TypeScriptでネットワークエラーのリトライロジックを実装する方法と型定義のポイント

TypeScriptを用いてネットワークエラーに対するリトライロジックを実装することは、信頼性の高いアプリケーションを構築するために重要です。ネットワーク通信においては、リクエストが失敗する可能性が常に存在します。これらの失敗は一時的なものであることが多く、適切なリトライロジックを実装することで、ユーザー体験を向上させることができます。本記事では、ネットワークエラーに対するリトライロジックの重要性から、TypeScriptによる具体的な実装方法、さらに型定義やエラーハンドリングの工夫まで、実用的な手法を詳しく解説していきます。

目次

ネットワークエラーとは何か


ネットワークエラーとは、クライアントとサーバー間の通信が何らかの理由で正常に完了しない状態を指します。ネットワークエラーは、リクエストがサーバーに届かない、またはサーバーが応答しない場合に発生します。主な原因には、インターネット接続の不安定さ、サーバーのオーバーロード、タイムアウト、DNSエラーなどがあります。これらのエラーは、一時的なものであることが多いため、再度リクエストを送信することで問題が解決する場合もあります。適切なリトライロジックを実装することで、ネットワークエラーの影響を最小限に抑え、システムの信頼性を向上させることが可能です。

リトライロジックの重要性


リトライロジックとは、ネットワークエラーが発生した際に、一定回数まで自動的にリクエストを再試行する仕組みです。このロジックは、以下の理由から非常に重要です。

一時的な障害の回避


ネットワークエラーの多くは一時的な問題(サーバーの過負荷や一時的な接続切れなど)であることが多く、再試行することで正常なレスポンスが返される可能性があります。リトライロジックを実装することで、これらの一時的なエラーに対応でき、ユーザー体験が向上します。

安定した通信の実現


ネットワーク環境やサーバーの状態は常に変動していますが、リトライロジックがあることでシステムの耐久性が向上し、失敗の影響を軽減できます。特に、ミッションクリティカルなアプリケーションでは、このような安定性が求められます。

適切なエラーハンドリング


リトライ回数やタイミングを制御することで、過度な再試行によるサーバー負荷を避けつつ、ユーザー側では過度な待機時間を発生させずにエラーハンドリングが可能です。バックオフ戦略やジッターと組み合わせることで、より洗練されたリトライロジックを構築することができます。

リトライロジックの基本構造


リトライロジックの実装には、リクエストの再試行回数や待機時間を制御する基本的な構造が必要です。TypeScriptを使ってリトライロジックを実装する際は、以下の要素を考慮して設計します。

リトライ回数の設定


リトライロジックでは、特定のエラーが発生した場合に、何回まで再試行するかを設定します。この設定がないと、無限ループに陥る危険があります。例えば、3回までリトライするようなロジックを構築します。

リトライ間の待機時間


リクエストを連続して送るのではなく、一定の待機時間を挟むことで、サーバーの負荷を軽減できます。バックオフ戦略(後述)を用いることで、リトライのタイミングを調整することが可能です。

リトライ条件の定義


どのエラーに対してリトライを行うかを定義することも重要です。すべてのエラーがリトライに適しているわけではありません。例えば、HTTPステータスコードが500番台の場合のみリトライを試みる、または特定のエラーメッセージを持つ場合に限るといった条件を設けます。

実装例


以下は、リトライロジックの基本的な構造を示すTypeScriptのコード例です。

async function retryRequest(requestFunction: () => Promise<any>, retries: number, delay: number): Promise<any> {
  for (let i = 0; i < retries; i++) {
    try {
      return await requestFunction();
    } catch (error) {
      if (i === retries - 1) throw error;
      await new Promise(resolve => setTimeout(resolve, delay));
    }
  }
}

このコードでは、requestFunctionが失敗するたびに指定された回数までリトライし、リトライ間に一定の待機時間を設けています。

TypeScriptでの型定義


TypeScriptを用いたリトライロジックの実装において、適切な型定義はコードの可読性と保守性を向上させるだけでなく、バグの早期発見にも役立ちます。特に、ネットワークリクエストに関する型定義を正確に行うことは重要です。

リクエスト関数の型定義


リトライロジックにおけるリクエスト関数は、Promiseを返す非同期関数であることが一般的です。このため、関数の戻り値の型をPromiseとして定義する必要があります。以下のように型を定義することで、TypeScriptの型チェックを活用できます。

type RequestFunction = () => Promise<Response>;

