Windows 11 24H2の既知の不具合まとめと安全なアップデート戦略

Windows 11の2024年後半アップデート「バージョン24H2」は、魅力的な新機能やUIの改良が注目を集める一方、互換性やゲーム関連の不具合が相次いで報告されています。企業や個人問わず、多くのユーザーがトラブルに直面しており、セキュリティ面と利便性を両立するには対策や情報収集が欠かせません。この記事では、主だった既知の問題や回避策、企業向けに知っておきたい影響について詳しくご紹介します。

1. 一般的な不具合の概要

Windows 11 バージョン24H2のリリース直後から、複数のアプリやドライバーとの互換性に起因する報告が増加しています。具体的には、試験監督用ブラウザ(Safe Exam Browser)の旧バージョンが起動不能、壁紙カスタマイズアプリが正常に動作しないなど、業務や日常利用に支障が出るケースも確認されています。さらに、特定の古いIntelオーディオドライバーやゲームのアンチチートドライバーによるブルースクリーンエラー(システムクラッシュ)の報告もあるため、安易にアップデートを進めるとトラブルに巻き込まれるリスクが高まっています。

Windows 11 24H2にはアプリ起動不能やブルースクリーンなど、大きなトラブルをもたらす不具合が存在する可能性があります。

主なトラブルの原因

  • サードパーティ製ソフト・アプリとの互換性不足
  • 古いデバイスドライバーの不具合
  • システムUIまわりでのクラッシュ(スタートメニュー、タスクバーなど)
  • ゲーミング機能(Auto HDRなど)が原因のクラッシュやフリーズ

不具合報告の多いアプリ・ドライバーの例

アプリ/ドライバー症状対処例
Safe Exam Browser (3.7以前)起動不能最新版へのアップデート
壁紙系カスタマイズアプリ起動エラーや機能停止アプリの24H2対応版導入
Intel Smart Sound Technology (SST)ブルースクリーンエラードライバーの更新
Easy Anti-Cheat (旧版)ゲーム起動時のブルースクリーンドライバーやゲームの最新化

こうした不具合が残る間は、Microsoft側で「セーフガード保留(safeguard hold)」という措置が取られ、問題のある環境には24H2が配信されません。ある意味、アップデート前にトラブルを回避できる仕組みですが、意図せず更新できない事態に戸惑うユーザーも多いようです。

2. 特定の機能の問題

スタートメニューやタスクバーが応答しない

スタートメニューが開かずに「StartMenuExperienceHost.exe」がクラッシュする問題は、2024年12月の累積アップデートを適用した24H2環境で多発していると報告されています。イベントログ上ではVisual C++ランタイム(MSVCP_140_APP.dll)のエラーが記録され、ランタイムの古いバージョンが原因の一つとされます。また、アプリロッカーによる組み込みアプリのブロックや、旧Citrix Virtual Delivery Agentの競合も原因として確認されています。

スタートメニューが開かない不具合は業務への影響が大きく、早期復旧が求められます。

回避策・対応例

  • Visual C++ランタイムの最新版を導入する
  • アプリロッカーポリシーの見直しやスタートメニュー関連アプリの許可
  • 古いCitrix VDAや互換性のない管理ソフトを削除/最新化
  • StartAllBackなどスタートメニュー改造ツールは最新バージョンを適用

スタートメニュー改造ツール(StartAllBack)のアップグレードブロック

Windows 11 24H2のインサイダープレビュー時点で、古いStartAllBackがインストールされているとアップデートがブロックされる事例が発生しました。公式にはセキュリティ上の懸念からブロックしており、StartAllBackのバージョン3.8以降を利用すれば24H2でも問題なく動作します。

StartAllBack開発元の対応が早く、最新版では24H2の新機能と競合しなくなりました。

タスクバー関連の細かなUI不具合

検索ボックスがアイコンだけになってしまう表示バグや、自動的に隠す設定時の見た目不備など、比較的小さな不具合も報告されています。こうした点はプレビューパッチや累積アップデートで順次修正されているため、最新パッチを適用することが推奨されます。

3. ゲームに関する問題

Auto HDRの不具合

Windows 11ではSDRゲームをHDR映像に変換するAuto HDR機能が注目されていますが、24H2適用後に一部のゲームで色調崩れやフリーズが発生。Call of DutyシリーズやAssassin’s Creedシリーズなど、人気タイトルを中心に起動直後に落ちる、映像が乱れるなどの報告が相次ぎました。Microsoftは問題を認識し、Auto HDRを有効にしている環境への24H2配信を一時停止する措置を取っています。

