Windows Server 2019を運用していると、Windows UpdateやMicrosoft Edgeのアップデートが正常に完了せず、通信エラーを示すケースがあります。特にエラーコード「0x80072EE2」が表示される場合、ネットワーク関連の設定やWindows Updateコンポーネント自体に問題が潜んでいる可能性が高く、早期の対処が必要です。
Windows UpdateとMicrosoft Edgeの更新に失敗する主な原因
Windows Server 2019でWindows UpdateやMicrosoft Edgeの更新に失敗し、エラーコード0x80072EE2が表示される場合、ネットワーク通信がうまく行われていない、あるいは更新用のコンポーネントが破損していることが考えられます。ここでは、想定される原因と注意点を掘り下げていきます。
ネットワーク接続の問題
Windows UpdateやEdgeのアップデートでは、Microsoftの配布サーバーに対してHTTPSでアクセスが行われます。プロキシやVPN、またはDNS設定が誤っていると、通信が遮断されてしまいアップデートが進まずエラーとなるケースがあります。また、ネットワーク機器(ルーターやファイアウォールなど)の設定によって、特定のポートやプロトコルがブロックされている可能性にも留意が必要です。
Windows Updateコンポーネントの破損
ソフトウェアディストリビューションフォルダやCatroot2フォルダに不整合が生じた場合、Windows Updateが正常に実行されないことがあります。特に長期間アップデートを実行していなかったり、途中でシステムの強制停止などがあったりすると、これらのフォルダ内に破損ファイルが残存しているケースが散見されます。
セキュリティソフトやグループポリシーの干渉
サードパーティ製のアンチウイルスソフトや、企業環境で適用されているグループポリシーがWindows Updateの通信を阻害している可能性があります。セキュリティソフトがリアルタイム保護を行う過程でアップデートファイルのダウンロードをブロックしてしまう、あるいはグループポリシーの設定でWindows Updateに関する特定URLへの通信が制限されている、といったケースが代表的です。
時刻設定のずれ
サーバーの時刻が大幅にずれていると、SSL/TLS通信が正常に確立できないためにダウンロードが失敗します。特にドメイン参加していないスタンドアロン環境や、NTPサーバーの設定が誤っていると、気づかないうちに数分~数時間のずれが生じている場合があります。
トラブルシューティング手順
ここでは、実際にエラーを解決するための具体的な手順を紹介します。下記のステップを順に試行することで、アップデートを再開できる確率が高まります。
ステップ1:ネットワーク設定を見直す
ネットワーク関連のエラーを解決するうえで、まずは通信経路の正しい設定を確認することが肝心です。
プロキシ設定の確認
企業や特定のネットワーク環境では、プロキシサーバーを経由してインターネットにアクセスする場合があります。正しいプロキシ情報が設定されていないと、Microsoft Updateサーバーへ到達できません。以下のコマンドでプロキシ設定を確認・リセットします。
netsh winhttp show proxy
netsh winhttp reset proxy
VPN接続の再確認
VPNを介したアクセスの場合、VPNの設定や接続先のルート設定が原因で更新サーバーに到達できない可能性があります。一時的にVPNを切断し、直接インターネット経由でWindows Updateが行えるか確認するのも有効です。
DNSの設定を変更してみる
DNSサーバーが機能していない、あるいは名前解決に時間がかかっている場合、アップデートが失敗しやすくなります。以下の操作例のように、パブリックDNS(例:8.8.8.8、1.1.1.1など)を一時的に設定して、改善するかをテストします。
- 「サーバーマネージャー」→「ローカルサーバー」からネットワークアダプタのIPv4プロパティを開く
- 「DNSサーバーのアドレス」に任意のパブリックDNSを設定
- 設定後にサーバーを再起動し、Windows UpdateやEdgeの更新を実行してみる
ステップ2:Windows Updateコンポーネントをリセットする
Windows Updateの主要フォルダや関連サービスが破損している場合、定番となるリセット処理を行うことで解決が期待できます。以下のコマンド例を管理者権限のコマンドプロンプトやPowerShellで実行してください。
