2025年4月のWindows Updateは、Windows 10・Windows 11向けにゼロデイ脆弱性を含む多くの修正を施す重要なセキュリティ更新プログラムでした。しかし企業・個人問わず、アップデート後に様々な不具合報告が相次いでいます。本記事ではKB番号別の具体的な問題と対策を整理しました。
Windows 10:2025年4月の更新と主な不具合
2025年4月の月例累積更新プログラム(KB5055518)を適用したWindows 10 バージョン22H2(ビルド 19045.5737)では、セキュリティ修正のほか、印刷時の文字化け問題をはじめとする複数の改善が含まれています。しかし以下のような不具合報告や既知の問題が確認されています。
1. Citrix製品との互換性問題
2025年1月以降のWindows更新プログラムから続く既知の不具合で、Citrix Session Recording Agent (SRA) v2411を導入している企業環境などでは、Windows Updateのインストールが完了せず再起動時にロールバックしてしまう事例が報告されています。一般的なホームユーザーには影響しません。
Citrix側は「SRAサービスを一時停止してから更新を適用し、その後サービスを再開する」回避策を提示しており、MicrosoftもCitrix社と協力し早期解決を進めているとされています。
2. イベントビューアーのSgrmBroker.exeエラー記録
更新後にイベントログへ「SgrmBroker.exe(System Guard Runtime Monitor Broker)サービスに関するエラー(イベントID 7023)」が記録される場合があります。これはシステム動作に実害はなく、セキュリティやパフォーマンスへの影響はないため無視可能とされます。一時的にエラーを消したい場合はサービスの無効化(レジストリ変更)も可能ですが、放置しても問題ありません。
3. Cドライブ直下に「inetpub」フォルダが生成
4月の更新を適用後、IIS(Internet Information Services)を無効にしている環境であっても、C:\inetpubフォルダが作成される報告があります。これは脆弱性修正の一環として仕様上意図された動作であり、不具合ではないとMicrosoftが説明しています。セキュリティ上の理由から削除せずにそのまま残すことを推奨しています。
4. WinRE用セキュリティ更新(KB5057589)のエラー表示
Windows 回復環境(WinRE)向けセキュリティ更新KB5057589をインストールすると、Windows Update画面上でエラーコード「0x80070643」が表示される場合があります。実際には誤検出であり、更新自体は正常に適用済みとのことです。再起動後に「Windows Updateの再チェック」を実行すればエラー表示が消えるケースが多く、深刻な影響はありません。
5. その他の報告
一部ユーザーからは「右クリックメニューが消える」などUI不具合も報告されていますが、限定的な事例とみられています。全般的にWindows 10の4月更新に伴う影響は、企業向け環境(Citrix使用やWinRE更新等)に集中しており、ホームユーザーへの影響は比較的小規模です。
▼Windows 10における主な不具合のまとめ
更新プログラム (KB) | 対象バージョン/ビルド | 主な不具合内容 | 影響範囲・報告状況 | 回避策・対処法 |
---|---|---|---|---|
KB5055518(累積更新) | Windows 10 22H2 (19045.5737) | Citrix SRA環境で更新インストール失敗 イベントID 7023(SgrmBroker.exe)が記録 C:\inetpubフォルダ生成(仕様) | 主に企業ユーザーや特定環境で発生。フォルダ生成やエラーログは全環境で起こり得る | ・Citrix:SRAサービス一時停止→更新適用 ・SgrmBrokerエラーは放置可 ・inetpubフォルダは削除非推奨 |
KB5057589(WinRE更新) | Windows 10 21H2/22H2 | エラー0x80070643が表示されるが誤検出 | 再起動後も表示が残る場合は 「Windows Updateの再チェック」で解消 | 特に問題ないため放置可 |
Windows 11:2025年4月の更新と主な不具合
Windows 11向けには、以下の累積更新プログラムが配信されました。
- KB5055528 – Windows 11 バージョン23H2(OSビルド22631系)
- KB5055523 – Windows 11 バージョン24H2(OSビルド26100.3775)
いずれも重大なセキュリティ修正を含む必須パッチですが、Windows 10以上に不具合の声があがっています。特に24H2向けのKB5055523ではインストール失敗やWindows Hello関連の問題が目立ちます。
1. 更新プログラムのインストール失敗・エラー
KB5055523(Windows 11 24H2)で、「Windows Update経由だと0x80070306, 0x800f0905, 0x800704ecなどのエラーが出て途中で失敗し、インストールが完了しない」という報告が多数寄せられています。
対処法として、Microsoft Updateカタログからダウンロードしたオフラインインストーラ(.msu)を利用するか、Windows 11更新アシスタントでアップデートすると成功する場合があるようです。どうしても適用できない場合は、一時的にアップデートをアンインストールして中断する選択肢も検討されます。
2. Windows Helloが機能しなくなる問題
