Windows 11 ARMでHPプリンタを快適に使うための対策と注意点

Windows 11のARMデバイスは、高速で省電力なメリットが注目される一方で、ドライバ対応などの互換性に課題が残っています。特にプリンタ周りは、従来のIntel/AMDアーキテクチャと異なるためにトラブルが起こりやすく、スムーズな作業を阻む要因になりがちです。

Windows 11 ARM環境での印刷トラブル概要

Windows 11のARM版は、省電力やモバイル環境での快適なパフォーマンスを実現するメリットがあります。しかし、まだドライバが十分に整備されていない部分があり、HP MFP 3301のような一部のプリンタでは正常にインストールできない問題が発生するケースがあります。以下では、その原因や対処法を順を追って解説します。

エラーの一般的な症状

Windows 11 Home(ARM版)において、HP MFP 3301をインストールしようとした際に多く報告されるのが、以下のようなエラーです。

  • 「PlugPlay」サービスが開始できない
  • 「システムサービスを開始する権限がない」といったメッセージ
  • 純正のHPアプリやHP Easy Startを使ってもインストールが完了しない

これらは一般的には、ドライバがARMアーキテクチャに対応していないことが根本原因である可能性が高いと考えられています。

他のPCでは問題ないのに…

よくあるのが「Intel/AMDベースのWindowsマシンでは同じHP MFP 3301をスムーズにインストール・利用できているのに、ARM版のWindows 11だと失敗する」というケースです。これは、x86/x64向けに最適化されたドライバをARMで動かそうとしてもうまく動作せず、結果的にエラーを引き起こすためです。

HP MFP 3301がARMでインストールに失敗する原因

プリンタドライバは、OSの内部でプリントスプーラーやデバイス管理サービスと連携して動作します。Windows on ARMはエミュレーション技術によって一部のx86アプリケーションを動作させられますが、ドライバレベルでの互換は制限があります。以下に主な原因をまとめます。

1. ARMネイティブドライバの未提供

プリンタメーカーは基本的に、x64版のWindows向けにドライバを提供することが主流となっています。ARM版Windowsを正式サポートするためには、ARMアーキテクチャ用のドライバを開発・提供する必要がありますが、まだ対応が追いついていないメーカーや機種も多いのが現状です。HP MFP 3301についても、HP公式サイトでARM対応ドライバが提供されているかどうかを再度確認する必要があります。

2. 「PlugPlay」サービスと権限の問題

HPのインストーラーがデバイスを登録する際、Windowsの「Plug and Play」サービスを利用してハードウェア情報を認識・登録します。しかしARM向けに最適化されていないドライバやインストールプロセスでは、「PlugPlay」サービスの起動をトリガーできずにエラーを起こすケースがあります。また、一部ではユーザー権限やグループポリシーの設定が原因となることもありますが、ARM固有の制限である可能性も考えられます。

3. Mopriaドライバの互換性

Windows 11標準のMopria互換ドライバ(Microsoft汎用ドライバ)は、多くのプリンタで最低限の印刷機能を提供します。インストール不要でプラグアンドプレイに近い形で動作するため便利ですが、HP MFP 3301の場合は印刷が送信されても実際に動作しない事例が報告されています。これは、Mopriaドライバとプリンタのファームウェア側の互換性が不十分である可能性もあります。

トラブルシューティングと解決策

ここでは、エラーに直面した場合に試しておきたい対策を段階的に紹介します。現時点では、公式のARM対応ドライバが提供されない限り、完全な解決は難しいかもしれません。しかし、下記手順を試すことで改善が見られる場合があります。

1. HP公式サイトやサポートの再確認

まずは、HPの公式サイトでMFP 3301に関する最新ドライバ情報をチェックしましょう。HPは比較的新しい機種に対しては定期的にアップデートを行う可能性があります。ARM対応のドライバがリリースされていれば、その手順に沿って改めてインストールを試みてください。

HPサポートに問い合わせるときのポイント

  • ARM版Windows 11であることを明確に伝える。
  • 具体的なエラー内容(「PlugPlay」サービスが開始できないなど)を詳細に伝える。
  • すでに行ったトラブルシューティングの手順を箇条書きでまとめる。

これにより、サポート担当者が問題を正確に把握し、今後の対応方針を明確に示しやすくなります。

2. HP関連ソフトウェア・ドライバのアンインストール

すでに何度かインストールを試して失敗している場合、PC内に中途半端な状態でドライバや関連ソフトが残っているかもしれません。以下の手順でクリーンな状態を作り、再度インストールを試みます。

  1. コントロールパネルの「プログラムと機能」または「アプリと機能」でHP関連のソフトウェアをすべてアンインストール。
  2. デバイスマネージャーで「プリンタ」や「不明なデバイス」にHPの項目があれば削除。
  3. システムを再起動し、改めて「プリンターとスキャナー」から自動認識を試す、またはHP公式インストーラーを使用。

3. Mopria互換ドライバの活用

Windows標準で搭載されているMopria互換ドライバは、HP MFP 3301がMopriaに対応している場合に限り、簡易的な印刷を可能にする場合があります。Mopria対応機種かどうかは、以下のサイトなどで確認してください。

