近年、Steam Deckは携帯ゲーム機として高い注目を集めています。公式OSであるSteamOSを使っている人も多いですが、「Windows 10をインストールしてPCゲーム機としての可能性を追求したい」というニーズは根強く存在します。ところが、Windows 10環境下でSteam Deckをコントローラとして認識できず、ゲーム上でキーボードやマウス扱いになってしまうトラブルも報告されています。ここでは、Steam DeckをXInputデバイスとして認識させるための具体的な手順やヒントを、多角的に解説していきます。
Steam DeckにWindows 10を導入する際の注意点
Steam Deckは公式にはLinuxベースのSteamOSが搭載されていますが、ユーザーの中にはWindows 10をインストールして「PCと同様のアプリやゲームを自由に使いたい」と考える方も多いです。とはいえ、Windowsをインストールするうえでは以下のような注意が必要となります。
デュアルブートか単独インストールかの選択
Steam DeckにWindowsを入れる場合、SteamOSとWindowsをデュアルブートさせる方法と、Windowsのみを単独でインストールする方法があります。デュアルブートではSteamOSも引き続き利用できる反面、パーティション設定やブートローダの管理が複雑になる可能性があります。単独インストールはディスク容量をすべてWindowsに割り当てられますが、SteamOSへ戻したい場合に再度セットアップが必要です。自分の用途やストレージ容量を踏まえて判断するとよいでしょう。
公式ドライバの導入
ValveはSteam DeckでWindowsを動かすためのドライバを公式に公開しています。以下のようなドライバがあるため、必ず最新のものを導入するのが鉄則です。
- GPUドライバ(AMDのAPU用)
- オーディオドライバ
- Wi-Fi/Bluetoothドライバ
- APU向けチップセットドライバ
インストール順は大きな問題にはなりにくいですが、グラフィックスドライバを優先的に入れると操作がしやすくなります。インストール後、デバイスマネージャーで不明なデバイスやエラーが表示されていないかを必ずチェックしましょう。
UEFI設定とブートローダ
Steam DeckはUEFIを使用しており、Windows 10のブートディスクを作成する際はUEFIブート対応のUSBメモリが必要です。UEFIの設定画面ではSecure Bootの状態などが関連してくる可能性があるため、Windowsのインストール前後でSecure Bootをオフにするかどうか検討が必要となるケースもあります。
XInput認識の仕組みと問題の背景
Steam DeckでWindows 10を使った際に「XInputとして認識されない」という問題が起きやすいのは、Steam Deckのデバイス構造が単純なゲームパッドにとどまらないからです。Steam Deckにはタッチパッドやトラックパッド、複数の追加ボタンなどが搭載されており、これらがWindows上ではキーボードやマウス相当の入力デバイスとしてマッピングされることがあります。
XInputとは何か
Xbox 360やXbox One、Xbox Series X|Sのコントローラと同様の入力規格がXInputです。以下のような特徴を持ちます。
- MicrosoftがXboxコントローラをWindowsで動作させるために開発したAPI
- ほとんどのPCゲームがデフォルトで対応している
- コントローラのボタン配置や振動などが標準化されている
一方、DirectInputという古いAPIもWindowsには存在します。しかし、多くの最新ゲームがXInputを前提としているため、Steam DeckをXInputデバイスとして認識させることが快適なゲーム体験につながります。
XInputとDirectInputの比較表
以下の表はXInputとDirectInputの違いを簡単にまとめたものです。Steam Deckでコントローラ設定を行う場合、XInputを使用するほうが最新のゲームでの互換性が高くなります。
項目 | XInput | DirectInput |
---|---|---|
提供元 | Microsoft(Xbox 360コントローラ用に開発) | Microsoft(古くから存在するAPI) |
対応コントローラの種類 | Xbox系コントローラ | 幅広いコントローラ |
ボタン認識数 | 最大10ボタン + トリガーなど | コントローラによって差異がある |
振動機能 | 標準対応 | 実装方法が機器によって異なる場合が多い |
最新PCゲームでの採用例 | 非常に多い | 一部の古いゲームで主に採用 |
Steam Deckでの動作想定 | 公式ドライバやエミュレーションで対応可能 | 個別設定が必要になる可能性がある |
Steamクライアントの設定を見直す
Steam DeckでWindowsを立ち上げたあと、真っ先にやってみたいのは「Steamクライアントのコントローラ設定の再確認」です。Steamクライアントの機能である“Steam Input”を利用すれば、複雑なデバイスを仮想的にXInputとしてエミュレートできる場合があります。
Big Pictureモードを活用する
SteamのBig Pictureモードを起動すると、コントローラ操作を前提としたUIに切り替わります。その状態でデバイス設定を行うと、Steam Deckのボタンがどのように認識されているかを視覚的に確認できます。
もし、Big Pictureモードでボタンマッピングが誤っている場合は、そこで再設定を行うことができます。特に、Steam Deckのトラックパッドや背面ボタンなど、一般的なゲームパッドにはない入力系統が多いので、ゲームごとに設定を切り替えるのも一つの手です。
