Windows Server 2019でRDP接続をしようとした際、ログイン直後にセッションが切断されてしまう現象に遭遇したことはありませんか?本記事では、こうした問題を引き起こすさまざまな原因と、そのトラブルシューティング方法を詳しく解説します。管理者の視点から具体的な対処法を豊富に取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
Windows Server 2019のRDPセッションが即切断される原因
RDP接続が確立できそうな状態なのに、ログインと同時にセッションが落ちてしまうトラブルは、多くの要因が複雑に絡み合って発生します。特にWindows Server 2019の場合、下記のような原因が考えられます。
- ネットワークレベル認証(NLA)の設定不備
NLAを要求する設定となっている場合、クライアントやドメインの設定が合わないと認証段階で失敗し、即座に切断されることがあります。 - グループポリシーの競合
セキュリティポリシーやリモートデスクトップ関連のポリシーが厳しすぎる、または競合していることにより、RDPセッションが許容されない場合があります。 - RDSライセンスの問題
ライセンスサーバーが正常に動作していなかったり、有効期限切れやライセンス枯渇などが原因でセッションを確立できないことがあります。 - リソース不足やシステム負荷
同時接続数の増加やCPU・メモリの逼迫により、RDPセッションが正常に確立できないケースも考えられます。 - VMware固有の設定
VMware Toolsのバージョン問題やネットワークアダプタの設定、仮想スイッチの設定変更など、仮想環境ならではの制約によって通信が切断される可能性があります。
トラブルシューティングの全体的な流れ
RDP関連のトラブルは一見複雑ですが、原因を段階的に絞り込んでいくことが解決の近道になります。以下のような手順で進めると効率的に問題を特定できるでしょう。
- イベントログの確認
- ネットワーク接続の疎通チェック
- サーバーリソース状況の監視
- グループポリシー(特にNLA設定)の確認
- NLAを一時的に無効化して動作テスト
- RDSライセンスや更新プログラムの確認
- VMware特有の設定やアップデートの見直し
以下では、それぞれの手順について詳しく説明します。
イベントログの徹底的な確認
RDPが即座に切断されるような問題に直面したら、まずはイベントログから原因を探るのが定石です。Windows Server 2019にはRDP関連のログが複数存在するので、適切なログを確認することで問題特定の糸口をつかみやすくなります。
主に確認すべきログ
- Microsoft-Windows-RemoteDesktopServices-RdpCoreTS/Operational
RDPコアコンポーネントで発生するエラーや警告が記録されます。切断コードの詳細が出力される場合が多いので、原因追究には必ずチェックしましょう。 - Microsoft → Windows → Terminal-Services-RemoteConnectionManager → Operational
リモート接続マネージャに関わるイベントが記録されます。接続試行時の詳細情報やセッション確立プロセスに関するログを得られます。 - Microsoft → Windows → TerminalServices-LocalSessionManager → Operational
ローカルセッションマネージャが原因の場合、ここにエラーや警告が載ることがあります。 - Windows → セキュリティ
認証失敗や権限不足などが原因の場合、セキュリティログに関連情報が記録される可能性があります。
ログの確認手順
- サーバーに管理者アカウントでログイン
直接コンソールアクセスが難しい場合は、別の管理方法(Hyper-VやVMwareのコンソール機能、またはリモート管理ツール)でログインします。 - イベントビューアを開く
Windows Serverの場合、スタートメニューから「Windows 管理ツール」を選択し、「イベント ビューア」を起動します。 - 該当ログを選択
左ペインから「アプリケーションとサービス ログ」を展開し、上記のRDP関連ログを選択。 - エラーや警告を探す
イベントIDやエラーメッセージを基に検索・絞り込みを行います。 - 原因の切り分け
特定のエラーコード(例:0x104
や0x110
など)があれば、Microsoftのドキュメントや公式フォーラムでコードの意味を調べ、対策を検討します。
ネットワーク接続の疎通チェック
RDP接続が拒否される場合、ネットワーク経路に問題があるケースも少なくありません。クライアントからサーバーへの経路に障害があるのか、あるいはVMware内の仮想ネットワーク構成に問題があるのかを確かめます。