net stop wuauserv
net stop cryptSvc
net stop bits
net stop msiserver
上記で主要サービスが停止したら、フォルダ名を変更してバックアップを作成します。
ren C:\Windows\SoftwareDistribution SoftwareDistribution.old
ren C:\Windows\System32\catroot2 Catroot2.old
最後にサービスを再開します。
net start wuauserv
net start cryptSvc
net start bits
net start msiserver
この処理により破損したキャッシュファイルや署名情報がリフレッシュされ、新たにダウンロードおよびインストールが行われます。
ステップ3:時刻とタイムゾーン設定をチェックする
サーバーの時刻が正しく同期していない場合、SSL通信が弾かれてしまいます。システム時刻とタイムゾーン、NTPサーバーの設定を再確認し、正しい時刻が設定されているかを確かめてください。Windows Server 2019では、「日付と時刻の設定」から手動で修正する、あるいはPowerShellのSet-Date
コマンドで修正可能です。
ステップ4:セキュリティソフトとファイアウォールの干渉確認
一部のサードパーティ製アンチウイルスソフトやセキュリティポリシーが、Windows UpdateやMicrosoft Edgeのアップデート通信を誤検知している場合があります。以下のような対応を検討してみてください。
- 一時的にリアルタイム保護を無効化した状態で再度アップデートを試す
- Windows Defenderを利用している場合は、Windows UpdateプロセスやEdgeの通信がブロック対象になっていないか設定を見直す
なお、セキュリティリスクを伴うため、オフにした場合は作業が終わり次第、速やかに元の状態に戻すことを忘れないでください。
ステップ5:グループポリシーの影響を確認する
企業環境やドメイン管理下のサーバーでは、グループポリシー(GPO)によってWindows Updateの動作が制限される場合があります。例えば社内WSUSサーバー(Windows Server Update Services)を利用する設定になっていると、Microsoftの公開サーバーに直接アクセスしようとしても遮断されるケースが生じます。以下のようなポイントをチェックしましょう。
gpedit.msc
を開き、[コンピュータの構成] → [管理用テンプレート] → [Windows コンポーネント] → [Windows Update]からポリシー設定を確認する- WSUSサーバーアドレスが誤って設定されている場合や、ポリシーに矛盾がある場合は適切に修正する
- ポリシーを変更した場合は、
gpupdate /force
などで反映し、サーバーを再起動する
ステップ6:Microsoft Edgeの更新手順を再チェック
Windows Server 2019上のEdgeは、ストアアプリではなくスタンドアロンのアップデータを利用するケースもあります。以下の点に注意して更新を試みてください。
- Edgeの「設定」→「バージョン情報」画面からアップデートを手動で実行
- それでも失敗する場合は、Microsoft公式サイトから最新インストーラをダウンロードして再インストールを試す
- Edgeに関連するフォルダやレジストリキーが破損しているときは、完全アンインストールの上で再度クリーンインストールを実施する
ステップ7:コミュニティフォーラムやログを活用する
上記の手順を一通り試しても解決しない場合は、イベントビューアやWindowsUpdate.logなどのログ情報を確認してください。そこからより詳細なエラー原因を突き止められる場合があります。また、Microsoft Q&AやTech Community、さらに日本語コミュニティフォーラムでログ情報を共有することで、同様の事例に遭遇したユーザーからのアドバイスが得られます。
エラーコード別の参考情報
エラーコード「0x80072EE2」はネットワークタイムアウトに関連しますが、Windows UpdateやMicrosoft Edgeの更新では他のエラーコードが出ることもあります。以下のようなテーブルを参考に、トラブルシューティングの幅を広げてください。
エラーコード | 内容 | 主な原因 | 対処方法 |
---|---|---|---|
