TypeScriptの非同期処理では、エラーハンドリングとその伝播が非常に重要です。非同期タスクが失敗した場合、そのエラーが適切に処理されないと、予期しない動作やクラッシュが発生する可能性があります。特に、非同期処理ではエラーが発生してもすぐには気づかず、後の処理で影響を及ぼすことが多いです。本記事では、TypeScriptで非同期処理を行う際のエラー伝播の仕組みと、その制御方法について解説します。エラーハンドリングを正しく実装することで、アプリケーションの信頼性と安定性を向上させることができます。
非同期処理とPromiseの基礎
非同期処理は、アプリケーションが別のタスクを実行しながら、時間のかかる操作(例: APIリクエストやファイル読み込みなど)をバックグラウンドで実行するための重要な技術です。TypeScriptでは、主にPromise
を使って非同期処理を行います。
Promiseとは
Promise
は、将来的に完了する非同期操作を表すオブジェクトです。非同期操作が成功するとresolve
が呼ばれ、失敗した場合はreject
が呼び出されます。Promiseは3つの状態を持ちます。
- Pending(保留中): 処理がまだ完了していない状態
- Fulfilled(成功): 処理が成功した状態
- Rejected(失敗): 処理が失敗した状態
Promiseの使用例
以下は、基本的なPromiseの使用例です。
const fetchData = new Promise<string>((resolve, reject) => {
const success = true;
if (success) {
resolve("データ取得成功");
} else {
reject("データ取得失敗");
}
});
fetchData
.then((data) => console.log(data)) // 成功時の処理
.catch((error) => console.error(error)); // 失敗時の処理
この例では、非同期処理が成功した場合はthen
が呼ばれ、失敗した場合はcatch
でエラーが処理されます。Promiseは、非同期タスクの結果を管理するための基本的なツールとなります。
async/awaitの概要とエラー処理
async/await
は、非同期処理をより直感的に書くための構文であり、Promiseベースの非同期処理を同期的なコードスタイルで記述できるようにします。これにより、可読性が向上し、複雑なPromiseチェーンを簡潔に扱うことが可能になります。
async/awaitの基本
async
関数は自動的にPromiseを返します。そして、await
キーワードを使うことで、Promiseが解決されるまで処理を一時停止し、解決結果を待つことができます。以下はその基本的な使い方です。
async function fetchData() {
try {
const data = await fetch('https://api.example.com/data');
const json = await data.json();
console.log(json);
} catch (error) {
console.error('エラーが発生しました:', error);
}
}
このコードでは、await
を使用して非同期処理を順次実行しています。fetch
メソッドでデータを取得し、その結果をjson()
メソッドでパースします。
エラーハンドリング
async/await
を使用する際、エラーハンドリングにはtry/catch
ブロックを使います。非同期処理中にエラーが発生した場合、try/catch
を使用することで、通常の同期処理と同様にエラーを捕捉し、適切に対処できます。catch
ブロックで、エラーメッセージや再試行処理などを実行することが可能です。
async function getData() {
try {
const response = await fetch('https://api.example.com/data');
if (!response.ok) {
throw new Error('データの取得に失敗しました');
}
const data = await response.json();
console.log(data);
} catch (error) {
console.error('エラー:', error.message);
}
}
このようにasync/await
を使うことで、Promiseチェーンに比べてコードがシンプルかつ明確になり、エラーハンドリングもわかりやすくなります。
try/catchを使ったエラー制御
try/catch
ブロックは、エラーが発生した際にプログラムのクラッシュを防ぎ、エラーを処理するための基本的な手段です。async/await
と併用することで、非同期処理におけるエラーハンドリングが直感的かつ簡潔に記述できます。
try/catchの基本的な使い方
try
ブロック内にエラーが発生する可能性のあるコードを記述し、エラーが発生した場合はcatch
ブロックでそのエラーをキャッチし、適切な処理を行います。以下は、基本的な使い方の例です。
async function processData() {
try {
const result = await fetchDataFromAPI(); // 非同期でデータを取得
console.log('取得したデータ:', result);
} catch (error) {
console.error('エラーが発生しました:', error.message);
}
}
fetchDataFromAPI
関数がエラーを投げた場合、catch
ブロックでそのエラーを捕捉し、エラーメッセージを出力します。これにより、アプリケーションがエラーで停止するのを防ぎ、必要に応じてフォールバック処理やログ出力などを行えます。
エラーの再スロー
場合によっては、catch
ブロックでエラーを処理した後、再度エラーを上位に伝播させたいことがあります。その場合は、catch