この例では、RequestFunctionという型を作成し、リトライロジックで扱う関数がPromiseを返すことを明示しています。

リトライロジックのパラメータ型定義


リトライロジックでは、リトライ回数や待機時間などのパラメータを受け取ります。これらのパラメータも型定義しておくと、呼び出し側でのミスを防ぐことができます。例えば以下のように、リトライロジックに必要なパラメータを型定義します。

interface RetryOptions {
  retries: number;
  delay: number;
}

これにより、リトライ回数や遅延時間が数値で指定されることを保証し、不正な値が渡されることを防ぎます。

リトライ関数の型定義


実際のリトライロジックを実装する関数にも、戻り値や引数の型をしっかり定義しておくことが重要です。以下の例では、リトライ関数に型を定義しています。

async function retryRequest(
  requestFunction: RequestFunction, 
  options: RetryOptions
): Promise<Response> {
  for (let i = 0; i < options.retries; i++) {
    try {
      return await requestFunction();
    } catch (error) {
      if (i === options.retries - 1) throw error;
      await new Promise(resolve => setTimeout(resolve, options.delay));
    }
  }
}

このようにすることで、リトライ関数がRequestFunctionを受け取り、Response型のPromiseを返すことを明示できます。

エラーハンドリングの型定義


最後に、エラーハンドリングに関する型定義も考慮する必要があります。ネットワークエラーに関連する情報を含むカスタムエラー型を定義することで、エラーログの追跡や、異なるエラーパターンに対応することが容易になります。

class NetworkError extends Error {
  constructor(message: string, public statusCode: number) {
    super(message);
    this.name = "NetworkError";
  }
}

この型定義を使用すれば、エラーメッセージに加えてHTTPステータスコードなどの追加情報を含めた詳細なエラーログを出力できます。

リトライ回数の設定と制御


リトライロジックを実装する際、重要な要素の一つがリトライ回数の設定と制御です。リトライを何回行うかを決めることは、システムの信頼性とパフォーマンスのバランスを取るために不可欠です。

リトライ回数の設定


リトライ回数は、通常システムの要件やアプリケーションの重要度によって決まります。例えば、ユーザーインタラクションの結果として行われるリクエストでは、ユーザーの待ち時間を考慮してリトライ回数を少なくすることが一般的です。一方で、バックグラウンドで実行されるバッチ処理では、より多くのリトライを設定することができます。

const retryOptions: RetryOptions = {
  retries: 3,  // 最大3回までリトライ
  delay: 1000  // リトライ間の待機時間は1秒
};

上記の例では、リトライ回数を3回に設定しています。この回数を超えるとリトライを終了し、エラーをスローします。リトライ回数は、過剰に設定するとサーバーに負荷をかける可能性があるため、適切に設定することが重要です。

リトライの制御方法


リトライ回数の制御は、単に回数を設定するだけでなく、条件に基づいて柔軟に対応する必要があります。例えば、特定のエラーステータスコードに対してのみリトライを行うように制御することで、無駄なリトライを避けることができます。

async function retryRequestWithControl(
  requestFunction: RequestFunction, 
  options: RetryOptions
): Promise<Response> {
  for (let i = 0; i < options.retries; i++) {
    try {
      const response = await requestFunction();
      if (response.ok) return response;
    } catch (error) {
      // 500番台のエラーに対してのみリトライ
      if (i === options.retries - 1 || !(error instanceof NetworkError && error.statusCode >= 500)) {
        throw error;
      }
      await new Promise(resolve => setTimeout(resolve, options.delay));
    }
  }
}

この例では、HTTPステータスコードが500番台のエラーに対してのみリトライを行う制御をしています。このように条件を追加することで、無駄なリトライを避け、パフォーマンスを向上させることが可能です。

リトライ回数の動的調整


さらに、高度なリトライロジックでは、リトライ回数を動的に調整することが考えられます。例えば、リトライ回数を状況に応じて増減させたり、失敗するたびに待機時間を延長するバックオフ戦略を用いることで、効率的なリトライが可能になります。次のセクションで詳しく説明しますが、こうした制御を組み合わせることで、より柔軟で強力なリトライロジックを構築できます。

