Windows Server 2025でSamba共有フォルダをマッピングできない問題を解決する方法

ITインフラの管理においては、セキュリティと利便性の両面を考慮した運用が求められます。そんな中、「Windows Server 2025」でSamba共有フォルダをネットワークドライブとしてマッピングする際に生じるエラーが話題になっています。ここでは、その原因と解決策、さらに根本的な回避策や今後の展望を詳しく解説していきます。

Windows Server 2025とSMB接続における課題

Windows Serverシリーズは企業の基幹システムを担うことが多く、安定性とセキュリティが重視されます。しかし、Windows Server 2022やWindows 11では問題なく利用できたSamba共有に、Windows Server 2025環境では接続できないという事例が複数報告されています。接続を試みると「An extended error has occurred.」といったエラーが表示され、ネットワークドライブとしてマッピングに失敗するという症状が代表的です。
これまで一般的に対処されてきた「Insecure guest logons」の設定変更や、資格情報の再入力だけでは解決しないケースもあり、混乱が広がっています。そこで、最も有力な解決策として挙げられているのが「SMBクライアントのセキュリティ署名設定を見直す」方法です。本記事では、その背景と具体的な手順を詳しく解説します。

Windows Server 2025でSamba共有フォルダがマッピングできない原因

Windows Server 2025には、従来のバージョンより一層強化されたSMBプロトコル関連のセキュリティ設定が存在すると考えられています。具体的には「SMB署名」や「暗号化ポリシー」がデフォルトで厳格化され、Sambaサーバーとの通信で十分なセキュリティ要件が満たされない場合に接続が拒否されることがあるようです。
Sambaサーバー側(例えばUbuntu 22.04や24.04など)を変更しても状況が改善しないのは、クライアント側であるWindows Server 2025の新しいポリシー設定が原因と推測されるためです。これによって、認証不要のゲストアクセスであれ、資格情報が必要な共有であれ、同じエラーが発生する可能性があります。

解決策と回避策

ここからは、報告事例や検証結果をもとに提案されている主な解決策・回避策をまとめます。なお、以下の対策を講じる前に、セキュリティリスクや社内ポリシーとの整合性を必ず確認してください。

1. SMBクライアントのセキュリティ署名設定を無効化する

Windows Server 2025で最も効果があるとされるのが、SMBクライアント側での「RequireSecuritySignature」設定を無効化する方法です。この設定が有効なままだと、Sambaサーバーとの通信時に追加の署名が要求され、適切に対応されない場合は接続が拒否されます。

PowerShellでの設定変更例

以下のPowerShellコマンドを実行することで、SMBクライアントの署名必須設定を無効化できます。

Set-SmbClientConfiguration -RequireSecuritySignature $false

設定を反映させるためには、一度セッションを切り、エクスプローラーなども再起動したうえで再度ネットワークドライブのマッピングを試してみてください。

グループポリシー(GPO)での設定

組織で多数のWindows Server 2025を運用している場合は、GPOを利用した一元管理が便利です。次の手順を参考に設定を変更します。

  1. 「グループポリシーの管理」コンソールを開く。
  2. 「[コンピュータの構成] → [Windowsの設定] → [セキュリティの設定] → [ローカルポリシー] → [セキュリティオプション]」の順に展開。
  3. 「Microsoftネットワーククライアント: 常に通信をデジタル署名する」を“無効”に設定。
  4. ポリシーを更新し、サーバーを必要に応じて再起動またはログオフ/ログオン。

これにより、Windows Server 2025のSMBクライアントが署名の必須化を強制しなくなり、Samba共有への接続が可能になるケースが多く報告されています。

2. 資格情報の再設定

Windows Server 2025に限らず、ネットワークドライブのマッピングがうまくいかない際の一般的な対処法として、資格情報マネージャーから不要な資格情報を削除し、再入力する方法があります。

