Windows Server環境でソフトウェアRAID 1(ミラーリング)を運用していると、片側のディスクが突然故障する場面に直面することがあります。ですが、もう一方のディスクから適切にデータを救出できれば、大切なファイルを失わずに済みます。本記事では、ダイナミックディスクで構成したRAID 1の片側ディスク故障時に、どのようにデータをアクセス・復旧できるかについて詳しく解説します。
ソフトウェアRAID 1(ミラーリング)とは
ソフトウェアRAID 1は、Windows Serverの機能であるダイナミックディスクを使って設定可能なミラーリング構成のことです。RAID 1は同じデータを複数のディスクに書き込むため、片側のディスクが故障してももう一方のディスクから読み出しができ、可用性を高めます。ハードウェアRAIDカードを使わなくても実現できるため、コストを抑えつつ冗長性を持たせたいときに導入されるケースがあります。
ただし、ソフトウェアRAIDはOSに依存する部分が大きく、トラブル時の対処手順がやや複雑です。ハードウェアRAIDと比べてパフォーマンスや復旧手順に制限がある場合もあるため、サーバーの重要度や運用ポリシーに応じて選択しましょう。
片側ディスクが故障したときの動作
Windows Server上でダイナミックディスクのミラーリング(ソフトウェアRAID 1)を構成しているときに、片方のディスクが物理的に故障するケースがあります。以下は一般的な状況です。
- マスターディスク(最初にセットアップしたディスク)が物理的に回転しなくなる、または重度のセクタ不良で認識しない
- ミラーディスク(追加でミラー構成に組み込まれたディスク)にはまだデータが正常に残っている
- 元のサーバー自体も他の要因で起動しなくなる、あるいはディスクコントローラの障害など別の問題が発生している
このようなときに、正常そうなミラーディスクを別のマシンに接続して読み取れるかどうかは、システム管理者にとって重要な課題です。
データ保全の最優先:バックアップの重要性
災害復旧や障害対策では、何よりもまずバックアップの有無が重要になります。ソフトウェアRAID 1はディスク障害に対する耐性を高めますが、冗長性とバックアップは別物と考えてください。
RAID 1はディスクの一方が故障しても運用を継続できる利点がありますが、書き込む内容は常に「同じデータ」です。誤操作やウイルス感染などの論理障害が発生すれば、両ディスクとも同じ状態にダメージを受けます。
まずは現在のバックアップを確認
- 日次や週次で取得しているバックアップがあれば、復元テストを試みてください
- もしバックアップがなければ、故障ディスクへの操作は極力控えた上で、まずは読み出しを最優先にする
バックアップがあることで、トラブルシュートの選択肢や精神的な余裕が大幅に変わってきます。RAID 1でも突然の障害に対処するために、バックアップは常に別のメディアや場所に確保しておくことが理想です。
故障した片側ディスクを除外した状態でのデータ復旧
今回の主題である、片側が故障した状況で「残りのディスクを別のマシンに接続してデータを読み取る」方法を詳しく見ていきましょう。
ステップ1:故障ディスクを取り外す
物理的に故障したディスクは、サーバー内で回転しない、もしくはBIOS/UEFIレベルで認識されない状態かもしれません。まずは安全を期してサーバーの電源を落とし、該当の故障ディスクを取り外します。
もし物理的にディスクを触るのが難しい場合や、サーバーの筐体を開けられない場合は、専門業者に依頼するか、マシン管理者の指示に従って対応してください。
ステップ2:正常ディスクを別マシンに接続
取り外した「ミラーディスク」(正常ディスク)を、他のWindowsマシンやサーバーに接続します。このときはSATAコネクタを使って直接接続するか、外付けディスクケース(USB接続ケースなど)に入れて読み込みを行うとよいでしょう。
- 内部SATA接続を行う場合は、BIOS/UEFIで接続ディスクを認識するか確認
- 外付けケースを使う場合は、WindowsがUSB外付けディスクとして認識するか確認
ステップ3:ディスクの管理から「外国ディスク」の認識を確認
Windowsが起動したら「ディスクの管理」(Disk Management)を開きます。すると、今回接続したディスクが「ダイナミックディスク」として認識されるはずです。別のマシンに接続したときは、「フォーリン(外国)ディスク」と表示されることがあります。
表示 | 意味 |
---|---|
基本ディスク | 通常のMBRまたはGPTによるディスク。パーティションで管理 |
ダイナミックディスク | Windowsにより管理されるボリューム。ストライプやミラーなどのRAID構成も含む |
外国ディスク | 別のWindowsインストールで作成されたダイナミックディスク。インポート手順が必要 |
