TypeScriptは、静的型付けを採用したJavaScriptのスーパーセットで、特に大規模なアプリケーション開発において信頼性と可読性を向上させるために使用されています。非同期処理は現代のWebアプリケーションやAPIとのやり取りに不可欠な要素であり、TypeScriptでもasync/awaitやPromiseを活用して、非同期タスクを扱います。
しかし、非同期処理には多くの複雑な要素が含まれており、特にエラーハンドリングが重要な課題となります。エラーが適切にキャッチされない場合、アプリケーションの動作が不安定になったり、意図しない挙動を引き起こす可能性があります。そこで、本記事ではTypeScriptを使用した非同期エラーハンドリングの基本的な概念と、それをテストするための具体的な方法について詳しく解説します。
非同期処理の基本とTypeScriptの対応
非同期処理は、時間のかかる操作(例:ネットワークリクエスト、ファイルの読み込みなど)が実行されている間、他の処理をブロックせずに進めるために使用されます。JavaScriptでは、非同期処理のために主にPromiseやcallbackが使われてきましたが、TypeScriptでもこれらをサポートし、さらにasync/awaitを使用することで、非同期処理を同期処理のように記述できます。
Promiseによる非同期処理
Promiseは、非同期操作が完了したときに結果(成功または失敗)を返すオブジェクトです。非同期操作が成功した場合はthen()
で結果を取得し、失敗した場合はcatch()
でエラーを処理します。Promiseはチェーン可能で、複数の非同期操作を順序よく行う際に便利です。
function fetchData(): Promise<string> {
return new Promise((resolve, reject) => {
setTimeout(() => {
resolve("データ取得成功");
}, 1000);
});
}
fetchData()
.then((data) => console.log(data))
.catch((error) => console.error(error));
async/awaitによる非同期処理
async/awaitは、Promiseの読みやすさと可読性を向上させた構文です。非同期関数を同期処理のように記述でき、await
を使うことで、Promiseが解決されるまで次の処理を待つことができます。この方法により、非同期処理のコードがシンプルかつ直感的に書けるようになります。
async function fetchDataAsync(): Promise<void> {
try {
const data = await fetchData();
console.log(data);
} catch (error) {
console.error(error);
}
}
fetchDataAsync();
TypeScriptでは、これらの非同期処理に対して型安全な記述が可能であり、開発者は非同期操作中のエラーや不整合を事前に防ぐことができます。次のセクションでは、非同期処理におけるエラーハンドリングの基本的な手法について解説します。
エラーハンドリングの基本概念
非同期処理におけるエラーハンドリングは、アプリケーションの安定性と信頼性を保つために非常に重要です。特に、ネットワークエラーやAPIの応答失敗など、外部要因で発生するエラーは避けられないため、適切にエラーを処理してユーザーに影響を与えないようにする必要があります。
非同期処理でエラーハンドリングを正しく行うには、以下の2つの手法が主に使われます。
Promiseでのエラーハンドリング
Promiseを使用する場合、エラーが発生した際はcatch()
を使用してそのエラーをキャッチします。Promiseチェーンの最後にcatch()
を追加することで、途中で発生したエラーを一括して処理することができます。これは、複数の非同期処理を順番に実行する場合でも有効です。
function fetchData(): Promise<string> {
return new Promise((resolve, reject) => {
setTimeout(() => {
reject(new Error("データ取得失敗"));
}, 1000);
});
}
fetchData()
.then((data) => console.log(data))
.catch((error) => console.error("Error:", error.message));
async/awaitでのエラーハンドリング
async/awaitを使用する場合、try-catch
ブロックを使ってエラーを処理します。await
はPromiseを待つ間にエラーをスローする可能性があるため、try
ブロック内でawait
を使い、catch
ブロックでエラーをキャッチします。これにより、同期的なコードに似た形式でエラーハンドリングが可能になります。
async function fetchDataAsync(): Promise<void> {
try {
const data = await fetchData();
console.log(data);
} catch (error) {
console.error("Error:", error.message);
}
}
fetchDataAsync();
このように、非同期処理におけるエラーハンドリングをしっかりと実装することで、想定外のエラーが発生してもプログラムがクラッシュするのを防ぎ、ユーザーに正しいエラーメッセージを表示することが可能になります。
次のセクションでは、try-catch
とPromiseチェーンを使ったエラーハンドリングの詳細について解説します。
try-catchとPromiseチェーンでのエラーハンドリング