  1. 「コントロール パネル」を開き、「資格情報マネージャー」を選択。
  2. 「Windows資格情報」の項目を確認し、問題が発生している共有に関連する資格情報を削除。
  3. ネットワークドライブ割り当てを再度行い、必要に応じてユーザー名とパスワードを正しく入力。

ただし、今回のWindows Server 2025特有の問題では、これだけでは完全に解決しない可能性があります。SMB署名を無効化して初めて、資格情報の再設定が有効に働くケースもあるため、併用するのがおすすめです。

3. 認証が不要な共有への接続問題

Sambaサーバーを運用していると、ゲストアクセスが可能な共有フォルダを設定することがあります。従来のWindows ServerやWindowsクライアントでは、「Insecure guest logons」を有効にしておけばゲストアクセスによる共有が利用できました。しかし、Windows Server 2025では、その方法だけでは接続が許可されない事例があります。
これはWindows Server 2025のセキュリティ強化が原因とされ、ゲストアクセスに対してもSMB署名や暗号化が必要となる構成になっていると推測されています。もし運用ポリシー上、ゲストアクセスを使わざるを得ない状況がある場合は、以下のような追加の対処を検討してください。

  • Samba設定ファイル(smb.conf)で「server signing」や「map to guest」などのパラメータを調整する。
  • クライアント側だけでなくサーバー側でもSMB署名や暗号化の設定を行い、クライアントの要求に対応できるようにする。
  • どうしてもセキュリティリスクが大きい場合は、ゲストアクセスを使わずにユーザー認証ベースに切り替える。

4. ROBOCOPYによる一時的な回避策

どうしても短期的にファイルを取得・同期させたい場合や、ポリシーの変更が難しい環境では、ROBOCOPYを使った迂回策が一部で紹介されています。例えば、別のWindows Server 2022やWindows 11マシンでSamba共有をマッピングし、そこからWindows Server 2025側へファイルを転送するという方法です。

  • Windows Server 2022(またはWindows 11)でSamba共有を「Z:」ドライブとしてマッピング。
  • Windows Server 2025側のフォルダを「D:\DataServer」など用意。
  • ROBOCOPYのスクリプトを作成し、タスクスケジューラで定期実行。

ROBOCOPYの例:

ROBOCOPY Z:\ShareFolder D:\DataServer /E /XO /COPYALL /R:3 /W:5

この方法は直接マッピングできない状況を回避するための一時的手段にすぎませんが、緊急対応としては役立ちます。

5. 今後の見通し

現在のところ、Windows Server 2025におけるSamba共有フォルダのマッピング障害は、バグなのか意図的なセキュリティ強化なのか公式には明確になっていません。企業向けに提供されるエンタープライズサポートを通じてマイクロソフトに問い合わせるケースがあるものの、正式な回答やパッチリリースは確認されていないようです。
しかし、SMB署名の必須化は昨今のセキュリティ事情を踏まえれば、より安全性を高めるうえで妥当な進化ともいえます。一方で、既存のSambaサーバーとの互換性が損なわれるという問題は看過できません。今後、マイクロソフト側でアップデートやドキュメントの整備が進み、よりスムーズにSamba共有が行えるようになることが期待されています。

SMBクライアントのセキュリティ署名を無効化する際の注意点

現場で最も効果的とされる方法が「SMBクライアントのセキュリティ署名を無効化する」手段ですが、セキュリティリスクが増大する可能性がある点に留意してください。SMB署名には「メッセージの改ざんを検知する」機能があります。これを無効化すると、通信経路での改ざんリスクが増す可能性があるため、社内LANの安全性などを十分に検討したうえで導入することが重要です。

ポリシーの検討例

ポリシー名推奨設定補足
Microsoftネットワーククライアント: 常に通信をデジタル署名する無効Windows Server 2025とSamba共有の互換性を確保
Microsoftネットワークサーバー: 常に通信をデジタル署名する要検討(既存環境に合わせる)無効化すると社内全体のセキュリティレベル低下に注意
Insecure guest logons有効/無効のいずれも可ゲストログオンが必要かどうかで設定