コマンドでの基本的な疎通確認
以下は代表的な疎通確認用コマンドです。
コマンド | 用途 | 例 |
---|---|---|
ping | IPレベルでの疎通確認 | ping <サーバーのIPアドレス> |
tracert | どのルータ(ゲートウェイ)でパケットが失敗しているか確認 | tracert <サーバーのIPアドレス> |
netsh | ネットワーク設定やファイアウォールの設定を詳細に確認 | netsh interface show interface 等 |
また、ファイアウォールやセキュリティソフトの設定変更がなかったか、ルータやスイッチ、DNSの設定に問題がないかも同時にチェックすると良いでしょう。
サーバーリソースの使用状況を監視
RDPセッションを確立する際に、CPUやメモリ、ディスクI/Oが極端に逼迫していると、セッション自体が切断される場合があります。特に、以下の点に留意してください。
- メモリ使用量の監視
サーバーで動作しているアプリケーションがメモリを大量に消費していないか確認します。 - ディスクI/Oのボトルネック
大量のログ出力やバックアッププロセスなどがディスクに負荷をかけ、RDPセッションがまともに動作しなくなる可能性もあります。 - CPUスパイク
一時的にCPU使用率が100%近くまで跳ね上がる状況が頻発していると、RDP接続に影響が出るかもしれません。
グループポリシーとNLA設定の確認
RDPにおけるセキュリティや接続に関連する重要な設定は、グループポリシー(GPO)でコントロールされます。特にNLAが有効になっている状態で、クライアントとサーバーの設定が合致していないと、「ユーザー認証時に切断される」という現象が発生しやすくなります。
リモート デスクトップ サービスに関連するポリシー
GPOのパスとしては、以下のような場所を重点的にチェックしてください。
コンピューターの構成
└ 管理用テンプレート
└ Windows コンポーネント
└ リモート デスクトップ サービス
└ リモート デスクトップ セッション ホスト
└ 接続
└ セキュリティ
- 「ネットワーク レベル認証のみを許可する」ポリシー
これが有効になっている場合、クライアント側がNLAに対応していないとセッション確立に失敗します。 - 「特定のユーザーのみ接続を許可する」ポリシー
「Remote Desktop Users」グループにユーザーが含まれていても、追加で制限がかかっていないかを確認してください。
NLAを一時的に無効化して動作テスト
RDP切断の原因がNLAに関係しているかどうかを切り分けるには、一時的にNLAを無効化する方法が有効です。ただし、NLAを無効にするとセキュリティリスクが高まるため、あくまでテスト目的で実施し、原因特定後は適切に元に戻す必要があります。
NLA無効化の手順例
- サーバーでローカル セキュリティ ポリシーを開く
「スタート」→「Windows 管理ツール」→「ローカル セキュリティ ポリシー」 - [ローカル ポリシー] → [セキュリティ オプション]を選択
- 「ネットワーク セキュリティ: LAN Manager 認証レベル」などの該当項目を確認
ここでNLAが必須になっていないか確認し、NLAに関連する設定を無効化またはダウングレードします。 - グループポリシー側の「NLAのみを許可する」設定を無効化
先述のGPOパスからNLA関連の設定を一時的に無効化。 - サーバーを再起動
設定変更後、再起動しなければ反映されない場合もあるので注意しましょう。 - RDP接続テスト
無効化後にRDP接続が成功する場合は、NLAの設定に起因するトラブルである可能性が高まります。
ライセンス関連の確認
RDSライセンスを使用している環境では、ライセンスサーバーの不具合やライセンス切れが原因でセッション切断が起こることがあります。特に、突然の切断が始まるタイミングでライセンスの有効期限やライセンス数を確認してみてください。
ライセンスの状態を確認するポイント
- ライセンスサーバーの動作状況
ライセンスサーバー(別サーバーで運用している場合も含む)にアクセス可能か、サービスが正常起動しているかをチェックします。 - CAL(クライアントアクセスライセンス)の数
同時接続数が足りていない場合、新たにセッションを開こうとすると拒否されることがあります。 - ライセンス マネージャのエラーログ
ライセンスサーバー側のイベントログにエラーや警告が記録されていないかどうかも重要です。
Windows Updateやセキュリティソフトの影響
Windows Update後やセキュリティソフトの更新後にRDP接続が切断されるようになった場合は、それらの更新プログラムを疑う必要があります。とくに、以下のような対策を検討してください。
