Windows Server 2019を導入する際、ライセンス認証やRDS CALの追加にまつわる設定は慎重に行う必要があります。しかし、Azure上の管理画面でライセンスがうまくコピーできなかったり、DNS周りの設定ミスで「0x8007232B」エラーが起こったりと、想定外のトラブルに戸惑う方も多いのではないでしょうか。ここでは、Windows Server 2019のライセンス認証トラブルを解決するための対策を詳しく解説していきます。正しく手順を踏めばスムーズにシステムを稼働させることができますので、ぜひ参考にしてみてください。
Windows Server 2019ライセンス認証の基本
Windows Server 2019には、大きく分けて2つのライセンス認証方式が存在します。KMS(Key Management Service)とMAK(Multiple Activation Key)です。KMSは社内にKMSホストサーバーを立て、複数台のWindows ServerやクライアントOSを一括してライセンス認証できる仕組みで、ドメイン環境を構築している企業などに向いています。一方、MAKはマイクロソフトから発行されたキーを用いて、インターネット経由または電話認証でサーバー単位に認証する方式です。小規模環境やKMSを管理するリソースがない場合に適しています。
KMSを活用するメリットとデメリット
KMSは一度環境を構築してしまえば、Windows Serverだけでなく、Windows 10/11などのクライアントOSや他の対象製品にも対応できます。また、社内ネットワーク内でDNSレコードを活用して自動的に認証するため、台数の多い環境では管理負荷が大幅に軽減されるでしょう。一方で、KMSホスト自体のサーバーがダウンすると認証に問題が出ることがあり、インフラ運用の知識やDNS設定などに注意する必要があります。
MAK認証が望ましいケース
小規模事業所や単一サーバーのみで運用するようなケースでは、MAKのほうが手軽です。KMSの構築コストやDNS設定が不要で、製品キーを入力し「slmgr.vbs /ipk <キー>」→「slmgr.vbs /ato」で認証できます。特にAzure上に構築したWindows Serverを個別に認証する場合にも有効な手段です。
MAKを使ったライセンス認証手順
- 管理者権限でコマンドプロンプトまたはWindows PowerShellを開く
- 下記コマンドで現在のライセンス状態を確認し、問題がないかをチェック
slmgr.vbs /dli
- 続いて、発行されたMAKキーを入力
slmgr.vbs /ipk <MAKキー>
- インターネットに接続できる状態で認証を実行
slmgr.vbs /ato
- 認証が成功すれば、もう一度ライセンス状態を確認して完了
slmgr.vbs /dlv
エラーコード「0x8007232B(DNS name does not exist)」が出る原因
上記のエラーは主にKMSクライアントが「_VLMCS」というDNSのSRVレコードを見つけられない場合に発生します。これは、「DNS名が見つからない」つまり、KMSホストが正しく設定されていないか、ドメイン環境に問題があることを示しています。特に以下の点をチェックしましょう。
DNSレコードの未登録
KMSホストを運用している場合、DNSに「_VLMCS._tcp.<ドメイン名>」というSRVレコードが登録されている必要があります。KMSホストのサーバー名やポート番号、優先度などが正しく登録されているか確認してください。ドメインコントローラーのDNS設定画面などから正しい値が登録されているかチェックするのが基本です。
KMSホストの指定ミス
DNSが機能していなくても、手動でKMSホストを指定することで認証を試すことができます。以下のコマンドでKMSホストを強制的に設定してから認証を試みてください。
slmgr.vbs /skms <kms_host_name>
slmgr.vbs /ato
もしこれで認証が成功するようであれば、DNS側の問題が濃厚です。DNSのSRVレコードを再設定し、以後は自動的にクライアントがKMSホストを認識できるように整備しましょう。
RDS CALのライセンス管理とトラブル対策
Windows Server本体とは別に、リモートデスクトップサービス(RDS)用のライセンス(CAL)管理が必要です。ユーザー単位であれば「Per User CAL」、デバイス単位であれば「Per Device CAL」を導入し、RD License Managerからライセンス認証を行います。
