Surfaceシリーズを使っていると、いざ再インストールをする場面に出くわすことがあります。特にSurface Pro 7では、Microsoft公式の「Media Creation Tool」でダウンロードする汎用のWindows 10イメージと、同じくMicrosoft公式の「Surface Recovery Image」から入手できるSurface専用イメージの2種類が用意されています。しかし「一体どちらを選べばよいのか?」「容量も違うけど、何がどう変わるの?」といった疑問を感じることもあるでしょう。本記事では、そんな疑問を解消しながら、再インストールを安心して進められるためのポイントをわかりやすく解説していきます。
Windows 10の再インストールにおける基本的な考え方
Windows 10のOS再インストールは、システムに起因するトラブルを解消したり、動作が重くなった環境をリフレッシュしたりするのに効果的です。特にSurface Pro 7のような2in1デバイスでは、タッチパネルやペン入力など、標準のPCと比べて専用ドライバやファームウェアへの依存度が高くなりがちです。
再インストールを行う際は、大きく分けて以下の2種類のイメージを使うパターンが考えられます。
- Media Creation Tool版(約5GB)
Microsoftのサイトから誰でも入手できる汎用的なWindows 10のインストールメディアです。Surfaceだけでなく、他社のPCにも共通して使える仕様になっています。 - Surface Recovery Image版(約9GB)
Microsoft公式サイトの「Surfaceのリカバリ イメージ」ページからSurfaceモデル別にダウンロード可能な専用イメージです。Surfaceに特化したドライバやツールなどがまとめて含まれています。
両者のイメージに優劣を単純に付けることはできませんが、「より確実にSurfaceの機能をフルに発揮させたいなら専用イメージ」「最低限のWindows環境でOKなら汎用イメージでも可」といった違いがポイントになります。次のセクションから、より詳細な比較やメリット・デメリットを整理していきましょう。
「Media Creation Tool」版と「Surface Recovery Image」版の違い
Windows 10の再インストールに使われる、2つのイメージの違いは大きく3つの観点から整理できます。
1. 容量の違い
- Media Creation Tool版 (約5GB程度)
一般的なWindows 10イメージを含んだダウンロードファイルです。PCによってはネットワーク帯域やストレージの都合上、ダウンロードが短時間で済むというメリットを感じるかもしれません。 - Surface Recovery Image版 (約9GB程度)
Surface固有のドライバやアプリケーション、さらにはファームウェアなどがあらかじめ含まれているため、ファイルサイズが大きくなりがちです。ダウンロードには時間と安定したネット環境が必要になります。
2. 同梱されるドライバやファームウェアの違い
- 汎用イメージ(Media Creation Tool版)
基本的なWindowsドライバは入っていますが、Surface特有のドライバは含まれていません。再インストール後、Windows Updateを通じて追加ドライバをダウンロード・インストールする必要があります。 - Surface専用イメージ(Surface Recovery Image版)
タッチパネルやペン入力機能、Surface専用アクセサリ、あるいはサーマル管理やバッテリー管理などのファームウェアがセットになっています。再インストール直後からSurfaceの独自機能をフル活用できる点が最大の利点です。
3. 実際のセットアップ手順における違い
- Media Creation Tool版を使ったセットアップ
- Media Creation Toolを使ってUSBメモリにWindows 10のインストールメディアを作成
- Surface Pro 7をUSBブートしてクリーンインストール
- インストール後にWindows Update経由でドライバやファームウェアを導入
- 必要なアプリケーションや設定を再度カスタマイズ
- Surface Recovery Image版を使ったセットアップ
- MicrosoftのSurface公式サイトからリカバリイメージ(約9GB)をダウンロード
- 指定ツールまたは手順に従い、USBメモリにリカバリメディアを作成
- Surface Pro 7をUSBブートしてリカバリ開始
- 再インストール直後からSurfaceドライバや独自アプリがほぼ整った状態
下記の表で、両者を簡単に比較してみましょう。
Media Creation Tool版 | Surface Recovery Image版 | |
---|---|---|
容量 | 約5GB | 約9GB |
専用ドライバ | 別途取得 | 同梱済み |
インストール後 | Windows Update必須 | すぐにSurface機能利用可 |
ダウンロード先 | Microsoft公式一般配布 | Surface公式リカバリサイト |
想定利用シーン | 軽量・汎用が欲しい | 完全にSurface特化 |