非同期処理におけるエラーハンドリングの代表的な方法として、Promiseチェーンとtry-catchがあります。これらは非同期操作の成否を制御するための基本的な方法であり、非同期タスクが失敗した場合に適切に対処するために重要です。
Promiseチェーンでのエラーハンドリング
Promiseチェーンは、複数の非同期操作を順次実行する場合に使われます。各then()
は非同期操作が成功したときに次の処理を行い、最後にcatch()
を使って、どのステップでエラーが発生してもまとめてエラーをキャッチできます。
function fetchData(): Promise<string> {
return new Promise((resolve, reject) => {
setTimeout(() => {
resolve("データ取得成功");
}, 1000);
});
}
function processData(data: string): Promise<string> {
return new Promise((resolve, reject) => {
if (data) {
resolve(`処理済みデータ: ${data}`);
} else {
reject(new Error("データが無効です"));
}
});
}
fetchData()
.then((data) => processData(data))
.then((processedData) => console.log(processedData))
.catch((error) => console.error("Error:", error.message));
この例では、fetchData()
が成功した場合にそのデータをprocessData()
に渡し、その後の結果を処理します。エラーがどこかで発生した場合、catch()
で一括して処理されます。
try-catchによるエラーハンドリング
try-catch
を使用すると、非同期処理の流れをより同期的なコードスタイルで記述でき、コードが見やすくなります。特に、複数の非同期操作を処理する際に、await
を使うことで処理の順序を明示的に管理できます。
async function fetchDataAndProcess(): Promise<void> {
try {
const data = await fetchData();
const processedData = await processData(data);
console.log(processedData);
} catch (error) {
console.error("Error:", error.message);
}
}
fetchDataAndProcess();
ここでは、try
ブロック内でawait
を使い、Promiseが解決するまでの処理を待っています。エラーが発生した場合、catch
ブロックでエラーをキャッチし、適切に処理されます。
どちらを選ぶべきか
- Promiseチェーンは、連続する非同期操作が多い場合や、各操作で異なるエラーハンドリングが必要な場合に有効です。
- try-catchは、非同期操作を直感的に記述でき、コードが読みやすくなるため、複雑な非同期処理を整理して書きたい場合に適しています。
両者は用途によって使い分けができるため、プロジェクトの要件に応じて適切な方法を選択することが重要です。
次のセクションでは、非同期処理に特化したasync/awaitによるエラーハンドリングの具体的な手法を詳しく解説します。
async/awaitでのエラーハンドリング
async/awaitは、非同期処理を直感的かつ簡潔に書くために導入された構文であり、非同期コードを同期的な形で記述できます。特に、複数の非同期操作が絡む場合や、エラーハンドリングを明示的に管理する際に有効です。ここでは、async/awaitを用いたエラーハンドリングの具体的な手法について解説します。
async/awaitの基本的な使い方
async
関数は常にPromiseを返し、関数内でawait
を使うことで、Promiseが解決されるまで待機します。この仕組みにより、Promiseチェーンでの冗長な記述が減り、非同期処理を読みやすく記述できるようになります。
以下は、基本的なasync/await
を使った非同期処理の例です。
async function fetchData(): Promise<string> {
return new Promise((resolve, reject) => {
setTimeout(() => {
resolve("データ取得成功");
}, 1000);
});
}
async function processData(data: string): Promise<string> {
return new Promise((resolve, reject) => {
if (data) {
resolve(`処理済みデータ: ${data}`);
} else {
reject(new Error("データが無効です"));
}
});
}
async function handleData(): Promise<void> {
try {
const data = await fetchData();
const processedData = await processData(data);
console.log(processedData);
} catch (error) {
console.error("Error:", error.message);
}
}
handleData();
この例では、fetchData()
とprocessData()
という二つの非同期関数をawait
で呼び出し、それぞれの結果を順次処理しています。エラーが発生した場合はtry-catch
ブロック内でキャッチされ、エラーメッセージを表示します。
async/awaitを使ったエラーハンドリングの利点