RD License Managerにライセンスを追加する流れ
通常はサーバーマネージャの「リモート デスクトップ サービス」→「RDライセンス管理(またはライセンス サーバー)」から、「ライセンスのインストールウィザード」を起動してCALを登録します。インターネット経由で自動認証が可能ならば、そのまま手順に従うだけですが、うまくいかない場合は電話やWeb認証に切り替えてライセンスキーやプロダクトIDを入力しましょう。
AzureやMicrosoft 365管理画面でライセンスを確認できない
RDS CALはボリュームライセンスとして扱われることが多いため、Azure PortalやMicrosoft 365の管理画面では直接扱えないケースがあります。ライセンスキーを確認したい場合は、ボリュームライセンスサービスセンター(VLSC)がメインの窓口です。VLSCに組織のアカウントでログインし、契約一覧から該当のライセンス契約を確認、ライセンスの割り当てやプロダクトキーの確認ができるかどうかをチェックしてください。もしキー情報が見つからない場合は、購入元のベンダーやMicrosoftのサポートに問い合わせるとスムーズです。
RDS CALが認証できない場合のチェックポイント
- インターネットへの接続状況:ファイアウォールやプロキシ設定で接続が妨げられていないか
- ライセンスキーの入力ミス:スペルや英数字のO(オー)と0(ゼロ)などの混同
- 電話認証時のプロンプト入力:音声ガイダンスでの番号入力ミス
- ライセンスサーバーの有効化:RD Licensing Diagnoser(ライセンス診断ツール)で正しくサーバーが稼働しているか
OSの修復や再インストール時の注意点
Windows Serverを修復インストールしたり再インストールした場合、ライセンス認証情報が消えてしまうことがあります。これは、システムレジストリの一部が初期化されるためです。同様にRDS CALのライセンス情報も再度登録が必要になるケースがあるので、事前にライセンスキー情報を控えておくようにしましょう。
ライセンス情報のバックアップ
再インストールやサーバー移行時に備えて、ライセンス状態を示すライセンス認証IDや発行されたキーは安全な場所に保管しましょう。特に、RDSライセンスサーバーの構成は複数人が把握しておかないと、担当者が不在の際にトラブル対応が難しくなります。
Azure関連の設定を解除する方法
もしAzureへの登録がうまくいっておらず、不要な接続情報が混在しているときは、一度Server ManagerやAzureのポータルサイトで不要なリソースを削除するのも手です。Azureに登録された仮想マシンイメージを利用している場合でも、ローカル環境のライセンス認証は別個に管理されることが多いため、Azureのリソースグループとライセンス認証が分離できているか見直してください。
DNSやドメイン環境のトラブルシューティング
DNSサーバーのイベントログを確認
Windows Server側のイベントビューアからDNSサーバーログを確認すると、KMSホストの登録失敗やSRVレコードの競合などのエラーが記録されている可能性があります。エラーイベントの詳細を元に正しいSRVレコードの設定を行いましょう。
ドメインコントローラーとの同期状態
環境によってはドメインコントローラーが複数ある場合や、サイト間レプリケーションの遅延などが原因でDNS情報が古いままの場合があります。全てのドメインコントローラーで正しいレコードが反映されているかを確認して、必要に応じて手動でレプリケーションをトリガーするなどの対策をとってください。
ライセンス認証トラブルを回避するためのベストプラクティス
ここでは、トラブルを未然に防ぐための具体的な対策や運用上の工夫をいくつか紹介します。
導入前に検証環境を用意する
社内にテスト環境を構築し、Windows Server 2019とRDSを一通りセットアップしてライセンス認証を試してみるのは非常に有効です。KMSやMAKの設定、RDS CALの登録手順などを確認することで、本番環境でのトラブルリスクを下げられます。テスト環境では30日間程度の評価期間で動かし、その間に問題がないか検証すると安心です。
ライセンス数と種類を正しく把握する