「Media Creation Tool」版のメリット・デメリット
ここでは、汎用イメージであるMedia Creation Tool版を利用する場合の長所と短所をまとめます。
メリット
- ファイルサイズが比較的小さい
約5GB程度と、Surface専用イメージに比べるとダウンロード時間やストレージの負担が抑えられます。 - 汎用性が高い
同じUSBメディアを使って、他のPCにWindows 10をクリーンインストールすることも可能です。Surfaceに限定されず、幅広い環境で利用できます。 - アップデートでカバーできる
再インストール後にWindows Updateを走らせれば、必要なドライバや更新プログラムは自動的に適用される場合が多く、Surfaceであっても通常のWindows 10環境と大きく変わりません。
デメリット
- Surface固有のセットアップにやや時間がかかる
専用ドライバが含まれていないため、タッチパネルやカメラ、ペンの機能などが初期状態では正しく動作しない可能性があります。インストール後にWindows Update、あるいは手動でドライバを入手する手間が増えます。 - トラブルシューティングが複雑化することがある
まれにWindows Updateやドライバのインストールがうまく動作しないケースがあります。その場合は、手動でSurfaceのサイトからドライバを一括ダウンロードし、個別に適用しなければなりません。 - Surface独自のリカバリツールは省略される
Surfaceアプリケーション(Surfaceアプリやサポートツールなど)が入っていないため、公式の最適化ツールやファームウェア更新手順を別途実行する必要があります。
「Surface Recovery Image」版のメリット・デメリット
では、Surfaceモデル別に提供されるリカバリイメージの場合はどうでしょうか。
メリット
- Surfaceドライバやファームウェアが最初から含まれている
再インストール後、すぐにペンやタッチパネルなどが自然に動作するため、初期設定がスムーズです。Windows Updateに頼らずとも最適なドライバが適用されています。 - デバイス本来の性能を最大限に発揮しやすい
MicrosoftがSurface向けに最適化したドライバを一括で提供してくれるので、パフォーマンスや省電力設計がより安定しやすい傾向があります。 - トラブルシューティング時にも安心
スタート地点が公式の状態に近いため、OSやドライバに起因する問題が生じたときも原因を特定しやすく、サポートを受けやすいです。サーフェスサポートチームに相談する場合も標準的な環境であるため説明がスムーズに進みます。
デメリット
- ダウンロードサイズが大きい
約9GBもあるため、ネットワーク環境によってはダウンロード完了までに時間がかかる、あるいは途中で中断されるリスクもあります。 - 他のPCには使えない
Surface専用なので、他のメーカー製PCや別機種にこのイメージを流用することは基本的にできません。 - 作成にも手間がかかる場合がある
ダウンロードしたイメージを特定のツールや手順に沿ってUSBメモリへ展開し、ブートメディアを作る必要があります。ファイルが大きいゆえに失敗するとやり直しに時間がかかる場合もあります。
選択時に考慮すべきポイント
では、どちらを使うか迷った場合に注目すべきポイントを列挙してみましょう。
1. 今の環境に大きな不具合はあるか
もし現在のWindows 10環境で大きな不具合が出ておらず、何らかの理由でOS再インストールを行うだけなら、Media Creation Tool版でも問題なく復元できる可能性が高いでしょう。ただし、深刻なドライバトラブルや謎のエラーが発生している場合は、最初からSurfaceの純正環境に戻したほうが安心です。
2. ネット回線やUSBメモリの容量
大容量ファイルをダウンロードできる時間や回線速度、そしてUSBメモリの容量(最低でも16GBは推奨)などを考慮してください。特にSurface Recovery Imageを入手する場合はダウンロードが長時間に及ぶこともあるため、時間に余裕がないときはトラブルになりかねません。
3. 専用機能の重要度
Surfaceペンを頻繁に使う、ペン入力の筆圧調整やバッテリー管理、ファームウェアの最新化などを最初から安定して行いたい場合は、Surface Recovery Imageのほうが余計な設定をせずにすみます。逆に言えば「ペンはほとんど使わないし、そこまでSurfaceの独自機能にこだわらない」という人であれば、Media Creation Tool版でも過不足はないかもしれません。
4. 自己解決力や再設定の手間を許容できるか
Media Creation Tool版を選ぶと、クリーンインストール後に追加でドライバ更新や設定を行う必要があります。これらの作業に慣れている人にとってはそこまで苦になりませんが、もし初心者だったり、ITリテラシーに自信がない場合は最初からSurface Recovery Imageを使う方が安心です。
実践的なセットアップの流れ
ここでは、両者のイメージを使った場合のセットアップの流れを、もう少し具体的なステップで示します。
Media Creation Tool版を使う場合
