Windows Server 2016を運用していると、更新プログラムのインストールに失敗したり、サーバーの動作が遅くなったりして、管理者を悩ませることがあります。本記事では、そうしたトラブルを解決する具体的なアプローチや注意点を詳細に解説し、より安定したサーバー環境の構築に役立つ情報を提供します。
Windows Server 2016の更新失敗と動作遅延の主な原因
Windows Server 2016で更新プログラムのインストールが長期間失敗したり、著しくパフォーマンスが低下したりする場合、まずは原因を多角的に探る必要があります。単にサーバーの能力不足と思い込んでしまうと、本来は解決可能な問題を見落としてしまう可能性があります。ここでは、代表的な原因の例をいくつか紹介します。
システムリソースの不足や不整合
サーバーには当然ながらCPU・メモリ・ディスクなどのリソースがあり、これらが過剰に使用されるとWindows Updateを含む各種処理が遅延し、インストールエラーも発生しやすくなります。特にWindows Server 2016 Essentialsは小規模環境向けのエディションであり、運用形態によっては想定より負荷が高くなるケースもあります。
また、システムリソースは十分でも、ファイルシステムの不整合やOSの内部ファイルが破損していると更新プログラムが正常に展開できず、エラーが起きてしまいます。
メモリやCPU負荷の監視
- タスクマネージャーやパフォーマンスモニターを利用して、メモリやCPU使用率を定期的にチェックします。
- 長期間稼働しているサーバーは、不要な常駐サービスやプログラムが蓄積している場合がありますので、必要に応じて停止・削除することも検討します。
ディスクのエラーチェック
- ディスクドライブの状態が悪いと、ファイル破損や読み書きエラーが頻発する原因になります。
- chkdskコマンドを使ってエラーチェックを行い、必要であれば修復を試みます。
- SSDやHDDの故障やヘタリが疑われる場合は、サーバーを停止した上でディスク診断ツールを使い、セクタエラーの有無を確認してください。
Windows Update関連のコンポーネント破損
Windows Updateに必要なサービスやコンポーネントが破損・欠損していると、更新プログラムのインストールエラーが発生しやすくなります。特にエラーメッセージが「0x800f081f」や「0x80073712」のようにコンポーネントストアの破損を示唆する場合、DISMコマンドによる修復や手動インストールを検討する必要があります。
更新失敗を解消する具体的ステップ
ここからは、問題を解消するための具体的な方法を順を追って解説します。特に、何度試してもWindows Updateが失敗してしまう場合や、サーバーのパフォーマンスが低下して作業が思うように進まない場合は、段階的に以下のステップを試してみてください。
1. システムファイルの整合性チェックと修復
Windowsのファイルが破損していると、更新プログラムが正常に適用できません。以下のコマンドを実行して、不整合を検出し修復しましょう。
sfc /scannow
Dism /Online /Cleanup-Image /restoreHealth
- sfc /scannow:システムファイルチェッカーでファイルの破損を検出・修復します。
- DISMコマンド:Windowsのコンポーネントストアを修復し、破損による更新エラーを解消します。
上記のコマンドがエラーなしで完了したら、念のためサーバーを再起動すると良いでしょう。再起動後にWindows Updateを再度試し、インストールが成功するか確認します。
2. 手動で更新プログラムを適用する
Windows Updateの自動適用が上手くいかない場合は、手動インストールを検討しましょう。以下は典型的な手動インストール手順です。
① Microsoft Update Catalogからのダウンロード
Microsoft Update Catalog(公式サイト)にアクセスし、必要な更新プログラムのKB番号を検索して、.msuファイルをダウンロードします。複数ある場合は、依存関係に注意しながらすべて取得しておくとスムーズです。
② .msuファイルから.cabファイルの展開
ダウンロードしたファイルを任意のフォルダ(例:C:\temp)に保存します。次に、管理者権限のコマンドプロンプトを起動し、以下のコマンドで.cabファイルを取り出します。
expand -F:* C:\temp\{ダウンロードした.msuファイル名} C:\temp\cab
展開すると複数のファイルが生成されますが、その中に含まれる.cabファイルが更新プログラム本体になります。
③ DISMコマンドで.cabファイルを適用
展開された.cabファイルを下記コマンドでWindowsに適用します。
Dism /online /add-package /packagepath:C:\temp\cab\{.cabファイル名}
- 「/online」は現在稼働中のOSに対して操作を行うオプションです。
- 「/add-package」はパッケージ(更新プログラム)を追加するオプションです。
- 成功メッセージを確認したら、サーバーを再起動して更新プログラムがインストールされているか確認します。
3. Windows Updateトラブルシューティングツールの活用
Windows 10などクライアントOSでは、[設定] > [更新とセキュリティ] > [トラブルシューティング]から「Windows Update」の問題解決を支援するツールが利用できます。ただし、Windows Server 2016 Essentialsなど一部のエディションでは同様のUIが用意されていない場合があります。
もしトラブルシューティングツールを利用できる環境であれば、一度実行してみることで問題の原因が自動的に特定・修復されるケースもあります。
4. インプレースアップグレードの検討
更新プログラム適用が難航し、OS自体が不安定な場合や、より新しいバージョンの機能を求める場合は、インプレースアップグレードを検討する選択肢もあります。たとえば、Windows Server 2016からWindows Server 2022へ更新することで、セキュリティや機能面で多くの恩恵を受けられます。
エディションとライセンスの注意点
- EssentialsやStandard、Datacenterなどのエディション間ではインプレースアップグレードの可否や手順、ライセンス費用が異なります。
- 一般的に、無料アップグレードは行われていないため、新たなライセンス購入が必要になる場合があります。