コントローラ設定の一般設定を確認
Steamクライアントでは、「設定」→「コントローラ」→「一般のコントローラ設定」で以下のようなオプションを確認できます。
- Xbox 互換コントローラ構成サポート
- 汎用ゲームパッド構成サポート
- Steamコントローラ構成サポート
- その他の独自コントローラサポート
Steam DeckをXInputとして扱いたい場合、少なくとも「Xbox 互換コントローラ構成サポート」にチェックを入れてみると良いでしょう。また、混乱を避けるために「汎用ゲームパッド構成サポート」をオフにするケースもあります。どの設定が最適かは環境によって異なるため、複数パターンを試すと解決策が見つかることが多いです。
サードパーティソフトを使ったXInputエミュレーション
Steamクライアントだけではうまくいかない場合もあります。その際に頼りになるのがサードパーティソフトです。代表的なものとして「gloSC」や「Handheld Companion」、「reWASD」などが挙げられます。
gloSCの概要と導入手順
gloSC(Global SteamController)は、Steam以外のゲームやアプリでもSteamコントローラの設定を活用できるようにするソフトウェアです。これを利用することで、実質的にSteam DeckをXInputデバイスとして認識させる手がかりが生まれます。
- gloSCのダウンロードとインストール
開発元のGitHubページやコミュニティサイトから入手できます。インストールウィザードに沿って進めれば基本的には簡単にセットアップできます。 - 仮想デバイスのセットアップ
gloSCでは「Steamで管理される仮想コントローラ」経由で入力を渡す仕組みになっています。セットアップ時に「XInputとして認識」させるためのオプションを選択し、Steam Deckの入力を適切に設定します。 - ゲームやアプリへの適用
gloSCを起動後、ゲームやアプリケーションごとにプロファイルを作成していくことで、コントローラ操作やボタン配置を自由にカスタマイズできます。Windowsデスクトップで動くゲームや、Steam外で購入したゲームなどにも有効です。
gloSC設定ファイルの例
以下は架空の例ですが、設定ファイル(インポート用)に近いものです。実際にはgloSCのUI上で設定を行い、必要に応じて内容を修正してください。
{
"name": "My Steam Deck XInput",
"launch": "C:\\Program Files (x86)\\SomeGame\\Game.exe",
"steamController": true,
"xinputEmulation": true,
"overlay": false,
"config": {
"leftTrackpadMode": "joystick",
"rightTrackpadMode": "mouse",
"gyro": "off",
"rumble": true
}
}
上記はイメージであり、実際のオプションや記述形式は異なる場合があります。gloSCのドキュメントを参考に設定を行ってみてください。
Handheld Companionの活用
Handheld CompanionはポータブルPCゲーミングデバイス向けに特化したユーティリティの一つで、Steam DeckのボタンやジャイロをXInputとしてエミュレーションしたり、パフォーマンス管理を行ったりできる機能があります。特に、Steam Inputがうまく動作しないゲームやエミュレータを扱う際に重宝します。
- インストール
こちらもコミュニティやGitHubなどから入手可能です。インストール後は管理者権限での起動が推奨される場合があります。 - 入力マッピング設定
Handheld CompanionのUIを通じてボタンやスティック、トリガー、ジャイロなどを細かく調整できます。プリセットが用意されていることもあるため、Steam Deck向けプリセットがあれば試してみるとよいでしょう。 - パフォーマンス管理との連携
Handheld Companionでは、入力エミュレーションだけでなく、TDP設定やファンコントロール、ディスプレイ解像度の調整など、パフォーマンス面の管理を行う機能もあります。高負荷なゲームを遊ぶときに役立つため、設定を確認してみましょう。
reWASDのメリット
reWASDはコントローラのリマッピングツールとしては非常に高機能で、キーやマウスへの割り当てはもちろん、XInputエミュレーション機能も備えています。他のツールよりも有料版の機能が多彩なケースがありますが、その分細かな設定が可能です。
- 連射機能
一部のゲームではボタン連打が必要な場面もありますが、reWASDの連射機能を使うと指の疲労を軽減できることがあります。 - マクロ機能
一定のコマンド入力を一度にまとめて実行させることが可能になるため、作業効率が上がるだけでなく、ゲームの特定操作を簡略化できる場合があります。 - デュアルショックエミュレーション
XInputだけでなく、PS4などのコントローラとして振る舞うエミュレーション機能もあるため、ゲームの互換性に幅が生まれます。
Windows 10環境でのデバイスマネージャー確認
Windows 10でSteam Deckを使用していると、デバイスマネージャーに複数の入力デバイスが表示されることがあります。誤って無効化していたり、ドライバがうまく読み込まれていないとXInputとして認識されない原因となります。
デバイスマネージャーの開き方
- スタートボタンを右クリック
- 「デバイス マネージャー」を選択
- 「ヒューマンインターフェイスデバイス(HID)」や「サウンド、ビデオ、およびゲーム コントローラ」などをチェック
