Windows Server 2012 R2から2019へのアップグレード失敗を解消する具体策

日々の業務を支えるWindowsサーバー環境で、バージョンアップは避けて通れない作業ですよね。ところが、インプレースアップグレードに失敗すると、膨大なログや複数の原因が絡み合って原因究明が難航しがちです。この記事では、Windows Server 2012 R2からWindows Server 2019へのアップグレード失敗例と、具体的な対処法をわかりやすく解説していきます。最後まで読めば、エラーの発生要因と対策を一通り把握でき、トラブルを乗り越える自信がきっと高まるはずです。

Windows Server 2012 R2から2019へのインプレースアップグレード失敗の背景

アップグレード作業が正常に完了せず、途中の再起動時にエラーコード「0xC1900101 – 0x20017 (Installation failed during safe OS phase with an error during boot operation)」が表示されてしまうケースは珍しくありません。特にDell PowerEdgeサーバーや仮想マシン環境(VMwareなど)で観測されることが多く、ハードウェアの互換性やドライバの問題、ライセンスの不備、オフライン環境ならではの制約など、多岐にわたる要因が絡み合って失敗につながります。ここでは、まず主な原因を全体像として把握し、その後に具体的な対策を詳細にご紹介します。

発生しやすい典型的な問題

  • エラーコード「0xC1900101 – 0x20017」の表示
  • Setuperr.logでのキー認証エラー、インターネット接続エラーなどの記録
  • エアギャップ環境(インターネット非接続)でのオンライン認証やドライバ更新の制限
  • DISMやSFCによる修復で軽減できる問題と、根本的にドライバなどを更新しなければならない問題の混在

インプレースアップグレードの難しさ

従来の新規インストールとは異なり、インプレースアップグレードではOSコンポーネントや設定、アプリケーションを可能な限り引き継ぎながら上書きインストールを行います。そのため、互換性やライセンス認証、サービスの起動状態など、あらゆる要素がアップグレードを阻害する原因となり得ます。特にWindows Serverのような業務用OSでは、導入されているアプリケーションや管理ツールが多岐にわたり、問題が発生しやすいのです。

原因と解決策1:ハードウェア互換性のチェックとドライバ更新

ハードウェア互換性の確認

アップグレード前には、必ずハードウェアの互換性をチェックしましょう。まずはサーバーメーカーの公式サポートサイト(Dell、HP、Fujitsuなど)で、使用中のサーバーモデルがWindows Server 2019を正式サポートしているかを確認します。BIOSやファームウェアのバージョンが古いままでは、OSの新機能を活かせないばかりかインストール自体が弾かれることもあるため、アップデートをおすすめします。

ドライバ更新の重要性

RAIDコントローラやネットワークアダプタなど、サーバーにとって基幹を成すデバイスドライバは特に重要です。以下の表のように、サーバーモデルごとに提供されている最新ドライバを適用することで、アップグレード失敗のリスクを大きく軽減できます。

サーバーモデル主なドライバ更新対象更新方法
Dell PowerEdge 440BIOS/チップセット/RAID/ネットワークアダプタDellサポートサイトから個別ダウンロード
Dell PowerEdge 740BIOS/チップセット/RAID/ネットワークアダプタDellサポートサイトから個別ダウンロード
他社製サーバーBIOS/チップセット/その他ドライバ各社サポートツールまたはサイトから適用

サーバーに限らず、仮想環境でもVMware Toolsや仮想ハードウェアの互換性設定が古い場合には、最新化が必要となります。例えば「Compatibility Mode」を最新バージョンに引き上げるだけで、インストールが成功に導けるケースもあるので見逃せません。

原因と解決策2:ディスク容量不足への対処

アップグレードに必要な空き容量

Windows Server 2019へのアップグレードには、最低でも32GB以上の空き容量が推奨されます。実際にはログの書き込みや一時ファイルの作成などでさらに必要となる場合も多いので、余裕を持って40~50GB程度の空き領域を確保しておくと安心です。

空き容量不足の解消策

  • 不要なファイルの削除: ログファイルや一時ファイル、不要なユーザーデータを消去
  • 不要なアプリケーションのアンインストール: 仮想マシンならスナップショットを活用して安全に削除を実施
  • 別ドライブへの移動: 大容量のデータを他ドライブに移し、CドライブなどのOS領域を確保

容量が不足していると、アップグレードの途中でファイル展開が失敗し、エラーコードが表示されるケースが多く報告されています。

原因と解決策3:ライセンスキーと認証の不備

製品キーの形態確認

Setuperr.logに「PidGenX function failed」「Product key validation error」などが記録されている場合、ライセンスキーが正しく認証できていない可能性があります。ボリュームライセンスやリテールライセンス、OEMライセンスなどでキーの形式が異なるため、該当するライセンスキーが本当にアップグレード対象のエディションに合っているかをチェックしましょう。

オフライン環境での認証

エアギャップ(オフライン)環境では、インターネット経由の認証が行えません。評価版やライセンスの有効期限がある場合は、電話認証など別の方法が必要です。事前にオフライン認証手順を把握し、必要であれば手動でキーを入力して認証を通す準備を整えておくことが重要です。

原因と解決策4:セキュリティソフトや不要サービスの干渉

サードパーティ製アンチウイルスの影響

一部のセキュリティソフトや監視ツールがインストーラのファイル更新やレジストリアクセスをブロックする場合があります。アップグレード中だけでも停止またはアンインストールしておくと、エラー回避につながることが少なくありません。

