Windows Server 2019ライセンスの計算方法と仮想マシン運用のポイント

最近では仮想化技術が一般化し、オンプレミス環境でもクラウド上でもWindows Serverのライセンスを正しく把握して運用することが大切になっています。特にWindows Server 2019 Standardはコア単位でライセンスを計算する仕組みのため、CPUのコア数を誤って認識してしまうと余計なコストを払ってしまったり、逆に未ライセンス状態となってしまうリスクがあります。今回は、物理サーバに24コアを搭載したケースを例に、コアライセンスの計算方法や仮想マシンの運用のポイントを分かりやすく解説します。

目次
  1. Windows Server 2019のライセンス計算に関するQ&A
    1. Q1: 24コアの物理サーバには何コア分のライセンスが必要か?
    2. Q2: Windows Server 2019 Standardで2つのVMを稼働させられるか?
  2. Windows Serverのライセンス体系の基本
    1. Standardエディション
    2. Datacenterエディション
  3. コア数の正確なカウント方法
    1. 表: CPUとライセンスコアの対応例
  4. 仮想環境での注意点: コアの割り当て
  5. CAL(クライアントアクセスライセンス)の考慮
  6. 追加ライセンスが必要になるケース
  7. Windows Server 2019 StandardとDatacenterの比較
    1. ライセンス費用
    2. 機能面
  8. ライセンスの誤解: プロセッサVSコア
  9. ライセンスの調達方法
    1. OEMライセンス
    2. ボリュームライセンス
    3. SPLA(Service Provider License Agreement)
  10. 仮想化プラットフォームとの相性
  11. 運用時のライセンス監査とコンプライアンス
  12. Windows Server 2019のメリットと新機能
  13. Windows Server 2022との比較
  14. 実際の導入フロー例
    1. 1. ハードウェアの選定
    2. 2. ライセンスの調達
    3. 3. OSインストールと初期設定
    4. 4. Hyper-Vの有効化
    5. 5. 仮想マシンの作成
    6. 6. 運用開始とライセンス管理
  15. トラブルシューティング: ライセンス違反を防ぐには
    1. ライセンス認証のステータス確認
    2. 物理サーバや仮想化基盤のリソース監視
    3. ライセンスガイドラインの定期的な見直し
  16. まとめ: 正しいライセンスで安心運用を

Windows Server 2019のライセンス計算に関するQ&A

Windows Server 2019 Standardのライセンスを考えるうえで、まず理解しておきたいのは「コアベース」であるという点です。以前のWindows Serverは「プロセッサ単位」のライセンス体系でしたが、2016以降は物理コア数を元に購入ライセンスを決定する仕組みに変更されました。ここでは、Intel Xeon Silver 4116を2ソケット搭載し合計24コアの物理サーバを例に、よくあるQ&A形式でポイントを押さえましょう。

Q1: 24コアの物理サーバには何コア分のライセンスが必要か?

Windows Server 2019 Standardエディションでは、最低16コア分のライセンス取得が必須です。しかし、実際の物理サーバに24コアが搭載されている場合は、24コア分きちんとライセンスを取得する必要があります。

  • 1つのサーバにつき、すべての物理コアに対してライセンスが必要
  • 最低16コアライセンスが必要だが、物理的に24コアなら24コアをライセンス

Q2: Windows Server 2019 Standardで2つのVMを稼働させられるか?

Windows Server 2019 Standardのライセンスは、1台の物理サーバ上で2つまでのWindows Server仮想マシンを稼働させる権利を含みます。ただし次の点に注意が必要です。

  • 2つの仮想マシンの合計コア数が、ライセンス取得しているコア数を超えないこと
  • 3つ以上の仮想マシンを動かすには追加のライセンスが必要

Windows Serverのライセンス体系の基本

Windows Serverのライセンスは、StandardとDatacenterの2種類を基本とし、さらに小規模サーバ向けのEssentialsエディションなども存在します。StandardエディションとDatacenterエディションの大きな違いは、仮想環境で稼働できるWindows Serverの台数と機能セットです。

