コンピュータで動画や音声を再生するとき、「VLC Media Player」は軽快に動く便利なプレーヤーとして多くのユーザーから選ばれています。しかし、メディアプレーヤーは外部のファイルを開く機会が多いだけに、セキュリティ面を意識しておきたいもの。ここではWindows向けVLCの安全性や注意点、専門家の見解などをまとめてご紹介します。
VLC Media Playerとは?
VLC Media Player(以下、VLC)は、フランスの非営利団体VideoLANによって開発されているオープンソースソフトウェアです。主な特徴は以下のとおりです。
– 幅広い動画・音声形式を再生できる高い互換性
– 広告やスパイウェアが含まれないクリーンなインストール
– 無料かつオープンソースであり、多数の開発者が関与
– Windows、macOS、Linuxなど複数のOSに対応
Windows版VLCの人気の理由
Windows環境でのVLCは、特に「軽快に動く」「公式から直接ダウンロードできる」「豊富な設定が可能」といった理由から愛用者が非常に多いです。公式サイトをはじめ、Microsoft Store経由でも入手できるため、インストールの敷居も低いという特徴があります。
公式VLCはマルウェアやスパイウェアが含まれている?
まず気になるのは、公式版VLCにマルウェアやスパイウェアの類が仕込まれていないかどうかです。結論からいえば、以下の点を踏まえて「公式サイト(またはMicrosoft Store)から入手したVLC Media Player本体は安全」と考えられています。
– VideoLAN(VLCの開発元)は非営利団体であり、広告やユーザー追跡は一切行わない方針
– オープンソースでソースコードが世界中の開発者に監査されている
– 過去に誤検出の事例はあったが、VirusTotalなどのテストでは正規インストーラからウイルスは検出されていない

「無料ソフトであるがゆえに怪しいのでは?」と感じる人もいるかもしれませんが、VLCの場合は完全にオープンソースです。VideoLANも透明性を重視しており、公式のVLCにスパイウェアやマルウェアが混入する余地はほぼないと考えられています。
過去に発見されたVLCの脆弱性と対応状況
VLCも非常に多機能なソフトウェアであるため、過去には脆弱性がいくつか報告されています。しかし、その都度迅速に修正パッチが提供され、ユーザーが最新版にアップデートすればリスクを回避できるよう対策が行われてきました。主な脆弱性の事例と修正内容は以下の表にまとめられています。
時期 | 内容 | 対応バージョン |
---|---|---|
2019年 | MKVファイル再生時にリモートコード実行される恐れなど計33件 | VLC 3.0.7で一挙修正 |
2019年8月 | 細工されたMKV再生によるPC乗っ取りリスク | VLC 3.0.8で対応 |
2022年11月 | VNCモジュールのバッファオーバーフロー(CVE-2022-41325) | VLC 3.0.18で修正 |
2023年11月 | 悪意あるMMSストリーム再生時のクラッシュ・任意コード実行の恐れ | VLC 3.0.20で対策 |
こうした脆弱性報告はVLCに限らず多くのソフトウェアで起こりうるものですが、VLCの開発元であるVideoLANはセキュリティバグの受付窓口を用意し、修正内容を「Security Bulletin」として公開しながらパッチを出し続けています。
つまり、**発見された脆弱性は素早く修正され、最新バージョンを使っていれば問題ない**状態に保たれているわけです。
最新バージョンで講じられているセキュリティ対策
執筆時点(2025年3月)でのWindows版の最新安定版はVLC 3.0.21です。既知の脆弱性はすべて修正されており、さらに以下のようなセキュリティ対策が特徴です。
OS標準セキュリティ機能(ASLR/DEP)の活用
VLCはWindowsのASLR(アドレス空間配置のランダム化)やDEP(データ実行防止)といった仕組みを利用しており、仮に脆弱性を攻撃されてもコード実行の難易度を高める効果があります。
迅速なパッチ提供と定期的アップデート
VideoLANは脆弱性報告を受けると短期間で修正版をリリースし、「VLC Security Bulletin」で周知します。ユーザーは自動更新や手動更新で常に最新版を導入すれば、安全を保ちやすくなります。
デジタル署名による改ざん対策
Windows版の公式インストーラにはVideoLANによるデジタル署名が付与されており、正規品であることが証明されています。また、Microsoft Store版ではストアの審査を通した形でアプリが提供され、サンドボックス実行によるセキュリティ面の利点もあります。



