Windows Server 23H2へのアップデート方法と注意点

Windows Server 2022の新しいバージョンとして注目を集める23H2。最近では社内のサーバー環境を最新に保つために、アップデートを検討する動きも増えてきました。ただ、いざ手続きを進めようとすると、LTSC版とは異なるチャネル構成が壁となり、戸惑ってしまう方も多いようです。今回は、23H2の概要やアップデートの手順、そして実際に移行を進める際のヒントを、私の体験談も交えながら詳しく解説します。

目次

Windows Server 23H2とは何か

Windows Serverには大きく分けて、長期サービスチャネル(LTSC)と年間チャネル(Annual Channel)の2つがあります。23H2は年間チャネル向けのアップデートであり、リリースサイクルが比較的短く、最新の機能を取り込みやすいのが特徴です。
一方で、LTSC版は数年に一度のみ大きなアップデートが行われるため、安定性を重視している現場には好まれやすいです。ですが、使いたい新機能があれば年間チャネル版も魅力的に映るかもしれません。

LTSC版と年間チャネル版の違い

サポート期間の違い

LTSC版は10年近くの長期サポートが提供されるため、一度導入するとしばらくは大きなアップグレード作業を行わず運用できます。一方、年間チャネルはリリースのたびに新バージョンに移行していくスタイルで、サポートも比較的短いです。

種類サポート期間
LTSC (21H2など)5年メインストリーム+延長サポートあり
年間チャネル (23H2など)リリースごとに数年単位

アップデートの頻度

年間チャネル版は新しい技術要素が短期間で導入されやすい分、実運用環境に導入するにはこまめな検証が欠かせません。LTSC版は安定運用したい現場向けに作られているので、あまり頻繁にアップデートしなくてもいいという安心感があります。

以前、私が担当していたプロジェクトでは、最新機能を使いたくて年間チャネルを導入していました。ちょっと頻繁にリリースが来るのが大変でしたが、それでも新しい機能がいち早く使えるという点は魅力でしたね。

23H2へのアップデートの壁

ではなぜ「Evaluation CenterからダウンロードしたWindows Server 2022 (21H2)を23H2に直接アップデートするのは難しいのか」。実は、この評価版は多くの場合LTSCチャネルのビルドで提供されるため、年間チャネル向けの23H2へはそのまま移行できない仕組みとなっています。

チャネル間のアップグレードは非推奨

チャネルの異なるWindows Serverをアップデートによって移行する方法は、Microsoft公式としては原則提供されていません。アプリやサービス、さらにはドライバやセキュリティ要件など、さまざまな互換性の問題が生じる可能性があるからです。

チャネルが異なるとアップデート時にエラーが発生するリスクがあり、スタンドアローンのインストーラを探してもスムーズに適用できない可能性が高いです。

クリーンインストールが基本

年間チャネル版を運用する場合は、基本的にクリーンインストールか、同じ年間チャネル版の上位バージョンに対してアップグレードを行うしか方法がありません。つまり、LTSCから年間チャネルへの乗り換えを考えるなら、現状のOSを一旦入れ替える形になります。

この手間やダウンタイムをどう最小化するかが、23H2を導入する際の大きな課題です。

クリーンインストールの流れ

1. システムバックアップの取得
2. 年間チャネル版のメディア準備
3. インストールウィザードに従ってクリーンインストール
4. 必要な役割と機能を再構築、もしくは復元
5. データやアプリケーションの正常動作を確認

私の経験上、大規模環境であっても段階的にサーバーを切り替えることで、ダウンタイムをうまく分散できます。例えばロードバランサーで流量を制御しつつ、1台ずつ入れ替えていく方法が有効でした。

23H2の魅力と注意点

23H2は年間チャネル版として新しい機能や改良が多く含まれているため、インフラを最新の状態に保ちたい現場には大きな魅力があります。ただし、導入前には注意点もチェックする必要があります。

新機能を活用するメリット

セキュリティ面の強化

セキュリティ対策は年々高度化が求められています。23H2では最新の暗号化プロトコルやファイアウォール機能が向上しており、これらを利用することで外部からの攻撃リスクを減らしやすくなります。

最新のセキュリティアップデートがすぐに反映されるため、脆弱性の発見と対策がスピーディーに行えます。

クラウド連携やコンテナサポート

年間チャネル版では、クラウドサービスとの連携やコンテナ関連の機能が改善されている場合が多いです。DevOpsを進めるうえで、Windows Serverのコンテナ機能は年々重要度を増しており、最新バージョンを使うメリットは少なくありません。

事前に検証が必要なポイント

アプリケーション互換性

実稼働中のアプリやミドルウェアが23H2に対応していないケースがあります。特に古いバージョンの.NET FrameworkやSQL Serverなどを使っている場合は、バージョンアップの検証を十分に行うことが重要です。

アップデート後にサービスが起動しない、パフォーマンスが極端に低下するなどのトラブルが起こるリスクを見落としがちです。

ドライバとハードウェア

サーバーが特殊なハードウェアを積んでいる場合は、OSのバージョンアップによってドライバが非対応になる可能性があります。あらかじめベンダーのリリースノートなどをチェックし、移行計画を立てましょう。

以前、NICのドライバが新バージョンに非対応で通信が安定しないケースに遭遇したことがあります。結局はドライバのアップデートを待たざるを得なかったため、導入スケジュールの再調整が必要でした。