Standardエディション

  • 物理サーバの全コアを対象にライセンスを購入
  • 2つのWindows ServerゲストOSを稼働可能
  • 基本的な機能はすべて利用可能(Hyper-V機能含む)

Datacenterエディション

  • 物理サーバの全コアを対象にライセンスを購入
  • 無制限のWindows ServerゲストOSを稼働可能
  • Software-Defined NetworkingやStorage Spaces Directなど、追加機能が利用可能

コア数の正確なカウント方法

ライセンス計算で最も重要なのは、サーバに搭載されている「物理コア数」を把握することです。よく「プロセッサ(ソケット)数とコア数を混同してしまう」「ハイパースレッド(論理プロセッサ)数で計算してしまう」などの誤りが発生します。ライセンスはあくまでも「物理コア数」で算出します。
Intel Xeon Silver 4116の場合、1ソケットあたり12コア、2ソケット合計で24コアを搭載しているため、ライセンスは24コア分が必要というわけです。

表: CPUとライセンスコアの対応例

CPUモデルソケット数1ソケットあたりのコア数合計物理コア数必要ライセンスコア数
Intel Xeon Silver 41162122424
Intel Xeon Gold 61302163232
Intel Xeon Bronze 320416616 (最低16コア)
AMD EPYC 7302P1161616

上記の表のように、物理コア数が16コア未満の場合でも最低16コアのライセンスが必要になります。一方で16コア以上であれば、実際の物理コア数に応じてライセンスコアを取得する必要があります。

仮想環境での注意点: コアの割り当て

Standardエディションでは物理サーバ1台あたり2つのWindows ServerゲストOSを稼働させられるという権利があるものの、仮想マシンに割り当てる仮想CPU(仮想コア)の数と物理コアのライセンス数との対応関係にも注意が必要です。
例えば、24コア分のライセンスを取得しているサーバ上に合計28コアを割り当てたVMを同時に稼働させるような構成にすると、ライセンス不足となる可能性があります。実運用では、Hyper-VマネージャーやVMwareなどでのコア割り当て設定を正確に行い、ライセンスに準拠した形での構成管理を心がけましょう。

CAL(クライアントアクセスライセンス)の考慮

Windows Serverのライセンスには、OSライセンスのほかに「クライアントアクセスライセンス(CAL)」も必要となるケースがあります。

  • ユーザーCAL: サーバにアクセスするユーザー1名ごとに必要
  • デバイスCAL: サーバにアクセスするデバイス1台ごとに必要

ユーザー数やデバイス数が多い場合は、ボリュームライセンスを含めた最適なCALモデルを選択することがコストを抑えるコツです。仮想マシン内のWindows Serverにも同様にCALが必要になるため、導入前に整理しておくとライセンス管理がスムーズに進みます。

追加ライセンスが必要になるケース

もし3つ以上のWindows ServerゲストOSを稼働させたい場合、追加ライセンスが必要になります。この点はよく誤解されがちなので注意しましょう。2つ目のWindows Server仮想マシンまでは1つのStandardエディションライセンスで対応可能ですが、3つ目以降に関しては「もう一度同じ物理サーバに対してコア数分のライセンスを追加で取得する」形となります。Datacenterエディションの場合は無制限のゲストOS権利が付与されるため、仮想マシンの数が多い場合にはDatacenterエディションを検討するのがおすすめです。

Windows Server 2019 StandardとDatacenterの比較

仮想環境の規模や利用シナリオによっては、StandardエディションよりもDatacenterエディションのほうがコストパフォーマンスが高くなるケースがあります。以下は代表的な比較ポイントです。

ライセンス費用

  • Standard: コア数に応じたライセンス費用 + 2VM
  • Datacenter: コア数に応じたライセンス費用 + VM数無制限

小規模な仮想環境や、ほんの数台のVMしか立ち上げる予定がない場合はStandardエディションがコスパに優れます。一方、仮想マシンを大量に稼働させる予定がある、あるいは展開予定のサービスが増えそうな場合は、最初からDatacenterエディションを選んでおいたほうが将来的な追加費用を抑えられる可能性が高いです。