もし「外国ディスク」として認識されれば、右クリックメニューから「ディスクのインポート」(または「外国ディスクのインポート」)を選択することで、Windows上でそのディスクを利用可能にできます。
ステップ4:ボリュームのマウントとファイルシステムのチェック
インポートが成功すると、RAID 1の構成は片側のみになっているものの、論理的には「ミラーリングされたボリューム」として認識される可能性があります。このとき、ドライブレターが割り当てられていれば通常のNTFSやReFSなどのファイルシステムとしてデータにアクセスできるはずです。
- 正常に割り当てられたドライブレターをエクスプローラーで開いて、ファイルが参照できるか確認
- 場合によってはファイルシステムに破損があるかもしれないので、
chkdsk
などのチェックツールを使用して問題がないかを検査
コマンド例
chkdsk E: /f /r
上記では、E:ドライブのファイルシステムをチェックし、必要に応じて修復します。ただし、障害が疑われるディスクに対して過度に書き込みを行うと状況が悪化する可能性もあるので、必ずバックアップの取得を優先しましょう。
片側ディスクのみでのデータアクセスの可否
原則として、ソフトウェアRAID 1(ミラーリング)では両方のディスクに同じデータが書き込まれているため、片側ディスクでもファイルシステムとしては成立しています。
したがって、正常な側のディスクを別サーバーやワークステーションに接続してインポートできれば、単体でデータにアクセスできる可能性が高いです。ただし、下記の点には注意が必要です。
- ディスクに物理障害がないか
- 故障していないと思っていても、一部セクタ不良などの小さな障害を抱えている可能性があります。別マシンに接続したら、まずはSMART情報やイベントビューアのエラーをチェックして、安全に読み取りができるかを確認しましょう。
- ファイルシステムの互換性
- 通常のWindows Server環境ならNTFSが多いですが、ReFSや他の特殊なファイルシステムを使用している場合、読み取りに対応したOSが必要です。
- もしLinuxやmacOSにディスクを接続すると、NTFSやReFSをネイティブに扱えない場合があるため、注意が必要です。
- ダイナミックディスクの管理
- 別のWindowsマシンで認識・インポートできるかはOSのエディションにも左右されます。Homeエディションではダイナミックディスクを扱えない場合があるため、Windows ServerやWindows 10/11 Pro以上など対応している環境を選びましょう。
- ドライバやコントローラの違い
- 古いサーバーのコントローラと、新しいマシンのSATAコントローラの差異によっては認識が不安定になることもあります。BIOS/UEFIでの設定が適切かどうか確認してください。
認識しない場合の対処法
もし別マシンに接続してもディスクが「未割り当て」と表示される、ディスク自体が認識されない、インポートに失敗するといったトラブルが生じる場合は、以下の手順を検討してください。
1. ディスクドライバーの更新・接続ポートの変更
最初にできる対策として、SATAポートを別のポートに変更する、外付けケースを交換してみるなど、物理的な接続経路を変えてみる方法があります。Windows側のディスクドライバーを更新する、またはチップセットドライバーを適用することで解決することもあります。
2. 専用のデータ復旧ツールの利用
論理障害が疑われる場合は、サードパーティのデータ復旧ツール(たとえばEaseUSやMiniTool、R-Studioなど)を試すと、ファイルシステムの不整合を解析してデータを吸い出せる場合があります。ただし、誤った操作で状況を悪化させる可能性があるため、ツールの利用は十分に注意して行ってください。
3. データ復旧業者への依頼
ビジネスに重要なデータで、どうしても失いたくない場合はプロのデータ復旧業者に相談するのも手です。業者ではクリーンルームで物理的な障害を診断したり、ディスクを分解してヘッドを交換するなど専門的な手段を持っています。ただしコストが高くなる傾向があるため、まずは社内の承認を得るなどの手続きを踏む必要があります。
RAID 1運用のリスクと今後の対策
片側ディスクのみで運用を続けると、冗長性が失われ、もう一方が故障したら完全にデータが失われるリスクがあります。元のサーバーが復旧できない場合は別のサーバーにディスクを引き継ぎつつ、早期に再ミラーリング環境を構築することを検討してください。
バックアップを含む多層防御
RAIDとバックアップは両立する必要があります。RAIDは可用性向上のための対策であり、バックアップは災害復旧や論理障害への対策です。どちらが欠けても、万全とは言えません。バックアップメディアを週次や月次などの適切な頻度で取得し、オフライン保管やクラウド保存などの多層防御を行いましょう。
ハードウェアRAIDとの比較
