Windows Serverクラスター構築エラーの対処法~PowerShellやドメインアカウントの確認ポイント~

サーバー環境の信頼性や可用性を高めるためにクラスター構築を行おうとした際、「Error occurred while creating the cluster and the nodes will be cleaned up」というエラーメッセージに直面することがあります。対処を誤ると何度試しても失敗し、時間を浪費してしまいますが、適切な手順を踏むことでスムーズに解決できる可能性が高まります。

クラスター構築エラーの概要

クラスターを構築する際に「Error occurred while creating the cluster and the nodes will be cleaned up」というエラーメッセージが表示される場合、ノードやネットワーク設定の不整合、あるいは管理者権限の問題などが原因となっているケースが多いです。これらの要素を事前に検証し、必要に応じて調整することで、エラーを回避できる確率が格段に上がります。

クラスター構築前の事前確認

クラスター構築を円滑に進めるためには、まず環境全体のチェックが重要です。構築前にいくつかの項目を洗い出して問題を発見できれば、後のトラブルシュートにかかる時間を大幅に短縮できます。

OSバージョンの整合性

複数のノードで構成するクラスターでは、すべてのノードが同じWindows Serverバージョンやパッチレベルであることが望ましいです。異なるバージョンであっても公式にサポートされる場合はありますが、トラブル発生時の切り分けが複雑になるため、基本的にはバージョンとパッチを統一したほうがよいでしょう。

ネットワークインターフェイスとIPアドレスの設定

クラスター通信とクライアント通信のNICを分ける設計にする場合、どのネットワークをクラスター用に使用し、どのネットワークをクライアント用に使用するかを明確に分離しましょう。クラスター間通信が混在すると、認証やパケットのやり取りに支障が生じ、エラーの原因となります。

クラスター構成ウィザードのバリデーション

Windows Serverのクラスター構成ウィザードでは、構築前に「検証ウィザード」を実行する機能があります。これはノード間の接続性、ストレージの整合性、ネットワーク設定などをチェックしてくれる強力なツールです。

検証ウィザードの実行方法

  1. Failover Cluster Managerを開き、対象とするサーバーを選択します。
  2. 右ペインもしくはメニューバーに表示される「検証ウィザードの実行(Validate Configuration)」をクリックします。
  3. クラスター候補となるすべてのサーバーを入力し、テストの種類を選択して実行します。

この段階でエラーや警告が表示された場合、原因となっている箇所を修正してから再度実行するのがセオリーです。テストのすべてがパスまたは軽微な警告のみの場合は、次のステップに進みましょう。

バリデーションでチェックされる主な項目

項目説明
ネットワークノード間通信の疎通性やNICの設定が正しいか
ストレージクラスター共有ディスクへのアクセス許可やディスク状態
システム設定ノードのOSバージョンやパッチレベルの一致
権限ドメインアカウントや管理者権限の適正

PowerShellでの「clear-clusternode -force」コマンドによる対処

クラスターを作成しようとした際、途中で失敗してノードが不完全な状態で登録されてしまうことがあります。その場合、ノード情報が残ったままになり、再度構築を試みてもエラーが繰り返される可能性が高いです。

コマンドの基本的な使い方

以下のPowerShellコマンドを管理者権限で実行すると、ノードのクラスター情報をクリアできます。

PS C:\> Clear-ClusterNode -Force

もし複数のノードをクラスターに参加させる場合は、各ノードで同様の操作を行うのが望ましいです。これによりクラスター情報の不整合が解消され、改めてクラスターを作成し直すことができます。

実行時の注意点

  • コマンドは管理者権限のPowerShellで実行する必要があります。
  • ノードがドメイン環境に正しく参加していることを確認してから実行しましょう。
  • クラスター関連のサービスをすべて停止しているか、あるいは停止に問題がないタイミングで実行することを推奨します。

ドメインアカウントの使用と権限確認

クラスター構築には、通常ドメインに参加しているアカウントを用いることが望まれます。ローカルアカウントを使用していると、認証や権限周りで問題が生じやすく、クラスター作成時にエラーが発生する原因となる場合があります。

ドメインアカウント使用のメリット

  • ノード間通信の認証がスムーズに行われる
  • Active Directory上でのアクセス制御やポリシー管理が容易
  • 監査ログなどセキュリティ面での追跡がしやすい

もしローカルアカウントでクラスター構築を行い、問題が発生している場合は、まずドメインアカウントに切り替えて再度試してみるのが手っ取り早い解決策になり得ます。

ドメインアカウントの権限設定例

クラスター構築を行うアカウントは、各ノードのローカル管理者権限および必要なActive Directory上の権限を持っていることが重要です。最小権限の原則を踏まえつつ、クラスター構築に必要な権限が付与されているかを確認しましょう。

  • Domain Adminsグループに所属しているか
  • Administratorsグループに所属しているか
  • グループポリシーで制限がかかっていないか
  • ネットワークポリシーなどで特定のポートがブロックされていないか