Auto HDRを有効にしている環境で、ゲームが真っ黒な画面でフリーズするといった報告が後を絶ちません。

ただし2025年2月に配信された修正パッチ(KB5051987)によって、Auto HDRを原因とするクラッシュや表示不具合は解消されたとされています。今後は累積アップデートの適用が重要です。

Ubisoft社のゲームタイトルのクラッシュ

『スターウォーズ:アウトローズ』や『アバター:フロンティアーズ オブ パンドラ』、さらに『アサシンクリード』シリーズの一部タイトルで、ロード画面やゲームプレイ中にフリーズする不具合が確認されました。Microsoftはセーフガード保留を適用するとともに、Ubisoft側も一時的な修正パッチと恒久対策を順次配信。2025年1月16日にはアップデート保留が解除され、多くの端末で問題なくプレイできるようになっています。

Easy Anti-Cheatの問題

古いバージョンのEasy Anti-Cheatドライバーを利用していると、24H2環境でゲーム起動時にブルースクリーンが起きるケースがあります。Microsoftはアップデートをブロックし、ユーザー側にはゲームクライアントやドライバーの最新版への更新を促している状況です。

ゲーミングユーザーにとって、OSやドライバーのアップデートはパフォーマンス向上に繋がる反面、こうした不具合リスクを抱えています。安定性を重視するなら、ゲーム開発元やMicrosoft公式の修正情報をこまめにチェックしましょう。

4. アップデートによる互換性の問題

バージョン24H2で深刻化しているのが、サードパーティ製ソフトウェアやドライバーの非対応です。Microsoftは公表されている各事例に対し、該当PCへ自動的にアップデートが提供されないよう管理しています。以下は代表的な例です。

セーフガード保留により、一部の環境ではあえてアップデートがストップされるので、早めに原因を特定し対処することで無駄なトラブルを回避できます。

Safe Exam Browser(試験監督ブラウザ)の不具合

大学や企業のオンライン試験で使われるSafe Exam Browserは、バージョン3.7以前だと24H2で起動不能になります。そのためMicrosoftは旧版を使っているシステムにはアップデートを保留し、最新版への移行を促しています。

壁紙カスタマイズアプリの不具合

Wallpaper Engineなど複数の壁紙アプリで、24H2アップデート後に機能停止する事例が報告されています。これについても互換性ホールドが適用されており、アプリ側で24H2対応版をリリースすることで解決が進んでいます。

Intel Smart Sound Technology (SST) ドライバー

Intel SSTドライバーを搭載するデバイスでは、アップデート後にブルースクリーンエラーが生じる可能性があります。Intelの修正ドライバーが提供されるまでセーフガード保留となるため、利用者は不具合修正版の登場を待つ必要があります。

カメラ・オーディオデバイス関連

一部の内蔵カメラで、オブジェクト認識や顔認証機能が24H2と競合し、Windows Helloやカメラアプリが応答しなくなる症状が確認されています。また、Dirac Audio搭載のノートPCではスピーカーやBluetooth音声が出なくなる重大な不具合も発生し、対象デバイスはアップデート保留となっています。

指紋センサーが無反応に

スリープ解除やロック解除時にWindows Hello指紋認証が反応しなくなる問題が一部環境で報告されています。Microsoftは該当デバイスへの配信をストップしており、将来的にデバイスメーカーから提供される修正ファームウェアで解決される見込みです。

ASUS製ノートPCでアップデート失敗

ASUS X415KA、X515KAなど特定モデルで、24H2へのアップデート途中にブルースクリーンとなる事例がありました。2024年末にASUSが修正BIOSを配布し、その後は正常にインストールが完了するようになっています。Windows Updateで配信されるBIOS更新(重大な更新)を手動で適用する必要があるケースもあるため要注意です。

オフラインインストールメディア利用時の更新停止バグ

2024年10月または11月のセキュリティ更新を組み込んだインストールメディアで24H2をクリーンインストールすると、その後のWindows Updateが一切受信できなくなる深刻な不具合が確認されています。現状、根本的な修正はなく、再インストール以外に対処法がありません。企業でカスタムイメージを利用する場合はバージョンに十分注意しましょう。

5. 企業向けの影響

大規模なPC環境を管理する企業や教育機関では、OSアップデートが業務効率やセキュリティに大きく関わります。24H2で判明している不具合を踏まえ、以下のような注意が必要です。

一斉にOSアップデートを行うと、試験システムや業務ソフトの停止が発生し、想定外のコストや生産性低下を招くリスクがあります。

セーフガード保留によるアップデート遅延

Safe Exam Browserや指紋センサーなど、既知問題があるデバイスには24H2が提供されません。企業内で一部端末のみアップデートが進み、バージョンの不統一による管理コスト増加に悩むケースが報告されています。