具体的なアップデート方法

前述のとおり、Evaluation Centerで取得したWindows Server 2022(LTSC版)からは直接アップデートできないため、23H2への移行にはクリーンインストールが必要です。下記では、実際の手順を整理してみました。

1. 評価版の用途を再確認

通常、Evaluation版はテスト目的や短期的な検証用途のために提供されています。本番環境へ導入したい場合はライセンス契約を行い、正式なメディアを入手する必要があります。もしも年間チャネル版を利用する方針なら、23H2に直接対応しているメディアを手配しましょう。

サーバー台数や構成を洗い出す

実運用のサーバー台数が多いときほどアップデートのスケジュール管理が複雑化します。並行稼働やロールバックプランを明確にし、影響範囲を最小化する工夫が求められます。

2. 新しいインストールメディアの準備

23H2対応のインストールメディアはMicrosoft公式から入手できます。年契約のボリュームライセンスを持っている場合は、Volume Licensing Service Centerから、またはVisual Studioサブスクライバー向けのダウンロードサイトなどを通じて取得できます。

ボリュームライセンス契約があれば、最新のWindows Serverイメージをすぐに手に入れられるので作業を効率的に進められます。

3. バックアップと検証環境

クリーンインストールの前に必ずシステムや重要データをバックアップしておきましょう。念のため、テスト環境で同じ手順を再現してみると、実運用に近い形での検証が可能になります。

バックアップの取り方例

バックアップ項目実施内容
OSイメージDISMやサードパーティ製ツールで全体イメージを取得
アプリケーション設定アプリごとのエクスポート機能を利用
データベースSQL Serverのバックアップコマンド、もしくはDBツールを使う

4. 実際のインストール作業

メディアを使ってサーバーをブートし、インストーラの指示に従ってクリーンインストールを行います。新規インストールなので、データドライブやパーティション構成を誤って消去しないように注意しましょう。
インストール後は役割や機能の再設定を行います。特にActive DirectoryやIISなど、依存関係の多いサーバーロールは設定漏れがないようにチェックリストを作成しておくのがおすすめです。

5. ポストインストールの検証

インストール後はサービス稼働状況やイベントログを確認して、異常がないかチェックしましょう。ドライバの更新状況やWindows Updateの適用も忘れずに行い、23H2の環境を最新状態に保ちます。

私は過去に、移行作業後すぐにWindows Updateを実行しなかったせいで、後から出た重要なパッチを適用し忘れていたことがありました。セキュリティリスクが増大するので、アップデート管理は常に意識したいですね。

アップデートが難しい環境での対処法

どうしても本番環境を止められない場合や、エンドユーザーに影響を与えたくない場合は、クラスタリングやロードバランサーを利用しながら段階的にサーバーを切り替える方法があります。特に高可用性が求められるシステムでは、以下のような対処が一般的です。

ローリングアップグレード

クラスターを構成しているサーバーを一台ずつアップグレードする方法です。一時的に負荷を別のサーバーに逃がしながらアップグレードを進めるので、サービスを完全に停止する必要がありません。ダウンタイムを最小化できるため、ミッションクリティカルな業務環境にも適しています。

異なる環境を並行稼働させる

移行先となる23H2環境を新規に構築し、テストおよび部分的な移行を繰り返すことで安定性を確認する方法もあります。DNSの切り替えやロードバランサーの振り分けルールを調整しながら、徐々にトラフィックを移行していきます。

ただし、古い環境と新しい環境が混在すると管理が煩雑になり、設定ミスが起こりやすくなる点には注意が必要です。

アップデートの成否を分けるポイント

クリーンインストールをするにしても、スムーズに進む人とつまずく人がいるのはなぜでしょう。最も大きな違いは、移行計画の段取りと事前の検証にあるといえます。

手順書や環境ごとのチェックリスト

バージョンアップに伴う設定項目は、環境によって大きく異なります。役割や機能、インストール済みのソフトウェアなどをリストアップし、再設定が必要なポイントを洗い出しておきましょう。
特にActive DirectoryのFSMOロールの移行や、DNS/DHCP設定、ファイルサーバーのアクセス権などは取りこぼしが発生しがちです。

ダウングレードプランの用意

アップデート後に問題が発生し、すぐに元に戻す必要が出る場合もあります。クリーンインストールだとロールバックが容易ではないので、イメージバックアップからの復元手順や、以前のバージョンを予備環境として用意しておくことが必須です。

私も過去に、マイナーなアプリケーションが23H2で正常動作しなかったときに、前の環境を一時的に立ち上げて利用者の業務を継続させました。事前にテストしきれない部分がゼロになることはないので、常に予備のプランを用意するのがおすすめです。

まとめと今後の展望

Evaluation CenterからダウンロードしたWindows Server 2022(21H2)は、基本的にLTSCチャネルで提供されています。そのため、23H2(年間チャネル)への直接アップデートは行えません。もし23H2の新機能や最新のセキュリティ強化を利用したい場合は、クリーンインストールか、同じ年間チャネル同士のアップグレードが必要です。
ただし、インフラを長期的に安定稼働させたい場合は、あえてLTSC版のままでいる選択肢も十分あります。新機能が必要かどうか、どの程度の頻度で更新が行えるかといった点を考慮し、プロジェクトや組織のニーズに合った選択をするのが最善策です。

私自身、最新機能が使いたいからといってすべてを年間チャネル版にするわけではありません。実際には案件や運用方針に応じて、安定重視なのか先進機能重視なのかをケースバイケースで判断しています。

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