ネットワークやファイアウォールの設定確認

クラスター構築時のエラーは、ネットワーク的な制限やファイアウォールの設定に起因するケースもあります。特に複数のノードを跨いでクラスターを作成する際には、各ノード間の通信に必要なポートがブロックされていないかを念入りにチェックしましょう。

主要な通信ポートとプロトコル

クラスターの動作に必要なポートの一例を示します。環境や構成によって異なる場合がありますが、下記は一般的に考慮すべきポイントです。

サービス / プロトコルポート番号説明
Cluster Service3343/UDPノード間のクラスターハートビートなど
SMB445/TCPファイル共有を利用する際に必要
RPC135/TCPリモートプロシージャコールで利用

ファイアウォールやネットワーク機器でこれらのポートが閉じられている場合、ノード間の通信に失敗してクラスター構築が上手くいかないことがあります。必要に応じて各ノードやネットワーク機器の設定を確認し、通信が許可されていることを確かめましょう。

必要なサービスの稼働状況のチェック

クラスターを正常に動作させるために必要なサービスが停止していると、構築前の段階でエラーが発生しやすくなります。以下は代表的なサービスの例です。

代表的なサービス一覧

  • Failover Cluster Manager (クラスターマネージャのコアサービス)
  • Remote Registry (クラスター検証時に情報を読み取るために必要となる場合あり)
  • Server (ファイル共有などで利用される)
  • Workstation (ネットワーク共有へのアクセスを扱う)

いずれもWindows Serverの管理ツールかサービス一覧から起動状態を確認し、必要ならば自動起動設定にしておきましょう。

検証・トラブルシューティングの流れ

クラスター構築時にエラーが起きた場合、以下の流れで確認・対処を行うと効率的です。

  1. 検証ウィザードの実行
    まずはウィザードで網羅的にチェックし、どこでエラーや警告が出るかを確認します。
  2. ログの確認
    WindowsイベントビューアのFailoverClusteringログに詳細な情報が書かれているケースが多いです。イベントIDやエラーコードを手掛かりに調査しましょう。
  3. PowerShellの「clear-clusternode -force」でのリセット
    ノードの不整合が疑われる場合は、該当ノードでクラスター情報をクリアし、構築を再実行します。
  4. ドメインアカウントと権限の再確認
    ローカルアカウントの使用や不十分な権限が原因の場合は、適切なドメインアカウントを使用します。
  5. ネットワーク・ファイアウォール設定の見直し
    ポートブロックやNIC設定の問題がないかを点検し、必要があれば設定を変更します。
  6. サービスの起動状態チェック
    クラスターサービスや依存関係のあるサービスが正常に起動しているかを確かめます。

上記ステップを一通り実施してもなお問題が解決しない場合は、サポートに問い合わせるか、より詳細なログ取得やトレースを行う必要があるかもしれません。

エラー回避のためのベストプラクティス

最後に、クラスター構築時のエラー回避や効率化に役立つポイントをまとめます。

定期的なパッチ適用とリブート

クラスターを構築するサーバー群は、OSやドライバのバージョン、セキュリティパッチレベルを最新に保つことが重要です。特にエンタープライズ環境では、パッチ適用後に計画的なリブートを実施し、安定動作を確認してからクラスター構築を行いましょう。

スクリプトを活用した自動化

複数のノードへ同じ操作を行う場合、PowerShellスクリプトを利用して手順を自動化するとミスが減り、構築時間の短縮にもつながります。以下は簡単な例です。

# サーバーリスト
$servers = @("Node1", "Node2", "Node3")

foreach($server in $servers) {
    Invoke-Command -ComputerName $server -ScriptBlock {
        Clear-ClusterNode -Force
        # 他にも必要なコマンドがあれば追加
    }
}

このように、一括でコマンドを実行できる環境を整えると、ノード数が増えても効率よく作業できます。

監視ツールの導入

クラスター運用中に障害が発生すると、サービス停止やシステムリソース不足などの兆候をいち早く検知することが大切です。運用フェーズでは、サーバー監視ツールやログ管理ツールを導入し、ハートビートやネットワーク遅延が頻発していないかを定期的にチェックしましょう。

まとめ

「Error occurred while creating the cluster and the nodes will be cleaned up」というエラーは、一見すると原因がわかりにくい問題ですが、対処法を一つひとつ潰していくことで解決に近づける場合が多いです。まずはクラスター構成ウィザードのバリデーションで環境をしっかりとチェックし、問題があれば修正を行います。次に、PowerShellの「clear-clusternode -force」を使い、ノードの不整合を解消するのも効果的です。また、ドメインアカウントを利用した適切な権限設定、ネットワークやファイアウォールの調整、サービスの稼働確認なども重要なポイントです。これらのステップを踏むことで、クラスターの正常な構築と安定運用が実現しやすくなるでしょう。

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