Windows Server 2012 R2からドイツ語版へのインプレースアップグレードを成功させる方法

Windows Serverのバージョンアップは、環境や言語、エディションが合致していないと思わぬトラブルを招きがちです。特にドイツ語版Windows Server 2012 R2から新しいWindows Server 2016や2019 Datacenterへのアップグレードでは、ISOイメージの選択や互換性の確認が重要となります。ここでは、円滑かつ安全にアップグレードを実施するための手順や注意点をわかりやすく解説します。

Windows Server 2012 R2アップグレードの重要性

Windows Server 2012 R2は長らく企業システムの中核を担ってきましたが、サポート終了やセキュリティ要件の高まりにより、より新しいバージョンへの移行が求められています。特に近年ではランサムウェアなどのセキュリティリスクが増加しているため、最新バージョンのWindows Server 2016や2019へ移行するメリットは大きいといえます。

アップグレードを行う理由

  • サポート期間の問題: 古いOSはサポート終了が近づくとセキュリティ更新プログラムを受け取れなくなり、脆弱性が残ったまま運用するリスクが高まります。
  • 新機能・パフォーマンス向上: Windows Server 2016/2019では、コンテナ機能やStorage Spaces Directなどの最新技術が実装され、インフラをより効率的に運用できます。
  • セキュリティ強化: Credential Guardや新たな暗号化機能など、最新のセキュリティ機能が利用できるため、システム全体の安全性が向上します。
  • クラウド統合への柔軟性: Azureなどのクラウドサービスと連携しやすくなり、ハイブリッド環境を構築する際にも恩恵を受けやすくなります。

アップグレード前に確認すべきポイント

アップグレードには事前の準備が欠かせません。ここでは、特に重要となる互換性やサーバー役割の確認ポイントを紹介します。

互換性とサポート期間の確認

Windows Server 2012 R2からWindows Server 2016や2019へのインプレースアップグレードは、基本的にMicrosoftが正式にサポートしています。ただし、以下のようなポイントには注意が必要です。

  • 言語: アップグレード前後で同じ言語(ここではドイツ語)である必要があります。
  • エディション: Datacenter版からDatacenter版へというように、同等のエディション間のアップグレードである必要があります。
  • アーキテクチャ: 64ビット(x64)同士であることが前提です。
  • サポートライフサイクル: アップグレード先のOSがMicrosoftのサポート対象であるかどうかを確認します。例えば、Windows Server 2016のMainstream Supportは終了していますが、Extended Support期間にあるため、脆弱性対応などは継続的に提供されます。Windows Server 2019は比較的新しいため、今後もメインストリームサポートが続きます。

サーバー役割と機能の互換性

アップグレード前には、サーバー上で稼働している役割(AD DS、DNS、DHCP、Hyper-Vなど)や機能(IISや.NET Frameworkなど)が新バージョンと互換性があるかを必ず確認しましょう。特に以下のようなケースでは入念なチェックが必要です。

  • Hyper-Vを利用している場合:仮想マシン構成バージョンの互換性
  • IISを利用している場合:Webサイトやアプリケーションの互換性
  • SQL Serverなどデータベースが稼働している場合:SQL Serverバージョンや互換モード

事前にすべての役割や機能がアップグレード先のOSでサポートされているかを、Microsoft公式ドキュメントやベンダーのリリースノートで確認することが重要です。

ドイツ語版Windows Serverのアップグレード手順

ここからは、ドイツ語版Windows Server 2012 R2 DatacenterをWindows Server 2016もしくは2019 Datacenter(ドイツ語版)へアップグレードする際の具体的な流れを紹介します。

ISOイメージ選択の重要性

アップグレードを実行する際に、もっとも注意しなければならないのはISOイメージの選択です。

  • 言語一致: OSの言語がドイツ語である場合は、インストールメディアもドイツ語版を使用します。英語版や日本語版ではインプレースアップグレードで設定やデータを保持できません。
  • エディション一致: Datacenter版ならDatacenter版のメディアを選択します。StandardやEssentialsでは同じサーバー役割や設定を保持できない可能性が高いです。
  • アーキテクチャ一致: 64ビット(x64)版を使用する必要があります。32ビット版はそもそも存在しないケースが多いですが、念のため確認しましょう。