特に「不明なデバイス」や「!」マークが付いているデバイスがないかを確認してください。もしあれば、そのデバイスのドライバを更新または再インストールする必要があります。
問題があった場合の対処方法
- ドライバの再インストール
デバイスを右クリックして「デバイスのアンインストール」を選び、システムを再起動すると再度ドライバが読み込まれる場合があります。 - 公式ドライバパッケージの再導入
Valve公式またはAMD公式の配布サイトから最新のドライバをダウンロードし、改めてセットアップを実行してみましょう。 - Windows Updateを活用
Windows Update経由で配布されるドライバがある場合、手動でインストールするよりも安定した版であることが多いです。アドバンスオプションからドライバのアップデートを確認してみてください。
特定のゲームでのみコントローラが効かない場合
すべてのゲームが同じようにXInputを扱っているわけではありません。特定のゲームでのみコントローラが反応しないときは、ゲーム内のコントローラ設定や互換性オプションをチェックしてみるのが早道です。
ゲーム内のコントローラ設定の確認
最近のゲームは「Xboxコントローラ対応」や「PSコントローラ対応」「キーボード&マウス専用」など、多岐にわたります。特定のゲームがXboxコントローラに対応していても、何らかの理由でXInputが無効化されているケースも考えられます。
ゲーム内の設定メニューに「コントローラの有効化」オプションや「入力デバイス切り替え」オプションがあれば、オンになっているかを確認してください。
クラウドゲーミングやオンラインゲームの制約
一部のオンラインゲームやクラウドゲーミングプラットフォームでは、チート対策などの理由から外部ツールのエミュレーションをブロックしている場合があります。そのようなゲームでは、Steam Deckであっても公式対応外のドライバやツールを使うと正常に動作しないことがあります。
その他のヒント・トラブルシューティング
Windows 10上でSteam Deckをコントローラとして使うには、上記の方法だけでは解決しないケースもあります。ここでは追加のヒントやアイデアをいくつか紹介します。
BIOSやファームウェアの更新
Steam Deck自体のBIOSやファームウェアが古いバージョンのままだと、Windowsでの認識に影響を及ぼす可能性があります。公式から配布されているアップデートを実行してからWindowsをインストールする、またはWindowsインストール後にSteamOSへ一時的に戻してファームウェアを更新してみるなども検討しましょう。
USB周辺機器の取り外し
別途マウスやキーボード、外部ストレージ、USBハブなどを同時に接続していると、Windows側が優先的にキーボード&マウスとして認識してしまい、XInputデバイスが適切に割り当てられないことがあります。問題を切り分けるために、余分なUSB機器を取り外した状態でテストしてみてください。
ゲームによってはDirectInputをサポートしている
XInputにこだわらなくても、DirectInputを使ってゲームがプレイできる場合があります。特にレトロゲームやエミュレーター系のソフトであれば、DirectInputの設定を見直すほうが手軽なケースも少なくありません。
ただし、DirectInputではボタン数が限られたり、振動機能がうまく動作しないなどの制約があるので注意してください。
仮想コントローラの競合に注意
gloSCやreWASDなど、仮想コントローラを複数同時に走らせてしまうと、ゲームが複数のコントローラを同時に検出して挙動がおかしくなる場合があります。ツールを併用するときは、どちらか一方のみアクティブにするように設定を工夫しましょう。
公式サポートとコミュニティの活用
Steam DeckにWindowsをインストールした場合、正式なサポート範囲外となる部分も多く、自己責任の要素が強いです。しかし、公式からWindows向けのドライバは配布されているので、そちらの更新情報を定期的に確認することをおすすめします。また、下記も活用すると最新情報を得やすいでしょう。
- Valve公式フォーラム: Steam Deckに関するトピックが頻繁に更新されます。
- RedditのSteam Deckコミュニティ: Windowsを導入しているユーザーの実体験やカスタマイズ情報が集まっています。
- Discordサーバー: 有志が運営するコミュニティサーバーでリアルタイムに質問・回答が得られることもあります。
まとめ
Steam DeckでWindows 10を使用し、コントローラをXInputとして認識させたい場合は、以下のようにステップを踏むとスムーズです。
- 公式ドライバの導入: ValveやAMDが提供するSteam Deck向けWindowsドライバを確実にインストール
- Steam Inputの確認: Big Pictureモードやコントローラの一般設定でDeckの入力をXbox互換として設定
- サードパーティツールの活用: gloSCやHandheld Companion、reWASDなどで仮想コントローラを作成し、XInputとしてエミュレーション
- デバイスマネージャーでの確認: 不明デバイスやエラーを解消し、競合や無効化がないか確認
- ゲームごとの設定調整: 特定のゲームではコントローラ設定が独自になっているケースもあるため、個別設定を見直す
こうした手順を踏むことで、Steam DeckをXInputコントローラとして活用でき、Xboxコントローラに近い感覚でWindowsゲームを楽しめる可能性が高まります。自分のプレイスタイルやゲームライブラリに合わせて最適な設定を見つけ、快適にプレイしましょう。
コメント