PixInsightで幻想的な星雲写真を仕上げようと意気込み、ワクワクしながら起動を試みたところ、思いがけず「ucrtbase.dll」に関連するエラーに悩まされている方は多いのではないでしょうか。私も同じ問題に直面し、一時は夜空の撮影スケジュールが台無しになりかけました。しかし、いくつかの対策を実践してみると、意外とスムーズに解決へと近づくことがわかったのです。そこでこの記事では、同じトラブルを抱える方に向けて、長年のWindows環境での画像処理経験を交えながら「ucrtbase.dll」エラーの対処法をご紹介いたします。
「ucrtbase.dll」エラーとは何か
PixInsightを起動しようとしたときに突如発生する「ucrtbase.dll」エラーは、Windowsのシステムライブラリに含まれる重要ファイルであるucrtbase.dllが何らかの理由で正常に動作していないことを意味します。Windowsの標準機能やソフトウェアが多用するファイルであるため、少しでも不整合が起こるとPixInsightなど特定のアプリケーションでエラーが出ることがあります。
Windows 11へのアップデートとの関係
Windows 10やWindows 11のバージョンアップ(21H2から23H2へなど)を行った際に、関連するランタイムやシステムファイルの更新が正常に行われなかったケースが報告されています。例えばアップデート中に一時的な通信エラーやシステム上の競合が起こると、結果として「ucrtbase.dll」に不具合が生じてしまうことがあるのです。
PixInsight自体のバージョン不整合
PixInsightは頻繁にアップデートを重ねるソフトウェアであり、新しいバージョンでは最新のVisual C++ランタイムやWindows機能に依存する部分がある場合があります。古いバージョンを使っていると、OS側の変更と合わずにエラーが出る可能性もあるため注意が必要です。
エラーが起きる主な原因
「ucrtbase.dll」エラーの原因は多岐にわたります。一般的に考えられる要因を把握しておくことで、対策を選択するときに役立ちます。
システムファイルの破損
Windowsのアップデート中に問題が発生したり、ストレージにエラーがある場合、システムファイルが破損することがあります。特にucrtbase.dllのようなシステム共通ファイルが壊れると、多数のアプリケーションで同様のクラッシュが起こりやすくなります。
Visual C++ランタイムの不整合
PixInsightはVisual C++のランタイムライブラリを活用していますが、ライブラリのバージョンがあっていない、もしくは一部が壊れている状態ではエラーが出やすくなります。これはPixInsightだけでなく、他の高度な画像処理ソフトでも同様に見られる現象です。
他ソフトウェアとの競合
アンチウイルスソフトやシステム監視ツールなど、常駐型のソフトウェアがdllファイルの読み込みに干渉することがあります。一見関係なさそうなバックグラウンドプログラムが、PixInsightの起動を妨げている可能性を否定できません。
実際の対処法ステップ
ここからは具体的にどのようなステップを踏んでエラーを解消していくか、順を追って解説します。実際に私がトラブルシューティングした時の経験談も織り交ぜてご紹介いたします。
1. PixInsightの更新・再インストール
PixInsight側が古いバージョンのランタイムを参照しているケースもあるため、まずはPixInsight自体を最新バージョンにアップデートしてみてください。アップデートで解決しない場合は、アンインストール→再インストールを行うとファイルの破損が修復されることがあります。

