日常業務の中で必須といえる“印刷機能”が、Windows 11(24H2)へのアップグレード直後に使えなくなってしまったら、とても困ってしまいますよね。私も以前、社内の一斉移行プロジェクトに携わった際、「え、こんなはずじゃ……」と思わず声を上げる事態を何度か経験しました。本記事では、同じようなトラブルを未然に防ぎ、スムーズなアップグレードを行うためのポイントや具体的な解決策をまとめてご紹介します。
Windows 10からWindows 11への移行事情
企業ではWindows 10(22H2)からWindows 11(24H2)へのアップグレードが進んできましたが、プリンター周りで突如としてアプリケーションごと落ちてしまう現象が報告されています。具体的には、ChromeやEdge、メモ帳などで印刷ボタンを押下した瞬間にクラッシュし、印刷ができないケースです。これは、業務を大きく停滞させる懸念があるため多くの企業が頭を悩ませる問題です。
ここでは、私が携わったプロジェクトやユーザーからの相談事例をもとに、なぜこのような問題が起きるのか、その解決策はどのようなものかについて掘り下げていきます。
なぜOSアップグレードで印刷トラブルが起きるのか
印刷機能に関しては、OSの中核部分やドライバーが深くかかわっていることが多く、Windows 11のように大型アップデートが実施されると、従来の設定やドライバーとの互換性が保てない状況が生じることがあります。とくに企業では、長年にわたって使い続けているソフトウェアやカスタマイズしたツールが多数あるため、いずれかの常駐プログラムがOSの変更に追随できず、不具合を引き起こすことが珍しくありません。
複数のアプリで落ちる理由
「Chromeだけが落ちる」「Edgeだけが落ちる」といったアプリ固有の不具合ならば、アプリ側の問題と限定しやすいものです。しかし、本件のようにChromeだけでなくEdgeやメモ帳、さらには複合機ドライバーを使ったPDF変換までもが影響を受けている場合、OSレベルで何らかのサービスや常駐ツールが印刷制御を阻害している可能性が高いのです。
私が参画した社内システム移行プロジェクトでも、あらゆる印刷アプリが一斉にエラーを吐くという状況がありました。当初は「ドライバーのインストールミスか?」と疑っていたのですが、いくらドライバーを入れ直しても直らない。結局、裏で動いていたツールがOSのリソースを横取りしていたのが原因と判明したんです。
実際に発生している症状の具体例
ここでは、実際に報告されている印刷障害の例を少しだけ整理してみましょう。
アプリケーション名 | 症状 |
---|---|
Chrome | 印刷ボタンを押すとクラッシュ。印刷不可 |
Edge | 同様にクラッシュ、または印刷ジョブが消えてしまう |
メモ帳 | クラッシュ、ウィンドウがフリーズ |
Office 365 | 再インストールで改善する場合も。再インストールしないと印刷不可 |
Microsoft Print to PDF | PDF化しようとしてもクラッシュ |
一方で「Firefoxであれば印刷できる」というケースも報告されており、ブラウザ単体の不具合ではないことがうかがえます。ドライバーやOSの内部の問題ではなく、特定のツール(常駐ソフト)が原因の可能性が浮上してくるわけです。
テスト印刷だけは成功するのに、実際の印刷ができない謎
これもよくある現象で、「テスト印刷は通るのに、業務アプリからの印刷が不可」という不思議な状況です。Windowsの「設定」画面やプリンターのプロパティから行うテスト印刷が成功している場合、プリンター自体とOSの基本機能に問題はないと考えてよいでしょう。すると、障害を引き起こしているのはアプリケーションレイヤーに深く潜む何らかの要因になります。
私の知人の会社でも、テスト印刷が通るのにブラウザから印刷したときだけ突如フリーズするという話を聞きました。結局、常駐系ツールをオフにしたらピタリと治まったそうです。
対策として試したこと・確認事項の詳細
ここからは、実際にどのような対策が試されたのかを整理してみます。特に印刷周りの不具合は複合機メーカーのドライバー、Microsoft側の対応状況、そして社内標準で使われているツールなど複数の要素が絡み合うため、段階的に切り分けを進めるのがポイントになります。
複合機ドライバーの再インストール
Windows 11対応のドライバーをインストールし直すことで問題解決する場合があります。ただし、今回のケースのように再インストールでは直らないこともあり、この時点でドライバーだけが原因ではないと推測できます。
ブラウザやOfficeアプリなどの再インストール
ChromeやOffice 365を再インストールしても根本解決しなかった、という事例があります。Office 365は再インストールした場合のみ印刷できるようになったという話もありますが、その他のアプリ(Chrome、Edge、メモ帳など)は依然として印刷エラーが続いたということから、複数アプリを横断する不具合であるという可能性が濃厚です。
Firefoxで印刷が通る理由
Firefoxの場合は、内部で利用する印刷サービスや処理のフローがChromeやEdgeと異なる点も多く、それゆえに問題を回避できるケースがあると考えられます。同様に、ほかのレガシーアプリなどで印刷が正常に働く場合もあります。
クリーンブートトラブルシューティング
Windowsをクリーンブート状態、つまり必要最低限のサービスだけで起動させ、一つひとつ常駐ソフトを有効化して原因を特定していく方法です。手間はかかりますが、こうした切り分け作業で「ログ収集ツール」が印刷エラーを引き起こしていたとわかったケースもあります。大規模な社内標準環境では、セキュリティ上や管理上の都合でいくつものツールを同時に起動しているため、何が悪さをしているのか見えづらい状況になりがちです。
メーカー問い合わせによる対応状況の確認