最新バージョンは大規模なバグ報奨金プログラムなどを通じて多数の脆弱性を修正してきた積み重ねがあります。アップデートが継続される限り、ユーザーにとっても安心ですね。
公式サイト以外から入手するリスク
VLC自体が安全でも、非公式サイトや不審なダウンロードリンクを介して入手すると、次のようなリスクが懸念されます。
こうした事例は海外だけでなく、日本国内に向けても報告があります。公式以外のダウンロード先を使ってしまうと、意図せず怪しいプログラムを同時にインストールさせられるリスクが高まります。
またP2Pや非公式のリポジトリ経由も同様で、改ざん版が出回っている可能性がゼロではありません。
正規サイトの確認方法
– 公式サイトは「https://www.videolan.org/」ドメインで始まるURLです。
– Microsoft Store版を利用する場合は、Microsoft公式のStoreアプリ内で検索し、「VideoLAN」が発行元になっているかを確認します。
– ダウンロード前後にセキュリティソフトでファイルをスキャンしておくと、万が一の場合でも検出できる可能性が高まります。



「公式サイト以外は全部危険」というわけではありませんが、リスクを最小化するならVideoLAN公式かMicrosoft Storeが無難です。数多くの偽サイトや広告に惑わされないよう注意しましょう。
セキュリティ専門家やユーザーコミュニティからの評価
専門家の見解
多くのITセキュリティ専門家は「VLCは過去に脆弱性報告があるが、迅速に修正されてきたため安全性は高い」と評価しています。特にオープンソースである点から「悪意あるコードが混入しにくい」といったメリットが強調されることも多いです。
ユーザーコミュニティの声
ユーザーコミュニティでも、「公式版を使っている限りウイルス感染の事例は聞かない」「古いバージョンを放置しないように気をつければOK」といった声が大半です。世界中で利用されている実績は非常に大きく、定番プレーヤーとしての信頼も厚いです。
Windows OSとの互換性と安全なアップデート手順
Windowsとの高い互換性
VLCはWindows XP SP3以降からWindows 10/11まで幅広く動作し、ファイルの関連付けやジャンプリストなどWindows特有の機能にも対応しています。Windows 11環境でも問題なく使用できるため、既定の動画プレーヤーとして設定するユーザーも少なくありません。
安全なアップデート手順
1. 自動更新機能の利用
VLCは起動時などに新バージョンがあると通知を行います。通知が来たら、指示に従ってインストールを進めるだけで簡単に最新状態へアップデート可能です。
2. 公式サイトやMicrosoft Storeから更新
自動更新が動作しない場合や手動で最新インストーラを使いたい場合は、VideoLAN公式サイト(https://www.videolan.org/)またはMicrosoft Storeを利用しましょう。正規のデジタル署名を確認してからインストールすれば、改ざんを避けられます。
3. 古いバージョンは使い続けない
古いVLCには修正済みの脆弱性が残っている恐れがあります。ネットに接続して使うのであれば、常に最新の安定版VLCにアップデートすることが推奨されます。



アップデート前は、念のため再生中のファイルを閉じておくと安心です。上書きインストールの場合、基本的にユーザー設定や再生リストなどは維持されますが、不安な方は一度アンインストール後に再インストールしてもOKです。
まとめ
VLC Media Player(Windows版)は、公式から入手し適切にアップデートを行っていれば、マルウェアやスパイウェアの心配なく安全に利用できるソフトウェアです。過去に報告された脆弱性も、開発チームの迅速なパッチ提供によって対応されてきました。
ただし、古いバージョンを使い続けたり、非公式の入手経路を利用すると危険が増す点には注意が必要です。特に偽サイトや検索エンジンの広告を悪用したマルウェア配布には十分気をつけましょう。
Windows OSと高い互換性を持つうえ、オープンソースである利点も大きいVLCは、世界中のセキュリティ専門家やユーザーコミュニティから好意的に評価されています。正規のVLCを常に最新の状態に保ち、不審なファイルを開くときには慎重を期すことで、安心したメディア再生環境を手に入れましょう。
参考資料
- VideoLAN公式サイト – VLCメディアプレーヤー製品情報
https://www.videolan.org/vlc/index.wa.html - VideoLAN公式「Security」ページ
https://www.videolan.org/security/ - PortSwigger/Daily Swig – 「VLC developer debunks reports of ‘critical security issue’」
- Threatpost – 「VLC Media Player Allows Desktop Takeover Via Malicious Video Files」
- BleepingComputer – 「Bing is Warning that the VLC Media Player Site is Unsafe」
- BleepingComputer – 「Chinese hackers abuse VLC Media Player to launch malware loader」
- BleepingComputer – 「Hackers push malware via Google search ads for VLC…」
- ZDNet – 「Companies bundling spyware, adware with open-source media player」
- NotebookCheck – 「PSA: Update your copy of VLC…」
- Movaviブログ – 「Is VLC Safe? Discover the Truth about VLC’s Safety」
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