ジッターとバックオフ戦略


リトライロジックを効果的に実装するためには、リトライ間の待機時間を適切に制御することが重要です。特に、サーバーの負荷を軽減し、エラー発生後のリトライを効率化するためには、バックオフ戦略ジッターの概念を活用します。

バックオフ戦略とは


バックオフ戦略とは、リトライを行う際に、再試行の間隔を徐々に長くする方法です。一般的な戦略として、指数バックオフ(Exponential Backoff)があり、これはリトライするたびに待機時間を指数的に増加させます。例えば、1秒、2秒、4秒、8秒といった形で待機時間が増加します。

バックオフ戦略を用いることで、サーバーへの負荷を軽減し、システム全体の安定性を高めることができます。以下は、指数バックオフを実装する例です。

function exponentialBackoff(attempt: number): number {
  const baseDelay = 1000; // 基本の待機時間は1秒
  return baseDelay * Math.pow(2, attempt); // 2のべき乗で待機時間を増加
}

この関数は、リトライ回数が増えるごとに待機時間を2倍にしていくバックオフを実現します。

ジッターとは


ジッターは、リトライの待機時間にランダムな要素を加えることで、同時に複数のクライアントが同じサーバーにリトライを行うことによる負荷の集中を避けるための手法です。単純なバックオフ戦略では、全てのクライアントが同じタイミングでリトライを行ってしまい、サーバーが再びオーバーロードしてしまう可能性があります。ジッターを導入することで、待機時間にわずかなランダムなズレを加え、同時リトライを分散させます。

function addJitter(delay: number): number {
  const jitter = Math.random() * 500; // 最大500msのランダムジッターを追加
  return delay + jitter;
}

この関数では、指定された待機時間にランダムな時間(ここでは最大500ミリ秒)を加えてリトライ間隔をずらしています。

バックオフ戦略とジッターの統合


バックオフ戦略とジッターを組み合わせることで、効率的かつ安定したリトライロジックを構築できます。以下は、これらを統合したリトライロジックの実装例です。

async function retryRequestWithBackoff(
  requestFunction: RequestFunction, 
  retries: number
): Promise<Response> {
  for (let i = 0; i < retries; i++) {
    try {
      return await requestFunction();
    } catch (error) {
      if (i === retries - 1) throw error;
      const delay = addJitter(exponentialBackoff(i));
      await new Promise(resolve => setTimeout(resolve, delay));
    }
  }
}

このコードでは、リトライの度に待機時間が指数的に増加し、さらにランダムなジッターを追加することで、リトライが効率的に行われるようになっています。

効果的なリトライロジックのためのポイント

  • 指数バックオフを用いることで、リトライの頻度を制御し、サーバーの負荷を軽減できる。
  • ジッターを導入することで、複数クライアントの同時リトライによるサーバー負荷の集中を避けられる。
  • バックオフとジッターを組み合わせることで、より効率的で安定したリトライロジックが実現できる。

バックオフ戦略とジッターを活用することで、リトライが無駄にリソースを消費することを防ぎ、安定した通信が実現されます。

非同期処理とリトライロジックの統合


TypeScriptでリトライロジックを実装する際、非同期処理との統合は非常に重要です。非同期処理をうまく組み込むことで、リトライロジックが直感的かつ効率的に動作するようになります。TypeScriptのPromiseasync/awaitを活用することで、コードがシンプルで可読性の高いものになります。

Promiseを使ったリトライロジック


PromiseはJavaScriptやTypeScriptで非同期処理を扱う基本的な手法です。Promiseを使ってリトライロジックを実装することで、ネットワークリクエストが成功または失敗するたびに適切な処理を行えます。以下はPromiseベースでリトライロジックを実装する例です。

function retryWithPromise(requestFunction: RequestFunction, retries: number, delay: number): Promise<Response> {
  return new Promise((resolve, reject) => {
    function attempt(retryCount: number) {
      requestFunction()
        .then(response => resolve(response))
        .catch(error => {
          if (retryCount < retries) {
            setTimeout(() => attempt(retryCount + 1), delay);
          } else {
            reject(error);
          }
        });
    }
    attempt(0);
  });
}