内でエラーを再スローすることができます。
async function processWithRetry() {
try {
const result = await fetchDataFromAPI();
console.log('データ取得成功:', result);
} catch (error) {
console.error('最初の試行でエラー:', error.message);
// 必要に応じてエラーを再スローして、上位に伝播させる
throw error;
}
}
このコードでは、fetchDataFromAPI
でエラーが発生した場合、一度エラーメッセージを表示した後に再びエラーをスローし、さらに上位でのエラーハンドリングを可能にしています。
finallyブロックでのリソース解放
try/catch
には、finally
ブロックも使用できます。このブロックは、エラーの有無に関わらず必ず実行されるため、リソースの解放やクリーンアップ作業を行うのに適しています。
async function processWithCleanup() {
try {
const result = await fetchDataFromAPI();
console.log('データ取得成功:', result);
} catch (error) {
console.error('エラーが発生しました:', error.message);
} finally {
console.log('リソースのクリーンアップ処理を実行します');
}
}
finally
ブロック内で、リソースの解放や後処理を行うことにより、エラーが発生した場合でも必ず必要な処理を実行できます。
try/catch/finally
構文を使うことで、非同期処理におけるエラーハンドリングが強化され、堅牢なアプリケーションを作成することが可能になります。
エラーの伝播とは何か
非同期処理におけるエラー伝播とは、下位の関数で発生したエラーが、呼び出し元の関数に伝わる仕組みを指します。TypeScriptでは、非同期処理中にエラーが発生すると、そのエラーはPromiseやasync/await
の構造内で伝播し、適切に処理しなければアプリケーションがクラッシュする可能性があります。
エラー伝播の仕組み
非同期処理では、Promiseやasync/await
を使用してエラーを伝播させることができます。特に、Promise
チェーンやasync
関数では、エラーが発生した場合、そのエラーは上位の関数へと伝播し、最終的にどこかでキャッチされるまで処理が継続します。
以下は、エラーがどのように伝播するかを示す例です。
async function taskOne() {
throw new Error("タスク1でエラーが発生しました");
}
async function taskTwo() {
await taskOne(); // taskOneで発生したエラーが伝播する
console.log("タスク2が正常に完了しました");
}
async function main() {
try {
await taskTwo();
} catch (error) {
console.error("main関数でエラーをキャッチ:", error.message);
}
}
main();
この例では、taskOne
で発生したエラーがtaskTwo
に伝播し、最終的にmain
関数内のtry/catch
ブロックでエラーがキャッチされます。非同期処理内でエラーが発生した場合、キャッチされない限り、そのエラーは上位の呼び出し元まで伝播します。
非同期処理のエラー伝播の特徴
非同期処理におけるエラー伝播にはいくつかの特徴があります。
- エラーは非同期に伝播する: 通常の同期処理とは異なり、エラーは非同期で伝播します。そのため、エラーの発生とキャッチにタイムラグが生じる可能性があります。
- 明示的なエラーハンドリングが必要: 非同期処理では、エラーが発生する場所で明示的にハンドリングしない限り、エラーが予期せぬ場所まで伝播することがあります。そのため、適切な場所でエラーをキャッチすることが重要です。
- カスケード的なエラーハンドリング: エラーが複数の非同期関数をまたいで発生する場合、それらの関数のどこかで一度でもエラーハンドリングを行わなければ、エラーは伝播し続けます。
エラーの伝播は非同期処理の重要な概念であり、適切なエラーハンドリングを行うことで、アプリケーションの堅牢性を高めることができます。
Promiseチェーンにおけるエラー処理
Promiseチェーンでは、非同期処理を連続して実行できるため、複数の非同期タスクを順次処理する際に便利です。しかし、エラーが発生した場合、Promiseチェーン内でのエラーハンドリングを適切に行わないと、エラーが伝播し続け、処理全体に影響を与える可能性があります。
Promiseチェーンの基本構造
Promiseチェーンは、複数の非同期処理を順番に実行する方法です。各Promiseの結果は、次のthen
メソッドで受け取られ、処理が継続します。エラーが発生した場合は、catch
メソッドでキャッチします。
以下は、Promiseチェーンの基本的な例です。
fetchDataFromAPI()
.then((data) => {
console.log("データ取得成功:", data);
return processData(data);
})
.then((processedData) => {
console.log("データ処理成功:", processedData);
return saveData(processedData);
})
.then(() => {
console.log("データ保存成功");
})
.catch((error) => {
console.error("エラーが発生しました:", error.message);
});
このコードでは、APIからデータを取得し、それを処理し、最後に保存する一連の非同期処理が実行されています。Promiseチェーンでは、エラーが発生するとcatch