- コードが直感的で読みやすい:
await
を使うことで、非同期処理を同期処理のように記述でき、Promiseチェーンと比べて可読性が向上します。 - 複数の非同期処理の管理が簡単:
await
は直感的に非同期処理を待機しながら順次処理するため、複雑な処理を簡単に管理できます。 - エラーハンドリングが一貫して行える:
try-catch
を使うことで、すべてのエラーを一箇所でキャッチでき、エラー処理がシンプルになります。Promiseチェーンでは、各段階でcatch()
を記述する必要があるのに対し、async/awaitでは一つのcatch
ブロックでまとめて処理できます。
async/awaitを使った複数の非同期処理の並列実行
複数の非同期処理を並列に実行したい場合、Promise.all()
とasync/await
を組み合わせることで、効率的に複数の非同期操作を同時に実行し、すべての結果を待つことができます。
async function handleMultipleData(): Promise<void> {
try {
const [data1, data2] = await Promise.all([fetchData(), fetchData()]);
console.log(`データ1: ${data1}, データ2: ${data2}`);
} catch (error) {
console.error("Error:", error.message);
}
}
handleMultipleData();
このように、Promise.all()
をawait
で待つことで、複数の非同期処理を並列に実行し、すべてのPromiseが解決されるのを待機することができます。
async/awaitを使用することで、非同期処理の記述がより簡潔になり、エラーハンドリングの制御も非常にわかりやすくなります。次のセクションでは、これらの非同期処理をテストするための環境設定について詳しく説明します。
テスト環境の準備
非同期処理のエラーハンドリングを適切にテストするためには、まずテスト環境を整えることが重要です。ここでは、TypeScriptで非同期処理をテストするための基本的なテスト環境の設定方法を解説します。一般的には、Jestのようなテスティングフレームワークを使用し、非同期処理の動作とエラーハンドリングが期待通りに機能するかを確認します。
Jestによるテスト環境の準備
Jestは、JavaScriptとTypeScript両方に対応した強力なテスティングフレームワークで、非同期処理のテストも簡単に行えます。以下の手順で、Jestを使ったTypeScript環境をセットアップします。
1. Jestのインストール
まず、JestとTypeScriptのサポートライブラリをプロジェクトにインストールします。
npm install --save-dev jest ts-jest @types/jest
これにより、JestとそのTypeScriptサポートライブラリであるts-jest、およびJestの型定義ファイル(@types/jest
)がインストールされます。
2. Jestの設定
次に、JestがTypeScriptファイルを適切に扱うように設定ファイルを作成します。プロジェクトのルートディレクトリにjest.config.js
ファイルを作成し、以下の内容を記述します。
module.exports = {
preset: 'ts-jest',
testEnvironment: 'node',
testMatch: ['**/__tests__/**/*.test.ts'],
};
この設定で、ts-jest
を使ってTypeScriptのテストを実行し、Node.js環境で動作するように指定しています。また、__tests__
フォルダ内の.test.ts
ファイルがテストファイルとして認識されます。
3. TypeScriptの設定
次に、TypeScriptの設定ファイルtsconfig.json
に、テストで使用する構成を追加します。特に重要なのは、esModuleInterop
をtrue
に設定することです。これにより、JestとTypeScriptのモジュール互換性が向上します。
{
"compilerOptions": {
"target": "ES6",
"module": "commonjs",
"strict": true,
"esModuleInterop": true
},
"exclude": ["node_modules", "**/__tests__/*"]
}
4. テストのディレクトリ構成
テストファイルは、プロジェクトのディレクトリ内に__tests__
フォルダを作成し、その中にテストスクリプトを配置します。
/src
/__tests__
sample.test.ts
/yourCode.ts
これで、テスト環境が整いました。
非同期処理のテストの基本
Jestを使った非同期処理のテストでは、async/await
やPromise
を使用して非同期関数の結果やエラーハンドリングを確認します。Jestでは、非同期のテストを書くためにasync/await
をサポートしているため、テストも同期的なコードのように簡単に記述できます。
// yourCode.ts
export async function fetchData(): Promise<string> {
return new Promise((resolve, reject) => {
setTimeout(() => resolve("データ取得成功"), 1000);
});
}
次のセクションでは、実際にJestを使って非同期エラーハンドリングのテストをどのように行うか、具体的なコード例を紹介します。
Jestを使った非同期エラーハンドリングのテスト
非同期処理のエラーハンドリングをテストする際、Jestは非常に有効なツールです。Jestは、Promiseベースの非同期処理やasync/await