上の表のように、SMBクライアントとサーバーの両方で署名をどう扱うかは、環境によって大きく変わります。署名を無効化するだけでなく、Samba側の設定をアップデートし、相互に署名を行えるように調整するアプローチも検討する価値があります。

資格情報の再入力手順を具体的に示す

前述した資格情報マネージャーを使う方法を、さらに具体的に解説します。仮に、Sambaサーバーのアドレスが「\192.168.10.50\ShareData」で、アクセスに「user1 / pass1」という資格情報が必要だとしましょう。

  1. コントロールパネルを開き、「ユーザーアカウント」→「資格情報マネージャー」をクリック。
  2. 「Windows資格情報」の欄を下までスクロールし、「\192.168.10.50」に関連するエントリーを探す。
  3. 見つかった場合は「削除」をクリックして対象資格情報を削除。
  4. コマンドプロンプトやPowerShellから以下のコマンドを入力して、ネットワークドライブを再マッピング。
   net use * /delete /y
   net use Z: "\\192.168.10.50\ShareData" /user:user1 pass1

上記で「Z:」にマッピングした例です。すでに同じパスにマッピングがある場合は、一度すべてのドライブマッピングをクリアしてから再設定します。

  1. 正しくマッピングできたかエクスプローラーで確認。問題なくアクセスできれば成功です。

この手順は、Windows Server 2025でなくとも有効な一般的対処法です。ただし、今回のようにセキュリティ署名が原因の場合、資格情報の再入力だけでは不十分なこともあるため注意しましょう。

セキュリティレイヤーを保ったまま解決するには

SMB署名を完全に無効化するのではなく、Sambaサーバー側でもSMB署名をサポートさせることで、署名のやり取りを行いながら接続する方法が理想的です。一部のSambaバージョンでは、設定ファイル(smb.conf)に以下のようなオプションを追加・変更することで署名の強制を行えます。

[global]
   server signing = mandatory
   client signing = mandatory
   # 他の共有設定は適宜追加

ただし、SambaとWindows Server 2025のSMB署名の実装に微妙な差異がある可能性もあり、必ずしもスムーズに通信できるとは限りません。いくつかの設定値や暗号化方式をテストし、最適解を見つける必要があります。

企業環境における運用上の考慮

大規模な企業環境でWindows Server 2025を運用する場合、既存のサーバー群やクライアントマシンとの互換性を検証する時間的コストやリソースを確保しにくいのが実状です。そこで、以下のような段階的なアプローチを検討するとよいでしょう。

  1. テスト環境の構築
    まずはテスト用のWindows Server 2025を用意し、Samba共有フォルダへのアクセス実験を繰り返す。
  2. セキュリティポリシーの精査
    グループポリシーの中でどの項目が影響を及ぼすかをリスト化し、要件を踏まえて優先度を決定。
  3. 段階的な導入
    一部の部門やプロジェクト単位でテスト導入し、問題がないことを確認してから全社展開。
  4. 監視とログ収集
    共有フォルダへのアクセスログやイベントビューアーを定期的にチェックし、不審なアクセスや接続エラーが起きていないか監視体制を整備。

まとめ

Windows Server 2025では、従来のWindows環境よりも強化されたSMBプロトコルのセキュリティ設定が要因となり、Samba共有フォルダをマッピングできない事例が発生しています。特にSMB署名の必須化が大きく影響しているとみられ、これを無効化あるいはSambaサーバー側の設定変更で対処する方法が現時点での有効策です。
ただし、署名を無効化すると改ざん検知機能が失われるため、セキュリティリスクと運用上の利便性のバランスを慎重に考慮する必要があります。また、マイクロソフト側のアップデートや正式なアナウンスが行われる可能性もあるため、最新の情報を追いかけることが大切です。どうしても短期的にファイルを取得する必要がある場合は、ROBOCOPYなどを使った迂回策を検討しつつ、長期的にはSMB署名を両立させた運用を目指しましょう。

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