に渡されるため、チェーンのどこかでエラーが発生しても、最後のcatch
でまとめてエラーを処理できます。
エラーが発生した場合のPromiseチェーン
Promiseチェーン内でエラーが発生した場合、そのエラーは後続のthen
ブロックに渡されず、直ちにcatch
ブロックに飛びます。以下はエラーが発生した場合の例です。
fetchDataFromAPI()
.then((data) => {
console.log("データ取得成功:", data);
return processData(data);
})
.then((processedData) => {
throw new Error("データ処理中にエラーが発生");
})
.then(() => {
console.log("このメッセージは表示されません");
})
.catch((error) => {
console.error("キャッチされたエラー:", error.message);
});
この例では、データ処理中にエラーが発生したため、以降のthen
ブロックはスキップされ、直接catch
ブロックにエラーが伝播しています。Promiseチェーンでは、途中でエラーが発生すると、その時点で残りの処理は実行されなくなり、すぐにcatch
ブロックが実行されるという特徴があります。
個別のエラーハンドリング
Promiseチェーン内でそれぞれのステップに個別のエラーハンドリングを行いたい場合、各then
ブロックでcatch
を挿入することも可能です。これにより、各ステップで発生したエラーを特定の場所で処理することができます。
fetchDataFromAPI()
.then((data) => {
console.log("データ取得成功:", data);
return processData(data);
})
.catch((error) => {
console.error("データ処理でエラー:", error.message);
return null; // エラー発生時でも次のthenを継続
})
.then((processedData) => {
if (processedData) {
return saveData(processedData);
}
})
.catch((error) => {
console.error("データ保存でエラー:", error.message);
});
このように、Promiseチェーン内で適切にエラーハンドリングを行うことで、エラーが発生しても他の処理に影響を与えず、より細かい制御が可能になります。Promiseチェーンは非同期処理のフローを簡潔に管理できる一方で、エラーハンドリングを適切に行わないと予期せぬ動作やクラッシュを引き起こす可能性があります。
非同期処理での例外とその制御方法の違い
非同期処理におけるエラーハンドリングは、同期処理と異なる特性を持ちます。同期処理では、try/catch
でエラーを即座に捕捉して処理しますが、非同期処理では時間のかかるタスクがバックグラウンドで実行されるため、エラーの発生タイミングが予測しづらく、エラーハンドリングの方法も異なります。
同期処理における例外処理
同期処理では、コードが順次実行されるため、try/catch
ブロックで簡単にエラーハンドリングを行うことができます。エラーが発生した場合、その場で処理が停止し、catch
ブロックで適切にエラーを処理することが可能です。
try {
const result = performSynchronousTask();
console.log(result);
} catch (error) {
console.error("エラーが発生しました:", error.message);
}
この例では、同期処理中にエラーが発生した場合、即座にcatch
でエラーハンドリングを行い、処理が停止します。
非同期処理における例外処理
一方、非同期処理ではエラーが発生しても、コードの実行は続行されるため、エラーハンドリングには特別な考慮が必要です。Promiseやasync/await
を使用して非同期処理を行う際、エラーハンドリングは非同期で行われ、明示的にcatch
やtry/catch
ブロックを使用する必要があります。
async function performAsyncTask() {
try {
const result = await fetchData();
console.log(result);
} catch (error) {
console.error("非同期タスクでエラーが発生しました:", error.message);
}
}
非同期処理では、エラーが即時にキャッチされないため、await
を使ってエラーハンドリングを行うことが重要です。エラーを無視すると、後続の処理が予期せぬ動作を引き起こす可能性があります。
例外とPromiseの違い
非同期処理において、例外が発生した場合は、同期処理のように即座に例外を投げることができず、Promiseのreject
として処理されます。Promiseでは、成功時にはresolve
が呼ばれ、失敗時にはreject
が呼ばれますが、このreject
が例外に相当します。
const asyncTask = new Promise((resolve, reject) => {
if (someCondition) {
resolve("成功");
} else {
reject(new Error("失敗"));
}
});
asyncTask
.then((result) => {
console.log(result);
})
.catch((error) => {
console.error("Promiseでエラー:", error.message);
});
Promiseでは、catch
メソッドでエラーハンドリングを行いますが、これは非同期的に実行されます。したがって、例外とPromiseのエラーハンドリングは、概念的には似ているものの、実際の動作にはタイミングの違いがあります。
非同期処理におけるエラー制御のポイント
非同期処理でのエラーハンドリングを効果的に行うためには、次のポイントが重要です。