を用いたテストに対応しており、エラーが発生した場合の動作を簡単に検証できます。このセクションでは、Jestを使った非同期処理のエラーハンドリングの具体的なテスト方法について説明します。
Promiseを使ったエラーハンドリングのテスト
Promiseを使った非同期関数のエラーハンドリングをテストする際には、Jestのexpect
とrejects
を使用してエラーメッセージが正しく返されるかを検証できます。次の例では、データの取得に失敗した場合のエラーメッセージを確認しています。
// yourCode.ts
export function fetchDataWithError(): Promise<string> {
return new Promise((resolve, reject) => {
setTimeout(() => {
reject(new Error("データ取得に失敗しました"));
}, 1000);
});
}
// __tests__/sample.test.ts
import { fetchDataWithError } from '../yourCode';
test('fetchDataWithError should throw an error', () => {
return expect(fetchDataWithError()).rejects.toThrow("データ取得に失敗しました");
});
このテストでは、fetchDataWithError
関数がPromiseでエラーをスローした場合、エラーメッセージが「データ取得に失敗しました」であることを確認しています。rejects.toThrow()
を使うことで、Promiseがエラーで失敗するかどうかをテストできます。
async/awaitを使ったエラーハンドリングのテスト
async/await
を使った非同期処理のテストもJestでは簡単に行えます。await
を使ってPromiseの結果を待ち、その後にエラーハンドリングを検証します。次の例では、データ取得に失敗した場合のエラーをasync/await
でテストしています。
// __tests__/sample.test.ts
import { fetchDataWithError } from '../yourCode';
test('fetchDataWithError should throw an error with async/await', async () => {
await expect(fetchDataWithError()).rejects.toThrow("データ取得に失敗しました");
});
このテストは、async/await
を使ってPromiseの結果を待ち、エラーが発生するかどうかを確認します。await
を使うことで、同期的なスタイルで非同期処理の結果をテストできます。
非同期関数の成功時のテスト
もちろん、非同期処理が成功した場合もテストする必要があります。Jestではresolves
を使って、Promiseが解決されたときの正しい結果を確認できます。
// yourCode.ts
export function fetchData(): Promise<string> {
return new Promise((resolve) => {
setTimeout(() => {
resolve("データ取得成功");
}, 1000);
});
}
// __tests__/sample.test.ts
import { fetchData } from '../yourCode';
test('fetchData should return data successfully', () => {
return expect(fetchData()).resolves.toBe("データ取得成功");
});
このテストは、fetchData
がPromiseで成功し、期待通りに「データ取得成功」という結果を返すかを確認します。resolves.toBe()
を使用して、正しい結果が返ってくるかどうかをテストします。
非同期エラーハンドリングのテストにおけるポイント
- Promiseを使ったエラーハンドリングのテスト:
rejects.toThrow()
を使い、Promiseでエラーが発生するかを確認します。 - async/awaitでのテスト:
await
とrejects
を組み合わせて、非同期処理のエラーを同期的にテストできます。 - 成功時のテスト:
resolves
を使って、Promiseが正常に解決する場合をテストします。
これらのテストにより、非同期処理がエラー発生時に正しく対処されているか、また正常に動作しているかを確認できます。次のセクションでは、非同期処理のモック化とエラーパターンの作成方法について詳しく説明します。
非同期処理のモック化とエラーパターンの作成
テストを効果的に行うためには、実際のAPIや外部リソースに依存せず、非同期処理の挙動をシミュレーションする方法が必要です。これを実現する手法として、モックがあります。モックを使うことで、非同期関数がどのように呼ばれ、どのような結果を返すか、またはどのようなエラーをスローするかを自由に制御できます。ここでは、Jestを使った非同期処理のモック化と、エラーパターンをテストするための手法について説明します。
モック関数を使った非同期処理のテスト
Jestには、非同期処理を簡単にモック化するためのjest.fn()が用意されています。これを使って、非同期関数の戻り値やエラーをシミュレーションできます。
まず、正常な動作のモック化を例に挙げて説明します。
// yourCode.ts
export async function fetchData(): Promise<string> {
return "データ取得成功";
}
次に、モック関数を作成してテストします。