私が最初に手を打ったのはPixInsightの最新版への更新でした。アップデートログを確認すると、Windows環境での不具合修正が含まれているバージョンもあったため、これはやっておいて損はないと思います。
2. システムファイルチェック (SFC) の実行
システムファイルが破損しているかどうかを確認・修復するには、管理者権限のコマンドプロンプトで「sfc /scannow」を実行します。入力ミス(例えばsfc/scannowのようにスペースを入れ忘れる等)があると正しく動作しないので注意が必要です。
SFCの実行手順
1. スタートメニューで「cmd」あるいは「コマンドプロンプト」と入力
2. 管理者として実行を選択
3. 表示されたコマンドプロンプトでsfc /scannowを入力
4. 修復が終わるまでPCを動かさず待機
SFC実行で発見されるケース
実は私の環境でもsfc /scannowを走らせたところ、一部のシステムファイルで不整合が見つかったと表示されました。その後、再起動してPixInsightを起動してみるとエラーの出方が変わり、最終的にはVisual C++ランタイムの再インストールを行うことで解決しました。
3. Windows Updateの確認
PixInsightがWindowsに強く依存している関係上、Windows自体に未適用の更新プログラムがあるとエラーが発生しやすくなります。以下の手順で最新状態になっているか確認してください。
Windows Updateの確認手順
1. スタートメニューから「設定」を開く
2. 「Windows Update」を選択
3. 「更新プログラムのチェック」をクリック
4. 見つかったアップデートがある場合は適用した後、PCを再起動
4. Microsoft Visual C++ 再頒布可能パッケージの再インストール
PixInsightはVisual C++ランタイムを利用して動作しています。これらランタイムが破損していると、ucrtbase.dllに限らず、さまざまなエラーが起こる可能性が高くなります。
Visual C++ランタイムの入れ替え手順
1. コントロールパネル → プログラム → プログラムと機能から、Microsoft Visual C++を含む項目をアンインストール
2. Microsoft公式サイトで最新のVisual C++ 再頒布可能パッケージをダウンロード
3. インストール後、PCを再起動してからPixInsightを試す



私の場合、Visual C++ 2015~2019の統合再頒布パッケージを再インストールしただけで大幅に安定度が増した経験があります。意外と見落としがちですが、相性問題が解消されるのを実感しました。
5. DISMツールの実行
DISMはWindowsイメージを修復するツールです。コマンドプロンプト(管理者権限)で以下のコマンドを実行します。
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
これを実行すると、破損しているコンポーネントをオンラインで取得して修復を試みます。特にWindows Updateを繰り返している環境や長期間クリーンインストールをしていないPCでは効果が期待できます。
6. ハードディスクのエラーチェック (chkdsk)
ストレージに物理的・論理的なエラーがあると、PixInsight実行時に読み込むファイルが正しく読まれずにエラーが発生する可能性があります。
chkdsk /fの実行手順
1. コマンドプロンプト(管理者権限)を開く
2. chkdsk /f と入力
3. 次回再起動時にディスクチェックが実行されるため、指示に従いPCを再起動する
この処理でハードディスクの一部に問題があった場合は修復が試みられます。ただし実行時は時間がかかる場合があるため、余裕のあるタイミングで行うのがおすすめです。
7. クリーンブートの実行
クリーンブートとは、Windowsを最小限のサービスとドライバで起動させる方法です。msconfigを使用してMicrosoft以外のサービスを停止して起動することで、常駐プログラムの干渉があるかどうかを切り分けられます。
クリーンブート手順
1. Windowsキー + R を押して「msconfig」と入力し「OK」をクリック
2. 「サービス」タブを選び「Microsoftのサービスを隠す」にチェックを入れてから「すべて無効」をクリック
3. 「スタートアップ」タブへ移動して「タスクマネージャーを開く」をクリックし、不要なスタートアップを無効
4. PCを再起動
クリーンブート状態でPixInsightを起動してエラーが出なければ、常駐プログラムのどれかが原因として絞り込むことができます。
具体的なトラブル事例と解決方法
ここでは、私が実際に遭遇したり、周囲のPixInsight愛好家から聞いたトラブル事例を示します。
事例1: SFCコマンドの入力ミスが原因
PixInsightを起動すると必ずucrtbase.dll関連のエラーが出る状況で、最初はSFCコマンドを打ちこんでも「認識されないコマンド」などのエラーが表示され、修復できずにいました。よく確認してみると「sfc/scannow」のようにスペースがなく、誤った入力をしていたのです。
解決への流れ
1. sfc /scannowとスペースを入れて正確に実行
2. システムファイルの破損を修復
3. 再起動後にPixInsightを起動したところ、エラーが消失
このように、ちょっとした入力の違いによって修復プロセスがうまく行かないケースは意外と多いので注意しましょう。
事例2: Visual C++ランタイムの古いバージョンが邪魔していた
Visual C++ 2010や2012など、古いランタイムをインストールしたまま放置している環境でエラーに直面したケースがあります。
解決への流れ
1. コントロールパネルからすべてのVisual C++ランタイムをいったんアンインストール
2. 新しいVisual C++ 2015-2022再頒布可能パッケージをインストール
3. Windowsを再起動してPixInsightを立ち上げるとエラーが出なくなった
複数のバージョンが並存するのは通常問題ありませんが、一部ファイルが破損している場合やランタイムのアップデート手順がうまくいっていない場合には、この方法が効果的です。