RDSユーザーCALとデバイスCALを混在させる場合や、Windows ServerのStandardエディションとDatacenterエディションを混在させる場合は、各ライセンスの導入ルールと数量をきちんと把握する必要があります。特にユーザーCALはアクティブディレクトリ内のユーザーアカウント単位で導入することが原則です。万が一、想定以上にユーザーが増えてライセンス不足になると、違反状態になる可能性があります。
ライセンス管理台帳の作成
エクセルなどでも構わないので、「いつ」「誰が」「何のライセンスを」「何台分購入したか」を記録した台帳を用意しましょう。これにより、ベンダーやマイクロソフトへ問い合わせをするときも必要な情報をすぐに提示でき、認証トラブル時の対応がスムーズになります。
具体的なトラブルシュート例
ケース1: RDSライセンス認証ができず使用期限切れ警告が出る
- RD Licensing Diagnoserツールでエラーメッセージを確認
- ライセンスサーバーがアクティブ化されていない場合は、ウィザードに従い認証を実施
- インターネット認証に失敗する場合は電話認証に切り替え、プロダクトIDと発行コードを入力
- イベントビューアのライセンス関連ログで失敗理由を詳細にチェック
- VLSCやベンダーから入手したライセンスキーが正しいか再確認
ケース2: 物理サーバー再インストール後にライセンスが無効化
- Windows Serverのライセンス認証が解除されていないか「slmgr.vbs /dli」で確認
- 必要に応じてMAKキーまたはKMS設定を再入力し再認証
- RD License Managerのライセンスサーバーが「構成されていない」状態になっていないかチェック
- 電話認証など、別の認証方法を試すか、Microsoftサポートに電話して再認証を依頼
電話やチャットでMicrosoftサポートへ相談する際のポイント
Microsoftサポートとやり取りする際は、事前に以下の情報を準備しておくとスムーズです。
- 購入したライセンスの契約番号、または注文ID
- ライセンスキー(MAKやRDS CALキーなど)
- エラーメッセージのスクリーンショットやイベントログ番号
- 現在のサーバー環境(オンプレミスかAzureか、ドメインかワークグループか)
こうした情報を的確に伝えることで、サポート担当者も原因特定までスピーディに案内してくれます。
ライセンス認証の成功例とコード例
導入の場面によっては、エンジニアがコマンドラインで直接アクティベーション状況を確認することが多いと思います。以下にKMSホストを登録し、ライセンス認証を成功させた例を示します。
:: まず現在のライセンス状態を確認
slmgr.vbs /dlv
:: KMSホストを手動で指定
slmgr.vbs /skms kms01.contoso.local
:: ライセンス認証を実行
slmgr.vbs /ato
:: 再度ライセンス状態を表示し、認証済みかどうかを確認
slmgr.vbs /dlv
上記手順でエラーが出ず、ライセンス認証が完了した旨が表示されればOKです。KMSを使わずMAKキーを用いる場合は「slmgr.vbs /ipk 」→「slmgr.vbs /ato」の流れになります。
まとめ
Windows Server 2019において、ライセンス認証とRDS CALの管理は運用の重要なポイントです。特に以下の点をしっかり押さえておけば、トラブルを最小限に抑えることができます。
- DNSにKMSのSRVレコードを登録し、必要に応じて手動でKMSホストを指定する
- MAKキーを使う場合は「slmgr.vbs /ipk」→「slmgr.vbs /ato」で確実に認証する
- RDS CALはWindows Serverライセンスと別にRD License Managerで登録する
- ボリュームライセンスサービスセンター(VLSC)でライセンスキーを確認できるかチェック
- 再インストールや修復時にはライセンスがリセットされる場合があるので事前にキーを保管
もしトラブルが解決しない場合は、Microsoftの公式ドキュメントやサポート窓口に問い合わせましょう。サーバー環境やDNS、ライセンスの種類に応じた最適な解決策を案内してもらえます。ライセンス関連は複雑になりがちですが、一度手順を把握してしまえば安定稼働に大きく貢献します。自社の環境に合った方法で認証を成功させ、安心してWindows Server 2019の運用を行っていきましょう。
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