間違ったエディションや言語のISOを使用した場合

もし仮にエディションや言語が異なるISOイメージを使うと、次のようなトラブルが発生します。

  • セットアップ時に「バージョンが異なるためアップグレードできません」というエラーメッセージが出る
  • インプレースアップグレードが不可能になり、クリーンインストールしか選択できない
  • 言語が異なるため、後から言語パックを導入しても一部システム設定がうまく反映されない

これらを避けるためにも、ダウンロード前にMicrosoftの公式サイトやVolume Licensing Service Centerなどで「German」「Datacenter」「x64」という条件をしっかり確認してください。

インプレースアップグレードの手順

ここでは代表的なインプレースアップグレードの手順を紹介します。サーバー環境によって細部は異なる場合がありますので、必ず公式ドキュメントも合わせてご確認ください。

バックアップの取得

アップグレード前にはシステム全体のバックアップを取得し、万が一失敗してもロールバックできる状態にしておくことが鉄則です。特に下記のバックアップ手段が有効です。

  • System Stateバックアップ:Active Directoryを運用している場合は必須
  • イメージベースのバックアップ:Windows Server Backupツールやサードパーティ製ソフトで取得
  • データベースのバックアップ:SQL Serverなどが稼働している場合は別途DBバックアップ

たとえば、Windows Server Backupを使う場合は以下のようなコマンドでバックアップを取得できます。

wbadmin start backup -backupTarget:D: -allCritical -quiet

上記は「D:」ドライブをバックアップ先とし、システムに必要なすべてのボリュームをバックアップする例です。

セットアップメディアの準備

ISOファイルを取得したら、サーバー上でマウントもしくはUSBメディアを作成して実行できるようにします。たとえば、ISOファイルをマウントする場合はPowerShellで以下のようにコマンドを実行します。

Mount-DiskImage -ImagePath "C:\Path\To\WindowsServer2019_DE_Datacenter.iso"

マウントに成功すると、エクスプローラー上でDVDドライブとして表示されます。セットアップを開始する前に、必ず以下の点を確認しましょう。

  • 余分な外部デバイス(USB機器など)は外しておく
  • ウイルス対策ソフトを一時停止または除外設定にする
  • サーバーに十分なディスク空き容量があるか(最低20GB以上推奨)

インストールウィザードの流れ

ISOをマウントもしくはUSBメディアを挿入し、setup.exeを実行するとウィザードが起動します。主な流れは下記の通りです。

  1. 言語と時刻、キーボード設定を確認: ドイツ語版であることを再確認。
  2. ライセンス認証キーの入力: VL版やOEM版など、ライセンス形態に応じて異なります。
  3. エディションの選択: Datacenter版を選択し、インプレースアップグレードが可能かどうかをウィザードで確認します。
  4. インストールの種類: 「アップグレード(既存のファイル、設定、アプリを保持する)」を選択します。もし選択できない場合は、言語やエディションが合っていない可能性があります。
  5. 互換性レポートの表示: インストール前に問題点(ドライバーの不一致など)が表示される場合は、ここで対策を行います。
  6. インストール開始: インストールには数十分から数時間かかる場合があります。

インストール中にサーバーが複数回再起動するので、業務運用時間外など計画されたメンテナンスウィンドウで作業を行うのが望ましいです。

Windows Server 2016と2019の違い

Windows Server 2012 R2からアップグレードする場合、2016と2019のどちらを選ぶかで迷う方も多いでしょう。それぞれのバージョンで追加・強化された機能は少なくありません。ここでは大まかな違いをまとめます。

機能比較表

以下の表は、代表的な機能やサポート状況の比較例です。

機能・項目Windows Server 2016Windows Server 2019
リリース年2016年2018年
サポート状況メインストリームサポート終了
延長サポート中
メインストリームサポート中
コンテナ機能Windowsコンテナ、Hyper-Vコンテナ対応改善されたコンテナ管理機能
Storage Spaces Direct初期実装パフォーマンス向上、レプリカ機能強化
セキュリティ機能Credential Guard、Just Enough AdministrationWindows Defender ATPの拡張、さらに強化された保護機能
ハイブリッドクラウド連携基本対応Azureとの統合をさらに強化
機械学習・AIとの連携一部の機能においてサポートより幅広い連携が可能