この例では、Promise内で再帰的にattempt関数を呼び出すことで、指定された回数までリトライを行います。Promiseが成功すればresolveし、すべてのリトライが失敗すればrejectされます。

async/awaitを使ったリトライロジック


TypeScriptのasync/await構文を使用すると、非同期処理をより簡潔に書くことができます。この構文を利用することで、非同期コードがまるで同期処理のように記述でき、リトライロジックの可読性が大幅に向上します。

async function retryWithAsyncAwait(
  requestFunction: RequestFunction, 
  retries: number, 
  delay: number
): Promise<Response> {
  for (let i = 0; i < retries; i++) {
    try {
      return await requestFunction();
    } catch (error) {
      if (i === retries - 1) throw error;
      await new Promise(resolve => setTimeout(resolve, delay));
    }
  }
}

このコードでは、awaitを使ってリクエスト関数の結果を待ち受けます。リクエストが失敗した場合、指定された遅延時間を待機した後に再試行を行い、最終的な失敗時にはエラーをスローします。async/awaitを使用することで、非同期処理がより分かりやすくなり、エラーハンドリングも容易になります。

非同期処理との統合によるメリット

  • 簡潔な記述: async/awaitを使うことで、非同期処理が直感的に記述でき、コードの可読性が向上します。
  • エラーハンドリングが容易: try/catch構文を活用することで、エラーハンドリングを明示的に行うことができ、リトライロジックの信頼性を高めます。
  • シンプルなフロー: リトライのフローが単純で、非同期処理を含む複雑なロジックもシンプルに表現できます。

非同期処理を活用したリトライロジックのまとめ


Promiseasync/awaitを使ってリトライロジックを実装することで、ネットワークエラーに対する柔軟な対応が可能になります。特にasync/awaitを活用することで、非同期処理をシンプルに管理し、エラー発生時の処理フローを整理することができます。

AxiosやFetch APIを使ったリトライロジックの実装


ネットワークリクエストを行う際に広く使われるライブラリとして、AxiosやネイティブのFetch APIがあります。これらのライブラリを活用することで、TypeScriptで非同期リクエストに対するリトライロジックを簡単に実装することができます。本セクションでは、それぞれのライブラリを用いたリトライロジックの実装方法を紹介します。

Axiosを使ったリトライロジック


AxiosはPromiseベースのHTTPクライアントライブラリで、簡単に非同期リクエストを行うことができます。Axiosにはリトライロジックを追加できるため、ネットワークエラー発生時にリクエストを再試行する仕組みを組み込むことが可能です。以下は、Axiosを使ったリトライロジックの実装例です。

import axios, { AxiosResponse } from 'axios';

async function axiosRetryRequest(url: string, retries: number, delay: number): Promise<AxiosResponse> {
  for (let i = 0; i < retries; i++) {
    try {
      const response = await axios.get(url);
      return response;
    } catch (error) {
      if (i === retries - 1) throw error;
      await new Promise(resolve => setTimeout(resolve, delay));
    }
  }
}

この例では、axios.getを使用してHTTP GETリクエストを行い、失敗した場合には指定された回数までリトライします。リトライ間の待機時間はsetTimeoutで制御しています。

Fetch APIを使ったリトライロジック


Fetch APIは、ブラウザに組み込まれたネイティブなHTTPクライアント機能です。軽量かつシンプルなAPIを提供しており、リトライロジックを追加することも可能です。以下は、Fetch APIを使ったリトライロジックの実装例です。

async function fetchRetryRequest(url: string, retries: number, delay: number): Promise<Response> {
  for (let i = 0; i < retries; i++) {
    try {
      const response = await fetch(url);
      if (!response.ok) throw new Error(`HTTP error! status: ${response.status}`);
      return response;
    } catch (error) {
      if (i === retries - 1) throw error;
      await new Promise(resolve => setTimeout(resolve, delay));
    }
  }
}

この例では、Fetch APIを使用してリクエストを行い、レスポンスのokプロパティがfalseの場合にエラーをスローし、リトライを行います。リトライ間隔は同様にsetTimeoutを使用して遅延させています。

AxiosとFetch APIの違い

  • Axios: AxiosはPromiseベースであり、リクエストの設定やレスポンスのフォーマットが簡単に扱えるようになっています。さらに、リトライロジックをカスタムインターセプターとして簡単に追加できるのが特徴です。
  • Fetch API: Fetchはブラウザにネイティブに組み込まれているため、外部ライブラリに依存せずにリクエストを行うことができます。軽量ですが、エラー処理などを手動で行う必要があり、カスタマイズの自由度が高い反面、やや煩雑になります。