機能面

Datacenterエディションでは、SDN(Software-Defined Networking)やS2D(Storage Spaces Direct)などの機能をフル活用できます。これらはソフトウェアレイヤーでネットワークやストレージを仮想化し、大規模環境での効率的な運用を実現するものです。一般的なファイルサーバやアプリケーションサーバ用途であればStandardエディションでも十分ですが、ソフトウェア定義型インフラを構築したい場合や、Hyper-Vによるクラスタ環境を最大限活用したい場合はDatacenterを選択するメリットが大きいです。

ライセンスの誤解: プロセッサVSコア

Windows Server 2012 R2までのライセンスはCPUソケット単位で計算されていましたが、Windows Server 2016以降は完全に「コアライセンス制」に移行しました。よって、昔の情報を参考にして「ソケット単位でOK」と誤認してしまうとライセンス不足になってしまう恐れがあります。
一方で、ハイパースレッディング(HT)によって見かけ上の論理プロセッサ数が増えている場合でも、物理コア数のみがライセンス計算の対象です。論理コアを含めて計算してしまわないように注意が必要です。

ライセンスの調達方法

Windows Serverを新規購入する際には、大きく分けて以下のような調達方法があります。

OEMライセンス

ハードウェアメーカーからサーバを購入した際に、プリインストールやバンドルされている形で入手するライセンスです。価格が比較的抑えられる一方、ライセンスの移動や再割り当てが制限される場合があります。

ボリュームライセンス

マイクロソフトのボリュームライセンスプログラムを利用して取得する方法です。ソフトウェアアシュアランス(SA)を付加することで常に最新のエディションへアップグレードできる権利が得られたり、ライセンス再割り当てに融通が利きやすいメリットがあります。

SPLA(Service Provider License Agreement)

ホスティング事業者やSaaSベンダー向けのライセンスプログラムです。月額課金制で、利用したライセンス分だけ支払う形になります。自社内のオンプレミスサーバに導入する場合は通常のボリュームライセンスなどが主流で、SPLAは外部へ提供するサービス向けに利用されます。

仮想化プラットフォームとの相性

Windows Server上で仮想化を行う場合、Hyper-Vを使用するのが最もメジャーなパターンですが、VMwareやCitrix XenServerなど他社仮想化ソフトウェアを使用する場合でもライセンスの考え方は基本的に同じです。物理コアの数をベースにライセンスが決まるため、「どの仮想化プラットフォームを使っていてもコア数を把握すること」が最優先事項になります。
ただし、Hyper-Vをメインで利用する場合は、Windows Server Datacenterエディションの「無制限の仮想マシン権利」が魅力的になる傾向があります。大規模な仮想マシン数を計画しているなら、Hyper-V + Datacenterエディションの組み合わせがコスト面でも優位になることが多いです。

運用時のライセンス監査とコンプライアンス

マイクロソフトのライセンス監査は、企業によっては定期的に実施される場合があります。物理コア数や仮想マシンの数が増えた際に、正確にライセンスを追加取得できているかどうかを常に確認しておく必要があります。
特に、以下のタイミングでライセンスの再チェックを行うことが推奨されます。

  • サーバハードウェアをアップグレードしたとき(CPU交換や増設)
  • 仮想マシンを追加したとき
  • エディションを変更したとき(Standard→Datacenterなど)

万一監査でライセンス不足が発覚した場合、追徴金や罰則が科されるリスクがありますので、普段から正しいライセンス管理を心掛けましょう。

Windows Server 2019のメリットと新機能

Windows Server 2019は、2016から進化してハイブリッドクラウド環境やセキュリティ強化、コンテナ機能の強化などが注目されています。例えば「Windows Admin Center」は、直感的なWebベースの管理ツールとして人気が高まっています。
ライセンスを正しく理解し活用すれば、Hyper-Vやストレージレプリカ機能、クラスター環境の構築など、オンプレミスでの柔軟なサーバインフラ運用に大きく寄与してくれます。