- エラーの伝播を理解する: 非同期処理ではエラーが上位関数に伝播するため、どこでエラーハンドリングを行うべきかを明確にする必要があります。
try/catch
の適切な使用:async/await
を使用する場合、try/catch
ブロックを使ってエラーを確実にキャッチすることが重要です。- Promiseチェーンのエラーハンドリング: Promiseを使う場合、チェーン内のどこでエラーが発生しても
catch
メソッドで処理できるように設計します。
このように、非同期処理と同期処理では、エラーが発生した場合の制御方法が異なり、非同期の特性を理解した上でエラーハンドリングを行う必要があります。
カスタムエラーの作成と活用法
TypeScriptでは、標準のエラーメッセージだけでなく、独自のエラーメッセージやエラーの種類を定義することで、エラーハンドリングをより柔軟かつ詳細に制御することができます。これを実現するためには、カスタムエラーを作成し、適切にエラーを伝播させることが有効です。カスタムエラーは、アプリケーションの特定の状況に応じたエラーメッセージを提供し、デバッグやトラブルシューティングを容易にします。
カスタムエラーの作成
TypeScriptでカスタムエラーを作成するには、JavaScriptのError
クラスを拡張して独自のエラークラスを定義します。これにより、エラーに固有のプロパティやメッセージを追加できます。
以下は、カスタムエラーの基本的な作成例です。
class CustomError extends Error {
constructor(message: string) {
super(message);
this.name = "CustomError";
}
}
function riskyOperation() {
throw new CustomError("この操作でエラーが発生しました");
}
try {
riskyOperation();
} catch (error) {
if (error instanceof CustomError) {
console.error("カスタムエラー:", error.message);
} else {
console.error("一般的なエラー:", error.message);
}
}
この例では、CustomError
クラスを作成し、特定の操作でエラーが発生した際にそのエラーをスローしています。catch
ブロックでは、instanceof
を使ってキャッチされたエラーがCustomError
かどうかを確認し、適切なメッセージを表示しています。
カスタムエラーの活用
カスタムエラーは、特定の状況やエラーメッセージを伝えるために非常に有用です。例えば、APIリクエストが失敗した場合や、データベース接続に問題が発生した場合に、それぞれに対応するカスタムエラーを作成することで、エラーの原因を特定しやすくなります。
class NetworkError extends Error {
constructor(message: string) {
super(message);
this.name = "NetworkError";
}
}
class ValidationError extends Error {
constructor(message: string) {
super(message);
this.name = "ValidationError";
}
}
async function fetchData() {
try {
const response = await fetch("https://api.example.com/data");
if (!response.ok) {
throw new NetworkError("ネットワークエラー: データの取得に失敗しました");
}
const data = await response.json();
return data;
} catch (error) {
if (error instanceof NetworkError) {
console.error(error.message);
} else {
console.error("不明なエラー:", error);
}
}
}
この例では、NetworkError
とValidationError
の2つのカスタムエラーを定義しています。APIリクエストが失敗した場合には、NetworkError
をスローし、エラーメッセージに具体的な原因を含めることで、問題の特定が容易になります。
カスタムエラーによるエラー伝播の制御
カスタムエラーを使うことで、エラーの種類や原因に応じてエラーハンドリングを柔軟に制御できます。特定のエラーは再スローしてさらに上位で処理することが可能で、エラーが発生した箇所だけでなく、システム全体で一貫したエラーハンドリングが行えるようになります。
async function processData() {
try {
const data = await fetchData();
if (!data) {
throw new ValidationError("データの検証に失敗しました");
}
} catch (error) {
if (error instanceof ValidationError) {
console.error("検証エラー:", error.message);
} else {
throw error; // 他のエラーは再スロー
}
}
}
このように、カスタムエラーを使うことで、エラーの種類に応じた柔軟なエラーハンドリングが可能になり、アプリケーションの健全性とデバッグの効率性が向上します。
実践例: ネットワークリクエストのエラーハンドリング
ネットワークリクエストは非同期処理の代表的な例であり、通信エラーやサーバーからのエラーレスポンスなど、様々なエラーが発生する可能性があります。これらのエラーを適切に処理しないと、ユーザーにエラーを隠すことができず、アプリケーションの信頼性が損なわれます。本節では、ネットワークリクエストにおけるエラーハンドリングの実践的な方法について詳しく解説します。