PixInsightだけでなく、3DCGソフトや動画編集ツールなど、他のソフトでもランタイム関連のエラーが起こっていたので、ランタイムを整理することでまとめて解決できました。
エラー対策チェックリスト
以下にエラー対策を一覧にまとめました。ご自身の環境で該当する作業を進めるときにチェックとしてご活用ください。
項目 | 内容 | 実施状況 |
---|---|---|
PixInsightのバージョン確認 | 最新バージョンにアップデート | 未/済 |
SFCコマンドの実行 | 管理者権限でsfc /scannow | 未/済 |
Windows Update | 21H2→23H2など最新へ更新 | 未/済 |
Visual C++ランタイム | 旧版アンインストール後に最新再インストール | 未/済 |
DISMツール | DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth | 未/済 |
chkdsk /f | 再起動時のディスクチェック | 未/済 |
クリーンブート | msconfigでMicrosoft以外のサービス停止 | 未/済 |
それでも解決しない場合の最終手段
上記の対策をすべて試してもなおエラーが解決しない場合には、より抜本的なアプローチが必要かもしれません。
Windowsの上書きインストール (修復インストール)
Windows環境を初期化せずに必要ファイルを再配置する方法です。データを保持しながらOSのファイルのみを再構成するため、PixInsightだけでなく他のソフトウェアの動作トラブルもまとめて改善されることがあります。
メリットと注意点
1. データを残したままシステム修復を行える
2. インストールメディアが必要(Windowsのバージョンに合ったもの)
3. インストール時に十分な空き容量が求められる
クリーンインストール
本当に最終手段としては、Windowsそのものをクリーンインストールして環境を一から構築する方法が挙げられます。手間と時間はかかりますが、一度システム全体をリフレッシュすれば、これまでの不具合がすべて解決する可能性が高いです。



私も一度、デュアルブート環境の片方でWindowsを初期化してPixInsightを試したことがあります。時間はかかったものの、エラーがまったく発生しなくなり、快適な天体画像処理が復活して大変ありがたかったです。
まとめと今後の展望
「ucrtbase.dll」エラーが発生すると、せっかくの天体画像処理がストップしてしまい、貴重な観測データも活かせなくなるため、大きなストレスを感じるものです。しかし実際には、PixInsight自身やWindowsのアップデート、ランタイムの入れ替え、SFC・DISM・chkdskといった基本的な修復ツールを活用するだけでも解消されるケースが多々あります。
もし今回ご紹介した対処法のいずれかが成功の鍵となったなら、今後もWindowsアップデート前後に同様のメンテナンスを行ってみてください。特にPixInsightのバージョンアップに合わせてVisual C++ランタイムを見直す習慣をつけると、エラーに悩まされるリスクを下げることができるでしょう。
天体写真のさらなるクオリティ向上へ
PixInsightは奥が深いソフトウェアで、ダークフレームやフラットフレームの補正、星雲や銀河の微細なディテール強調など、多彩な機能が満載です。エラーに煩わされることなく使いこなせるようになれば、撮影機材のスペック以上の成果を引き出すことも夢ではありません。
システムトラブルの対処も大切ですが、本来は楽しいはずの画像処理に没頭することこそ、PixInsightの真骨頂です。ぜひ本記事の内容を参考に、トラブルを最小限に抑えつつ、じっくりと美しい星空を描き出してください。



私もエラー解決後に見た星雲のディテールがあまりに美しく、トラブルを乗り越えた甲斐があったと心から思いました。ぜひ皆さんも安定稼働したPixInsightを楽しんでください。
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