0x80072EE2 | サーバーへの接続タイムアウト | ネットワーク不良、ファイアウォール、プロキシ設定の不備 | ネットワーク設定を確認し、Updateサービスをリセットする |
0x80070002 | ファイルが見つからない | Windows Updateファイルの欠損や破損 | SoftwareDistributionフォルダのリネーム、DISM実行 |
0x80070422 | サービスが無効 | Windows Updateサービスなどが停止中 | サービスのスタートアップタイプを自動に変更 |
0x8024a105 | 更新ダウンロード失敗 | サーバー側の問題やネットワークの輻輳 | 時間をおいて再試行、手動で更新プログラムを適用 |
高度なトラブルシュート:DISMコマンドの活用
Windows Update関連のファイル破損が考えられる場合、DISM(Deployment Image Servicing and Management)ツールを活用することでシステムイメージを修復できます。以下はよく利用されるコマンド例です。
DISM /Online /Cleanup-image /Scanhealth
DISM /Online /Cleanup-image /Restorehealth
これらのコマンドを実行すると、システムイメージの検証や破損部分の修復が行われ、Windows Updateの問題が解消される可能性があります。完了後はサーバーを再起動し、再度Windows UpdateやMicrosoft Edgeの更新を実行してください。
SFC(システムファイルチェッカー)との併用
DISMによるイメージ修復後に、SFC(System File Checker)を実行することで、不整合が残っているシステムファイルをチェック・修復できます。以下のコマンドを参考にしてください。
sfc /scannow
このコマンドが完了すると、不良セクターがあるファイルや破損ファイルの修復が試みられます。大規模なシステム更新後や長期稼働のサーバーでは、定期的に実施しておくとトラブルを未然に防げます。
予防策とベストプラクティス
エラーを解決した後も、同様の問題を繰り返さないために以下のポイントを押さえて運用することが大切です。
定期的なサーバーメンテナンス
Windows Server 2019は安定性に定評があるものの、定期的なメンテナンスは欠かせません。毎月のパッチ火曜(Patch Tuesday)後など、タイミングを決めて手動でアップデート状況を確認し、問題があれば迅速に対処する習慣をつけましょう。
更新前のバックアップ
Windows UpdateやMicrosoft Edgeの大きなアップデートを適用する前に、システムイメージや重要ファイルのバックアップを取っておくと安心です。特に、Production環境のサーバーであれば、障害発生時にすばやくロールバックできる手段を整えておくことが必須といえます。
ログ監視とイベントビューアの活用
日頃からイベントビューアでSystemログやApplicationログを監視し、アップデート関連のエラーや警告が出ていないかをチェックします。事前に兆候を掴んでおくことで、大規模障害を未然に防止できる可能性が高まります。
サードパーティソフトウェアとの連携
大規模環境では、サードパーティのパッチ管理ソフトや監視ソリューションを導入していることがあります。これらのツールがWindows Updateと競合してしまう場合もあるため、両者の機能が重複する部分を整理し、適切に役割分担して運用しましょう。
まとめ
Windows Server 2019でWindows UpdateやMicrosoft Edgeの更新を行う際、エラーコード0x80072EE2が表示されてしまうときは、まずネットワーク設定とWindows Updateコンポーネントのリセットを実施して原因を切り分けるのが重要です。プロキシやVPN、DNSといったネットワーク関連に問題がないか、サードパーティ製セキュリティソフトやグループポリシーによる通信制限がないか確認しましょう。
それでも解決しない場合は、DISMやSFCによるシステムイメージ修復を試し、サーバーの時刻や更新ログを徹底的に見直してください。最終的にはMicrosoftのコミュニティフォーラムやQ&Aサイトを活用し、ログ情報などを詳しく伝えることで類似事例からの解決策が得られる可能性があります。日々のメンテナンスとバックアップを欠かさずに行い、安定した運用を維持していきましょう。
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