不要サービスの無効化

アップグレード作業中は、以下のような余計なサービスが動いていないか確認しておくと良いでしょう。

  1. 不要なサードパーティ製のエージェント(バックアップエージェントなど)
  2. 不要なドライバソフト(試用中のデバイスドライバなど)

作業前に「msconfig」でクリーンブートに近い状態を作るか、スタートアップから関連サービスをすべて停止させておくことで、競合が減り成功率が向上します。

原因と解決策5:インターネット未接続環境(エアギャップ)での注意点

オフラインアップグレードのポイント

ログの中には「インターネット接続が必要」とのエラーが記録されることがありますが、すべての場合でオンライン環境が必須とは限りません。例えばCompatibility Online Serviceを利用できないためにエラーとしてカウントされるだけで、オフラインでもアップグレード可能なケースは多いです。
ただし、事前に最新の更新プログラムやドライバを入手し、アップグレード作業前に適用しておく必要があります。Windows Updateが使えないので、メーカーサイトからオフラインで適用可能なパッケージをダウンロードしておきましょう。

エアギャップ環境でのドライバ適用手順

  1. 別のインターネットに接続できるPCを用意
  2. サーバーメーカーのサイトから対象モデルの最新ドライバをダウンロード
  3. USBメモリなどでオフライン環境に持ち込む
  4. アップグレード前にドライバをインストールして再起動
  5. その後、アップグレードを実施

こうした手順を踏めば、インターネットが使えない環境でも比較的スムーズにアップグレードを行いやすくなります。

原因と解決策6:DISM・SFCの活用とログファイル確認

システムファイル修復コマンド

DISMやSFCは、Windows OSのシステムイメージやファイルを修復するための基本コマンドとして広く利用されています。アップグレードに失敗したら、以下の順序で実行してみることをおすすめします。

# 1. DISMでシステムイメージを確認
DISM /Online /Cleanup-Image /ScanHealth

# 2. DISMで修復
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth

# 3. SFCでファイルチェック
sfc /scannow

実行後に再起動し、もう一度アップグレードを試すことで成功することがあります。すでに一部修復が行われたケースでは、そのまま再挑戦しただけでもスムーズに進む場合があります。

ログファイルから具体的な原因を特定

アップグレードが失敗すると、「setuperr.log」や「setupact.log」にエラー内容が詳細に記録されます。特に以下のディレクトリにあるファイルを要チェックです。

  • %windir%\Panther
  • %windir%\Panther\NewOs

ログ中に「DLLの読み込みエラー」や「レジストリ変更の失敗」が含まれていたら、該当するプログラムやサービスが原因を引き起こしている可能性があります。具体的なファイル名がわかれば、そのファイルをインストールし直すか削除するなどの対処を行うことで解決につながります。

原因と解決策7:アップグレード手順の再確認(2016経由も選択肢)

インストールメディアのチェック

ISOファイルが破損していたり、USBインストールメディアの作成がうまくいっていない可能性があります。ハッシュ値(SHA-256など)を確認し、公式サイトからダウンロードしたものと一致しているかチェックしておきましょう。

Windows Server 2016を経由したアップグレード

公式には2012 R2から2019への直接アップグレードがサポートされていますが、環境によっては2016を挟んだ方が成功率が高い事例も報告されています。

  1. Windows Server 2012 R2 → Windows Server 2016
  2. Windows Server 2016からWindows Server 2019へ

時間と手間はかかりますが、互換性の問題を段階的にクリアしていくアプローチとして有効です。

原因と解決策8:アセスメントツールや新規インストールの検討

Microsoftアセスメント&デプロイメントキット(ADK)の活用

ADKにはWindowsシステムの互換性評価機能が含まれており、オフラインでも利用できるツールが用意されています。これを使うと、どのドライバやサービスがアップグレードを阻害しているかを一括で分析できる可能性があります。

並行稼働でのデータ移行

どうしてもインプレースアップグレードがうまくいかない場合は、新規インストールを行い、既存のデータや設定を移行する方法を検討しましょう。新規インストールでは基本的に互換性の問題が最小化されるため、クリーンな状態で最新OSを導入できます。業務ダウンタイムが許容されない場合は並行稼働サーバーを用意し、最終的に切り替える形を取るのが望ましいです。

まとめ

Windows Server 2012 R2からWindows Server 2019へのインプレースアップグレードが失敗する場合、原因は多岐にわたります。ドライバの互換性やディスク容量、ライセンスキーの不備から、セキュリティソフトの干渉、エアギャップ環境での最新ドライバ適用の難しさまで、アップグレードを阻害する要素はさまざまです。まずはドライバやBIOS、ファームウェアを最新化し、ライセンスやディスク容量を十分に確保した上で、セキュリティ系ソフトを一時的に停止してトライしてみてください。

また、ログファイルの解析はトラブルシューティングに欠かせません。DLLやレジストリ周りの具体的なエラーを把握することで、より的確な対処を打つことができます。オフライン環境ではオンラインチェック関連のエラーが残る場合がありますが、あくまで警告のような扱いで、実際にはオフラインでもアップグレードできるケースが多いです。どうしても解決が難しい場合、Windows Server 2016を経由する、あるいは新規インストールと並行稼働での移行を検討することで、安全かつ確実なバージョンアップを目指してみましょう。

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