- 最近適用したアップデートのロールバック
一時的にロールバックして問題が解消するか確認し、そのうえで再適用する方法を検討します。 - セキュリティソフトのログ確認
リアルタイム監視がリモートデスクトップ関連のプロセスをブロックしていないかを調べましょう。 - ドライバの互換性チェック
デバイスドライバに問題があると、稀にRDP接続が不安定になるケースがあります。
VMware特有の設定やアップデートの注意点
Windows Server 2019をVMware 7.0.3のクラスター上で運用している場合、物理サーバーやHyper-Vとは異なる特有の設定が影響を与えていることも考えられます。
VMware Toolsのバージョン確認
VMware Toolsが古いバージョンのままだと、仮想NICやグラフィックス関連のドライバが正常に更新されず、RDPに影響が出るケースがあります。VMware Toolsの最新化は、ゲストOSの安定動作に直結するため重要です。
仮想NICや仮想スイッチの設定
- NICチーミングの有無
仮想スイッチレベルでチーミングを構成している場合、設定に不整合があるとパケットのやり取りが失敗することがあります。 - ポートセキュリティ
VLANの設定やMACアドレス関連のポートセキュリティが原因で、RDPパケットがドロップされることも考えられます。
スナップショットやクローンとの関連**
スナップショットからの復元やクローン環境で運用している場合、ライセンス情報やネットワーク設定が重複し、RDP接続に問題が発生する可能性があります。もしスナップショットを利用した後から問題が発生している場合は、その影響を疑ってみましょう。
具体的な対処法のまとめ
ここまで紹介したポイントを実際にどのように組み合わせて問題解決を進めるかを整理してみましょう。
- イベントログで切断コードを特定
まずはログ解析によりエラーコードや関連するエラーメッセージを確認。 - ネットワーク経路とファイアウォールをチェック
疎通テストで物理・仮想ネットワーク構成に問題がないかを調べる。 - リソースモニタやタスクマネージャで負荷状況を観察
リソース不足が明確なら、メモリ増設や他アプリの調整を検討。 - グループポリシーとNLAの検証
NLAを一時無効化して切り分け。GPOの設定競合や制限設定を見直す。 - RDSライセンスサーバーとライセンス数の確認
特に突然切断されるようになったタイミングでライセンスの有効期限をチェック。 - Windows Updateやセキュリティソフトの影響を疑う
更新プログラムのロールバックやセキュリティソフト設定の見直しも行う。 - VMware環境の検証
VMware Toolsのバージョンアップ、仮想NICとスイッチの設定確認、スナップショットやクローンの影響調査などを実施。
より安定したRDP運用のために
RDPセッションの安定性を高めるためには、問題が起きてから対処するだけでなく、定期的なメンテナンスや監視が欠かせません。
- 定期的なログレビュー
イベントログやRDSライセンスサーバーのログを定期的にチェックし、異常の兆候を早期に発見する。 - ベストプラクティスに沿ったグループポリシー設定
無闇にポリシーを有効化せず、サーバーの利用目的に合った設定を行う。 - NLAに対応したクライアント使用の徹底
セキュリティを高めるためにも、最新のRDPクライアントと正しい認証方式を使用する。 - VMware環境のアップデート管理
ESXiのパッチやVMware Toolsのバージョン管理を怠らない。 - バックアップとスナップショットの適切な活用
変更前の状態に戻せるようにしておくことで、トラブルシュートの時間を短縮できる。
こうした日々の運用努力が、RDPを安定稼働させる最大の要因になります。
まとめ
Windows Server 2019でRDPセッションが即切断される問題は、ネットワーク構成、グループポリシー、NLA設定、ライセンス管理、そしてVMware環境の諸設定など多岐にわたる要因が考えられます。そのため、トラブルシューティングを行う際は、まずイベントログの詳細情報を確認し、切断コードやエラーの原因を段階的に切り分けていくことが重要です。
また、NLAの一時的な無効化やライセンスのチェック、VMware Toolsの更新、ネットワーク経路の再確認などの対策を総合的に実施することで、問題解決の糸口を見つけやすくなります。運用フェーズでは、定期的な監視と更新プログラムの適切な管理、さらにグループポリシーやライセンスの継続的なメンテナンスを行うことで、RDPの安定稼働を実現できるでしょう。
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