// __tests__/mockTest.test.ts
import { fetchData } from '../yourCode';
test('fetchData should return mocked success data', async () => {
const mockFetchData = jest.fn().mockResolvedValue("モックデータ取得成功");
const result = await mockFetchData();
expect(result).toBe("モックデータ取得成功");
});
このテストでは、jest.fn()
を使ってfetchData
関数をモック化し、正常に動作するパターンをテストしています。mockResolvedValue
は、非同期関数がPromiseを解決し、指定された値を返すことをシミュレーションします。
非同期処理でのエラーパターンのモック化
次に、非同期関数がエラーをスローするシナリオをモック化します。エラー処理のテストは、非同期処理が失敗した場合の挙動を確認するために重要です。
// __tests__/mockTest.test.ts
import { fetchData } from '../yourCode';
test('fetchData should throw a mocked error', async () => {
const mockFetchData = jest.fn().mockRejectedValue(new Error("モックエラー発生"));
await expect(mockFetchData()).rejects.toThrow("モックエラー発生");
});
この例では、mockRejectedValue
を使って、Promiseが拒否され、エラーが発生するケースをシミュレーションしています。rejects.toThrow()
を用いることで、モック関数がエラーをスローするかどうかを確認できます。
モックによるAPIリクエストのエラーパターン作成
外部APIとの通信をテストする際にも、APIの応答をモック化してエラーパターンを作成することができます。例えば、APIが404エラーや500エラーを返すシナリオをモック化することにより、異なるエラーパターンをシミュレーションできます。
// yourCode.ts
export async function fetchApiData(): Promise<string> {
const response = await fetch('https://api.example.com/data');
if (!response.ok) {
throw new Error('APIエラー');
}
return await response.text();
}
テストでは、fetch
関数をモック化し、異なるHTTPステータスを返すエラーパターンをテストできます。
// __tests__/apiMockTest.test.ts
global.fetch = jest.fn();
test('fetchApiData should handle 404 error', async () => {
fetch.mockResolvedValueOnce({
ok: false,
status: 404,
});
await expect(fetchApiData()).rejects.toThrow('APIエラー');
});
この例では、fetch
関数をモック化して404エラーを返すように設定し、その結果がエラーハンドリングによって正しく処理されるかを確認しています。
モックによる非同期処理の制御のメリット
- 外部依存の排除: 実際のAPIやデータベースにアクセスせず、テスト環境で非同期処理の結果を完全にコントロールできます。
- エラーパターンの多様化: 現実の環境で発生しうるさまざまなエラー(ネットワークエラー、APIエラーなど)を再現し、エラーハンドリングの有効性をテストできます。
- テストの迅速化: 実際のリクエストを行う必要がないため、テストの実行速度が向上します。
次のセクションでは、非同期エラーハンドリングのテスト中に発生するトラブルシューティングの方法について詳しく説明します。
非同期エラーのトラブルシューティング
非同期処理のテスト中には、さまざまなエラーが発生することがあります。これらのエラーを正確に理解し、迅速に対処するためには、適切なトラブルシューティングの手法を身につけることが重要です。ここでは、JestやTypeScriptで非同期処理のエラーテストを行う際に遭遇しやすい問題やエラーに対する解決策を紹介します。
Promiseの解決や拒否がされない問題
非同期処理のテストで最も一般的な問題の1つが、テスト中にPromiseが解決または拒否されないケースです。この問題は、非同期処理が期待どおりに完了しないか、テストケースが正しく書かれていない場合に発生します。
// テストが失敗する例
test('fetchData should return data', () => {
fetchData().then((data) => {
expect(data).toBe("データ取得成功");
});
});
上記のコードでは、then()
で取得したデータをチェックしていますが、Jestはテストが非同期処理であることを認識しないため、テストが完了する前に終了してしまいます。解決方法は、テストをreturnするか、async/awaitを使用してPromiseを待機することです。
// 正しいテスト
test('fetchData should return data', async () => {
const data = await fetchData();
expect(data).toBe("データ取得成功");
});
これで、JestはPromiseが解決されるのを待ってから、テストの成功や失敗を判断します。