複合機メーカーへ問い合わせたところ、24H2対応のドライバーを案内している場合もあれば、まだ正式には対応していないケースもあるかもしれません。また、ツールメーカー側が「まだ24H2には対応していないので適用しないでください」と案内することもあります。こうした情報交換によって「新規インストールなら問題ないが、アップグレードでは問題が起きる」など、より詳細な状況が分かることも多いです。
大量アップグレード時の注意
数百台規模で一気にWindows 11(24H2)へ移行する際には、個別のマシンで発生するトラブルが全体に波及する可能性を考慮しなくてはなりません。特に、今回のように印刷機能がまともに動かない問題は業務全体を止める恐れがあるため、各ベンダーの対応状況を十分に確認することが求められます。
最終的な結論と解決策:問題を引き起こすツールの無効化・アンインストール
結論としては、社内で標準導入されている「ログ収集ツール」がWindows 11(24H2)の印刷機能と衝突していることが判明しました。このログ収集ツールを停止またはアンインストールすると、エラーが発生しなくなるケースが多いようです。さらに、ツールメーカー側も「現時点では24H2非対応」と明言しているため、24H2の適用そのものを見合わせるという判断も選択肢として挙がります。ツールメーカーから適切な24H2対応版がリリースされるまで、既存のWindows 10(22H2)環境を維持する、もしくはログ収集ツール以外の同等サービスへ乗り換えなどを検討する必要があるかもしれません。ここは業務上の要件やセキュリティポリシーとの兼ね合いで決まります。
クリーンインストールの検討
今回のようにアップグレード経路を辿ると不具合が発生する一方で、新規インストール(クリーンインストール)を行うとエラーが発生しないケースもあります。ただし、数百台レベルの環境ではクリーンインストールの負担が非常に大きく、容易ではないでしょう。そこを勘案すると、ログ収集ツールを使わない(あるいはアンインストールした)状態でアップグレードを行い、正常稼働を確認してから必要なツールを導入し直す、という手順も考えられます。
Windows 10サポート終了までの猶予
Windows 10の延長サポート終了が近づくと、最終的にはWindows 11への移行が避けられなくなります。そのときに備え、今のうちから社内で使用している常駐ツールやドライバー類が24H2に対応しているかどうかリストアップしておくと良いでしょう。特に業務に直結する印刷機能関連は、早めに確実な対応策を見つけておくのが得策です。
私もかつて「まだサポート終了までに時間があるから大丈夫だろう」と思っていたところ、対応ツールがなかなかリリースされず、最終的にギリギリで慌てた経験があります。ベンダーのリリース時期は予定通りとは限らないので、やはり早めの確認が肝要ですね。
トラブル回避に向けた具体的アドバイス
ここまでの内容を踏まえて、実際にどのように対策を進めていくべきか、ポイントを整理してみましょう。
社内標準ツールやドライバーの更新状況を洗い出す
大量のPCが同じ標準環境を使う場合、その環境の中に含まれているツールやドライバーが「Windows 11(24H2)」に対応していない可能性があります。まずはそれらを一覧表にし、各ベンダーのサポートページなどで最新情報を収集するとともに、問い合わせを行い、対応時期を確認しておきましょう。「実際に動かしてみないとわからない」という場合でも、テスト用のサブマシンを用意して先行検証しておくことは非常に大切です。印刷周りのみならず、セキュリティソフトやVPNクライアントなど、業務に必須なソフトウェアも確認対象になるでしょう。
段階的なアップグレードとバックアップ体制
いきなり全台数をアップグレードするのではなく、部署やチームごとに段階的にWindows 11へ移行して問題が起きないかを検証するのがベストプラクティスです。さらに、万が一トラブルが発生した場合に即座にロールバックできるよう、バックアップイメージの取得を怠らないようにしましょう。
対応版の提供を待つか代替ツールを検討する
もしどうしても社内標準ツールが手放せないのであれば、メーカーのアップデートを待つか、24H2ではなく下位バージョンのOSで運用を続ける選択もあります。しかし、Windows 10の延長サポート終了を考えると、そういつまでも先延ばしにできません。対応版が出るまでのつなぎとして、代替ツールを利用するという手も考えられます。
最終的な決断:ツールの停止・アンインストールも視野に
「ログ収集ツール」が明確に原因とわかっている場合、シンプルにそれを停止またはアンインストールするのがトラブル回避の一番手っ取り早い解決策となります。もちろん、ログ収集ツールを利用しないことでセキュリティ監査や障害対策などの面で不都合が発生するかもしれません。そこは運用部門やセキュリティ部門との相談が必要です。
まとめ:印刷エラーを防ぎ、スムーズなWindows 11移行を
以上の内容からわかるように、Windows 10(22H2)からWindows 11(24H2)へのアップグレードで印刷関連の不具合が起きる場合は、OSそのものやプリンタードライバーだけでなく、常駐ソフトやツールが原因となっていることが多くあります。特に「ログ収集ツール」が非対応で、印刷機能に干渉してアプリをクラッシュさせているケースは典型的です。大規模なPC環境であればこそ、新規インストールを回避したい気持ちは痛いほどよくわかりますが、どうしてもクリーンインストールがベストな選択肢になる場合もあるでしょう。
本記事を参考に、まずは自社の標準環境やツール群を洗い出し、各ベンダーへ問い合わせを行ってみてください。また、先行テスト用のパイロットマシンを用意するなど、着実な手順を踏むことが成功への近道だといえます。最終的にはツールのアンインストールやメーカーからの対応版リリース待ちといった現実的な手段を検討しつつ、円滑なアップグレードを目指しましょう。印刷を止めることなく、快適なWindows 11ライフが送れるよう祈っています!
アップグレード前に十分な検証とツールのサポート状況の確認を行いましょう。問題を未然に防げれば、業務停止リスクを大幅に抑えられます。
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