- Microsoft公式ドキュメント「Perform a Feature Update of Windows Server | Microsoft Learn」を参照し、エディションやバージョンの互換性、必要な手順を事前に確認してください。
アップグレード前のバックアップと検証
- OSアップグレードによって運用中のアプリケーションやActive Directoryの構成に影響が出る場合があります。
- 可能であればテスト環境でアップグレード手順をリハーサルし、事前にバックアップを取得しておくことが望ましいです。
- アップグレードに失敗すると、システムそのものが起動できなくなるリスクもあるので注意が必要です。
パフォーマンス改善のための追加対策
サーバーの動作が明らかに遅くなっている場合は、Windows Updateに関わる問題以外にも目を向けると解決への糸口が見えてくる場合があります。ここでは、いくつかの追加対策を紹介します。
クリーンアップとディスク最適化
- 一時ファイルや不要ファイルが大量にあると、ディスク使用率が無駄に高くなり、更新プログラムの展開にも悪影響を及ぼします。
- [ディスク クリーンアップ] ツールやPowerShellのスクリプトを活用し、Cドライブの空き容量を十分に確保してください。
- フラグメントが発生しやすいHDDの場合は、定期的なデフラグの実施も有効です。
不要なサービスやスタートアップの無効化
- Windows Server Essentialsはデフォルトで各種サービスが起動している場合があります。使っていないロールや機能を無効化すると、メモリやCPUの使用率が下がり、Update処理がスムーズになることがあります。
- Services.mscやPowerShellを使って、不要なサービスを止めたりスタートアップタイプを「無効」に設定したりすることを検討してください。
サードパーティ製アンチウイルスやセキュリティソフトの影響
- 一部のアンチウイルスソフトが更新ファイルや重要なシステムファイルに誤検出を行い、インストールを妨害することがあります。
- 一時的にアンチウイルスソフトを無効化してからインストールを試すか、対象ファイルを除外設定に追加するのも一つの手段です。
事例:ファイル修復と手動更新で問題を解決したケース
過去に、Windows Server 2016 Essentialsで更新プログラムが半年以上失敗し続け、サーバーの動作も極端に遅かった事例が報告されています。そこで以下の手順を行ったところ問題が解決したとのレポートがありました。
sfc /scannow
とDism /Online /Cleanup-Image /restoreHealth
の実行
破損ファイルが複数検出され、修復が実施された。- Windows Updateを止め、Update関連のキャッシュフォルダをリネーム
net stop wuauserv
net stop cryptSvc
net stop bits
net stop msiserver
ren C:\Windows\SoftwareDistribution SoftwareDistribution.old
ren C:\Windows\System32\catroot2 catroot2.old
net start wuauserv
net start cryptSvc
net start bits
net start msiserver
- Microsoft Update Catalogから該当するKBの.msuファイルをダウンロード
依存関係のあるパッチも含めて取得し、順番にインストール。 - 再起動後、Windows Updateを再度試行
これまで失敗していた更新プログラムが正常に適用され、動作も大幅に改善。
アップグレードで得られる利点と注意点
Windows Server 2022などの新しいバージョンへアップグレードすることで、更新プログラムのサポート期間が延びるだけでなく、多数の新機能やセキュリティ強化を享受できます。しかし、アップグレードにはライセンス費用や互換性の問題も伴います。以下に代表的な注意点をまとめます。
Windows Server 2022 Essentialsの特徴
- ユーザー数やデバイス数が小規模な環境向けに設計されており、ライセンスコストが比較的抑えられるのがメリットです。
- 一方で、StandardやDatacenterに比べると、一部の機能制限があるため、利用可能なサービスや最大接続数を事前に確認する必要があります。
ライセンスの移行シナリオ
- Volume Licenseで契約している場合は、エディション変更を含めたアップグレードが容易に行える可能性がありますが、契約内容を正確に把握していないと追加費用が発生するケースもあります。
- OEM版のWindows Serverを使用している場合は、ハードウェアに紐付いたライセンスの扱いになるため、他のサーバー機への移行が制限される場合があります。
まとめ:安定稼働のために意識すべきポイント
Windows Server 2016の動作が遅い、または更新プログラムが適用できない問題に直面している場合、以下のポイントを意識すると、早期解決に近づきます。
- システムファイルのチェック
まずはファイル破損を疑い、sfcとDISMコマンドで修復を試みましょう。 - 手動インストールの活用
通常のWindows Updateで失敗が続く場合は、.msuや.cabファイルを手動で適用するのが効果的です。 - バックアップとテスト
重要データを守るためにバックアップを確実に取り、トラブル発生時でも迅速にリカバリーできる体制を整えましょう。 - ライセンスやエディションの確認
インプレースアップグレードを行う場合は、ライセンスの種別やエディション変更の可否を事前に確認してください。 - 総合的なパフォーマンス管理
余計なサービスの停止やディスク最適化、セキュリティソフトの除外設定などを行い、Windows Serverが本来のパフォーマンスを発揮できる環境を整備しましょう。
最終的には、OSバージョンをアップグレードして最新の機能やセキュリティを享受することが、長期的な安定運用に寄与します。しかし、アップグレードには計画的な準備と十分な検証が不可欠です。Windows Server 2016のリソースや機能が不足している環境や、更新プログラムのトラブルが慢性化しているケースでは、アプリケーションやネットワーク構成の見直しも含め、根本的な解決策として検討してみてください。
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