このように、Windows Server 2019の方が機能面・セキュリティ面でより最新の要素が取り入れられています。ただし既存アプリケーションの互換性やライセンス形態など、環境によって最適なバージョンは異なります。運用コストやサポート期間なども含めて総合的に判断しましょう。

アップグレード後の注意点

無事にアップグレードが完了しても、すぐに業務へ本格移行する前に動作確認や追加のメンテナンスを行うことが大切です。

ドライバー更新とセキュリティ対策

アップグレード直後は以下の点を確認・更新します。

  • デバイスドライバーの最新化: NICやRAIDコントローラーなど、サーバーに必要なドライバーをベンダーサイトから入手し、最新状態に保ちましょう。
  • Windows Updateの実行: アップグレード後に最新のパッチを適用することで、セキュリティ強化とバグ修正を行います。
  • ウイルス対策ソフトの再設定: 一時停止していたアンチウイルスの設定や除外リストを再度最適化します。

OS言語や地域設定に関する問題

ドイツ語版OSをアップグレードした場合でも、稀に地域設定や時刻形式などが別の言語に切り替わっていることがあります。以下の項目を再確認しましょう。

  • コントロールパネルの「地域と言語」や「時刻と言語」設定
  • フォーマットやキーボードレイアウト
  • .NET Frameworkアプリケーションでのカルチャ設定

もし一部アプリケーションで表示言語がおかしい場合は、言語パックが混在していないかや、グループポリシーの設定が影響していないかを確認します。

よくある質問(FAQ)

  • Q: 英語版のISOでドイツ語版Serverをアップグレードできませんか?
    A: 言語が異なる場合、インプレースアップグレードは基本的にサポートされず、セットアップ中にブロックされます。ドイツ語版ISOを入手して再度試してください。
  • Q: DatacenterからStandardへのダウングレードはできますか?
    A: インプレースアップグレードではなく、クリーンインストール扱いとなるため、設定やアプリケーションを引き継ぐことは困難です。データをバックアップし、ダウングレード先OSにクリーンインストールする方法を検討してください。
  • Q: Windows Server 2016にアップグレードしたあと、さらに2019へアップグレードできますか?
    A: Windows Server 2016 → 2019へのインプレースアップグレードもサポートされています。ただし、直線的に2012 R2 → 2019へアップグレードすることも可能なため、環境が許すなら一度の手順で2019へ移行する方が手間は少ないでしょう。
  • Q: アプリケーションの互換性テストをどのように行えばいいですか?
    A: まずはテスト環境を用意し、既存のアプリケーションをインストールして動作を確認します。特に.NET FrameworkバージョンやPowerShellスクリプトの互換性、サードパーティ製ツールのライセンス状態などを重点的にチェックしてください。

まとめ

ドイツ語版のWindows Server 2012 R2 DatacenterからWindows Server 2016や2019 Datacenterへインプレースアップグレードを行う際には、下記のポイントを意識しましょう。

  • 言語・エディション・アーキテクチャの一致: ドイツ語版Datacenter(x64)ならドイツ語版Datacenter(x64)を選択する
  • バックアップの徹底: 万が一の失敗に備えてフルバックアップとSystem Stateバックアップを実施
  • サーバー役割の互換性チェック: AD、DNS、IIS、SQL Serverなど、各役割が新OSで動作するか事前に確認
  • アップグレード後の検証: ドライバーやWindows Updateを適用してから本番稼働に移行

これらのステップを踏むことで、トラブルを最小限に抑えたアップグレードを実現できます。サポート期限やセキュリティリスクを考慮すると、早めのタイミングでWindows Server 2016もしくは2019へ移行することが組織の安全性と効率性向上につながるでしょう。特に2019は最新の機能や改善が多く含まれるため、可能であれば直接2019へアップグレードすることをおすすめします。ただしアプリケーションの互換性やライセンスの問題がある場合は、2016を経由するなど段階的な移行も選択肢に含めると良いでしょう。

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