テストがタイムアウトする問題
非同期処理が長時間かかりすぎると、Jestはデフォルトで5秒後にテストをタイムアウトさせます。もしAPIが遅延している場合や、非同期処理が想定以上に時間がかかる場合、Jestのタイムアウト設定を増やすことができます。
// タイムアウト設定の拡張
test('fetchData should return data within 10 seconds', async () => {
jest.setTimeout(10000); // 10秒に設定
const data = await fetchData();
expect(data).toBe("データ取得成功");
});
このように、jest.setTimeout()
を使用して、特定のテストのタイムアウト時間をカスタマイズできます。
エラーのキャッチができない問題
エラーが発生した際に、適切にキャッチされていない場合も問題です。async/await
を使ったテストでは、エラーハンドリングを確実に行うために、try-catch
ブロックを使用するか、Jestのrejects
を使用します。
// エラーが適切にキャッチされていない例
test('fetchDataWithError should throw an error', async () => {
const data = await fetchDataWithError(); // ここでエラーがスローされ、テストがクラッシュする
expect(data).toThrow("エラー発生");
});
このコードでは、Promiseが拒否されたときにエラーをキャッチできません。正しい方法は、await
でエラーをキャッチせず、expect
とrejects
を使ってエラーを検証することです。
// 正しいテスト
test('fetchDataWithError should throw an error', async () => {
await expect(fetchDataWithError()).rejects.toThrow("エラー発生");
});
このように、rejects.toThrow()
を使用することで、エラーが発生した際にそれが正しく処理されているかどうかを確認できます。
APIモックの失敗
APIリクエストをモックする際、モックが期待通りに機能しないことがあります。例えば、fetch
や外部ライブラリの関数をモックする場合、テストが外部依存に依存してしまうことがあります。これを防ぐために、APIリクエストを適切にモック化し、エラーハンドリングをテストします。
global.fetch = jest.fn(() =>
Promise.resolve({
ok: true,
json: () => Promise.resolve({ data: "mocked data" }),
})
);
test('API should return mocked data', async () => {
const data = await fetchApiData();
expect(data).toBe("mocked data");
});
モックが適切に設定されていないと、APIリクエストが実際に行われてしまい、テストが失敗する可能性があります。常にglobal.fetch
や外部関数がモック化されていることを確認しましょう。
エラー処理のパターンが適切にカバーされていない
非同期エラーハンドリングでは、すべてのエラーパターンをカバーすることが重要です。例えば、ネットワークエラーや、タイムアウト、APIエラー(404や500エラー)など、実際の使用環境で発生しうるさまざまなエラーに対処する必要があります。
global.fetch = jest.fn(() =>
Promise.resolve({
ok: false,
status: 404,
})
);
test('API should handle 404 error', async () => {
await expect(fetchApiData()).rejects.toThrow("APIエラー");
});
このように、異なるエラーパターンに対してモックを使い、テストケースを作成することで、エラーハンドリングの網羅性を高めることができます。
まとめ
非同期処理のテストにおいて発生しやすいエラーや問題には、Promiseの未解決、タイムアウト、エラーキャッチの失敗、APIモックのミスなどがあります。これらを適切にトラブルシューティングすることで、テストの信頼性を向上させ、非同期エラーハンドリングが正しく機能することを確認できます。次のセクションでは、TypeScript特有のエラー処理の注意点について解説します。
TypeScript特有のエラー処理の注意点
TypeScriptは静的型付け言語であり、JavaScriptのスーパーセットとして多くの機能を提供しています。特に、エラーハンドリングにおいては、TypeScript特有の型システムを活用することで、開発中にエラーを事前に検出しやすくなりますが、逆に注意すべき点も存在します。このセクションでは、TypeScriptならではのエラー処理における注意点とベストプラクティスを紹介します。
型安全性と非同期エラーハンドリング
TypeScriptは型の安全性を保証するために、関数の戻り値や引数に対して厳密な型を定義できます。非同期処理では、Promiseを返す関数の型を正しく定義することが重要です。返されるPromiseの型が正しくない場合、エラーが発生しても検知しづらくなるため、適切な型定義が必須です。
async function fetchData(): Promise<string> {
return new Promise((resolve) => {
resolve("データ取得成功");
});
}
この例では、fetchData
関数が必ずstring