基本的なネットワークリクエストの処理
以下は、fetch
を使用した基本的なAPIリクエストの例です。エラーが発生した場合は、catch
ブロックでエラーを処理します。
async function fetchData(url: string) {
try {
const response = await fetch(url);
if (!response.ok) {
throw new Error(`HTTPエラー: ${response.status}`);
}
const data = await response.json();
return data;
} catch (error) {
console.error("データの取得に失敗しました:", error.message);
throw error; // エラーを再スローして上位で処理
}
}
このコードでは、fetch
メソッドでAPIリクエストを行い、レスポンスのステータスコードをチェックしています。レスポンスが200
番台以外の場合、Error
をスローし、エラーメッセージとしてHTTPステータスコードを返します。
ネットワークリクエストにおける特定のエラー処理
APIリクエストでは、さまざまな種類のエラーが発生する可能性があります。たとえば、サーバーがダウンしている場合や、データフォーマットが間違っている場合などです。これらのエラーを適切に処理することで、ユーザーに適切なフィードバックを提供できます。
async function fetchUserData() {
try {
const data = await fetchData("https://api.example.com/users");
if (!data) {
throw new Error("ユーザーデータが空です");
}
console.log("ユーザーデータ:", data);
} catch (error) {
if (error.message.includes("HTTPエラー")) {
console.error("サーバーエラー:", error.message);
} else {
console.error("不明なエラー:", error.message);
}
}
}
この例では、fetchData
関数から返されるエラーメッセージを確認し、特定のエラーメッセージが含まれているかどうかをif
文でチェックしています。HTTPエラー
が発生した場合は、サーバー関連のエラーとして処理し、それ以外の場合は不明なエラーとして分類しています。
タイムアウトやネットワークエラーの処理
ネットワークリクエストでは、タイムアウトやネットワーク接続の問題が発生することもあります。こうしたエラーを処理するためには、リクエストにタイムアウトを設定したり、接続エラーを特定するロジックを追加することが重要です。
async function fetchDataWithTimeout(url: string, timeout: number = 5000) {
const controller = new AbortController();
const signal = controller.signal;
const fetchTimeout = setTimeout(() => {
controller.abort();
}, timeout);
try {
const response = await fetch(url, { signal });
if (!response.ok) {
throw new Error(`HTTPエラー: ${response.status}`);
}
clearTimeout(fetchTimeout);
return await response.json();
} catch (error) {
if (error.name === 'AbortError') {
console.error("リクエストがタイムアウトしました");
} else {
console.error("ネットワークエラー:", error.message);
}
throw error;
}
}
この例では、AbortController
を使用してリクエストにタイムアウトを設定しています。一定時間内にレスポンスが得られない場合、AbortController
によってリクエストがキャンセルされ、AbortError
としてキャッチされます。これにより、タイムアウト時のエラー処理が行えます。
フォールバック処理の実装
ネットワークリクエストに失敗した場合、フォールバック処理を実装して、別のデータソースを使用することが可能です。これにより、ユーザーがデータ取得に失敗しても、アプリケーションが適切に動作し続けることができます。
async function fetchWithFallback() {
try {
const data = await fetchData("https://api.example.com/data");
return data;
} catch (error) {
console.error("プライマリソースが失敗しました。フォールバックを使用します。");
return { message: "フォールバックデータ" }; // フォールバック用のデータ
}
}
このように、フォールバックデータを準備することで、ネットワークリクエストが失敗した際にもユーザーに対してある程度の情報を提供できます。
ネットワークリクエストにおけるエラーハンドリングは、アプリケーションの信頼性を確保するために不可欠です。正しく実装することで、ユーザー体験を損なうことなく、予期しない問題に対処できます。
非同期処理のデバッグ手法
非同期処理は、実行のタイミングが非同期的であるため、デバッグが難しくなることがあります。非同期処理で発生するエラーや予期しない動作を特定し、修正するためには、適切なデバッグ手法を知っておくことが重要です。ここでは、非同期処理のデバッグに役立つ効果的な方法をいくつか紹介します。