KB5055523適用後、生体認証やPINによるサインインが不能になる深刻な事例があり、Microsoftも公式に既知の不具合として認めています。特定のセキュリティ機能(System Guard Secure LaunchやDRTM)が有効な端末で、更新適用後に「このPCをリセット」(個人ファイルを保持)などの操作を行うと、Windows Helloが使用できなくなるケースがあります。
Microsoftの回避策としては、PINを新規登録し直したり、顔認証のセットアップを再実行することで多くの場合は復旧します。セーフモードや別アカウントからログインして対策する手段も有効です。
3. IRカメラのみでのWindows Hello顔認証が使えない
物理スイッチなどで通常RGBカメラをオフにした状態でIR(赤外線)カメラだけを使っている場合、4月更新後は「顔を認識できません」というエラーが発生して赤外線による認証が機能しないと報告されています。HP SpectreなどのノートPCや外付けカメラ(Logitech Brioなど)で再現例があるようです。
暫定回避として、デバイスマネージャーでRGBカメラデバイスを無効化し、IRカメラのみ残して再セットアップすると復旧する場合があります。効果がない場合はアップデートのアンインストールやPIN・指紋認証で代替するしかないようです。
4. RobloxアプリがARM版で起動不可
Windows 11 24H2のARMデバイスで、Microsoft StoreからRobloxをダウンロードしても起動できない不具合が確認されています。Microsoftは既知の問題として認めており、公式サイトから直接ARM向けクライアントをダウンロードして利用する方法を案内しています。Store版に固有の問題であり、手動インストールならプレイ可能です。
5. Citrix SRAによるアップデート失敗
Windows 10同様、Citrix Session Recording Agent (SRA) v2411との競合で、アップデートがロールバックする既知の問題があります。Windows 11 23H2/24H2いずれも対象で、企業のCitrix利用端末に限定的です。SRAサービス停止→更新適用で回避が推奨されています。
6. Active Directory監査設定の表示不具合(23H2)
ドメイン参加のPC環境でグループポリシーを確認すると、「ログオン/ログオフ監査」が実際には有効にもかかわらずUI上は無効と表示される不具合が報告されています。これも企業ネットワークでのセキュリティ監査関連の問題ですが、2025年4月12日に緊急の帯域外更新(OOB)KB5058919などが公開され、手動適用により修正可能です。
▼Windows 11における主な不具合のまとめ
更新プログラム (KB) | 対象バージョン / ビルド | 主な不具合内容 | 影響範囲・報告状況 | 回避策・対処法 |
---|---|---|---|---|
KB5055528(累積更新) | Windows 11 23H2 (22631系) | ・Citrix SRA導入でアップデート失敗 ・監査ポリシーのUI表示異常 ・C:\inetpubフォルダ生成(仕様) | 主に企業ユーザー(Citrix、AD運用など) inetpubフォルダは全ユーザーで作成され得る | ・SRAサービス停止して更新 ・監査ポリシー表示の不具合は OOB更新KB5058919で修正 ・inetpubフォルダは削除厳禁 |
KB5055523(累積更新) | Windows 11 24H2 (26100.3775) | ・アップデートインストール失敗 ・Roblox(ARM)が起動不可 ・Windows Helloでのログイン不能 ・IRカメラのみ認証できない ・C:\inetpubフォルダ生成(仕様) | ・インストール失敗は幅広い環境で報告 ・Roblox不具合はARM限定 ・Hello不具合はSecure Launch等が有効な端末 ・IRカメラ問題はノートPC中心 | ・.msuオフラインインストーラや 更新アシスタントの利用推奨 ・Robloxは公式サイトからARM版入手 ・Hello問題: PIN再登録や 顔認証再セットアップで復旧 ・IRカメラ不具合はRGBカメラ無効化 効果がなければ更新削除 |
Microsoft公式見解・今後の対処方針
Microsoftのリリース健康ダッシュボードや各KBのサポート情報では、Citrix SRAとの競合やWindows Helloのログイン問題、Roblox(ARM)の不具合などを既知の問題として掲載し、対処策やワークアラウンドが提示されています。また、2025年4月12日にはOOB更新をリリースし、AD監査設定の表示バグなど企業向け重要問題を修正しました。

執筆者のコメント:4月のアップデートには深刻な脆弱性修正が含まれるため、問題が発生した場合でも長期間適用を避けるのは危険です。もしトラブルに遭遇したら、上記の回避策や一時停止などを上手に活用しながら安全策を保ってください。
今後もMicrosoftは、翌月以降の累積更新プログラムや追加パッチで問題解消を図るとみられます。最新の公式情報や技術サイトの記事をチェックしながら適切な方法でシステムを保護していきましょう。
まとめ
2025年4月のWindows Updateは、ゼロデイ脆弱性などの重要セキュリティ修正を含む反面、アップデート失敗やWindows Helloの認証障害など、多岐にわたる不具合が報告されました。企業環境ではCitrix SRAやAD関連の影響が大きく、個人ユーザーでも一部機能障害が起こる可能性があります。深刻なセキュリティリスク回避のためにも、公開されている回避策を上手く活用しつつ、アップデートを行うことが望ましいでしょう。
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