劇的にシンプルになり、コードの可読性や保守性が向上します。非同期処理を効率的に行うためのベストプラクティスを取り入れることで、SwiftでのAPIリクエスト処理がさらに強力で直感的なものになります。
演習問題:非同期処理の変換
ここでは、これまで学んできた内容を応用して、コールバックベースの非同期処理をasync/await
に変換する演習問題を提示します。これにより、async/await
とwithCheckedContinuation
の使用方法を深く理解し、実践的に活用できるようになります。
問題 1: シンプルな非同期処理の変換
以下のコールバックベースの非同期処理をasync/await
を使った非同期関数に変換してください。この処理は、データを非同期で取得し、成功時には結果を返し、失敗時にはエラーをスローします。
// コールバックベースの関数
func loadData(completion: @escaping (Result<String, Error>) -> Void) {
DispatchQueue.global().asyncAfter(deadline: .now() + 2) {
let success = Bool.random()
if success {
completion(.success("データを取得しました"))
} else {
completion(.failure(NSError(domain: "LoadError", code: -1, userInfo: nil)))
}
}
}
// ここでloadDataをasync/awaitに変換してください
ヒント: withCheckedThrowingContinuation
を使用して、コールバック関数をasync
関数に変換します。
解答例
// async/awaitに変換
func loadDataAsync() async throws -> String {
return try await withCheckedThrowingContinuation { continuation in
loadData { result in
switch result {
case .success(let data):
continuation.resume(returning: data)
case .failure(let error):
continuation.resume(throwing: error)
}
}
}
}
// 非同期処理を呼び出す
Task {
do {
let data = try await loadDataAsync()
print("取得したデータ: \(data)")
} catch {
print("エラーが発生しました: \(error)")
}
}
問題 2: 複数の非同期処理を並列で実行する
次に、複数の非同期処理を並列で実行し、それぞれの結果を結合して返す関数をasync/await
を使って実装してください。
// コールバックベースの関数
func fetchDataFromServer1(completion: @escaping (String) -> Void) {
DispatchQueue.global().asyncAfter(deadline: .now() + 1) {
completion("サーバー1からのデータ")
}
}
func fetchDataFromServer2(completion: @escaping (String) -> Void) {
DispatchQueue.global().asyncAfter(deadline: .now() + 2) {
completion("サーバー2からのデータ")
}
}
// 上記のfetchDataFromServer1とfetchDataFromServer2を並列に実行して、結果を結合して返すasync関数を作成してください
ヒント: async let
を使って、複数の非同期処理を並列に実行します。
解答例
// async/awaitに変換して並列実行
func fetchDataInParallel() async -> String {
async let data1 = fetchDataAsync1()
async let data2 = fetchDataAsync2()
let combinedData = await "\(data1), \(data2)"
return combinedData
}
// async/await版の非同期関数
func fetchDataAsync1() async -> String {
return await withCheckedContinuation { continuation in
fetchDataFromServer1 { data in
continuation.resume(returning: data)
}
}
}
func fetchDataAsync2() async -> String {
return await withCheckedContinuation { continuation in
fetchDataFromServer2 { data in
continuation.resume(returning: data)
}
}
}
// 非同期処理を呼び出す
Task {
let result = await fetchDataInParallel()
print("取得したデータ: \(result)") // "サーバー1からのデータ, サーバー2からのデータ"
}
問題 3: 非同期処理のキャンセル対応
最後に、非同期処理中にキャンセルできるようにする関数を作成してください。非同期タスクがキャンセルされた場合、キャンセルエラーをスローし、処理を中断するように実装してください。
// コールバックベースの関数
func fetchData(completion: @escaping (String) -> Void) {
DispatchQueue.global().asyncAfter(deadline: .now() + 5) {
completion("データ取得完了")
}
}
// 上記を元に、キャンセル対応のasync関数を作成してください
ヒント: Task.isCancelled
を使用して、タスクがキャンセルされたかを確認します。
解答例
// async/awaitに変換してキャンセル対応
func fetchDataWithCancel() async throws -> String {
return try await withCheckedThrowingContinuation { continuation in
fetchData { data in
if Task.isCancelled {
continuation.resume(throwing: CancellationError())
} else {
continuation.resume(returning: data)
}
}
}
}
// 非同期処理をキャンセルして実行
let task = Task {
do {
let data = try await fetchDataWithCancel()
print("取得したデータ: \(data)")
} catch is CancellationError {
print("タスクがキャンセルされました")
} catch {
print("エラーが発生しました: \(error)")
}
}
// 2秒後にタスクをキャンセル
DispatchQueue.global().asyncAfter(deadline: .now() + 2) {
task.cancel()
}
まとめ
これらの演習問題を通して、コールバックベースの非同期処理をasync/await
に変換する基本的な手法や、並列処理、キャンセル対応などの高度な機能の使い方を実践しました。非同期処理を効率的に管理するためのasync/await
の活用方法をしっかりと理解し、実践に役立ててください。
まとめ
本記事では、Swiftにおけるコールバックベースの非同期処理をasync/await
に変換する方法について詳しく解説しました。withCheckedContinuation
やwithCheckedThrowingContinuation
を用いることで、従来の複雑なコールバック処理を簡潔で可読性の高いコードに変換できます。さらに、非同期処理におけるエラーハンドリングや並列処理、キャンセル機能の実装も、async/await
を活用することで非常に効率的に行うことができました。これらの技術をマスターして、Swiftでの非同期処理をより直感的で保守性の高いものにしていきましょう。
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