ログを使ったデバッグ
非同期処理のデバッグにおいて最も基本的で効果的な方法の1つは、ログを使って処理の進行状況やエラーメッセージを確認することです。console.log
やconsole.error
を利用することで、非同期タスクがどこで失敗したのか、あるいは期待通りに進行しているのかを把握できます。
async function fetchData() {
console.log("データ取得開始"); // 処理の開始をログに記録
try {
const response = await fetch('https://api.example.com/data');
console.log("レスポンス取得:", response); // レスポンス内容を確認
const data = await response.json();
console.log("データ取得成功:", data);
return data;
} catch (error) {
console.error("エラーが発生:", error.message); // エラーメッセージを出力
}
}
このように、処理の各ステップでログを挿入することで、どの部分で問題が発生しているかを特定しやすくなります。特に、非同期処理の開始前後や、try/catch
ブロック内でのエラーログ出力が有効です。
デバッガを使用した非同期処理のステップ実行
ブラウザのデベロッパーツールやNode.jsのデバッガ機能を使って、非同期処理のステップを1つずつ確認することができます。これにより、各非同期タスクの進行状況を詳細に把握し、エラーが発生するタイミングや場所を特定できます。
デベロッパーツールでdebugger
ステートメントを利用すると、コード実行が一時停止し、現在の状態を確認できます。
async function fetchData() {
debugger; // この位置でデバッガが停止する
try {
const response = await fetch('https://api.example.com/data');
const data = await response.json();
return data;
} catch (error) {
console.error("エラーが発生:", error.message);
}
}
debugger
を使うことで、非同期処理の途中でコード実行を停止し、変数の状態やネットワークリクエストの結果を確認することが可能です。ブラウザや開発環境で非同期処理をステップごとに確認する際に便利です。
スタックトレースの活用
エラーが発生した際のスタックトレースは、エラーがどこで発生したかを特定するために非常に役立ちます。スタックトレースは、関数の呼び出し履歴を表示し、どの関数でエラーが発生したかを追跡する手がかりとなります。
console.error
やError
オブジェクトを使うことで、スタックトレースを確認できます。
async function fetchData() {
try {
const response = await fetch('https://api.example.com/data');
const data = await response.json();
return data;
} catch (error) {
console.error("エラーのスタックトレース:", error.stack); // スタックトレースを出力
}
}
スタックトレースを確認することで、エラーがどの関数から発生したかを特定し、原因の究明がスムーズになります。
非同期処理におけるタイミングの確認
非同期処理では、関数がいつ実行されるかが問題となることが多く、想定外のタイミングでエラーが発生することがあります。このような場合、非同期処理の実行タイミングを確認することが重要です。
async function fetchData() {
console.log("データ取得前のタイミング");
const data = await getData();
console.log("データ取得後のタイミング");
}
上記のように、ログを使って関数の前後にタイミングを確認することで、非同期処理がいつ実行されているのかを把握しやすくなります。これにより、非同期処理の順序やタイミングに関する問題を発見できる可能性があります。
ネットワークタブの利用
APIリクエストに関するデバッグを行う際には、ブラウザの開発者ツールにある「ネットワーク」タブを活用することが有効です。このツールを使用すると、非同期処理で送信されるリクエストの詳細を確認でき、リクエストが正しく送信されているか、サーバーからのレスポンスが適切かを判断することができます。
エラーの再現手法
非同期処理のエラーがランダムに発生する場合、問題の再現が困難です。その際は、以下のような工夫をしてエラーを意図的に再現し、原因を特定します。
- ネットワークの速度を制限して、タイムアウトや接続遅延を再現する
- サーバーの応答を意図的に遅らせたり、失敗させる
- モックデータを使って、予期しないレスポンスをシミュレーションする
これにより、再現性のない問題や非同期処理の予期せぬ動作に対処することができます。
まとめ
非同期処理のデバッグには、ログの使用、デバッガ、スタックトレース、タイミング確認、ネットワークタブの活用など、複数の手法が役立ちます。これらのツールや技術を活用して、非同期処理におけるエラーを特定し、アプリケーションの信頼性を向上させましょう。
まとめ
本記事では、TypeScriptにおける非同期処理のエラー伝播とその制御方法について、基本から応用までを解説しました。Promiseやasync/await
を使用した非同期処理の基礎、エラーの伝播の仕組み、そしてカスタムエラーや実際のネットワークリクエストでのエラーハンドリング手法を学びました。非同期処理は複雑ですが、適切なエラーハンドリングを実装することで、信頼性の高いアプリケーションを構築することが可能です。
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