Windows Server 2022との比較

既にWindows Server 2022がリリースされていることから、最新機能を求める場合は2022を検討する企業も増えています。ただし、2019と同様にコアライセンスベースである点に変わりはありません。サポート期間や新機能の内容を加味して、導入時のコストと必要要件を検討しましょう。
大規模なDC(データセンター)向けには2022 Datacenter Azure Editionなども存在するため、Azureとの連携を強化したいケースでは新しいバージョンへの移行検討も有効です。

実際の導入フロー例

ここでは、24コアの物理サーバにWindows Server 2019 Standardを導入して、2台の仮想マシンを稼働させるというシナリオを想定した導入フロー例を示します。

1. ハードウェアの選定

物理コア数が24コアの場合、ライセンスのコスト面も考慮しながら必要なCPU性能を確保します。Intel Xeon Silver 4116を2基など、パフォーマンスとコストのバランスを鑑みて選択します。

2. ライセンスの調達

24コア分のStandardライセンスを調達します。OEMかボリュームライセンスかは企業の運用ポリシーや将来的な拡張性を踏まえて決定します。ユーザーCALやデバイスCALの検討も同時に行いましょう。

3. OSインストールと初期設定

物理ホストにWindows Server 2019をインストール後、ネットワーク設定やドメイン参加、ストレージの構成など基本的なサーバ設定を行います。セキュリティパッチや最新の更新プログラムも適用しておきます。

4. Hyper-Vの有効化

「役割と機能の追加」からHyper-Vを有効にします。インストール後に再起動を行い、Hyper-Vマネージャーから仮想スイッチの作成や仮想マシンの作成ができるようになります。

5. 仮想マシンの作成

2つのWindows Server VMを作成し、それぞれ必要なサービスをインストールします。各VMに割り当てるコア数やメモリ量を調整しながら、ライセンスコア数が超過しないように管理します。

6. 運用開始とライセンス管理

本番運用をスタートしたら、CALの使用状況や仮想マシンの追加などを都度チェックし、ライセンスのコンプライアンスを維持します。将来的にVMを増やす予定があるなら、早めにDatacenterエディションへのアップグレードも検討しましょう。

トラブルシューティング: ライセンス違反を防ぐには

不正なライセンス状態を招かないために、以下のようなトラブルシューティングと予防策がおすすめです。

ライセンス認証のステータス確認

サーバのライセンス認証状況は定期的にチェックし、認証に失敗したり有効期限切れなどのメッセージがないかを確認します。「slmgr」コマンドを用いてステータスを確認できるため、スクリプト化して監視ツールなどと連携する事例もあります。

# ライセンス情報の確認例
slmgr /dli
slmgr /dlv

物理サーバや仮想化基盤のリソース監視

仮想マシンが必要以上に多く起動されていないか、リソース監視ツールや仮想化管理ツールを使って常に把握しましょう。適切なライセンス数を超えるVM数が動いてしまっていると、知らず知らずのうちにライセンス違反となる場合があります。

ライセンスガイドラインの定期的な見直し

マイクロソフトの公式ドキュメントや販売代理店からの最新情報を定期的に確認し、自社のライセンスポリシーをアップデートすることが重要です。製品ライフサイクルやサポート範囲の変更がある場合も、早めに把握して対応策を検討するようにしましょう。

まとめ: 正しいライセンスで安心運用を

Windows Server 2019 Standardのコアライセンスは物理コア数に基づいて購入するため、24コアのサーバには24コア分のライセンスが必要となります。これにより、2つのWindows Server仮想マシンを稼働させる権利が得られます。もし3つ以上の仮想マシンを動かす場合は追加ライセンスもしくはDatacenterエディションへの移行を検討し、CALの管理も含めてライセンスコンプライアンスを維持していくことが大切です。
正しいライセンスを取得し、仮想化技術を最大限活用することで、運用コストを最適化しながら柔軟なサーバインフラを実現できます。常に最新のガイドラインをチェックしておくことで、ライセンス違反のリスクを最小限に抑えながら安定したシステムを構築・運用していきましょう。

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