スタートメニューやタスクバーの不具合と業務アプリ

スタートメニューのクラッシュや操作不能はIT管理部門にとって大きな懸念事項です。古いVisual C++ランタイムが原因だった事例では、PowerShellスクリプトでランタイムを最新化して一斉に問題を解決した企業もあります。また、古いCitrix Virtual Apps & Desktopsのクライアントを削除して解決に至ったケースもあり、企業が使う業務ソフトとの相互作用がトラブルの誘因になり得ます。

アップデートの検証期間を確保する重要性

24H2リリース後、ユーザーコミュニティやMicrosoftフォーラムでは「不具合報告が多いため慎重に検証すべき」との声が目立ちました。特にWindows 10から直接アップグレードする場合は、互換性ホールドの影響により計画通りに展開が進まない可能性もあります。安定性重視なら、検証用端末でテストを実施し、問題が解決してから本番環境へ展開するのが望ましいでしょう。

リリースヘルスダッシュボードとSafeguard ID

Microsoft公式のリリースヘルス情報では、各不具合に「Safeguard ID」が割り当てられ、企業の管理者はIntuneやWindows Update for Businessレポートで自社端末の状態を確認できます。例えば、Dirac Audio不具合には「ID:54283088」、Ubisoftゲームのクラッシュには「ID:54437462」が付与されており、どの端末がどの問題でブロック中かを把握しやすくなっています。

このSafeguard IDを使えば、対象ドライバーの更新やアプリ修正が済んだ段階でブロック解除し、スムーズにアップデートを再開できます。企業のIT担当者はぜひ活用してみてください。

6. 回避策や修正方法

Microsoftの修正パッチ適用

月例パッチや累積アップデートは、ゲーム関連のAuto HDR不具合や一部アプリのクラッシュなどを段階的に修正しています。特に2025年2月のKB5051987ではAuto HDR問題が大幅に解消されました。常に最新の更新プログラムを適用し、不具合修正状況を確認しましょう。

BIOS/デバイスドライバの更新

ASUS製ノートPCのBSOD問題がBIOSアップデートで解決されたように、ハードウェア由来の不具合は各メーカーの最新ファームウェアやドライバーで改善されることが多いです。Windows Updateで配信される場合もありますが、重要更新扱いでも手動適用が必要になるケースがあるため、メーカーのサポートサイトを随時チェックしてください。

設定変更による暫定的な回避

どうしても不具合が解決しない場合、問題の機能をオフにすることで症状を回避できる場合があります。例えばAuto HDRが原因の場合は機能を無効化し、HDRを必要としないゲームプレイを選ぶことでフリーズを防止できます。タイムゾーン変更が不可になるバグも、旧コントロールパネルを使えば設定可能です。

ソフトウェアのアップデートや削除

StartAllBackのように、旧バージョンがブロック対象になるスタートメニュー改造ツールは最新の3.8以降へアップデートしてください。また、レガシーソフトや仮想デスクトップ関連の旧バージョンが問題を引き起こす場合は、一時的に削除/無効化すると安定する可能性があります。Easy Anti-Cheatなども最新ドライバーへの更新が必須です。

再インストールが必要な場合

オフラインインストールメディアの不具合など、一部の現象は現状再インストールしか解決策がないとMicrosoftも公式に案内しています。企業環境で巻き込まれると大きな負担となりますが、現時点ではやむを得ない対応と割り切るほかありません。

24H2には新デザインのシステムトレイや、強化されたセキュリティ機能など、メリットも多数存在します。正しくアップデートできれば最新機能を享受しつつ快適に使えるでしょう。

まとめ

Windows 11 バージョン24H2は、魅力的な機能強化がある反面、リリース直後から数多くの不具合が報告される“波乱含み”のアップデートとなりました。特にセーフガード保留によるアップデートブロックや、スタートメニュー・ゲーム関連でのクラッシュはユーザーにとって大きな懸念材料です。

一方で、Microsoftとハードウェア・ソフトウェア各社は不具合解消に向けたパッチの提供やドライバー更新を進めており、多くの問題は時間の経過とともに解決へ向かっています。最新の更新プログラムをこまめに適用し、互換性情報を確認しつつアップデート計画を立てれば、安定かつセキュアにWindows 11 24H2を活用できるでしょう。

最終的には、企業ユーザーであればリリースヘルスダッシュボードやSafeguard IDなどを活用し、段階的な検証とアップデート展開を行うことが重要です。個人ユーザーも不用意なアップデートやドライバー放置を避け、問題があれば迅速に回避策を講じましょう。Windows 11 24H2の新機能を最大限生かすためにも、今回ご紹介した既知不具合と対策をぜひ参考にしてください。

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