- Microsoft公式サイトから「Windows 10 メディア作成ツール (Media Creation Tool)」をダウンロード
- USBメモリ(8GB以上推奨)をPCに挿し、Media Creation Toolを実行してブート可能なインストールメディアを作成
- Surface Pro 7の電源を切り、USBメモリを差し込む
- 電源ボタンを押しながら音量を下げるボタンを長押しし、USBブートでセットアップ開始
- ウィザードに従ってWindows 10をクリーンインストール
- インストール後、Windows Updateを実行し、Surface向けのドライバやファームウェアを導入
- 必要に応じてSurfaceアプリのインストールや細かな設定を行う
Windows Updateが動かない場合の対処
まれにWindows Updateが正常に働かない場合は、Microsoftの公式サイトやSurfaceダウンロードセンターから個別にドライバパッケージを取得し、手動で更新を進めてください。
例:
SurfacePro7_Win10_18362_xxxx.msi
のようなMSIファイルが提供されていることがあります。これをダブルクリックしてインストールすれば、主要なドライバが一括で導入できます。
Surface Recovery Image版を使う場合
- Microsoft公式の「Surface リカバリー イメージのダウンロード」ページにアクセス
- 自身のSurfaceモデル(ここではSurface Pro 7)を選び、約9GBのリカバリイメージをダウンロード
- 指定手順に従い、USBメモリ(16GB以上推奨)にリカバリイメージを展開
- 電源を切ったSurface Pro 7にUSBメモリを差し込み、音量を下げるボタンを押しながら電源を入れ、UEFIブートメニューからUSBドライブを選択
- Surface Recovery Imageが起動したらウィザードに従いリカバリを進める
- リカバリ後はSurface固有ドライバやファームウェアがすでに適用された状態なので、必要なアカウント設定やアプリの再インストールを行うだけで完了
専用アプリやツールの存在
Surface Recovery Imageには、Surfaceアプリ(ペンやタッチ入力の設定などを管理する専用アプリ)や、一部ユーティリティが含まれていることがあります。再インストール直後から、ペン入力の調整やSurface Dock関連の設定がスムーズに進むため、セットアップ後のトラブルを最小限にできます。
Q&A:よくある疑問に回答
Q1. すでにMedia Creation Tool版で動作しているが、不具合はなさそう。入れ直す必要はある?
A. 不具合がなく、ペンやタッチ機能なども正常に動作しているのであれば、そのまま利用を続ける形で問題ありません。ただ、今後クリーンインストールする機会があれば、Surface Recovery Imageを試してみる価値はあります。
Q2. Surface Recovery Image版でもWindows Updateは必要?
A. はい、必要です。専用ドライバやファームウェアが含まれているとはいえ、常に最新のセキュリティパッチや更新プログラムを取得するためにWindows Updateは定期的に実行してください。
Q3. 他のメーカーPCにもSurface Recovery Imageは使える?
A. 使えません。Surface向けに最適化された構成が前提のイメージなので、他のメーカー製PCや別のSurface世代でも互換性はありません。
Q4. ダウンロードできない・失敗してしまう場合の対策は?
A. 大容量ファイルを安定して落とすには、ネット環境が重要です。有線LANを使う、あるいは深夜帯など回線が混雑しないタイミングを狙うと成功率が上がります。ダウンロードマネージャーを活用して途中で切れたときにレジュームできるようにするのも一手です。
まとめ:Media Creation Tool版とSurface Recovery Image版の上手な使い分け
Surface Pro 7を再インストールする際は、「汎用性を重視するか」「Surface特化の環境を重視するか」で選択肢が分かれます。
- とりあえずWindows 10を導入したい、ファイルサイズを抑えたい人
→ Media Creation Tool版で十分。ドライバ類はWindows Updateを使えば、特に大きな問題もなく導入できるケースが多いです。 - Surface独自の機能を最初からフルに使いたい、トラブルを極力避けたい人
→ Surface Recovery Image版がオススメ。再インストール後すぐにペン入力やカメラなどがスムーズに機能します。
再インストールが完了したあとは、最新のWindows Updateを行い、セキュリティパッチや追加ドライバを導入していくことが大切です。特にSurface固有のファームウェア更新が滞ると、思わぬ不具合に繋がる可能性もあるので注意しましょう。最終的には、利用者のニーズやネットワーク環境、ITスキルなどに応じて最適なイメージを選ぶことがポイントです。あなたのSurfaceライフが、より快適になりますように。
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