型のデータを返すPromiseを返すことが明示されています。このように、非同期関数の戻り値型をしっかりと定義することで、後続の処理が期待通りに動作するか確認できます。
例外がスローされる非同期関数の型
非同期関数でエラーが発生した場合、エラーがPromise
のreject
でキャッチされるか、async/await
でスローされます。TypeScriptでは、これらのエラーパターンに対して型を使って明示的に対処することができます。しかし、TypeScript自体は関数の戻り値がPromise.reject
されるかどうかは型レベルでは扱わないため、注意が必要です。
async function fetchWithError(): Promise<string> {
return new Promise((_, reject) => {
reject(new Error("データ取得に失敗しました"));
});
}
この関数はエラーをスローしますが、戻り値の型はPromise<string>
と定義されています。これは、TypeScriptがエラーの有無を型で区別できないためです。そのため、エラーハンドリングは常に開発者が責任を持って行わなければなりません。
nullable型とエラーハンドリング
TypeScriptでは、nullable型(null
やundefined
)に対する取り扱いも慎重に行う必要があります。非同期処理でデータが存在しない場合にnull
やundefined
が返されることがあり、その場合、適切に処理しなければ実行時エラーが発生します。
async function fetchNullableData(): Promise<string | null> {
return new Promise((resolve) => {
resolve(null);
});
}
async function handleNullableData() {
const data = await fetchNullableData();
if (data === null) {
throw new Error("データがありません");
}
console.log(data);
}
この例では、null
が返される可能性があるため、事前にnull
チェックを行っています。TypeScriptの型システムを利用して、nullable
を扱うことで予期せぬエラーを回避できます。
型アサーションの誤用
TypeScriptでは、型アサーション(as
構文)を使用して、開発者が型を強制的に指定できますが、これは慎重に使用すべきです。型アサーションを誤用すると、実際のデータと異なる型を扱ってしまい、エラーハンドリングが失敗する可能性があります。
async function fetchDataWithAssertion(): Promise<any> {
return new Promise((resolve) => {
resolve("データ取得成功");
});
}
async function handleDataWithAssertion() {
const data = (await fetchDataWithAssertion()) as number; // 型アサーションでnumberとする
console.log(data.toFixed(2)); // 実際のデータはstringのため、エラーが発生する
}
この例では、fetchDataWithAssertion
がstring
型のデータを返しますが、型アサーションによってnumber
型として扱われています。その結果、ランタイムエラーが発生します。型アサーションは便利ですが、乱用すると逆にエラーハンドリングを複雑にするため、慎重に使用することが推奨されます。
エラーハンドリングのベストプラクティス
- Promiseの戻り値型を明示する: 常に非同期関数の戻り値型を適切に定義し、エラーが発生しても型による安全性を確保します。
- nullableな値には常に対応する:
null
やundefined
が返される可能性がある場合は、事前にチェックを行い、予期しないエラーを防ぎます。 - 型アサーションは最小限に留める: 型アサーションを多用すると型の安全性が損なわれるため、極力避け、型推論や明示的な型定義を優先します。
- エラーパスを確実にカバーする: すべての非同期処理に対してエラーパターンを考慮し、適切なエラーハンドリングを行います。
次のセクションでは、APIリクエストのテストケースの応用例を紹介します。これにより、実際の非同期処理に基づいたテスト手法を理解することができます。
応用例:APIリクエストのテストケース
非同期処理の中でも、特にAPIリクエストは重要な役割を果たしています。APIからのレスポンスが予期せぬ形で返ってくる場合に備え、さまざまなテストケースをカバーすることが重要です。このセクションでは、TypeScriptを用いたAPIリクエストのテストケースを実際にどのように作成するかについて、応用例を交えて解説します。
APIリクエストの基本構造
まず、APIリクエストを行うための基本的な非同期関数を用意します。この関数はfetch
を使ってAPIからデータを取得し、そのレスポンスを処理します。
// yourCode.ts
export async function fetchApiData(): Promise<any> {
const response = await fetch('https://api.example.com/data');
if (!response.ok) {
throw new Error(`APIエラー: ${response.status}`);
}
return response.json();
}
この関数は、APIからデータを取得し、ステータスコードが200以外の場合にはエラーをスローします。次に、これに基づいてさまざまなテストケースをカバーしていきます。
APIが正常に動作する場合のテスト