どちらを使うべきか

  • Axiosは、既にプロジェクトに組み込まれている場合や、豊富な機能を持つHTTPクライアントが必要な場合に適しています。
  • Fetch APIは、ライブラリ依存を減らしたい場合や、軽量なリクエストを行いたい場合に有効です。

どちらの方法でもリトライロジックを実装できますが、プロジェクトの要件に応じて最適なツールを選択してください。

エラーハンドリングとログの記録方法


ネットワークリクエストのリトライロジックを実装する際には、適切なエラーハンドリングとログの記録が不可欠です。リトライの結果をトラッキングし、エラーの発生状況を把握することで、システムの信頼性と保守性を向上させることができます。

エラーハンドリングのベストプラクティス


エラーハンドリングは、リトライロジックの中で最も重要な要素の一つです。特に、以下のような観点を考慮して実装することが推奨されます。

エラー種別ごとの対応


全てのエラーに対してリトライを行うのではなく、エラーの種別に応じて適切に処理を分岐させることが重要です。たとえば、クライアントエラー(4xx系)とサーバーエラー(5xx系)を区別し、サーバーエラーのみリトライを行うといった実装が考えられます。

async function handleError(error: any): Promise<void> {
  if (error.response && error.response.status >= 500) {
    console.log('サーバーエラーが発生しました。リトライを試行します。');
  } else if (error.response && error.response.status >= 400) {
    console.error('クライアントエラー:', error.response.status);
    throw new Error('クライアントエラーが発生しました。リトライを中止します。');
  } else {
    console.error('ネットワークエラー:', error.message);
    throw new Error('ネットワークエラーが発生しました。リトライを中止します。');
  }
}

このコードでは、HTTPステータスコードに基づいて、クライアントエラーとサーバーエラーを区別し、サーバーエラーのみリトライを行うように設定しています。

最終エラーハンドリング


リトライがすべて失敗した場合は、最終的にエラーを処理しなければなりません。これには、ユーザーへの通知、システムへの報告、またはさらなるリカバリ処理の実装が含まれます。

try {
  const response = await retryRequestWithAsyncAwait(requestFunction, 3, 1000);
} catch (error) {
  console.error('最終的にリトライが失敗しました:', error.message);
  // 必要に応じて通知や報告を実行
}

ログの記録方法


エラー発生時やリトライの際の状況を適切に記録することで、後から問題を追跡しやすくなります。特に、以下の要素を記録することが推奨されます。

エラーの発生タイミングと詳細


エラーが発生したタイミングや、エラーの詳細な内容(エラーメッセージ、ステータスコードなど)をログに残すことで、後に問題の原因を突き止めやすくなります。

async function logErrorDetails(error: any, attempt: number): Promise<void> {
  console.error(`リトライ試行 ${attempt + 1} 回目にエラーが発生しました:`);
  console.error(`エラーメッセージ: ${error.message}`);
  if (error.response) {
    console.error(`HTTPステータスコード: ${error.response.status}`);
  }
}

リトライの状況をログに残す


リトライが何回行われたか、どのリクエストが成功したか失敗したかをログに残すことで、リトライロジックの効果を把握できます。これにより、リトライ回数の適切な調整や、さらなる改善が可能になります。

async function retryWithLogging(requestFunction: RequestFunction, retries: number, delay: number): Promise<Response> {
  for (let i = 0; i < retries; i++) {
    try {
      const response = await requestFunction();
      console.log(`リクエスト成功: 試行 ${i + 1} 回目`);
      return response;
    } catch (error) {
      await logErrorDetails(error, i);
      if (i === retries - 1) throw error;
      await new Promise(resolve => setTimeout(resolve, delay));
    }
  }
}

ログの活用によるトラブルシューティング


適切に記録されたログは、トラブルシューティングの際に大きな助けとなります。特に、以下のような場面で有効です。

  • エラーの頻度分析: どのエラーが頻繁に発生しているかを確認し、システムの改善ポイントを特定する。
  • リトライ回数の最適化: ログを分析することで、リトライ回数や待機時間の最適な設定を見つけ出すことができる。

以上のように、エラーハンドリングとログの記録を組み合わせることで、システムの信頼性を高め、問題の原因を効率的に追跡することが可能になります。

実践的な応用例


リトライロジックは、実際のシステムにおいてさまざまな場面で役立ちます。ここでは、リトライロジックを使用した実践的な応用例をいくつか紹介します。これらの例を通じて、リトライロジックがどのようにシステム全体の信頼性を向上させるかを理解できます。