ただし、Mopriaドライバで利用できるのは基本的な印刷機能に限られ、高度なスキャン機能や特別な印刷設定(両面印刷、用紙サイズの詳細設定など)が使えないことも多いです。

Mopriaドライバインストール手順例

  1. 「設定」→「Bluetoothとデバイス」→「プリンターとスキャナー」を開く
  2. 「プリンターまたはスキャナーを追加する」を選択
  3. デバイス検索が始まったら、一覧に表示されるMopria互換のHP MFP 3301を選択
  4. 自動インストール完了後、テスト印刷を実施

4. Windowsのサービス確認やグループポリシー設定

「PlugPlay」サービスが開始できないエラーは、ユーザー権限やサービスの依存関係が影響している可能性もわずかにあります。下記の表を参考に、必要なサービスが「自動」や「手動(トリガー開始)」になっているか確認してみましょう。

サービス名デフォルトのスタートアップの種類確認のポイント
Plug and Play
(PlugPlay)
自動停止している場合は「開始」を実行。
スタートアップの種類が「無効」になっていないか要確認。
Print Spooler
(Spooler)
自動ドライバインストールには必須。
印刷できない場合はスプーラーを再起動してみる。
Device Install Service手動(トリガー開始)ドライバインストール時に呼び出される。
エラーなら「手動」に戻す。

サービスの状態は「サービス」アプリ(services.msc)で確認できます。必要に応じて、管理者権限で下記のようにPowerShellからサービスの状態を確認することも可能です。

# Plug and Playサービスの状態確認
Get-Service -Name PlugPlay

# Print Spoolerサービスの状態確認
Get-Service -Name Spooler

もしこれらのサービスが停止または無効化されていれば、再起動やスタートアップの種類の修正を行ってください。ただし、これで問題が解消しない場合は、やはりドライバ自体のARM非対応が本質的な原因である可能性が高いでしょう。

回避策・代替案

どうしてもHP MFP 3301を利用したいがARM版Windowsでは対応ドライバが存在しない、という状況の場合は以下の方法を検討してください。

1. Intel/AMDベースのWindows PCを利用

最も手堅い方法が、従来のx64アーキテクチャを採用したPCを使うことです。HP MFP 3301はx64向けドライバが豊富に提供されているため、確実に印刷・スキャン機能を活用できます。追加のソフトウェアやHP Smartなどもスムーズに動作し、エラーが起きにくいメリットがあります。

2. 新しいプリンタの検討

ARM版Windowsでの利用実績がある、またはメーカーが公式にARM対応をアナウンスしているプリンタ機種を選ぶことも一案です。特にMopria対応やAirPrint対応など、汎用性の高い機種であれば、ドライバインストールに煩わされるリスクが低減します。

3. 仮想環境やエミュレーションの活用

一部のARMデバイス上では、仮想環境を使ってx86/x64 OSを動かすことができる場合があります。Hyper-Vや他社製の仮想ソフトウェアを用いて、Intel/AMD用OSでプリンタを制御する手段です。ただし、こちらは公式サポート外となり、動作が保証されないことに加えて、システム資源を大きく消費する恐れもあります。

仮想マシン上でのセットアップ例

  1. ARMデバイスに仮想マシンソフト(Hyper-VやVMwareなど)をインストール
  2. x64版のWindowsを仮想マシンに導入
  3. 仮想マシン内でHP MFP 3301ドライバを通常通りセットアップ
  4. プリンタをUSB接続またはネットワーク共有で認識させ、印刷を試す

ただし、仮想環境の構築自体に慣れていないと操作が複雑になり、トラブルシューティングも大変になる可能性があります。

今後の展望と注意点

Windows on ARMは、Microsoftも積極的にサポートを拡充しており、将来的にはより多くのドライバやアプリケーションがスムーズに動くようになると期待されています。しかし、現時点ではまだプリンタなどの周辺機器に関しては対応が遅れているケースが少なくありません。最新のドライバ情報をこまめにチェックし、ARM対応の明示がある機種やソフトウェアを優先的に選ぶことが、トラブル回避の近道です。

HPプリンタを選ぶ際のチェックリスト

  • メーカー公式サイトで「Windows on ARM対応」が明記されているか
  • 最新ファームウェアやドライバの更新履歴に「ARM」「Windows 11 on ARM」「Mopria」などのキーワードが含まれているか
  • ユーザーレビューやコミュニティフォーラムで実際にARMデバイスに繋いだ際の報告があるか

まとめ

HP MFP 3301をWindows 11 ARM環境で利用しようとした際、インストールエラーが発生しやすい最大の理由は「ARM対応ドライバの未提供」にあります。汎用ドライバであるMopria互換ドライバも、必ずしも正常に動作するとは限りません。Windowsサービスの確認やHP関連ソフトのクリーンインストールを試してみても状況が改善しない場合、正式なARM版のドライバが提供されない限り完全な解決は難しいでしょう。

そのため、Intel/AMDベースのWindows PCを利用する、ARM環境で実績のあるプリンタを選ぶ、もしくは仮想マシンやエミュレーションを使うなどの回避策を検討する必要があります。今後のアップデートでドライバ環境が整備されれば、より快適に利用できる可能性もあるので、定期的にHPの公式情報をチェックしながら最適な方法を模索していくとよいでしょう。

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