最も基本的なテストケースは、APIが期待通りのデータを返す場合です。このテストでは、APIリクエストが成功したときに正しいデータが返されるかを確認します。APIリクエストをモック化することで、テスト環境で外部の依存を排除します。
// __tests__/apiTest.test.ts
global.fetch = jest.fn(() =>
Promise.resolve({
ok: true,
json: () => Promise.resolve({ message: "成功" }),
})
);
import { fetchApiData } from '../yourCode';
test('fetchApiData should return data successfully', async () => {
const data = await fetchApiData();
expect(data).toEqual({ message: "成功" });
});
このテストでは、global.fetch
をモック化し、APIリクエストが成功した場合に{ message: "成功" }
が返されることをシミュレーションしています。expect
でデータが正しく返ってきているかを確認します。
404エラーが発生した場合のテスト
APIが存在しないエンドポイントにアクセスした場合、404エラーが発生します。この場合にエラーハンドリングが適切に行われているかをテストします。
// __tests__/apiTest.test.ts
global.fetch = jest.fn(() =>
Promise.resolve({
ok: false,
status: 404,
})
);
import { fetchApiData } from '../yourCode';
test('fetchApiData should throw a 404 error', async () => {
await expect(fetchApiData()).rejects.toThrow("APIエラー: 404");
});
ここでは、fetch
関数をモック化し、404ステータスコードを返すように設定しています。rejects.toThrow()
を使うことで、APIリクエストが失敗した際にエラーが正しくスローされるかどうかを確認します。
500エラー(サーバーエラー)のテスト
APIが500エラーを返す場合、サーバー側で何らかの問題が発生しています。このケースも想定し、エラーハンドリングをテストします。
// __tests__/apiTest.test.ts
global.fetch = jest.fn(() =>
Promise.resolve({
ok: false,
status: 500,
})
);
import { fetchApiData } from '../yourCode';
test('fetchApiData should throw a 500 error', async () => {
await expect(fetchApiData()).rejects.toThrow("APIエラー: 500");
});
このテストでは、500エラーが発生した場合に、エラーが正しくスローされていることを確認しています。APIのエラーが発生する様々なシナリオをテストすることが重要です。
ネットワークエラーのテスト
APIにリクエストを送信する際に、ネットワーク障害が発生する場合も考慮しなければなりません。ネットワークエラーをモック化して、非同期処理が正しくエラーをキャッチしているかをテストします。
// __tests__/apiTest.test.ts
global.fetch = jest.fn(() =>
Promise.reject(new Error("ネットワークエラー"))
);
import { fetchApiData } from '../yourCode';
test('fetchApiData should handle network error', async () => {
await expect(fetchApiData()).rejects.toThrow("ネットワークエラー");
});
このテストでは、fetch
がネットワークエラーをスローするようにモック化し、そのエラーが正しくキャッチされるかを確認します。ネットワークエラーやタイムアウトなど、現実的なエラーパターンもテストすることが信頼性の高いアプリケーションを作るために重要です。
エラーハンドリングの応用例のまとめ
- 正常系のテスト: APIが正常に動作する場合に、期待通りのデータが返ってくるかを確認。
- エラー系のテスト: 404エラーや500エラーが発生した際に、エラーハンドリングが正しく行われているかを確認。
- ネットワークエラーのテスト: ネットワーク接続が失敗した場合のエラーハンドリングをテスト。
これらの応用例を使って、APIリクエストがどのような状況でも正しく処理され、エラーが適切に処理されることを確認することができます。次のセクションでは、本記事の内容を簡単にまとめます。
まとめ
本記事では、TypeScriptを使用した非同期エラーハンドリングのテスト方法について詳しく解説しました。Promiseやasync/awaitを利用した非同期処理の基本から、Jestを使ったテスト環境の構築、モックを用いたAPIリクエストのシミュレーション、そしてさまざまなエラーパターンのテスト方法を説明しました。非同期処理では、正常に動作するケースだけでなく、ネットワークエラーやサーバーエラーなどのエラーパターンを適切にカバーすることが、アプリケーションの信頼性を高めるために非常に重要です。正しいエラーハンドリングとテストの実践により、堅牢で安定したアプリケーションの開発が可能になります。
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