API連携システムにおけるリトライロジック


多くのアプリケーションでは、外部のAPIサービスと連携しています。これらのAPIは、メンテナンスや一時的な負荷増加などの理由で一時的に応答が不安定になることがあります。リトライロジックを実装することで、一時的なネットワークエラーやサーバーエラーが発生しても、システムが安定して動作を継続できるようになります。

例えば、決済サービスのAPIにリトライロジックを組み込むことにより、ネットワークの瞬断やサーバー側の一時的なエラーが発生した場合でも、数秒後に再試行することでユーザーがエラーを感じにくくなります。以下はその一例です。

async function processPayment() {
  try {
    const paymentResponse = await retryWithAsyncAwait(() => makePaymentRequest(), 3, 2000);
    console.log('決済成功:', paymentResponse);
  } catch (error) {
    console.error('決済失敗:', error.message);
    // ユーザーへのエラー通知やサポート依頼の発行などを実施
  }
}

クラウドサービスとのファイル同期


クラウドストレージやバックアップサービスでは、ファイルのアップロードや同期処理が頻繁に行われます。これらの操作は大量のデータを扱うため、ネットワークエラーやタイムアウトが発生することがあります。特に、長時間のデータ転送中に一時的な接続切れが起こりやすいです。リトライロジックを用いることで、これらのエラーに対処し、データの損失や同期ミスを防ぐことができます。

例えば、ファイルのアップロード時に発生するネットワークエラーに対してリトライを行う場合は、次のようなロジックを組み込むことができます。

async function uploadFileWithRetry(file: File) {
  try {
    const uploadResponse = await retryWithAsyncAwait(() => uploadFile(file), 5, 3000);
    console.log('ファイルのアップロードに成功しました:', uploadResponse);
  } catch (error) {
    console.error('ファイルのアップロードに失敗しました:', error.message);
    // 必要に応じて再アップロードやエラーログを記録
  }
}

IoTデバイスとのデータ通信


IoTデバイスは、しばしば不安定なネットワーク環境で稼働します。これにより、サーバーとの通信が中断されることが多くなりますが、リトライロジックを導入することで、接続が再確立された際に通信を再試行できます。例えば、センサーからデータを定期的に収集するアプリケーションでは、センサーとの接続が途切れてもデータが失われないようにするためにリトライロジックが役立ちます。

async function fetchSensorData() {
  try {
    const sensorData = await retryWithAsyncAwait(() => getSensorData(), 4, 5000);
    console.log('センサーデータ取得成功:', sensorData);
  } catch (error) {
    console.error('センサーデータ取得に失敗:', error.message);
    // データ再取得の試行やエラーログ記録
  }
}

バックグラウンドジョブの再実行


大規模なシステムでは、バックグラウンドジョブやバッチ処理がよく行われます。これらの処理が失敗した場合、手動で再実行することは負担が大きく、非効率です。リトライロジックを導入することで、ジョブが失敗しても自動的に再実行され、システムのダウンタイムを最小限に抑えることができます。例えば、データベースのレプリケーションや大規模データ処理のバッチ実行に対して、リトライロジックを適用できます。

async function runBackgroundJobWithRetry() {
  try {
    const result = await retryWithAsyncAwait(() => runJob(), 3, 10000);
    console.log('バックグラウンドジョブ成功:', result);
  } catch (error) {
    console.error('バックグラウンドジョブ失敗:', error.message);
    // ジョブの再スケジュールや管理者通知
  }
}

まとめ


リトライロジックは、さまざまな場面でシステムの信頼性を高め、エラーによる影響を最小限に抑える役割を果たします。API連携、クラウドストレージ、IoTデバイスとの通信、バックグラウンドジョブなど、様々な分野で応用可能です。実践的なシナリオにリトライロジックを導入することで、システム全体の安定性を向上させ、ユーザー体験を大きく改善することができます。

まとめ


本記事では、TypeScriptでのネットワークエラーに対するリトライロジックの重要性と、その実装方法について詳しく解説しました。基本的なリトライ構造から、ジッターやバックオフ戦略の導入、さらにAxiosやFetch APIを使った具体的な実装方法、そして実践的な応用例までを紹介しました。適切なリトライロジックを導入することで、システムの信頼性を向上させ、エラーによる影響を最小限に抑えることができます。

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