ハードウェアRAIDの場合は専用のコントローラがディスク管理を行うため、OSに依存しにくく、トラブル時の再構成やディスク交換が簡単です。一方で、コントローラが故障すると同じモデル・ファームウェアのコントローラを用意しなければならないなど、別の制限が生じることもあります。コスト面も含めて、運用体制に合った選択をしましょう。
クラウドサービスの活用
重要なデータほど、クラウドでのバックアップやレプリケーションを利用すると復旧が容易です。Azure BackupやAWS Backupなどを使えば、オンプレミスのデータを自動的にクラウド上に複製できるため、物理的障害からの早期復旧が期待できます。ダイナミックディスクやRAIDに限らず、総合的なデータ保護戦略としての検討がおすすめです。
実際の操作例:外国ディスクのインポート手順
ここでは簡単な例として、Windows Server 2019またはWindows 10/11 Pro以降の環境で、外国ディスクをインポートする流れを示します。
- ディスクを接続
正常ディスクをSATAポートやUSB外付けケースを介して接続し、OSを起動します。 - ディスクの管理を開く
「スタートボタン」を右クリックし、「ディスクの管理」を選択します。 - 外国ディスクの検出
画面下部にあるディスク一覧で、接続したディスクが「Dynamic」と表示され、そのステータスが「Foreign」となっているはずです。 - 右クリックでインポート
当該ディスクを右クリックし、「外国ディスクをインポート」を選択します。ガイダンスに従って「次へ」をクリックし、インポートを完了させます。 - ドライブレターとステータスの確認
インポートが成功すれば、「正常(回復パーティション)」や「正常(ミラー)」などと表示され、ドライブレターが割り当てられているか確認できます。割り当てられていない場合は、右クリックメニューで「ドライブ文字とパスの変更」を選択し、割り当てを行います。 - データの閲覧・コピー
エクスプローラーから対象ドライブを開き、ファイルが正常に閲覧できるか、コピーが可能かを確かめます。問題がなければバックアップ先や保管先へ速やかにコピーしておきましょう。
注意点
- 別マシンでディスクを操作する前に、元のサーバーでディスクがどのような状態だったかログを確認しておくと、障害原因の推定に役立ちます。
- インポート中に警告やエラーが表示された場合は、誤操作でデータを消失させないよう手順を再確認し、場合によってはシステムイベントログを見るなどの慎重な対処が必要です。
データ復旧後の再構築
無事にデータを読み出せたら、同様の障害を繰り返さないように今後の運用を見直しましょう。特にサーバー環境では24時間稼働が多いため、ディスクの寿命やS.M.A.R.T.エラーの監視、バックアップ運用の見直しなどが不可欠です。
新しいディスクへのミラー再構成
元のサーバーを修理あるいは交換して再起動できる状態になったら、新しいディスクを用意してミラーリングを再構成します。故障ディスクと同じかそれ以上の容量を持ち、同等の速度や耐久性を想定したディスクを用意するのが一般的です。
- 「ディスクの管理」から、新しいディスクをダイナミックディスクに変換
- 元からあるボリュームを右クリックし、「ミラーの追加」を選択して新ディスクを選ぶ
- レプリケーションが自動的に開始され、しばらく待つと同期が完了してRAID 1が再構築される
バックアップの自動化
クラウドやNASなどへの定期バックアップがなければ、ぜひ導入を検討してください。Windows Serverの場合、Windows Server Backupやサードパーティソフト、PowerShellスクリプトを使うことでスケジュールバックアップを実行できます。監査ログやメール通知を設定して、バックアップが正常に取れているかを常に確認しましょう。
サーバー保守のポイント
- ディスクの監視:イベントログやS.M.A.R.T.情報の監視ツールを使い、予兆をつかむ
- 電源・冷却対策:ディスク故障は過熱や電源異常の影響で増える傾向があるため、UPSや空調管理も含めた総合対策を
- バージョンアップ計画:OSやハードウェアが古いままだと、最新の復旧ツールやサポートが適用できないケースがある
まとめ:片側ディスクの故障でも諦めない
Windows ServerのソフトウェアRAID 1では、ミラー構成の片側ディスクが故障しても、もう一方が無事ならデータ復旧のチャンスは残されています。ただし、実際にディスクを別マシンに接続して読み出す際には、外国ディスクのインポート手順やファイルシステムの互換性など、いくつかのステップを踏む必要があります。
トラブル発生時には焦らず、まずはバックアップの確認とディスクの状態把握から進めましょう。可能であれば、専門業者のサポートや社内の保守担当者の協力を得つつ、データを安全な場所に確保したうえで、サーバーの運用を再開することが肝心です。今回の手順やポイントを押さえておけば、いざというときにも迅速に復旧へ向けた行動を取れるはずです。
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